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[リア]
気楽なお茶会 §2
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「金がないわけないだろう」と、ヴィルさんは強めの口調で言った。
「戦をしているのは国境付近だけで、ほかは普段どおりの生活ができていると聞いているぞ
「相変わらず嫌な奴だな、お前は」
オリヴァーさんはそう言うと「クリスからもなんとか言ってくれよ」とアゴをしゃくった。
「経済政策が空回っているとは、くそダセェな。笑えるぜ」と、くまんつ様は鼻で笑っている。
「お前まで一緒になって痛いところを突かなくていいんだよ!」
久々に再会した三人は、皮肉を飛ばし合いながらも楽しそうだ。
「お金がないなら聖女と結婚してこい。さもなくば婚約破棄だ」と謎に満ちたことを言う婚約者に疲れ、逃げるように王都へやって来たオリヴァーさん。言われたとおりに聖女と結婚しても婚約破棄は確定だ。
婚約者の女性は今頃気づいて焦っているかも知れない。お金がないと、冷静な判断ができなくなることもあるだろう。無一文を経験した者としては、その気持ちは少しわかる気がする。
オリヴァーさんはガッツリと謝罪してくださった。でも、わたしは全然気にしていない。意識は目の前にあるケーキとスコーンに全集中だ(美味しそう)
お金の問題については、ヴィルさんたちが相談に乗ってあげているので、わたしはゆっくりお茶とお菓子を頂きたい。
「彼の領地は、リアの白ソースもないド田舎だ」
ヴィルさんは子どもが先生に言いつけるような言い方をした。
「ウチの領地も白ソースはねぇよ、ボケ」と、くまんつ様が突っ込む。
マヨとタルタルソースは、まだ王都と少し北の領地でしか手に入らない。
「うちは戦でソースどころの騒ぎじゃない」と、オリヴァーさんは言った。
「言い訳だな。戦える奴はいくらでもいるが、領地経営は領主にしかできないのだぞ? それに……」
わたしがスコーンを上下二つに割っていると、ヴィルさんは話を中断させて、こちらを向いた。
「これ、ちょっとリアの口には大きすぎるな。もう半分にしたほうがいい。お口がいっぱいになってしまうぞ」
「ん……そうですか?」
アレンさんと食べに来たときは半分に割ってはむはむ食べていたけれども、初対面の方の前で大口を開けるのも恥ずかしいので、もう半分に割った。ヴィルさんがそこにジャムを乗せてくれたので、その上からクリームを乗せる。
わたしがスコーンを食べるのを見ながら「どちらを先に乗せるかの論争があるよな。ジャムとクリーム」と、彼は言った。
フンフンとうなずく。わたしは「クリームあと乗せ派」で、これに関しては彼と意見が一致している。
「な、なんて平和な会話だ。ずっとここにいたい。俺は時間がないから『何もつけずに丸ごと口に放り込む派』だぞ。もう悲しくなってきた」
オリヴァーさんは泣き真似をしながら言った。
「お互いに苦労するなぁ。俺の悩みは、リアを放っておくと、ひとりでウハウハと金を稼いでしまうことだ」
悩んでなんかいないくせにと思いつつ、わたしは残りのスコーンにクリームをたっぷりと乗せた。
スタインブリッツのスコーンはサクサク系で、アレンさんと何度も食べに来ているほどお気に入りだ。添えられたジャムはイチゴと期間限定のフルーツ(今回はアプリコット)の二種類で、どちらも甘さ控えめで永遠に食べていられそう。クロテッドクリームと一緒に乗せれば至福の世界が広がる。
もぐもぐ……。
「なんて羨ましい話だ。俺も王都にいられたらなぁ」と、オリヴァーさんは言った。
「なあ、金がないなら何か特産品を作れよ。力を入れているものはないのか?」
くまんつ様が腕組みをして言うと、オリヴァーさんは天井を見ながら考えている。
「バターだな。余って捨てているぐらいある」
「お前バカなのか? 加工しろよ。原始時代じゃねぇんだぞ」
「チーズ、ジャガイモ、あと羊毛の服」
「うはぁ……なんか夢も希望もねぇ」
「小麦と、夏はトウモロコシかなぁ」
「加工をしろって言ってんだよ」
「お前のところみたいにセンスがないんだよ。うちはド田舎なんだよ」
「そこを引っ張るのがお前の仕事だろうが。なんのために王都の学校に通ったんだよ」
牛に羊にトウモロコシ……。アイテム名だけを聞いていると、ちょっと北海道っぽい雰囲気だ。
こくりとお茶を飲みながら、北海道土産のホワイトチョコが挟まったクッキーを思い出していた。
ヴィルさんがわたしのお皿に小さなチョコレートケーキを乗せてくれた。「お酒が利いていて美味だよ」と言う。
思ったとおり、わたしは単なる「同窓会の添え物」で気楽だった。
有名店の美味しいお菓子を余すところなく堪能できる予感。目指すは全ケーキ制覇だ。幸せでニマニマしながら残りのスコーンを口に入れた。
「リア?」
「んっ?」もぐもぐ……。
「リアの世界で、特産品と言えば何があった?」
「んーー、食べ物が豊富な国でしたので、たくさんありすぎて……。主食がコメですから、魚卵を塩辛く漬けたものとか、葉物のお漬物ですとか。麺もありますわ。長くなったノルのようなものですけれど、太いのから細いのまで。スープもさまざまなダシがあって。お土産物も地方によって多様でしたわ」
チョコレートケーキにフォークを入れると、スポンジの上のチョコババロアがぷるんと震える。
ん~、美味しい~~♪
くまんつ様と目が合った。しかし、彼はふっと笑って下を向いた。わたし、変な顔でもしていたかしら。
「例えば、寒い地方の美味しいものはどんなものだ?」と、ヴィルさんが言った。
「そうですねぇ……」
ケーキを食べながら、休暇明けの同僚からもらうとうれしい定番土産のアレやコレ、ご当地グルメの話をした。
「羊はどうだ? エールと合う料理だといいな」
「タレに漬け込んでおいて、傾斜がついた鉄板でお野菜と一緒に焼きながら食べるのが人気ですわ。エールと合いますし、おしゃべりも弾みます」
「うちの領地で、そういう料理をやっている宿場町があるなぁ」と、くまんつ様が言った。
「さっき彼が言ったものの中で、エールに合うものは作れるか?」とヴィルさん。
「ポテチはどうですか? たまにうちで作るパリパリしたほうの揚げ芋ですけれど」
「あれはエールが無限に飲める。あの振りかけてある粉がヤバいんだよな」
彼はレモンケーキを乗せたお皿を差し出しながら「雪の街で観光とか、遊びに興じることは?」と聞いてきた。
わたしはシッポふりふりお皿を受け取った。
レモンの皮が入ったバターケーキの間にシャリシャリ食感の甘い層とナッツ風味の層がある。一番上のレモンクリームを引き立ててとっても美味しいのだ。
フー、今日のお茶会はいつにも増してハイカロリー。でもサイズが小さくてお上品だからついつい食べてしまう♪
「――雪で遊んだあとは温泉に入ってマッタリして~」
わたしはスキーやスノボの話などをしながら、ぱくりぱくりとケーキを頂き、楽しいティータイムを過ごしていた。
「満天の星を眺めるのもいいよな? ほかは何がある?」
ヴィルさんは頬杖をついて言った。
「夏は避暑地としてもいいですわ」
「神力のせいで暑くなってしまったリアは、涼しいところに行きたいよな?」
「そう。今年は夏がつらくて」
「エルディル旅行に行きたいよなぁ?」
「そうですね。羊さんも好きですわ」
「あー、なのに、どうしてエルディルは観光地ではないのだろうかー」と、ヴィルさんは大袈裟に言った。
「戦をしているのは国境付近だけで、ほかは普段どおりの生活ができていると聞いているぞ
「相変わらず嫌な奴だな、お前は」
オリヴァーさんはそう言うと「クリスからもなんとか言ってくれよ」とアゴをしゃくった。
「経済政策が空回っているとは、くそダセェな。笑えるぜ」と、くまんつ様は鼻で笑っている。
「お前まで一緒になって痛いところを突かなくていいんだよ!」
久々に再会した三人は、皮肉を飛ばし合いながらも楽しそうだ。
「お金がないなら聖女と結婚してこい。さもなくば婚約破棄だ」と謎に満ちたことを言う婚約者に疲れ、逃げるように王都へやって来たオリヴァーさん。言われたとおりに聖女と結婚しても婚約破棄は確定だ。
婚約者の女性は今頃気づいて焦っているかも知れない。お金がないと、冷静な判断ができなくなることもあるだろう。無一文を経験した者としては、その気持ちは少しわかる気がする。
オリヴァーさんはガッツリと謝罪してくださった。でも、わたしは全然気にしていない。意識は目の前にあるケーキとスコーンに全集中だ(美味しそう)
お金の問題については、ヴィルさんたちが相談に乗ってあげているので、わたしはゆっくりお茶とお菓子を頂きたい。
「彼の領地は、リアの白ソースもないド田舎だ」
ヴィルさんは子どもが先生に言いつけるような言い方をした。
「ウチの領地も白ソースはねぇよ、ボケ」と、くまんつ様が突っ込む。
マヨとタルタルソースは、まだ王都と少し北の領地でしか手に入らない。
「うちは戦でソースどころの騒ぎじゃない」と、オリヴァーさんは言った。
「言い訳だな。戦える奴はいくらでもいるが、領地経営は領主にしかできないのだぞ? それに……」
わたしがスコーンを上下二つに割っていると、ヴィルさんは話を中断させて、こちらを向いた。
「これ、ちょっとリアの口には大きすぎるな。もう半分にしたほうがいい。お口がいっぱいになってしまうぞ」
「ん……そうですか?」
アレンさんと食べに来たときは半分に割ってはむはむ食べていたけれども、初対面の方の前で大口を開けるのも恥ずかしいので、もう半分に割った。ヴィルさんがそこにジャムを乗せてくれたので、その上からクリームを乗せる。
わたしがスコーンを食べるのを見ながら「どちらを先に乗せるかの論争があるよな。ジャムとクリーム」と、彼は言った。
フンフンとうなずく。わたしは「クリームあと乗せ派」で、これに関しては彼と意見が一致している。
「な、なんて平和な会話だ。ずっとここにいたい。俺は時間がないから『何もつけずに丸ごと口に放り込む派』だぞ。もう悲しくなってきた」
オリヴァーさんは泣き真似をしながら言った。
「お互いに苦労するなぁ。俺の悩みは、リアを放っておくと、ひとりでウハウハと金を稼いでしまうことだ」
悩んでなんかいないくせにと思いつつ、わたしは残りのスコーンにクリームをたっぷりと乗せた。
スタインブリッツのスコーンはサクサク系で、アレンさんと何度も食べに来ているほどお気に入りだ。添えられたジャムはイチゴと期間限定のフルーツ(今回はアプリコット)の二種類で、どちらも甘さ控えめで永遠に食べていられそう。クロテッドクリームと一緒に乗せれば至福の世界が広がる。
もぐもぐ……。
「なんて羨ましい話だ。俺も王都にいられたらなぁ」と、オリヴァーさんは言った。
「なあ、金がないなら何か特産品を作れよ。力を入れているものはないのか?」
くまんつ様が腕組みをして言うと、オリヴァーさんは天井を見ながら考えている。
「バターだな。余って捨てているぐらいある」
「お前バカなのか? 加工しろよ。原始時代じゃねぇんだぞ」
「チーズ、ジャガイモ、あと羊毛の服」
「うはぁ……なんか夢も希望もねぇ」
「小麦と、夏はトウモロコシかなぁ」
「加工をしろって言ってんだよ」
「お前のところみたいにセンスがないんだよ。うちはド田舎なんだよ」
「そこを引っ張るのがお前の仕事だろうが。なんのために王都の学校に通ったんだよ」
牛に羊にトウモロコシ……。アイテム名だけを聞いていると、ちょっと北海道っぽい雰囲気だ。
こくりとお茶を飲みながら、北海道土産のホワイトチョコが挟まったクッキーを思い出していた。
ヴィルさんがわたしのお皿に小さなチョコレートケーキを乗せてくれた。「お酒が利いていて美味だよ」と言う。
思ったとおり、わたしは単なる「同窓会の添え物」で気楽だった。
有名店の美味しいお菓子を余すところなく堪能できる予感。目指すは全ケーキ制覇だ。幸せでニマニマしながら残りのスコーンを口に入れた。
「リア?」
「んっ?」もぐもぐ……。
「リアの世界で、特産品と言えば何があった?」
「んーー、食べ物が豊富な国でしたので、たくさんありすぎて……。主食がコメですから、魚卵を塩辛く漬けたものとか、葉物のお漬物ですとか。麺もありますわ。長くなったノルのようなものですけれど、太いのから細いのまで。スープもさまざまなダシがあって。お土産物も地方によって多様でしたわ」
チョコレートケーキにフォークを入れると、スポンジの上のチョコババロアがぷるんと震える。
ん~、美味しい~~♪
くまんつ様と目が合った。しかし、彼はふっと笑って下を向いた。わたし、変な顔でもしていたかしら。
「例えば、寒い地方の美味しいものはどんなものだ?」と、ヴィルさんが言った。
「そうですねぇ……」
ケーキを食べながら、休暇明けの同僚からもらうとうれしい定番土産のアレやコレ、ご当地グルメの話をした。
「羊はどうだ? エールと合う料理だといいな」
「タレに漬け込んでおいて、傾斜がついた鉄板でお野菜と一緒に焼きながら食べるのが人気ですわ。エールと合いますし、おしゃべりも弾みます」
「うちの領地で、そういう料理をやっている宿場町があるなぁ」と、くまんつ様が言った。
「さっき彼が言ったものの中で、エールに合うものは作れるか?」とヴィルさん。
「ポテチはどうですか? たまにうちで作るパリパリしたほうの揚げ芋ですけれど」
「あれはエールが無限に飲める。あの振りかけてある粉がヤバいんだよな」
彼はレモンケーキを乗せたお皿を差し出しながら「雪の街で観光とか、遊びに興じることは?」と聞いてきた。
わたしはシッポふりふりお皿を受け取った。
レモンの皮が入ったバターケーキの間にシャリシャリ食感の甘い層とナッツ風味の層がある。一番上のレモンクリームを引き立ててとっても美味しいのだ。
フー、今日のお茶会はいつにも増してハイカロリー。でもサイズが小さくてお上品だからついつい食べてしまう♪
「――雪で遊んだあとは温泉に入ってマッタリして~」
わたしはスキーやスノボの話などをしながら、ぱくりぱくりとケーキを頂き、楽しいティータイムを過ごしていた。
「満天の星を眺めるのもいいよな? ほかは何がある?」
ヴィルさんは頬杖をついて言った。
「夏は避暑地としてもいいですわ」
「神力のせいで暑くなってしまったリアは、涼しいところに行きたいよな?」
「そう。今年は夏がつらくて」
「エルディル旅行に行きたいよなぁ?」
「そうですね。羊さんも好きですわ」
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