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6.赤字
午後のリビング。紅茶と、ほんのり甘い焼き菓子の香り。
ソムニは刺繍の手を止め、母と、入り浸りのチルドとお茶を囲んでいた。
「……で、今月も赤字、と」
「まぁ♡黒字だったことなんて、なかったじゃない?」
「さらっとおっしゃる……!」
チルドは眉をぴくりと動かしつつも、ソムニの母の前では丁寧な口調を崩さない。
「奥様、申し上げにくいのですが……今、屋敷の経費が完全に収入を上回っております。しかも、原因の大半が……」
「ドレス代?」
「ご自覚がある分、タチが悪いです!!」
「ふふ♡でも女はね、見た目が命。美は正義!そして浪費はロマン♡」
「浪費をロマンにしないでください!」
「チルド、声大きいよ~……ほら、紅茶、こぼれちゃったじゃないか」
「ソムニ、おまえも止めろよ……!」
「でも僕は、母様のドレス好きだよ!ふわふわしてて可愛くて……夢が詰まってるみたいなんだ」
「……ソムニ……っ(そういうところ、ほんっと奥様に似てきた……!!)」
「ね~?やっぱり分かってるのは、うちの子だけ♡」
「奥様、それで納得されては家が滅びます!!」
「でもね?夢を諦めたら、何のための貴族なのか分からなくなっちゃうのよ?」
「いや、その“夢”に全ツッパしてるから火の車なんです……!」
「ところで、ソムニ。最近あの刺繍、けっこう売れてるって噂よ?」
「うん!父様が外で売ってくれてるから……僕、お金のことは分からないけど……」
「ソムニ……売り上げは自分で管理してくれ……!」
「でもね、チルド。父様の狩りと、僕の刺繍と、母様の美貌が合わさったら……なんだか勝てる気がしない?」
「どこの何に勝とうとしてるんだよ!?」
「恋に、だよ!」
「話が飛んだあああああ!!」
「だって!この前ポーレおば様が言ってたの。“恋の味はレモン味。ちょっとすっぱいのが効く”って!」
「それ、どう考えても恋じゃなくて保存食の話じゃ……」
「ふふ♡私の恋は、シャンパン味かしら。泡が弾けて、消える前に酔わせてくれる──なんて♡」
「奥様それ、例えが生々しいです!!」
「母様かっこいい!!僕もそういうの目指す!!」
「目指すなあああああ!!!」
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