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3章 イスタンドルの章

第22話 1秒が支配する部屋

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 部屋の中には六つの台があった。
 それは結構高い所まであった。
 その上にはスレイザーがおっさんらしくげひた笑い方をしていた。

「ようこそ、1秒が支配する部屋へ」

 1人のスレイザーがそう呟いた。

「ウィンター対応策は」

「妖精が告げています。この部屋にはとてつもなく巧妙なトラップがあると、それも1秒単位で動きます。1秒間違えれば死にます」

「そうか、ウィンターお前大丈夫か」

「誰に言ってます? 1つの世界を救った男ですよ、まぁ異世界ですが」

「だな」

「さぁ、パラダーイムストーリー、お前達がどうやって死ぬか、この俺様達が見届けてやるぜ、体が吹き飛ぶ? 体が凍る? 体が燃える? それともそれとも、どうなるのかなー、たーのしみでたーのしみだぜー」

 6人のスレイザーが笑う。
 彼等は6本の弓矢を構え解き放った。
 矢の軌道はアシュレイとウィンターの方角には向かわなかった。

 どこかのスイッチを押したように、カチリと音が鳴った。
 次の瞬間、水があふれだした。

「これが1秒?」

「違います。これはフィールドだそうです」

「なるほど足場をか」

 6人のスレイザーが同時に人差し指を振った。

「「「「「「のんのんのん、それは違いまーす、もうちょっと考えてみませんかー」」」」」」

「きもいから同時にしゃべるな」

「俺様達のパラダイスをみせてあげるぜー」

「さっきからうるせーんだよ」

 アシュレイが切れると。
 6人のスレイザーはそれぞれの足場を高速で動き出す。
 眼が錯角してしまうほど早いが、6人が入れ違いになる事で分けが分からなくなる。
 それに無差別に矢が飛来するし、ちゃんとこちらを狙ってきている。
 アシュレイとウィンターの腰まで水が到達している。
 八流の剣を二刀流にして防ぐ事は可能だった。
 ウィンターも本を自動展開して防いでいる。
 
「まったくお前らの防御技術には虫唾がはしるねぇ、それならこれならどうでしょう、これこそ、スレイザーの本領、スレイザーの本質。ジ・エンド・ボム」

 スレイザーの手元から丸い塊が落下した。
 アシュレイは信じられない眼でそれを見ていた。

「なぜ、てめーが、なんでスクワッドの化学をしってるんだよおおおおお」

 水が爆発すのではなく、氷つく、それは氷のボム。
 ようは氷の爆弾だ。

 この世界には爆弾と言う技術はまだない、スクワッド達一部が知っているだけだ。

 水が凍り着けば、アシュレイ達の体が凍り付く。
 懐からスクワッドの化学の産物を取り出す。

「炎のボムだ、こっちは2個だぜ」

 炎のボムを放り捨てる。次の瞬間爆風とともに、アシュレイとウィンターの体を燃やし尽くす。
 氷が固まる寸前だったため、氷が蒸発する。
 そこには水がなくなる。
 水が出てくる噴出孔は氷でふさがれている。

「なんで、俺達、いや俺様達が科学を知っているかだって? 化学こっちか、それはな、ゴブリンの死体に3つの不思議な物の作り方があった。それを参考にさせてもらったぜ、ゴブリン語を介するには伝説の12人の1人発明神師の力が必用だったがな」

「お前らは、お前らはどこまで、どこまでスクワッド達を、バカにすれば気がすむんだ」

「いやー驚いたね、たかがゴブリンがこのような技術を知っているなんて、お前ならどこまで知ってるんだろうな、拷問して聞いたらすんごいの作れるんじゃねーの」

「お前は殺す、でもウィンターお前が殺すんだ」

「ああ、そうするつもりだ、アシュレイ」

「もう手加減しているつもりはないぞスレイザー」

「それは僕も同じですよ、こいつらの外道には虫唾が走る」

 アシュレイとウィンターは心を統一した。
 深呼吸を繰り返して、眼をかっと開き。足を蹴り上げその場を跳躍した。
 体が横向きから回転し。

「次は水のボムだぜ」

 6人から同時に水のボムが放たれる。
 アシュレイはドライの魔法を発動させる。
 空気が蒸発し、水そのものが蒸発する。
 そこでは息をする事が難しくなるが、ウィンターは壁を走りながら、1人のスレイザーの首を両断していた。

 ウィンターはしゃがむとその真上を矢が飛来する。
 アシュレイは八流の剣の1本の剣を投げる。
 そのスピードは遥かな高速であり、スレイザーの頭をつらんく。
 意識で手元に引っ張って戻すと。

「ここがどこだか忘れてねーか?」
 
 スレイザーがにんまりと笑い。
 何かスイッチを押す。

 天井から無数の槍が飛来してくる。
 それ以前に部屋全てから槍が飛来する。
 スレイザーがいる区画だけ無事だ。

 アシュレイはウィンターをもはや信用している。
 だから即座に喜悦の鎧を軽装備状態から重装備状態に切り替える。
 
「信じるぜスクワッド、特大の破壊ボムだ」

「こっちは平気です」

 本を自動で動かして卵のような形で身を守るウィンター。 
 あれなら大丈夫だが、アシュレイの鎧はいくら重装備だろうと隙間が存在する。
 そこから槍が刺されば致命傷は免れない。
 取るべき手段は決まっている。
 槍を全て破壊すればいいのだから。

 破壊のボムを放り投げる。
 その爆発音は炎ではなく衝撃だった。
 衝撃が槍を吹き飛ばす。
 残りの4名のスレイザーすらも吹き飛ばす。
 アシュレイも体をぐねりとひねらせ吹き飛び、卵の形をした本の中にいるウィンターも卵状態で吹き飛ぶ。
 
 衝撃の音がアシュレイ達の耳を揺らす中。
 アシュレイは喜悦の鎧を重装備型から軽装備型に変形させ、地面を高速で移動する。
 
 ひるんでいる、スレイザーを無我夢中でめった刺しにする。
 アシュレイはもはや怒りでおかしくなりそうになっていた。
 隣でもウィンターがスレイザーをめった刺しにしている。

 残りは2人。
 
「これじゃあ、どっちが悪人かわからないぜーお二人さん、そういう時はもっと頑張りなさいよ、もっと頑張って俺に復讐しなさいよ、そうやって君達はバカになるのさ」

「ああ、既にお前はバカだがな」
「同感です。アシュレイさん」

「こんな事だって」
「出来るんだぜー」
 
 2人のスレイザーは体を融合させた。 
 マジックパワーの光を発して光輝く2人は瞬く間に融合を果たした。
 全身が燃え上がるように光っている。
 眼はこっちを捕らえているが複眼でふたつある。

「知ってるか、お前ら、眼が2つの目の中に4つの黒目があるとな、沢山の事がゆっくりと見えるんだぜ、トンボの原理だな、それで……」

 スレイザーが最後まで呟くまで、2人は動き出した。

「だからここが1秒が支配するって事忘れてねーか」

 あちこちからトラップが発動する。
 剣が飛んできたり、地面がなくなったり。
 それでも2人は1秒1秒避け続けた。
 呼吸の感覚で1秒後に起きる事をウィンターが妖精から情報を得る。
 ウィンターが回避の行動をとると、それにともなってアシュレイも動く。

「これが妖精の時間だ」

 ウィンターがそう叫ぶ。

 右の壁をウィンターが走る。もちろん罠が発動するもそれを避ける。
 左の壁をアシュレイが走る。もちろん罠が発動するもそれを避ける。

 2人の呼吸は1秒1秒整っていた。 
 2人は壁を蹴り上げて跳躍して見せると。スレイザーのいた所に斬撃を解き放つ。
 そこにはスレイザーが矢を構えてまっていた。
 2人の斬撃は矢で弾かれてしまう。
 さらに矢が飛来し2人はそれを弾く。
 体はスレイザーの近くに到着し。

「ゆずるぜウィンター」
「もちろんだ」

 本がハサミのような形になる。弓矢事スレイザーをハサミ、上半身と下半身を分けてしまう。
 スレイザーはげらげら笑う。

「いい人間、それとも悪い人間、悪い人間はなんで必用なんだろうなーなんで、俺達が悪い人間なんだろうな、良い人間だったのに悪い人間になるなんて、なんで、あの子を助けてあげられなかったんだろうなー」

「それはどういう意味だ。スレイザー」

 ウィンターが叫ぶと。

 スレイザーは涙を流しながら消滅していった。
 初めてスレイザーの本質を見た気がした。
 本当に悲しそうだった。

「もしかしたら、スレイザーもこうなったのには理由があるんじゃ」

「そんなのどうでもいいんです。あいつは、あいつは俺の家族を」

「分かってる落ち着け、俺だってスクワッドを殺されてるんだぞ」

「すみません、アシュレイさん」

「ふむ、そういう事かのう」

 そこにはサイクロプスのザイドロンがいた。

「2体が1体になった事で記憶が濃厚になったのだろう、いわゆるフラッシュパックじゃな、その時、わしの一つ目が色々と光景を見た。お主等にも見せよう、こちらん来い」
「はい」
「はい」

 2人は小さなザイドロンの手を握った。
 次の瞬間、アシュレイとウィンターはとんでもない光景を見ていた。

 スレイザー残り残高10名。
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