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遭遇4 〜侑〜
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特別な話をするでもなく、30分ほどで駅のロータリーにトラックが滑り込んだ。話したことといえば、通りにあった本屋やレストランに入ったことがあるとか、ないとかそのぐらい。
麻婆丼を平らげてから貰ったジュースに口をつけてみたけど、とても美味しかった。来週からあちこちのスーパーに並ぶらしい。
「ありがとね。」
駐車場じゃないから、モタモタするわけにはいかない。純にお礼を言ってドアを開けた。一気に飛び降りるのはちょっと躊躇する。また純の前で転びたくないし。
「おい、お前……。」
ステップに右足の踵を乗せて、慎重に地面に降りる。降りてから振り返ると、純がこちらを見ていた。
「何?」
ドアに手をかけて純を見る。純はまた右手を口元に持ってきていた。
「お前、彼氏と帰らなくて良かったのか? 前にすれ違った奴、あれは彼氏だろ?」
「大きなお世話。……もう別れたし。じゃあね? ありがと。」
重いドアを力を入れて閉める。バン、と音がしてキチンと閉まったことが分かると同時にトラックが滑り出した。銀色の箱型のボディに有名な飲料メーカーのロゴ。
『アイツ、回り道して仕事に影響なかったのかな?』
そういえば、純の仕事については一切話を聞かなかった。トラックを見送っていると、ロータリーから出ていく瞬間に運転席の窓が開き、純が手を上げるのが分かった。
『ん? 挨拶?』
自分も挨拶すべきか悩んだけれど、すぐに見えなくなっていったトラックに諦める。家に帰ろうとアパートのある方へ足を向けた。
駅から10分ほど歩いたところにあるアパート。ここの105号室が自分の城。女の子が一階に住むなんて信じられないとか、二重のドアがどうとか友だちは色々言ってくるけど、ふた部屋あって家賃も安く、そんなに築年数も経ってないこのアパートは自分のお気に入り。
ただ杏の忠告には従って、外に洗濯物を干す時には父さんの下着や靴下、ワイシャツを一緒に干すようにしている。そして自分の下着は部屋干し。1日おきに同じものを干すから、もしストーカーがいるとしたらバレバレなんだろうけど。
『洗濯物は乾いたかな?』
まだ2時前だしもう少しだけ干しておくか、なんて考えながら、ドアの鍵を開けて中に入り込む。セキュリティが音を立てて警告のメッセージが流れ始めた。このアパートの1階に住む決め手にしたのはこのセキュリティ。1戸毎に契約で警備会社と繋がっているから安心。
「ただいま。」
スティックを機械の穴に差し込んで、警備を解除。ドアもキチンとロックしたし。今日は思ったより早く帰れたから時間がある。
『音楽でも流しながら、本でも読も。』
お気に入りの2人がけのソファに荷物を下ろして、自分が買ったお茶と半分無くなったラ・フランスジュースをテーブルに置く。隣の部屋のパソコンを持ってきて音楽をかけようと、部屋のドアを開けて入っていった。
麻婆丼を平らげてから貰ったジュースに口をつけてみたけど、とても美味しかった。来週からあちこちのスーパーに並ぶらしい。
「ありがとね。」
駐車場じゃないから、モタモタするわけにはいかない。純にお礼を言ってドアを開けた。一気に飛び降りるのはちょっと躊躇する。また純の前で転びたくないし。
「おい、お前……。」
ステップに右足の踵を乗せて、慎重に地面に降りる。降りてから振り返ると、純がこちらを見ていた。
「何?」
ドアに手をかけて純を見る。純はまた右手を口元に持ってきていた。
「お前、彼氏と帰らなくて良かったのか? 前にすれ違った奴、あれは彼氏だろ?」
「大きなお世話。……もう別れたし。じゃあね? ありがと。」
重いドアを力を入れて閉める。バン、と音がしてキチンと閉まったことが分かると同時にトラックが滑り出した。銀色の箱型のボディに有名な飲料メーカーのロゴ。
『アイツ、回り道して仕事に影響なかったのかな?』
そういえば、純の仕事については一切話を聞かなかった。トラックを見送っていると、ロータリーから出ていく瞬間に運転席の窓が開き、純が手を上げるのが分かった。
『ん? 挨拶?』
自分も挨拶すべきか悩んだけれど、すぐに見えなくなっていったトラックに諦める。家に帰ろうとアパートのある方へ足を向けた。
駅から10分ほど歩いたところにあるアパート。ここの105号室が自分の城。女の子が一階に住むなんて信じられないとか、二重のドアがどうとか友だちは色々言ってくるけど、ふた部屋あって家賃も安く、そんなに築年数も経ってないこのアパートは自分のお気に入り。
ただ杏の忠告には従って、外に洗濯物を干す時には父さんの下着や靴下、ワイシャツを一緒に干すようにしている。そして自分の下着は部屋干し。1日おきに同じものを干すから、もしストーカーがいるとしたらバレバレなんだろうけど。
『洗濯物は乾いたかな?』
まだ2時前だしもう少しだけ干しておくか、なんて考えながら、ドアの鍵を開けて中に入り込む。セキュリティが音を立てて警告のメッセージが流れ始めた。このアパートの1階に住む決め手にしたのはこのセキュリティ。1戸毎に契約で警備会社と繋がっているから安心。
「ただいま。」
スティックを機械の穴に差し込んで、警備を解除。ドアもキチンとロックしたし。今日は思ったより早く帰れたから時間がある。
『音楽でも流しながら、本でも読も。』
お気に入りの2人がけのソファに荷物を下ろして、自分が買ったお茶と半分無くなったラ・フランスジュースをテーブルに置く。隣の部屋のパソコンを持ってきて音楽をかけようと、部屋のドアを開けて入っていった。
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