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本編 【5歳】
8.アレックスの仮面
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午後──クリスティーナは昨日と同じ4頭立ての馬車に乗っていた。
客車にはクリスティーナ一人で、従者として若手執事のパーシー・パーシヴァルが馬で併走している。
昨日、父と馬車で出た時は御者台に御者と執事長がいた。今日、御者台には御者ひとり。
王城敷地内に入り、クリスティーナが馬車を降りる時にはパーシーが腕をとった。父とは手を繋いだが、パーシーは後ろからついて来るにとどまっている。
その際、前世三十路の疑問をクリスティーナは口にする。
「ねぇ、パーシー、護衛はあなただけなの?」
「街での話ですか?」
王城内は城門で入城に制限がかかり、入城者の記録は義務づけられている。目に見える形の護衛は今、パーシーのみ。クリスティーナの疑問は必然的に城前まで、城下町での護衛の話になる。
「そうよ」
クリスティーナはまだ公開されていないとはいえ第一王子の婚約者であり、未来の王妃という扱い。王弟にして宰相の娘として、そもそも筆頭の公爵令嬢。貴人中の貴人の一人である。にもかかわらず、護衛が執事一人ということがクリスティーナには不思議だった。
前世三十路にとって国賓が乗る車といえばがっちがちの防弾仕様車だし、SPなど護衛がズラズラ並んで走りながら移動しているイメージだった。
「気付いてなかったんですね? 旦那様はしっかりしてらっしゃるし、ロマノーク騎士団の騎士4名ですかね? つかず離れずで馬車を護衛してましたよ?」
けろりと言ってのけるパーシーをクリスティーナは見上げた。
「え!? そうなの?? それにロマノーク騎士団??」
「地下室勝手に作っちゃうくらいだから旦那様の防犯意識相当ナメてますよね、クリスティーナお嬢様は」
「……知らなかっただけよ。5歳児に厳しくない? パーシー」
途端に5歳児のフリをする。
(──そうだった、地下室作ってることバレてるんだった……埋められたりしてないわよね、このお出かけの間に)
「そうですか? 私としてはお嬢様、本当に5歳ですかってのが一番聞きたいところですけどね」
「…………」
今まさに5歳児としての振る舞いを前世三十路が練り直していたところだった。
(なにこいつ、いちいち勘が鋭いわね……)
パーシーはクリスティーナの様子を彼女本人が自覚する以上に観察している。そのことにクリスティーナは気付き、パーシーをじろりと見るが彼はすいと目線も話もそらす。
「──そうですね、各領地にそれぞれ騎士団はありますが、特にロマノーク騎士団は空挺騎士団として有名ですね」
「空挺騎士団!? 空挺なの?」
「あれ? これもご存知ない? 有名ですけどね。決死隊ではないですが、その方がかっこいいらしいですよ、旦那様いわく」
(お父様──意外に大人の中2病患者だったのね……)
じっとりと手汗をかきそうな思いの連続だ。
父公爵に中2病という属性が加わるのならば、地下室についてもどうにか説得する方向性を算段出来るかもしれないとクリスティーナは考える。
「──旦那様は緑魔法……風の魔術師を大量に雇っていて、魔法で船を空に飛ばすんですよ。その護衛としては竜王とのコネで借り受けた20頭の飛竜を抱えています。いわゆる竜騎士ですよ」
「竜王!? 飛竜!? 竜騎士!?」
クリスティーナはついに胸に手を当てた。
次々飛びだすファンタジックな言葉に年甲斐もなくざわざわしたのだ。
(あったわね、ゲームにドラゴンとか普通にいたわね、戦闘フェーズとシナリオフェーズはなんだか別物でとらえてたわ……戦闘に出てくるモンスターが居て当たり前よね?)
「ロマノーク公爵領には飛竜がよく飛びます。訓練も兼ねて日持ちしない食材を王都に運んでいるのも彼らですよ。今日のこの果物だってね?」
果物のカゴは荷物持ちのパーシーの手にある。カゴをゆるく持ち上げ、ドヤッと目を輝かせているパーシー。その功績は父ロマノーク公爵のものだろうに──部下として誇らしいのだろうか。
クリスティーナはほぅとため息を吐く。
──悪役令嬢が『ざまぁ』と称して踏んだり蹴ったりになるだけの貴族社会ばかりの世界観ではなかった……!
クリスティーナは『虹のクローバー・グローリー』に受け止めきっていなかった世界観に、描かれきっていなかった要素に心ときめいた。
「クリスティーナ! こんにちは、会いたかったよ」
さらさらの金髪を揺らして、小首を傾げてニッコリ笑うアレキサンダー第一王子。
(ま、まぶしっ! まぶしいよ、キラキラスマイル!!)
果物のカゴはクリスティーナが手に持ち、従者のパーシーは王族プライベートエリア前の控え室に置いてきた。
通されたのはアレキサンダーの私室だ。
果物はすぐに侍女に渡し、毒見行き──。
用向きはアレキサンダーには伝わっているだろうから見せなかった。そもそも、きっと、果物など口実で『会いたかった』と告げているのがバレバレだろう。
クリスティーナにとって、第二王子の命令が先だったとは、アレキサンダーに気付かれていてほしくないところだ。
調度類は王妃チョイスなのか控え室同様、華美ではない程度にゴージャスで落ち着く配置というハイセンスなものだ。
アレキサンダーは私室なのでジュストコールは脱いでおり、白いふんわり仕立てのシャツに刺繍たっぷりジレとキュロットといういでたち。王子様スタイルだ。
クリスティーナは夜会やパーティー向けではなく、お出かけ向きのはっきりした水色のドレスだ。アレキサンダーの瞳の色と同じ。第二王子は緑がかった青なので、クリスティーナなりにアレキサンダー第一王子優先の訪問ですよという意思表示をしてみたのだ。
侍女は室内から見えないところに引っ込んだらしく、二人きりだ。
「ご機嫌よう、アレックスさま」
にこやかに挨拶をするクリスティーナ。
「ティナ、こっちへおいで。このソファなら窓から庭も見えるよ」
「はい」
床まである大きなはめごろしの窓にぴったりとくっつけて配置された濃いグリーンのソファにアレキサンダーは座った。
(引っ張ってくれる系だよ、楽チンだよ! 前世はイケメンをマジマジ眺める為におごりだと後輩を連れ出すのにあの手この手頑張ってたってのに、今世じゃイケメンが手招きしてくれるよ、すげーな!!)
しずしず歩いて近付けば、じれたアレキサンダーが「ほらほら、ここだよ」と自分の隣をポフポフとゆるく叩いている。
(かっわえぇ~!! 天使!! 天使がいる!!!)
危うく昇天しそうになり、クリスティーナは最後の一歩でふらつき、ソファに倒れ込んでしまった。
「ティナ!!」
慌てたアレキサンダーがソファの上で抱き止めてくれる。
(うっひょ~! ラ、ラララ、ラッキースケベ寸前!? 5歳、クリスティーナ、ファーストキス未遂~!?!?)
やはり冷静にならんと心の声はお祭り騒ぎだ。
状況は、倒れてきたクリスティーナを横に少しずれて受け止めたアレキサンダー。ふたりの顔が1cmの距離でギリギリ止まっていた。睫毛のかすめる距離である。
クリスティーナの胴を抱き留めたアレキサンダー。つんのめってとっさに前に両手を出したクリスティーナ。
これがうまい具合に重なって、クリスティーナによるソファの背もたれドン。壁ドンならぬソファドン。
クリスティーナの手がもう少し短く、とっさに体重を支える力が足りなければ、ラッキースケベは発動していたことだろう。
「も、ももも、もももももうしっ、ももももうしわけ──ござ、ごさいませんつ!!」
超至近距離のまま謝罪するクリスティーナ。
(やっべぇ!! やっべぇよ!! 私はいいけど、殿下のファーストキッス奪っちゃうとこだったよ、やっべぇ~!!)
動揺に赤くなったり青くなったりするクリスティーナを前に、アレキサンダーは真顔のまま。ゆったりあっさりクリスティーナを抱えなおし、自分の隣に座らせ、スカートを整えてくれる。
(え、え~と……いいのかしら。いいのかしらこれ?)
隣り合ってソファに座り、流れのまま見つめあっていたが、アレキサンダーが顔を逸らした。
(ア、アレックスさま!?)
そうして、アレキサンダーは『──ぷっ』と吹き出したかと思えば声を上げて笑った。
「アハハハッ! アハハハハハハハッ、ご、ごめんね、ティナ! ハハハハハッ! でも、おかしっ──アハハハハハッ!」
笑いながら謝るアレキサンダーは目尻の涙を拭っている。
「ア、アレックスさま……?」
ひとしきり笑って、アレキサンダーは「びっくりしたね」とニッコリ。
「は、はい、それはもう──」
答えるクリスティーナの頭にアレキサンダーの手が伸びて、やさしく撫でる。
「あんまり近いんだもん、僕、きっと夢に見るよ」
「え!? そ、それは大変、申し訳なく──」
「なんで? 僕は嬉しいよ?」
「は、はぁ……」
そっと手をおろし、キラキラスマイルを発動するアレキサンダーを前に、クリスティーナもさすがに照れた。
(こ、この6歳児、末恐ろしい……!)
にこにことご機嫌なアレキサンダーはおろした手でクリスティーナの手を繋ぐ。
もはやクリスティーナの心の中は悲鳴がやまない。
「ティナ、昨日、星は見た?」
「はい。とても綺麗でした」
これにはにこりと答えるクリスティーナ。あのタイミングの星空の癒し効果は絶大だった。なにより、誰かと一緒に見ているんだと思えば、どこかホッとしたものだ。
アレキサンダーは正面を向き直した。
「──僕、夜は少し寂しいって前、思ってたんだ。みんな寝てしまうし」
「はい」
(寂しい……か)
「でも、星をね、ずっと続いてる夜空を見ると、きっと国の誰かしらは同じものを見てるんだって思えた。そうしたら、安心したんだ」
「──それはすこし、わかります」
クリスティーナがゆっくりと答える。
「でしょう? それに昨日はティナと一緒に見てるって思ったら、僕はそわそわしたよ。いたずらでもしてる気分だった」
アレキサンダーはくるりとクリスティーナを見て『ふふふ』と3倍キラキラスマイル。
(──っくう~!! これはまぶしいっ!! か、かわゆ~~!! ピュアっピュアしてるっ! いたずらっ! ピュアなのに悪い顔ってどういうこと!? 汚れた大人の持ちえない、純粋にして純粋たる純粋さが純粋ゆえに純粋してるっ!!)
「いつか一緒に見られたら、星座も教えてあげるね、ティナ」
手をアレキサンダーの両手でくるんと握りこまれ、クリスティーナは前世持ちといえどカカーッと頬から耳まで真っ赤に染めた。
星が見られる状況の男女について6歳のアレキサンダーがわかっているのか──という疑問にクリスティーナの思考は泡を食う。
さらに、アレキサンダー、まとめた二人分の手をクリスティーナの顎の下にそろえて持ち上げ、そのまま額と額をこつんとくっつけたのだ。その上、締めとばかりに、トドメとばかりに10倍キラキラスマイルを放つ。
(ちかっ、近い近い近い近い近い近いっ!! カワ、カワワワワワっ!! 美少年!! 激! かわ!!)
真っ赤になりながらクリスティーナはついに後ろにガクーンと力なく倒れ、アレキサンダーに慌てて支えさせるのだった。
「ティ、ティナ!? え!? ご、ごめん! やりすぎた? 大丈夫??」
目をくるくる回しながらクリスティーナは片手を掴まれ、背中を支えられて逃げ場無しに一層、顔を赤くした。
(なにこの6歳児!? カワイケメンすぎるっ!! 乙女ゲーの筆頭攻略対象だからって凄すぎる! 破壊力ハンパねぇ! しかも『やりすぎた』だとぅ!! わざとだった! わざとだったよ! ピュアと見せかけてあざとかった! あざとかったよ! ひぎー! ギャップ萌え~っ!!)
萌え死にかけつつクリスティーナは覗き込んでくるアレキサンダーの顔をまじまじと見つめ返す。
幼いとはいえ完璧に整った顔、スカイブルーの綺麗な瞳、絹糸みたいな薄い金髪、肌の白さに浮き上がるピンクの唇──。
ふっと──三次元化されたアレキサンダーに、記憶にある二次元アニメ調イラストの彼が、18歳の彼が重なって見えた。
彼はこの顔、その瞳でクリスティーナに婚約破棄を言い渡すのだ。
今は今を楽しめば良いと、斬首回避を目指しつつ、この新しい人生は人生として楽しめば良いと思いつつ、バッドしかないエンディングが脳裏を常にかすめる。
手を握っていた方のアレキサンダーの片手がそっと離れ、クリスティーナの頬を撫でた。
「ティナは──」
それは6歳なりの柔らかく温かい手。
「昨日もそうだったけど、ティナは時々、すごく悲しそうな顔をするね……?」
「え……」
戸惑うクリスティーナに曖昧な笑みを浮かべるアレキサンダーは「庭を見にいこうか。今度はティナの好きなものを、好きなことを教えて?」とソファをおりた。
クリスティーナはエスコートにと差し伸べられる手とアレキサンダーのキラキラスマイルを見比べた。
(──……おどろいた……こんなに気を遣えるものなの? 6歳で)
乙女ゲーム『虹のクローバー・グローリー』では外見も内面も完璧に仕上がったアレキサンダー王子で登場し、終始ヒロインを導いてくれる。
(逆──だわ。そう、逆に考えた方がいいんだわ……この歳でこれが出来てしまえる環境……ゲームではもう完璧で……でも、今はまだ隙があるのね……さっきアレックスさまは『やりすぎた』って言ったのよ)
アレキサンダーの手をとり、クリスティーナも立ち上がる。
キラキラまぶしい笑顔が迎えてくれた。
(これ、仮面だったんだ……)
急に気付いた。
乙女ゲームのオープニングからエンディングまで一瞬たりとも崩れなかった。ヒロインに恋してすらきっと本当の姿をアレキサンダーは晒さなかった──そういうことだったのかと前世三十路は愕然とする。
いま、どうやらアレキサンダーは6歳ということもあり、仮面は剥がれることもあるようで──。
(…………はがしてみたい……)
ウズウズした。
子どもどうし、クリスティーナはそれほど無い身長差に大人顔負けのエスコートを披露するアレキサンダーの顔を見上げる。
(アレックスさまの本当の性格が……知りたい)
にこっと微笑みかけられ、クリスティーナは反射的ににこっと返す。
(今、彼のすべてはポーズ。婚約者へのふさわしい行動をなぞっているのね……ふふ、面白い。面白いわ……)
アレキサンダーが今、クリスティーナを攻略しようとしている──そうと気付いた。
ゲームなら何度もやり込んだが、ゲームに無かった攻略対象の一面に触れられるのはとても面白いとクリスティーナは思った。
(恋愛的に好きにはなってあげられないけれど、アレックスさま、私、このゲーム……ハマりそう)
無意識にクリスティーナもキラキラスマイルをぶち込めば、弾かれたように正面を向くアレキサンダーの耳が赤く染まった。
残念かな、クリスティーナは気付かない。
客車にはクリスティーナ一人で、従者として若手執事のパーシー・パーシヴァルが馬で併走している。
昨日、父と馬車で出た時は御者台に御者と執事長がいた。今日、御者台には御者ひとり。
王城敷地内に入り、クリスティーナが馬車を降りる時にはパーシーが腕をとった。父とは手を繋いだが、パーシーは後ろからついて来るにとどまっている。
その際、前世三十路の疑問をクリスティーナは口にする。
「ねぇ、パーシー、護衛はあなただけなの?」
「街での話ですか?」
王城内は城門で入城に制限がかかり、入城者の記録は義務づけられている。目に見える形の護衛は今、パーシーのみ。クリスティーナの疑問は必然的に城前まで、城下町での護衛の話になる。
「そうよ」
クリスティーナはまだ公開されていないとはいえ第一王子の婚約者であり、未来の王妃という扱い。王弟にして宰相の娘として、そもそも筆頭の公爵令嬢。貴人中の貴人の一人である。にもかかわらず、護衛が執事一人ということがクリスティーナには不思議だった。
前世三十路にとって国賓が乗る車といえばがっちがちの防弾仕様車だし、SPなど護衛がズラズラ並んで走りながら移動しているイメージだった。
「気付いてなかったんですね? 旦那様はしっかりしてらっしゃるし、ロマノーク騎士団の騎士4名ですかね? つかず離れずで馬車を護衛してましたよ?」
けろりと言ってのけるパーシーをクリスティーナは見上げた。
「え!? そうなの?? それにロマノーク騎士団??」
「地下室勝手に作っちゃうくらいだから旦那様の防犯意識相当ナメてますよね、クリスティーナお嬢様は」
「……知らなかっただけよ。5歳児に厳しくない? パーシー」
途端に5歳児のフリをする。
(──そうだった、地下室作ってることバレてるんだった……埋められたりしてないわよね、このお出かけの間に)
「そうですか? 私としてはお嬢様、本当に5歳ですかってのが一番聞きたいところですけどね」
「…………」
今まさに5歳児としての振る舞いを前世三十路が練り直していたところだった。
(なにこいつ、いちいち勘が鋭いわね……)
パーシーはクリスティーナの様子を彼女本人が自覚する以上に観察している。そのことにクリスティーナは気付き、パーシーをじろりと見るが彼はすいと目線も話もそらす。
「──そうですね、各領地にそれぞれ騎士団はありますが、特にロマノーク騎士団は空挺騎士団として有名ですね」
「空挺騎士団!? 空挺なの?」
「あれ? これもご存知ない? 有名ですけどね。決死隊ではないですが、その方がかっこいいらしいですよ、旦那様いわく」
(お父様──意外に大人の中2病患者だったのね……)
じっとりと手汗をかきそうな思いの連続だ。
父公爵に中2病という属性が加わるのならば、地下室についてもどうにか説得する方向性を算段出来るかもしれないとクリスティーナは考える。
「──旦那様は緑魔法……風の魔術師を大量に雇っていて、魔法で船を空に飛ばすんですよ。その護衛としては竜王とのコネで借り受けた20頭の飛竜を抱えています。いわゆる竜騎士ですよ」
「竜王!? 飛竜!? 竜騎士!?」
クリスティーナはついに胸に手を当てた。
次々飛びだすファンタジックな言葉に年甲斐もなくざわざわしたのだ。
(あったわね、ゲームにドラゴンとか普通にいたわね、戦闘フェーズとシナリオフェーズはなんだか別物でとらえてたわ……戦闘に出てくるモンスターが居て当たり前よね?)
「ロマノーク公爵領には飛竜がよく飛びます。訓練も兼ねて日持ちしない食材を王都に運んでいるのも彼らですよ。今日のこの果物だってね?」
果物のカゴは荷物持ちのパーシーの手にある。カゴをゆるく持ち上げ、ドヤッと目を輝かせているパーシー。その功績は父ロマノーク公爵のものだろうに──部下として誇らしいのだろうか。
クリスティーナはほぅとため息を吐く。
──悪役令嬢が『ざまぁ』と称して踏んだり蹴ったりになるだけの貴族社会ばかりの世界観ではなかった……!
クリスティーナは『虹のクローバー・グローリー』に受け止めきっていなかった世界観に、描かれきっていなかった要素に心ときめいた。
「クリスティーナ! こんにちは、会いたかったよ」
さらさらの金髪を揺らして、小首を傾げてニッコリ笑うアレキサンダー第一王子。
(ま、まぶしっ! まぶしいよ、キラキラスマイル!!)
果物のカゴはクリスティーナが手に持ち、従者のパーシーは王族プライベートエリア前の控え室に置いてきた。
通されたのはアレキサンダーの私室だ。
果物はすぐに侍女に渡し、毒見行き──。
用向きはアレキサンダーには伝わっているだろうから見せなかった。そもそも、きっと、果物など口実で『会いたかった』と告げているのがバレバレだろう。
クリスティーナにとって、第二王子の命令が先だったとは、アレキサンダーに気付かれていてほしくないところだ。
調度類は王妃チョイスなのか控え室同様、華美ではない程度にゴージャスで落ち着く配置というハイセンスなものだ。
アレキサンダーは私室なのでジュストコールは脱いでおり、白いふんわり仕立てのシャツに刺繍たっぷりジレとキュロットといういでたち。王子様スタイルだ。
クリスティーナは夜会やパーティー向けではなく、お出かけ向きのはっきりした水色のドレスだ。アレキサンダーの瞳の色と同じ。第二王子は緑がかった青なので、クリスティーナなりにアレキサンダー第一王子優先の訪問ですよという意思表示をしてみたのだ。
侍女は室内から見えないところに引っ込んだらしく、二人きりだ。
「ご機嫌よう、アレックスさま」
にこやかに挨拶をするクリスティーナ。
「ティナ、こっちへおいで。このソファなら窓から庭も見えるよ」
「はい」
床まである大きなはめごろしの窓にぴったりとくっつけて配置された濃いグリーンのソファにアレキサンダーは座った。
(引っ張ってくれる系だよ、楽チンだよ! 前世はイケメンをマジマジ眺める為におごりだと後輩を連れ出すのにあの手この手頑張ってたってのに、今世じゃイケメンが手招きしてくれるよ、すげーな!!)
しずしず歩いて近付けば、じれたアレキサンダーが「ほらほら、ここだよ」と自分の隣をポフポフとゆるく叩いている。
(かっわえぇ~!! 天使!! 天使がいる!!!)
危うく昇天しそうになり、クリスティーナは最後の一歩でふらつき、ソファに倒れ込んでしまった。
「ティナ!!」
慌てたアレキサンダーがソファの上で抱き止めてくれる。
(うっひょ~! ラ、ラララ、ラッキースケベ寸前!? 5歳、クリスティーナ、ファーストキス未遂~!?!?)
やはり冷静にならんと心の声はお祭り騒ぎだ。
状況は、倒れてきたクリスティーナを横に少しずれて受け止めたアレキサンダー。ふたりの顔が1cmの距離でギリギリ止まっていた。睫毛のかすめる距離である。
クリスティーナの胴を抱き留めたアレキサンダー。つんのめってとっさに前に両手を出したクリスティーナ。
これがうまい具合に重なって、クリスティーナによるソファの背もたれドン。壁ドンならぬソファドン。
クリスティーナの手がもう少し短く、とっさに体重を支える力が足りなければ、ラッキースケベは発動していたことだろう。
「も、ももも、もももももうしっ、ももももうしわけ──ござ、ごさいませんつ!!」
超至近距離のまま謝罪するクリスティーナ。
(やっべぇ!! やっべぇよ!! 私はいいけど、殿下のファーストキッス奪っちゃうとこだったよ、やっべぇ~!!)
動揺に赤くなったり青くなったりするクリスティーナを前に、アレキサンダーは真顔のまま。ゆったりあっさりクリスティーナを抱えなおし、自分の隣に座らせ、スカートを整えてくれる。
(え、え~と……いいのかしら。いいのかしらこれ?)
隣り合ってソファに座り、流れのまま見つめあっていたが、アレキサンダーが顔を逸らした。
(ア、アレックスさま!?)
そうして、アレキサンダーは『──ぷっ』と吹き出したかと思えば声を上げて笑った。
「アハハハッ! アハハハハハハハッ、ご、ごめんね、ティナ! ハハハハハッ! でも、おかしっ──アハハハハハッ!」
笑いながら謝るアレキサンダーは目尻の涙を拭っている。
「ア、アレックスさま……?」
ひとしきり笑って、アレキサンダーは「びっくりしたね」とニッコリ。
「は、はい、それはもう──」
答えるクリスティーナの頭にアレキサンダーの手が伸びて、やさしく撫でる。
「あんまり近いんだもん、僕、きっと夢に見るよ」
「え!? そ、それは大変、申し訳なく──」
「なんで? 僕は嬉しいよ?」
「は、はぁ……」
そっと手をおろし、キラキラスマイルを発動するアレキサンダーを前に、クリスティーナもさすがに照れた。
(こ、この6歳児、末恐ろしい……!)
にこにことご機嫌なアレキサンダーはおろした手でクリスティーナの手を繋ぐ。
もはやクリスティーナの心の中は悲鳴がやまない。
「ティナ、昨日、星は見た?」
「はい。とても綺麗でした」
これにはにこりと答えるクリスティーナ。あのタイミングの星空の癒し効果は絶大だった。なにより、誰かと一緒に見ているんだと思えば、どこかホッとしたものだ。
アレキサンダーは正面を向き直した。
「──僕、夜は少し寂しいって前、思ってたんだ。みんな寝てしまうし」
「はい」
(寂しい……か)
「でも、星をね、ずっと続いてる夜空を見ると、きっと国の誰かしらは同じものを見てるんだって思えた。そうしたら、安心したんだ」
「──それはすこし、わかります」
クリスティーナがゆっくりと答える。
「でしょう? それに昨日はティナと一緒に見てるって思ったら、僕はそわそわしたよ。いたずらでもしてる気分だった」
アレキサンダーはくるりとクリスティーナを見て『ふふふ』と3倍キラキラスマイル。
(──っくう~!! これはまぶしいっ!! か、かわゆ~~!! ピュアっピュアしてるっ! いたずらっ! ピュアなのに悪い顔ってどういうこと!? 汚れた大人の持ちえない、純粋にして純粋たる純粋さが純粋ゆえに純粋してるっ!!)
「いつか一緒に見られたら、星座も教えてあげるね、ティナ」
手をアレキサンダーの両手でくるんと握りこまれ、クリスティーナは前世持ちといえどカカーッと頬から耳まで真っ赤に染めた。
星が見られる状況の男女について6歳のアレキサンダーがわかっているのか──という疑問にクリスティーナの思考は泡を食う。
さらに、アレキサンダー、まとめた二人分の手をクリスティーナの顎の下にそろえて持ち上げ、そのまま額と額をこつんとくっつけたのだ。その上、締めとばかりに、トドメとばかりに10倍キラキラスマイルを放つ。
(ちかっ、近い近い近い近い近い近いっ!! カワ、カワワワワワっ!! 美少年!! 激! かわ!!)
真っ赤になりながらクリスティーナはついに後ろにガクーンと力なく倒れ、アレキサンダーに慌てて支えさせるのだった。
「ティ、ティナ!? え!? ご、ごめん! やりすぎた? 大丈夫??」
目をくるくる回しながらクリスティーナは片手を掴まれ、背中を支えられて逃げ場無しに一層、顔を赤くした。
(なにこの6歳児!? カワイケメンすぎるっ!! 乙女ゲーの筆頭攻略対象だからって凄すぎる! 破壊力ハンパねぇ! しかも『やりすぎた』だとぅ!! わざとだった! わざとだったよ! ピュアと見せかけてあざとかった! あざとかったよ! ひぎー! ギャップ萌え~っ!!)
萌え死にかけつつクリスティーナは覗き込んでくるアレキサンダーの顔をまじまじと見つめ返す。
幼いとはいえ完璧に整った顔、スカイブルーの綺麗な瞳、絹糸みたいな薄い金髪、肌の白さに浮き上がるピンクの唇──。
ふっと──三次元化されたアレキサンダーに、記憶にある二次元アニメ調イラストの彼が、18歳の彼が重なって見えた。
彼はこの顔、その瞳でクリスティーナに婚約破棄を言い渡すのだ。
今は今を楽しめば良いと、斬首回避を目指しつつ、この新しい人生は人生として楽しめば良いと思いつつ、バッドしかないエンディングが脳裏を常にかすめる。
手を握っていた方のアレキサンダーの片手がそっと離れ、クリスティーナの頬を撫でた。
「ティナは──」
それは6歳なりの柔らかく温かい手。
「昨日もそうだったけど、ティナは時々、すごく悲しそうな顔をするね……?」
「え……」
戸惑うクリスティーナに曖昧な笑みを浮かべるアレキサンダーは「庭を見にいこうか。今度はティナの好きなものを、好きなことを教えて?」とソファをおりた。
クリスティーナはエスコートにと差し伸べられる手とアレキサンダーのキラキラスマイルを見比べた。
(──……おどろいた……こんなに気を遣えるものなの? 6歳で)
乙女ゲーム『虹のクローバー・グローリー』では外見も内面も完璧に仕上がったアレキサンダー王子で登場し、終始ヒロインを導いてくれる。
(逆──だわ。そう、逆に考えた方がいいんだわ……この歳でこれが出来てしまえる環境……ゲームではもう完璧で……でも、今はまだ隙があるのね……さっきアレックスさまは『やりすぎた』って言ったのよ)
アレキサンダーの手をとり、クリスティーナも立ち上がる。
キラキラまぶしい笑顔が迎えてくれた。
(これ、仮面だったんだ……)
急に気付いた。
乙女ゲームのオープニングからエンディングまで一瞬たりとも崩れなかった。ヒロインに恋してすらきっと本当の姿をアレキサンダーは晒さなかった──そういうことだったのかと前世三十路は愕然とする。
いま、どうやらアレキサンダーは6歳ということもあり、仮面は剥がれることもあるようで──。
(…………はがしてみたい……)
ウズウズした。
子どもどうし、クリスティーナはそれほど無い身長差に大人顔負けのエスコートを披露するアレキサンダーの顔を見上げる。
(アレックスさまの本当の性格が……知りたい)
にこっと微笑みかけられ、クリスティーナは反射的ににこっと返す。
(今、彼のすべてはポーズ。婚約者へのふさわしい行動をなぞっているのね……ふふ、面白い。面白いわ……)
アレキサンダーが今、クリスティーナを攻略しようとしている──そうと気付いた。
ゲームなら何度もやり込んだが、ゲームに無かった攻略対象の一面に触れられるのはとても面白いとクリスティーナは思った。
(恋愛的に好きにはなってあげられないけれど、アレックスさま、私、このゲーム……ハマりそう)
無意識にクリスティーナもキラキラスマイルをぶち込めば、弾かれたように正面を向くアレキサンダーの耳が赤く染まった。
残念かな、クリスティーナは気付かない。
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(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
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