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第十二話
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倦怠感まみれの体が重い。でも瞼は閉じていても明るく、朝だ起きなくては、とブランシュはやっとの思いで目を開けた。
いつの間にか、鳥籠のような形の自室のベッドに寝ていて、首を傾げる。確か、城で倒れたような、はて、とブランシュは自分の記憶を辿るが、よく思い出せない。ドレスも脱いでパジャマ姿になっている。道理で胸やお腹が苦しくないと思った、などと呑気なことを考えていると、部屋に入ってきた姉のデルフィーヌと目が合った。
デルフィーヌは目を大きく開き、涙さえ浮かべてブランシュのベッドへと駆け寄ってくる。
「ブラン! 起きたのね!」
まだ夢見心地のブランシュは、本物の姉かどうかを問いかけるだけで精一杯だ。
「デルフィお姉様? 本当に?」
「そうよ、ここは屋敷のあなたのお部屋よ。あなたったら、もう二日も寝込んでいたの……死んじゃうかと思ったわ……!」
亜麻色の髪の美女は、ブランシュに抱きついて嗚咽を漏らす。心配をかけてしまった、ブランシュはその罪悪感を覚え、ぎゅっと抱きしめ返すことしかできない。
デルフィーヌが落ち着くまでじっとして、ようやく嗚咽が止まったところで、ブランシュは何が起きていたかを思い出した。
封魔道具のある場所で、魅了魔法を全力で使ったせいでブランシュは倒れたのだ。いつもならどんな人間でも即座に魅了させられるほどなのに、暗殺者に対しては一瞬脱力させる程度にしか効かなかった。それでもリオネルが対処するには十分な時間を稼いだし、リオネルは無事だと分かっているからいいのだが——問題は、本題の婚約の話が何も進まなかったことだ。
「そうだ! 邪魔が入ったせいで、嫌われるところまで話が進まなかったの。もう!」
「そんなことどうでもいいじゃない。それより、お父様が今お忙しくて」
「え?」
「あなたが防いだ暗殺者について、なぜだか我が家がお城に招き入れた疑惑がかかっているの。その申し開きにあちこち掛け合って、忙殺されているのよ」
——申し開き? トリベール侯爵家が?
ブランシュは激怒する。
「はあ? そんな馬鹿なことないわ!」
「そうだとも!」
ビクッとブランシュとデルフィーヌは肩を震わせ、合いの手のように大声がしたほうを向く。
颯爽と、というよりも大股でやってきたのはリオネルだ。自室にいきなり現れた婚約者(予定)に、ブランシュは驚きすぎて開いた口が塞がらない。
「リ、リオネル殿下」
「ブラン、君のおかげで命拾いした、ありがとう!」
「ど、どういたしまして」
「よし、礼は言ったぞ! それと、俺は君を婚約者にするから、そのつもりで!」
明朗な声で、リオネルは主張するだけ主張して、ブランシュのベッド脇の椅子に座った。
いつの間にか、鳥籠のような形の自室のベッドに寝ていて、首を傾げる。確か、城で倒れたような、はて、とブランシュは自分の記憶を辿るが、よく思い出せない。ドレスも脱いでパジャマ姿になっている。道理で胸やお腹が苦しくないと思った、などと呑気なことを考えていると、部屋に入ってきた姉のデルフィーヌと目が合った。
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「ブラン! 起きたのね!」
まだ夢見心地のブランシュは、本物の姉かどうかを問いかけるだけで精一杯だ。
「デルフィお姉様? 本当に?」
「そうよ、ここは屋敷のあなたのお部屋よ。あなたったら、もう二日も寝込んでいたの……死んじゃうかと思ったわ……!」
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「ど、どういたしまして」
「よし、礼は言ったぞ! それと、俺は君を婚約者にするから、そのつもりで!」
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