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[リア]
聖女の石窯
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もともとパイを売りたかったベルソールさんは、話を聞くなり手をたたいて大喜びだった。
「店の名前もとっくの昔に考えてあるんですよ!」と言って、超スピードで企画書を出してくる。
パイ菓子とペイストリーのお店は『聖女の石窯』というブランドになるようだ。
話はどんどん大きくなり、陛下から「エルディル経済再生会議」で、出店計画を説明してほしいと言われた。
大勢の専門家が参画しているプロジェクトらしく、経済学者の先生や羊研究の権威と言われている大学教授、旅行会社の社長さん、温泉宿の経営者などが名を連ねている。エルディル領の観光地化を目指し、やるべきことと優先順位を議論している人たちだ。
ヴィルさんがリーダーなので少々危なっかしいけれど、メンバーにくまんつ様がいるから大丈夫だろう。クランツ領は観光でも大きな利益を上げているので、アドバイザー的な役割だそうだ。
わたしとベルソールさんは「王命で聖女とともに特産品の開発を任されている商人」と紹介された。ヒト族の人が多いので、聖女であることは伏せてある。
商人として、皆さまの前でプレゼンテーションをした。
わたしたちのお役目は、メンバーにモチベーションを上げてもらうことだった。
パイ菓子は日持ちするため、いずれはほかの領地でも売ることが前提だ。でも、まずはエルディルで地元の人気店になりたい。そして、いつか王都にも支店を出すことを目標としている。
パイ生地は冷凍保存もできるので、王都への冷凍便を設備から作る計画がある。冷凍便があれば、余剰バターを王都の商人に売ることも夢ではない。
食べ物の話なので、味わってもらうのが一番わかりやすい。
委員の皆さんにざっとコンセプトを説明した後、試食のパイを数種類出すことになっていた。
「こちらは今朝、聖女宮で焼かれたものです」
ペイストリーを一つずつ紹介してゆく。
「――こちらがダークチェリーとクリームの甘いパイ。長細いのは腸詰めのパイです。それから、トマトで煮込んだひき肉を詰めたミートパイになります」
ヴィルさんとくまんつ様が小声で「っしゃあ!」と言ってグータッチをしている(※この人たちはお昼にも食べました)
女性にはお菓子や甘い系のパイ、男性にはミートパイなどのお食事系が人気だ。滞在期間を延長して会議に出ていたオリヴァーさんも喜んで食べてくれた。
皆がもぐもぐしている中、ベルソールさんが戦略の説明を進める。
初めは旅行者を誘引する作戦だ。
聖女様の新しい食べ物を目当てにエルディルに旅行者がやって来る。パイ菓子はバラマキ系のお土産に最適だ。口コミでエルディルのお土産は有名になる。現地でしか食べられないものがあれば、行きたいと思う人は増えるだろう。
「しかし、それ以外の観光資源がなければ、ただ食べて帰っていくだけ。王都にお店が出れば、もうエルディル領へ行く必要もなくなってしまいます」
ベルソールさんは両手を広げてにこやかに「そこで皆さまの出番となります」と言った。
わたしたちは会議でのお役目を無事に果たした。
☟
陛下がエルディル領にホウショウ金を出してくれたおかげで、当面の経済的な危機は脱したようだ。
『聖女の石窯』も王命で店を出すため、初期費用の一部が国から出ることになった。こうなってくると商売も公務の一部だ。
開店すると、また個人の収入源が増えることになる。自立を目指すわたしにもありがたい話だ。
「景気の良いお話は大好きですわ」
わたしは図書室で不動産投資の本をなめるように読んでいる。
「何を企んでいるのですか?」と、アレンさんが後ろから聞いてきた。
「店の名前もとっくの昔に考えてあるんですよ!」と言って、超スピードで企画書を出してくる。
パイ菓子とペイストリーのお店は『聖女の石窯』というブランドになるようだ。
話はどんどん大きくなり、陛下から「エルディル経済再生会議」で、出店計画を説明してほしいと言われた。
大勢の専門家が参画しているプロジェクトらしく、経済学者の先生や羊研究の権威と言われている大学教授、旅行会社の社長さん、温泉宿の経営者などが名を連ねている。エルディル領の観光地化を目指し、やるべきことと優先順位を議論している人たちだ。
ヴィルさんがリーダーなので少々危なっかしいけれど、メンバーにくまんつ様がいるから大丈夫だろう。クランツ領は観光でも大きな利益を上げているので、アドバイザー的な役割だそうだ。
わたしとベルソールさんは「王命で聖女とともに特産品の開発を任されている商人」と紹介された。ヒト族の人が多いので、聖女であることは伏せてある。
商人として、皆さまの前でプレゼンテーションをした。
わたしたちのお役目は、メンバーにモチベーションを上げてもらうことだった。
パイ菓子は日持ちするため、いずれはほかの領地でも売ることが前提だ。でも、まずはエルディルで地元の人気店になりたい。そして、いつか王都にも支店を出すことを目標としている。
パイ生地は冷凍保存もできるので、王都への冷凍便を設備から作る計画がある。冷凍便があれば、余剰バターを王都の商人に売ることも夢ではない。
食べ物の話なので、味わってもらうのが一番わかりやすい。
委員の皆さんにざっとコンセプトを説明した後、試食のパイを数種類出すことになっていた。
「こちらは今朝、聖女宮で焼かれたものです」
ペイストリーを一つずつ紹介してゆく。
「――こちらがダークチェリーとクリームの甘いパイ。長細いのは腸詰めのパイです。それから、トマトで煮込んだひき肉を詰めたミートパイになります」
ヴィルさんとくまんつ様が小声で「っしゃあ!」と言ってグータッチをしている(※この人たちはお昼にも食べました)
女性にはお菓子や甘い系のパイ、男性にはミートパイなどのお食事系が人気だ。滞在期間を延長して会議に出ていたオリヴァーさんも喜んで食べてくれた。
皆がもぐもぐしている中、ベルソールさんが戦略の説明を進める。
初めは旅行者を誘引する作戦だ。
聖女様の新しい食べ物を目当てにエルディルに旅行者がやって来る。パイ菓子はバラマキ系のお土産に最適だ。口コミでエルディルのお土産は有名になる。現地でしか食べられないものがあれば、行きたいと思う人は増えるだろう。
「しかし、それ以外の観光資源がなければ、ただ食べて帰っていくだけ。王都にお店が出れば、もうエルディル領へ行く必要もなくなってしまいます」
ベルソールさんは両手を広げてにこやかに「そこで皆さまの出番となります」と言った。
わたしたちは会議でのお役目を無事に果たした。
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陛下がエルディル領にホウショウ金を出してくれたおかげで、当面の経済的な危機は脱したようだ。
『聖女の石窯』も王命で店を出すため、初期費用の一部が国から出ることになった。こうなってくると商売も公務の一部だ。
開店すると、また個人の収入源が増えることになる。自立を目指すわたしにもありがたい話だ。
「景気の良いお話は大好きですわ」
わたしは図書室で不動産投資の本をなめるように読んでいる。
「何を企んでいるのですか?」と、アレンさんが後ろから聞いてきた。
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