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『ご主人様に専属執事を辞める、異動届けを見られちゃいました。』
罪を犯した (拘束あり)
ここは……?
目を開けると見慣れた天井だ。
落ち着いた照明が室内を照らしている。
ここは…、清都様のベッドルームではないか?
確かめるように顔を左右に動かす。
サイドチェストにランプ、小さな机、家具に至るまで見覚えのあるものばかりだ。
体は肌触りのよいシーツに触れている。柔らかな感触に包まれ、ベッドに寝かされているのだろうと分かった。
まさか、ワインを飲んで体調を崩し、清都様の部屋で寝てしまったのか?
清都様は優しいから、自分のベッドに寝かせてくれたのかもしれない。
体調を崩したとはいえ、主人のベッドに寝るなど、なんという失態。
これでは執事失格だ。
急いで起き上がろうとしたところで、違和感に気が付いた。
ガチャンっ。
「……なっ?!」
手を動かそうとしたが、冷たい金属音が部屋に響くだけだった。
頭上を見ると自分の両手には手錠が嵌められて、ベッドヘッドに括りつけられている。
手に触れる部分は革製で柔らかく痛みはない。しかし、鎖はしっかりと固定されていて、腕を下ろせないようになっていた。
何度か鎖を引っ張ってみたが、抜け出せそうになかった。
なんだこれは…?どういう状況だ?
強盗か何かに押し入られて拘束されている?
それであれば、清都様が危険だ。
混乱しながらも、頭を働かせて自分の状況把握に努めていた時だ。
カチャッ。
ベッドルームの扉が開かれて、こちらに誰か近づいてくる気配がした。扉のほうへ顔を向けると、俺はほっと息を吐いた。
「清都様…。」
この部屋の主である、清都様がこちらに近づいてくる。怪我をしている様子もないし、体調も問題なさそうだ。
清都様は私が拘束されているベッドに腰かけると、そっと右手の指先で私の頬を撫でた。
「……この状況で、まだ俺の心配をしてるなんて…。ハルは本当にお人好しだ。」
そう告げられて、私はこのとき始めてこの空間の異様さに気が付いた。
上着を脱がされ、ワイシャツにベストを着たままの状態で、ベッドに拘束されている自分。
それを当たり前のように、焦る様子もなく見ている我が主。
「……清都様…、これは、一体…。」
暴力的なご趣味が、清都様にあるとは思えない。しかし、悪ふざけにしては度が過ぎている。
清都様が何をされたいのか、その意図が全く見えない。
左頬を清都様に撫でられながら、困惑の表情を浮かべてしまった。
「……ねえ、ハル…。これが何か分かる?」
そう言って、清都様はヒラッと1枚の紙を私の目の前に差し出された。
それは1枚の書類で、書類の一番上には『異動届』と書かれていた。
一番下の署名欄には私自身の名前が記載されている。まだ決裁途中のようで、坂城家の証印が押されていない。
間違いない。
私が数日前に執事長に提出した、
『異動届』だった。
どうして、この書類が清都様の手に…。
「それは…。」
「俺の見間違えでなければ、『異動届』だ。しかも、ハルの名前が書いてある。」
いつもの穏やかな目は、今は剣呑に細められている。瞳には怒りが揺らめいているのが見えた。
「ハル…。なぜ、俺から離れようとする?」
清都様の視線も、口調も、氷のように凍てついた冷たいものだった。
私は、居たたまれなさに視線を反らしてしまう。
本当のことなど、言えるはずがない。
清都様に恋情を抱いたから、離れたいなどと…。
それこそ、清都様に嫌われて一生お会いできなくなってしまう。
「…蒼紫(そうし)様のところで、建築や経営について学ぼうと考えております……。」
これは半分本当だ。
異動先として希望したのは、清都様の二番目の兄である蒼紫様の元だった。
蒼紫様は坂城グループでも建築関係の会社を総括されている。
ご自身でも建築デザインをプロデュースするやり手だ。
また一緒に清都様と働く際に、建築物の知識や法令を学んでおいたほうが良いと考えたのだ。蒼紫様にも以前から『秘書の仕事をしてほしい。』と誘われていた。
なにより、蒼紫様のお住まいは清都様の住んでいる場所からとても遠い。
清都様と顔を合わせることも少なくなるだろうというのが、理由でもある。
「……今まで何も言わず、申し訳ございません……。」
きっと、清都様には何も言わず、私が勝手に決めてしまったからだろう。
私自身の我儘で清都様に不快な思いをさせて、自分自身が情けない。
私はまっすぐに清都様を見つめ、礼を欠いてしまったことを誠心誠意、謝罪した。
蒼紫様の名前を口にした際に、清都様の眉間に皺が寄った。兄弟仲が良いはずだが…。
「______兄貴を選ぶのか…。」
ぽつりと清都様が何か呟いたが、あまりにも小さい声だったので聞き取れなかった。
どこか苦しげに紡がれた言葉は、部屋の静寂に消えていった。
「……そんなの、許さない。」
地を這うような、怒りが込められた低い声が部屋に響く。
こんな清都様の声は聞いたことがない。
それほどまでにお怒りなのだろう。
ギシっと大きくベッドが軋み、身体が大きく揺れた。
先ほどまでベッドに腰かけていた清都様が、素早い動きで私に覆い被さってくる。
両足に乗られ、馬乗りの状態になった。
驚いている間もなく、息を飲むほどの美貌が近づいてきた。
清都様は私の顎に手をかけると、グイっと上に持ち上げられ上向かされる。
「ハルは俺のものだ。」
間近に迫った切れ長の麗しい瞳は、
怒りとともに闇が淀んで沈んでいた。
「っ!んンっ!」
唇ごと喰らうように清都様に奪われた。
驚愕の呻き声を上げてすぐに、唇を割り開かれて、ヌルリと肉厚な舌が口腔内に入ってくる。
清都様の舌は激情をぶつけるように、口腔内を暴いていく。呼吸さえも貪られるキスに、息が苦しくなっていく。
「んっ!…ふぁ、き、…よ、んン…なにっン!」
清都様に制止を求めようと声を上げるが、唇を塞がれているため、くぐもった呻き声しか出ない。
「うるさい。」
一度口を離して一言だけ発し、清都様はまた私の唇に貪りついた。
口腔内を暴れまわり、絡めとられる舌。
お互いの唾液が混じりピチャっ、クチュっと卑猥な水音が耳を犯す。
飲み切れない唾液が口の端から零れて頬を伝っていった。
衣擦れの音が微かに聞こえて、きっちりと首元まで留めていたワイシャツのボタンが外されていく。ひんやりと外気に肌が晒されたのを感じた。
歯列を舐められ、上顎は舌先でツンツンと刺激された。口腔内の性感帯を知り尽くした舌の動きに翻弄される。
絡めとられた舌を、吸い上げられて、身体がビクンっと跳ねてしまった。
チュッと音を立てて唇が離れ、そのまま頬に伝った唾液を舐めあげられる。
柔らかな唇は頬を伝って、左の首筋に触れた。
ガリっという、硬いものが無理に引っ掛かるような音が聞こえ、首筋に鋭い痛みが走る。
「ひぁっ!」
痛みに思わず悲鳴を上げてしまった。
皮膚の薄い部分にヒリヒリと痛みを感じ、熱を帯びていく。
皮膚に硬いものが食い込んだ感触から、清都様に歯を立てられ、噛みつかれたのだと気が付いた。
痛みで生理的な涙が浮かんで視界が滲む。ねっとりと熱いものが噛み痕をなぞり、まだ新しい傷にジクジクとした痛みを与える。
痛みに身を捩っても、頭上でガシャンと金属の擦れ合う音がするだけだった。
「…やめ___。」
「黙れ。」
清都様に耳元で冷たく言い放たれる。
私の言葉はピシャリと遮られた。
私の悲鳴に見向きもせず、清都様は私の首筋や鎖骨を舐めながら、ベストとワイシャツのボタンを外していく。
時折チクリとした痛みが走り、肌に痕を付けられているようだった。
全てのボタンを外されたときに、清都様が私を無表情で見下ろした。
「…これは罰だ、ハル。」
私は、どれほどの罪を犯したのだろうか。
「__二度と、俺から離れようなどと、考えられないようにしてやる。」
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