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学園生活
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「あ、あの。ありが…」
「お前は馬鹿か?」
「え…?」
助けてくれたことにお礼を言おうとすれば、ぶっきらぼうに遮られた。
「いくら目に余ったとはいえ、平民が貴族に楯突くなんて、最悪殺されていたかもしれないんだぞ!」
「そ、それは…すいません」
僕はもっともなお叱りに項垂れるしかなかった。
見て見ぬ振りができなかったとは言え、結果から見ても出しゃばるべきでは無かったのだろう。
「まあ、その勇気だけは賞賛に値するがな。これからはせいぜい気をつけろ」
そう言って彼は去っていく。その堂々とした振る舞いが格好良くて、羨望の眼差しでその背中を見送った。
「あ、あの…」
すると今度はヒューゴがおずおずと声をかけてきた。
「あ、ヒューゴ君…だよね?大丈夫だった?」
「うん、君はジョシュア君だよね。さっきはありがとう」
「いや、僕は結局何もできなかったから…」
頭を下げる彼にふるふると首を振る。結局騒ぎを収めてくれたのはエリオットだ。僕は自分の力で解決できなかったことに落ち込んで肩を落とした。
「いや、それでも嬉しかったよ」
「そっか…それなら良かった」
先ほど怒られたばかりだが、僕の無謀な行動もヒューゴにとって救いになっているのなら意味はあったのだと思えた。
「君も平民だよね?その…良かったら友達になってくれないかな?」
「ほ、本当に!?実は僕も友達になれたらいいなって思ってたんだ」
彼からの嬉しい提案に飛びつくと、ヒューゴもホッとしたように笑った。
「良かった。この学校は平民が少ないから、仲間がいて嬉しいよ」
「僕も友達なんてできないんじゃないかと思ってたからすごく嬉しい。これからよろしくね!」
そうして僕にヒューゴという友達ができた。
ーーー
その少し後。
「ジョシュ!あなたなんて危ないことをしてるのよ!」
「ご、ごめんゾーイ…」
僕は、先程の騒ぎを人伝に聞いたらしいゾーイにこっぴどく叱られていた。
「エリオット様が助けてくれたから良かったものの、そうじゃなかったらあなたが酷い目に合っていたかもしれないのよ!?」
「うん、そうなんだけど…見ていられなくて、つい…」
僕が頬を掻きながらそう言うと、ゾーイは「もうっ!」と言って僕に抱きついた。
「ぞ、ゾーイ!こんな所で何を…人に見られたりしたら…!」
「その時はその時よ!どうせそのうち婚約するんだから」
幸い周りに人はいなかったが、大胆な彼女の行動に動揺してしまう。それに婚約するかはまだ決まっていないはずだが…
だが抱きついてきたゾーイがさらにギュッと腕に力を入れてきて、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「あなたのそういうところはとても素敵だと思うけど、ちゃんと自分のことも大事にしてね」
「ゾーイ…ありがとう」
「あと、イジメをしていた中心人物はマヌエル・ハンフリー。伯爵家よ。うちと同格だから、もしジョシュが絡まれるようなことがあれば、アダムス家の名前を出してもいいわ」
「そんな、これ以上迷惑はかけられないよ」
その提案は受けられないが、彼女がそこまで想ってくれることが嬉しい。
「そんなこと言わないで。いい?何かあったら絶対私に言ってね。私がジョシュを守るから」
なんだか僕より格好いいゾーイに自分が情けなくなる。
「あ、ありがとう。これからは気をつけるよ」
「そうしてちょうだい。今日のことを聞いて私がどれだけ焦ったか…これからはなるべく私があなたの近くにいて、アダムス家がバックについてることを見せつけるわ!」
そうして拳をグッと握った彼女は「それじゃ寮まで気をつけて帰ってね!1人で寄り道なんかしちゃダメよ!」と言って去っていった。
「お前は馬鹿か?」
「え…?」
助けてくれたことにお礼を言おうとすれば、ぶっきらぼうに遮られた。
「いくら目に余ったとはいえ、平民が貴族に楯突くなんて、最悪殺されていたかもしれないんだぞ!」
「そ、それは…すいません」
僕はもっともなお叱りに項垂れるしかなかった。
見て見ぬ振りができなかったとは言え、結果から見ても出しゃばるべきでは無かったのだろう。
「まあ、その勇気だけは賞賛に値するがな。これからはせいぜい気をつけろ」
そう言って彼は去っていく。その堂々とした振る舞いが格好良くて、羨望の眼差しでその背中を見送った。
「あ、あの…」
すると今度はヒューゴがおずおずと声をかけてきた。
「あ、ヒューゴ君…だよね?大丈夫だった?」
「うん、君はジョシュア君だよね。さっきはありがとう」
「いや、僕は結局何もできなかったから…」
頭を下げる彼にふるふると首を振る。結局騒ぎを収めてくれたのはエリオットだ。僕は自分の力で解決できなかったことに落ち込んで肩を落とした。
「いや、それでも嬉しかったよ」
「そっか…それなら良かった」
先ほど怒られたばかりだが、僕の無謀な行動もヒューゴにとって救いになっているのなら意味はあったのだと思えた。
「君も平民だよね?その…良かったら友達になってくれないかな?」
「ほ、本当に!?実は僕も友達になれたらいいなって思ってたんだ」
彼からの嬉しい提案に飛びつくと、ヒューゴもホッとしたように笑った。
「良かった。この学校は平民が少ないから、仲間がいて嬉しいよ」
「僕も友達なんてできないんじゃないかと思ってたからすごく嬉しい。これからよろしくね!」
そうして僕にヒューゴという友達ができた。
ーーー
その少し後。
「ジョシュ!あなたなんて危ないことをしてるのよ!」
「ご、ごめんゾーイ…」
僕は、先程の騒ぎを人伝に聞いたらしいゾーイにこっぴどく叱られていた。
「エリオット様が助けてくれたから良かったものの、そうじゃなかったらあなたが酷い目に合っていたかもしれないのよ!?」
「うん、そうなんだけど…見ていられなくて、つい…」
僕が頬を掻きながらそう言うと、ゾーイは「もうっ!」と言って僕に抱きついた。
「ぞ、ゾーイ!こんな所で何を…人に見られたりしたら…!」
「その時はその時よ!どうせそのうち婚約するんだから」
幸い周りに人はいなかったが、大胆な彼女の行動に動揺してしまう。それに婚約するかはまだ決まっていないはずだが…
だが抱きついてきたゾーイがさらにギュッと腕に力を入れてきて、そんなことを気にしている場合ではなかった。
「あなたのそういうところはとても素敵だと思うけど、ちゃんと自分のことも大事にしてね」
「ゾーイ…ありがとう」
「あと、イジメをしていた中心人物はマヌエル・ハンフリー。伯爵家よ。うちと同格だから、もしジョシュが絡まれるようなことがあれば、アダムス家の名前を出してもいいわ」
「そんな、これ以上迷惑はかけられないよ」
その提案は受けられないが、彼女がそこまで想ってくれることが嬉しい。
「そんなこと言わないで。いい?何かあったら絶対私に言ってね。私がジョシュを守るから」
なんだか僕より格好いいゾーイに自分が情けなくなる。
「あ、ありがとう。これからは気をつけるよ」
「そうしてちょうだい。今日のことを聞いて私がどれだけ焦ったか…これからはなるべく私があなたの近くにいて、アダムス家がバックについてることを見せつけるわ!」
そうして拳をグッと握った彼女は「それじゃ寮まで気をつけて帰ってね!1人で寄り道なんかしちゃダメよ!」と言って去っていった。
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