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しおりを挟む放課後の学園、図書室の奥。
リレフは静かに足を運び、ある席に腰かける少年に声をかけた。
「……ラース、ちょっと話がある」
「ん、シーストン。どうかした?」
ラース・メスリー
落ち着いた物腰、淡い銀髪に青みの強い瞳。派手さはないが清潔感があり、どこか空気のような存在感を持つ少年だった。
リレフとは、旧クラスの頃から地味に関わりがあり、
教科書の貸し借りや、筆記用具を忘れた時の助け合いなど、細く長く繋がっていた。
「……唐突で悪いんだが。ひとつ、頼みがある」
「俺で力になれることなら」
「恋人のフリをしてくれ」
「…………はい?」
ペンが床に落ちた音が、図書室に響いた。
状況を一通り説明し終えたあと。
ラースは口元を押さえて、軽くため息をついた。
「なるほど……。それで、俺に白羽の矢が立ったわけか」
「お前しかいなかったんだ。空気読めて、事情を口外しなさそうで、あと……言い寄られているところを、見たことがない」
「誉め言葉……と受け取っておくよ」
静かにラースは笑った。その表情には、あきれを含みつつも、確かな理解があった。
「あと、一応言っとくけど」
ラースはまっすぐにリレフを見た。
「俺はリレフのこと、嫌いじゃない。だから頼ってくれたのは、ちょっとだけ嬉しかった」
「…………」
視線をそらしたリレフは、胸元のネクタイをいじりながら、ごにょごにょと何か呟いたが、ラースはあえて聞き返さなかった。
(……変なやつ。でも、悪くない)
ラースの目には、そんな風に映っていた。
翌朝。
登校と同時にラースがリレフの肩を軽く抱くと、ディノの瞳が戦慄いた。
「おはよう、リレフ」
「お、おう……自然に振る舞えよ……」
「恋人なんだから、これくらい普通だろ?」
「いや普通じゃない、普段とギャップがすごい」
ディノが拳を握りしめた。
「ふむ。実際のところ、俺のほうが長い付き合いだけどな」
(いや……おま、転校生だろう)
「私は以前、リレフと同じクラスだったよ」
ラースのさりげない一言に、火花が散る。
「……ほう」
リレフは頭を抱える。
平凡に生きたいだけなのに、なんでモテ構図に巻き込まれてんだ、俺……!
彼の静かな抗議は、今日も風にかき消された。
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