23 / 101
本編
23
※ご指摘ありがとうございます!修正しました。
********
そうしてしばらく平和に過ごしていた頃。屋敷の中が慌ただしくなってきた。
それは、もうすぐカインの誕生日だからだ。カインの誕生日といえば当然俺の誕生日でもあるが、俺にとってはあまり関係のないイベントだ。
どうやら家で盛大なパーティーをするらしく、屋敷が騒然としているのを他人事のように眺めた。
そうこうして関係のない俺は普段通りに過ごしていたわけだが・・・
「テイト!テイトは何か欲しいものある?」
カインが執拗に俺の欲しいものを尋ねてくる。
「ない。」
「そんなぁ。」
そっけなく答えれば、情けない声が返ってきた。
「あ、ちなみに僕はね、テイトの手作りのものが欲しいな。」
カインが一方的に自分の欲しいものを伝えてくる。俺は用意する気などないというのに鬱陶しい。
「俺は存在しないことになってるんだから、プレゼントはいらないし、俺からも期待しないでくれ。」
「そんなの屁理屈だよ・・・少なくとも僕はテイトに用意するからね!」
面倒臭くなってそうあしらえば、カインは少し憤っている様子で部屋を出て行った。
(はぁ、カインが用意して俺が何もあげなかったら俺が悪者になるな・・・何かしら用意しないと・・・)
全くもって面倒くさい。
そう思いつつもカインが欲しいと言っていたのは手作りのものだったか、と思い出す。
「俺に手作りのものって・・・」
一体何なら作れるだろうか。食べ物か、アクセサリーか・・・
「うーん・・・やし、決めた。」
俺はタイをプレゼントすることにした。以前お揃いのタイをザックにやってしまったことにショックを受けていたし、お揃いにしてイニシャルでも刺繍すれば、多少の手作り感は出るだろう。
正直、それですら俺には大変だが。
そうと決まれば、俺はさっそく『ジョニーの仕立て屋』へと向かった。
俺を受けていれくれる唯一の仕立て屋でタイを見せてもらい、紺に近い青のタイを二つ購入する。ついでに余っていた金の糸も譲ってもらった。
それからはカインに隠れて刺繍を進めた。知られるとニヤニヤして喜ばれそうで癪だったからだ。
左手と口を使って小さなイニシャルを縫っていく。
大変ではあったが、大した大きさもないそれはあっという間に完成した。それを見て我ながら器用になったものだと感心する。きっとご令嬢たちに比べたら下手くそだろうが、それなりに見られる形にはなったのではないだろうか。
あとは当日に渡すだけだ。媚びているようで嫌だが、俺とお揃いといえば安物でも喜んでくれるだろう。
そして当日、騒がしくなった屋敷の雰囲気に、パーティーが始まったのだとわかる。遠くから聞こえる賑わいとは対照的に、俺はかつての部屋で息を潜めていた。
今過ごしているカインの部屋はパーティー会場から近すぎるので、俺は奥まった場所にある以前の自室に引っ込んでいる。ここならパーティー会場からずいぶん離れているので、間違っても迷い込んでくる人間はいない。
俺がすべきはパーティーが終わった後にカインにプレゼントを渡すということだけだ。
そうして本を読みながらいつ終わるかわからないパーティーからカインが戻ってくるのを待っていると、コンコンと扉をノックする音がした。
(カインか・・・?思ったより早く終わったんだな。)
この部屋を知っている人間は限られている。わざわざノックをするのだから俺がいると知っている人間だ。だからてっきりカインだと思って扉を開けたが・・・
「レイ・・・」
「・・・久しぶり。」
「お前も来てたのか。」
「当然でしょ。カインの親友なんだから。」
扉の外にいたのはレイだった。彼と会うのはカインが怒り出したあの一件以来だ。言葉の端々から以前にも増して棘を感じるが、そういえばあの後カインとレイはどうなったのかを俺は知らない。
「ふぅん。ちゃんと部屋で大人しくしてるんだ。」
レイはこの部屋を見回しながらそんなことを言う。
「ちゃんとって何だよ。」
「ふんっ、カインを僻んでパーティーをぶち壊しに来るんじゃないかって心配だったからさ。」
「・・・・・・そんなことしない。お前も用がないならさっさと戻れ。」
確かに以前の俺ならやりかねないが、今の俺はそんな不毛なことはしない。・・・そこまでして関心を得たいとも思わないしな。
「どうだか。お前は嫌なやつだからな。・・・お前のせいで僕は未だにカインと仲直りできないんだ。」
「それは別に俺のせいじゃないだろ。」
というかまだ仲直りできなてなかったのか。通りで普段より態度が冷たいわけだ。
「・・・テイトからも言ってよ。」
「何を?」
「・・・僕が謝ってたって。あとこのプレゼントも渡しておいて。」
「そんなの自分でって・・・あ、おい!」
急にしおらしくなったかと思ったら、レイは俺にプレゼントを押しつけて会場へと戻ってしまった。さすがに追いかけていくわけにもいかない俺は渋々そのプレゼントを持って部屋の中へと戻った。
********
そうしてしばらく平和に過ごしていた頃。屋敷の中が慌ただしくなってきた。
それは、もうすぐカインの誕生日だからだ。カインの誕生日といえば当然俺の誕生日でもあるが、俺にとってはあまり関係のないイベントだ。
どうやら家で盛大なパーティーをするらしく、屋敷が騒然としているのを他人事のように眺めた。
そうこうして関係のない俺は普段通りに過ごしていたわけだが・・・
「テイト!テイトは何か欲しいものある?」
カインが執拗に俺の欲しいものを尋ねてくる。
「ない。」
「そんなぁ。」
そっけなく答えれば、情けない声が返ってきた。
「あ、ちなみに僕はね、テイトの手作りのものが欲しいな。」
カインが一方的に自分の欲しいものを伝えてくる。俺は用意する気などないというのに鬱陶しい。
「俺は存在しないことになってるんだから、プレゼントはいらないし、俺からも期待しないでくれ。」
「そんなの屁理屈だよ・・・少なくとも僕はテイトに用意するからね!」
面倒臭くなってそうあしらえば、カインは少し憤っている様子で部屋を出て行った。
(はぁ、カインが用意して俺が何もあげなかったら俺が悪者になるな・・・何かしら用意しないと・・・)
全くもって面倒くさい。
そう思いつつもカインが欲しいと言っていたのは手作りのものだったか、と思い出す。
「俺に手作りのものって・・・」
一体何なら作れるだろうか。食べ物か、アクセサリーか・・・
「うーん・・・やし、決めた。」
俺はタイをプレゼントすることにした。以前お揃いのタイをザックにやってしまったことにショックを受けていたし、お揃いにしてイニシャルでも刺繍すれば、多少の手作り感は出るだろう。
正直、それですら俺には大変だが。
そうと決まれば、俺はさっそく『ジョニーの仕立て屋』へと向かった。
俺を受けていれくれる唯一の仕立て屋でタイを見せてもらい、紺に近い青のタイを二つ購入する。ついでに余っていた金の糸も譲ってもらった。
それからはカインに隠れて刺繍を進めた。知られるとニヤニヤして喜ばれそうで癪だったからだ。
左手と口を使って小さなイニシャルを縫っていく。
大変ではあったが、大した大きさもないそれはあっという間に完成した。それを見て我ながら器用になったものだと感心する。きっとご令嬢たちに比べたら下手くそだろうが、それなりに見られる形にはなったのではないだろうか。
あとは当日に渡すだけだ。媚びているようで嫌だが、俺とお揃いといえば安物でも喜んでくれるだろう。
そして当日、騒がしくなった屋敷の雰囲気に、パーティーが始まったのだとわかる。遠くから聞こえる賑わいとは対照的に、俺はかつての部屋で息を潜めていた。
今過ごしているカインの部屋はパーティー会場から近すぎるので、俺は奥まった場所にある以前の自室に引っ込んでいる。ここならパーティー会場からずいぶん離れているので、間違っても迷い込んでくる人間はいない。
俺がすべきはパーティーが終わった後にカインにプレゼントを渡すということだけだ。
そうして本を読みながらいつ終わるかわからないパーティーからカインが戻ってくるのを待っていると、コンコンと扉をノックする音がした。
(カインか・・・?思ったより早く終わったんだな。)
この部屋を知っている人間は限られている。わざわざノックをするのだから俺がいると知っている人間だ。だからてっきりカインだと思って扉を開けたが・・・
「レイ・・・」
「・・・久しぶり。」
「お前も来てたのか。」
「当然でしょ。カインの親友なんだから。」
扉の外にいたのはレイだった。彼と会うのはカインが怒り出したあの一件以来だ。言葉の端々から以前にも増して棘を感じるが、そういえばあの後カインとレイはどうなったのかを俺は知らない。
「ふぅん。ちゃんと部屋で大人しくしてるんだ。」
レイはこの部屋を見回しながらそんなことを言う。
「ちゃんとって何だよ。」
「ふんっ、カインを僻んでパーティーをぶち壊しに来るんじゃないかって心配だったからさ。」
「・・・・・・そんなことしない。お前も用がないならさっさと戻れ。」
確かに以前の俺ならやりかねないが、今の俺はそんな不毛なことはしない。・・・そこまでして関心を得たいとも思わないしな。
「どうだか。お前は嫌なやつだからな。・・・お前のせいで僕は未だにカインと仲直りできないんだ。」
「それは別に俺のせいじゃないだろ。」
というかまだ仲直りできなてなかったのか。通りで普段より態度が冷たいわけだ。
「・・・テイトからも言ってよ。」
「何を?」
「・・・僕が謝ってたって。あとこのプレゼントも渡しておいて。」
「そんなの自分でって・・・あ、おい!」
急にしおらしくなったかと思ったら、レイは俺にプレゼントを押しつけて会場へと戻ってしまった。さすがに追いかけていくわけにもいかない俺は渋々そのプレゼントを持って部屋の中へと戻った。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。