恋するソムニと白馬の幻

ナポ

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12.最終回レモンとミントと、恋のおくすり

次の日。

薬屋・ポーレおば様の店。

「へえ……恋ってのは、レモンの味って聞いたけど、あんたの場合はミントも混ざってるかもねえ」

「えっ、それどういう意味!?ミントってどういう……!?刺激的!?チルドのキス、刺激的だったの!?!?」

「ふふふ、さあね~」

ポーレおば様は意味深に笑って、お茶を淹れてくれた。


*
 
その夜、ソムニは中庭にいた。

灯りも持たず、また、ぽつんとベンチに座っていた。
けれど昨日と違うのは、もう涙は流れていないということ。

「……やっぱり、ちょっと寂しいな」

そう呟いたとき、ふいに聞き慣れた声が届く。

「おまえ、またここかよ……夜は冷えるぞ」

「チルド……」

「ほら、コート。貸してやる」

ふわ、とソムニの肩にかけられたコートの重み。
その温度が、なんだか胸の奥まで染みていくようで……
 

「チルド……僕……恋ってね、もっと夢みたいなものだと思ってた」

「だろうな。あいつといる時、ずっと目キラキラしてた」

「でもね、違った。夢みたいじゃなくて、もっと、こう……当たり前に隣にいることだったんだと思ったんだ」

「……」

「だから、ね……もう待たない。白馬の王子様なんて、きっともう、いらない」

ソムニが顔を上げて、まっすぐチルドを見た。

「僕、チルドがいい」

チルドは、一瞬だけ目を見開いて、それから苦笑した。

「……やっと言いやがったな」

「えっ……?」

「こっちはずっと、おまえの王子様やる準備してたってのに」

そう言って、チルドが少し身をかがめる。

指がそっとソムニの頬をなぞり、もう片方の手がそっと手を握る。

「……夢も現実も、おまえと見たい」

そのまま、額と額が触れ合ってそして、優しく唇が重なった。

柔らかくて、温かくて、花の香りでも甘い菓子でもない。

本当に好きな人とのキス。

それは甘酸っぱレモン味ではなかったけれど、ほのかに紅茶の香りがした気がした。

──そして後日。

ソムニのもとに、妖精の国から小さな手紙が届いた。

『君たちの恋の研究、進んでるみたいだね。次に会うときは、“本物の恋の結末”を見せてほしいな。それまで、ぼくはもう少し恋の勉強をしておくよ。
                                  ──フィリオ』


「……って、何この手紙!?な、ななななんで知ってるの!?誰が見てたの!?えっ!?///」

「ソムニ、耳まで真っ赤。おまえ、また脳内妄想してるだろ」

「ち、違いますぅ~~っ!!これは脳内じゃなくて、現実ですぅぅぅ!!!」

そんな風に今日も騒がしく、でも、本物の恋を見つけたふたりの日々は続いていく。
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