自分とアイツ、俺とオマエ

もこ

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遭遇7 〜侑〜

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「どこかの店員さん。」
「チッ。」

 その舌打ちにはどんな意味があるわけ? 何か自分が変なこと言ったかな? そんなふうに思いながら、また前を向いた純のピアスを見つめる。細いけれど、銀色の光がその存在を主張している。

「で? 何で泣いた?」
「外見で、可愛いとか好みとか判断して欲しくない……。」

 言ってるそばから恥ずかしくなってくる。えっ? これって自意識過剰? 自分が気にしすぎているだけのような気持ちになって、続いて何を言えばいいのか分からなくなってきていた。

「お前はお前だろ? ズボンを履いてようが、スカートを履いていようが中身は一緒だ。『侑』という1人の人間。それに変わりはない。」

 純のこの言葉が、胸の中心に響いて全身を震えさせた。そう、中身は一緒なの。ズボン姿でもスカート姿でも中身は……中身はいつも同じ。自分が分からずに混乱して迷っている。

「そのままのお前でいいんだ。履きたければズボンだろうが、スカートだろうが、水着だろうが履けばいい。いや、水着姿はまずいか。警察に捕まるな。」

「ぷっ! 今水着姿で歩いたら凍えちゃう。あはははっ!」
 純の言葉に思わず吹き出す。思い切り笑って、心が温まるのを感じた。純って不思議。この人のそばにいると何故か温かい。

「ふっ。笑った顔のお前が1番いいよ。」

 ふと純の顔を見ると、見たこともないような表情でこちらを見ていた。目が細められて、髭の下にある唇が微妙に上がっている。急にドキドキしてきて、当たり障りのない言葉を探す。

「ね、純の家ってどこなの?」

 噴水を過ぎて、バス停とは反対側の公園の出入り口。目の前にはクリーニング屋さんがある。純は斜め左の方角を指差した。

「そのクリーニング屋の横を入って5分くらいか? お前は足が短いから……8分。」
「失礼なっ! 足は速いから!」
「はははっ。ああ……速かったな。」

 さっきまでの鬱々とした気持ちがすっかり無くなっていることに気づいた。純に促されるままに、クリーニング屋さんの脇道を入っていく。そこは住宅地になっているようで、道は狭いけれど人通りも少なかった。

 程なく5階建てのマンションが見えてきた。周囲は一戸建てが多いから、そんなに高いマンションではないはずなのに、大きく見える。

「そこ?」
「ああ。そこの305号室。寄ってくか?」
「遠慮する。」

 少しだけ純の住んでいる部屋には興味は湧いたけど、寄りたいわけじやない。車で送ってくれるっていうから来ただけだし。あれ? 車ってトラックじゃないよね?

 純のマンションは敷地が広く、周りに駐車スペースがたくさんとってあった。地下にも駐車場があるみたい。トラックは……ないな。純に道路から入ってすぐに見えた白い車に誘われた。


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