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第23話 ガチャ召喚される強者達②

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 ゴーストイーターの記憶が俺の頭の中に侵入してくる。
 目から鼻から口から闇色のオーラが俺の体の中に蝕む。
 そいつは1人の冒険者であった。
 彼はダンジョンの最下層へと仲間に落とされた。
 彼は飢えに苦しんだ。
 最下層だからモンスターのレベルは到底かなわない敵だった。

 彼は見つけた。
 とても美味しくて、とても芳醇な香りのする。

「ゴーストだ」

 俺ははっと意識を取り戻した。
 眼の前の男は頭を下げている。
 目から口から体をおおう闇色のオーラ。
 
「俺はダンジョンというダンジョンを彷徨った亡霊みたいなものだ。世界が破滅へと突き動かされても俺には沢山の亡霊がついてきた。さて、君はどのような亡霊を見せてくれるのだろうか? 少し散歩でもしてきてもいいか?」

「ああ、もちろんだ。ゴーストイーターこれからもよろしく頼む」

「それは君が決める事ではない、見えざる存在がどのように生まれどのように死ぬかを決めるものだ。まぁ君は色々と大変だろうけどね、俺は行くとするよ」

 こつこつと地面の石を踏みながらゴーストイーターはベランダからジャンプした。

「え、ちょっとまってくれ、ここが何階だと……」

 そこにはすでにゴーストイーターの闇の衣服は存在していなかった。

「本当に凄い存在ですね、ゴーストイーターは」

 執事長ダンディがうやうやしく頭をさげて呟く。

「たぶん次々とやばいのが」

 俺は呼吸を整えて、次のカプセルを開いた。

 名前はモンスター将軍ハバタタリ。
 
 現れた男は巨漢であった。
 先程のゴーストイーターが細身でスマートだとしたら、こちらは巨大でムキムキだという事、上半身が裸でズボンを穿いていた。
 背中には巨大な大剣が背負われている。
 髭もじゃでありながら優しい眼をしていた。

「わっしはどうやら異世界に来たようだ。まぁわっしがいた所も異世界と言えば異世界だな、モンスターの大群、ここにはモンスターの大群はおるか?」

「いるぞ敵で大群だ。この大陸にいるモンスターの一部はビーストマスターチャニーが支配してるから殺すなよ」

「そうかビーストマスターという伝説があったか、ふむ、それでは、お主がクシー王だな?」

「そうだ」

「クシー王よわっしはモンスターを殺せば殺すほど強くなる、今までに殺してきたモンスターの数は数億を超えている。数兆にいけばさらなる強さに出会える気がする、敵はそれほどか?」

「ああ、俺達ですら数えきれない存在だ」

「ほほう、わっしは燃え上がるだろう、ちと準備に色々と見て着たい」

「もちろんだ」

「はっはっは、泥船に乗った気分でいろ」

 そう言いながら巨漢はどしんどしんと歩きながら立ち去る。

「いえ、大船ではないかと?」

「たぶん言語が下手なんだろう、それでも頼もしいのが来たな」

「それはもちろんでございます」

 執事長ダンディはまたもやうやうやしく頭を下げる。

「さて次はドラゴンスレイヤーゴッツだな」

 カプセルから出されたのはゴーレムであった。
 子供くらいの子供がそこにはいた。
 石のような形をしている頭が真っすぐにこちらを捕えていた。

「ぼく、ゴッツ」

「ああ、よろしく頼む」

「【「『ドラゴン』」】」

 突然の謎の音。

【いけません、ドラゴンスレイヤーゴッツを止めてください、この大陸にいるドラゴンというドラゴンを抹殺するつもりです】

「ちょっと待ってくれゴッツ」

「ドラゴンは殺します、ぼくのいた故郷はドラゴンに滅ぼされました。僕はドラゴンを殺して殺して食って食ってばらしてばらして装備を重ねてきました。その結果ドラゴンの素材がぼくを呪いこのような姿になりました。ぼくはまだ10歳です」

「君の事を勘違いしたようだ。見た目からゴーレムかと思った」

「違います、1人の人間であり、まだ子供なのです。ただドラゴンの索敵機能だけは有能であります」

「ビーストマスターチャニー周辺のドラゴンとガチャ王国にいるドラゴンは殺さないでくれ」

「了解しました」

「俺が許可すると言えば片端からドラゴンを殺してくれ」

「了解であります。ぼくはもっと装備をよくしたいのです。色々と見物してきます」

「頼むよ」

 すると目の前にドラゴンスレイヤーゴッツがいたのに、透明になって消滅した。

「あれは消滅というより透明化でしょうね、ゴッツさんは異次元の機能をもっているようです」

「ああ、驚いた。次いこう」

「御意でございます」

 また執事長ダンディはうやうやしく頭を下げた。

「次は伝説の勇者ロブと伝説の魔王ラブだな、何か嫌な予感しかしねーが」

「はは、奇遇ですね同じくです」

 2個のカプセルから出てきたのは2人の男女であった。
 1人の男性は青い髪の毛をしており見るからに勇者のサークレットを装備して勇者の剣と勇者の盾と勇者装備ばかりされていた。
 1人の女性は赤い髪の毛をしており見るからに魔王の魔術師のようなサークレットをしており、魔王のローブを着用し魔王の軽装備を身にまとっていた。

「うぉい、なんで魔王がいんだしょ」
「そりゃあんたのせいでしょ、わかってんの」

「何がわかってんだよ」
「あんた息子と娘の参観日こなかったでしょ」

「しゃーねーだろ賭け事してたんだから男は賭け事よ」
「魔王城であんたの帰りまつわたしの気持わかる? あんたの父親と母親の面倒みてんのよ」

「るせーな父と母は孫に会いに来ただけだろうが」
「もうさいていいいい」

「どういったご関係でしょうか?」

 俺がそれを尋ねると2人はこっちを見て。

「「ああん? 夫婦だけど、わるいいいい」」

「いや、なんとなくそんな気はしてましたが、ふむ」

「「で、あんたがクシー王ね(だろ)」」

「いえ、はもらないでください」

「るーせよ、俺は勇者世界を救った男だ」

「わたしは魔王よ世界を滅ぼした女」

「「その2人が結婚して何が悪いの(か?)」」

「だから、はもらず結構、あなた達にはまた世界を救う破壊?してもらいます」

「おう、それが勇者の役目ね」

「まぁ破壊もしてもらいます」

「それが魔王の役目ね」

「まぁどっちもどっちです」

 俺が親指あげて2人ににやりとほくそ笑む。

「さてチビ達のお土産探すぞお前」

「あんたにお前呼ばわりされるいわれはないわよロブ」

「しゃーねな、ラブいくぞ」

 2人は夫婦喧嘩しながらいなくなった。

「どこの世界も夫婦とは偉大ですねぇ」

「ダンディ、お前に嫁はいるのか?」

「かはかは、なんと?」

「いや聞かなかった事にするよ」

「それはありがとうございます」

 執事長ダンディはまたもやうやうやしく頭を下げた。

「神狩レウスだな」

 カプセルから出現したのは、1人の美少女だった。
 白いシルクのような衣服を着用しており、華奢な体をしている。
 髪の毛は黒一色でまつ毛が微妙に長くなっている。
 神狩レウスはゆっくりとこちらを見た。

「あなたは、そうね、クシー王か、色々と情報が入って来る。ふむ、この世界にもどうやら神はいるみたい、その神、あたしが殺していいかしら?」

「ちょっとまってくれ、君はどのような神を殺すんだい?」

「支配するような神ね、冒険する神は殺さない人の為に動く神も殺さない、全ての陰謀をつかさどり全てを支配しようとする神だけを殺す、それが神狩レウスよ」

「えーとつまり」

「この国の関係者で神がいても殺すつもりはない、あたしが殺すのは支配する神よ」

「それは理解した。つまり」

「この王国では少し疲れを取ろうと思うの、よろしい? あたしが殺すのは支配する神よ」

「いや、それは分かったから」

「では、若き王よ、その血に宿る神に畏怖を称するわ、きっと神のごとしみたいなスキルつかったんだろうけど」

「そこまでわかるのか」

「あたしがなぜわかるかって? それはあたしが殺すのは支配する神だからよ?」

「ああ、分かったよ」

 神狩レイスが立ち去ると、俺と執事長ダンディは少し身動き取れず、未だに立ちながら爆睡している神速のルームクラフが信じられなかった。

「なんというか、少し独特な美少女ですね」

「ああ、見た目は女神のように美しいのにどこかポンコツなんだよ」

「はは、それは致し方ありませんよ皆ポンコツですから」

「執事長それはあなたも?」

「はっはっは」

 執事長ダンディはうやうやしく頭をゆっくりと下げた。

「神ゼウスだな、さっきの神狩レウスを見てるとお先真っ暗だよ」

 カプセルを開くと、そこから出現したのは1人の爺さんだった。
 よぼよぼの爺さんであり、杖をつつきながらやってくる。

「ほんえ、なんで召喚されたんじゃ、えええ、ここ下界やん色町に行く予定だったんに、やべヘラにバレる殺される、たすけてえええ、わしゃだれだっけ」

「えーとあなたは神ゼウスです」

「そうじゃったわい、てかお主クシー王じゃけんのおお、あれ? なんでだ?」

「あなたを召喚しました」

「うそおおんん、わし神よ? 神様よ? どうしてくれてんお?」

「これから俺達は沢山の化物達と殺し合いをします。まだ準備段階ですが」

「いやじゃああ、もう殺し合いはクロノスのとっつぁんだけでいいんだあああ」

 爺さんはそこらへんでじたばたし始めた。

「返すのじゃ、わしを神の世界に返すのじゃ」

「返し方がわかりません」

「うそじゃあああ、わしはこんなところで殺されたくないのおおお、あそうじゃ、わしも力使えばいいんか、そうじゃったわ、この世界で力つかってはいけないルールないわ、よし、クシー王よ、ちと働いてやるわい、ところで色町はどこじゃ?」

 そういいながら杖をつつきながら徘徊していく神ゼウス。

「とてもユニークな神様でしたね」

「どこからどうみても爺だったよ」

「最後は全知全能と修行スーツが3着か」
【全知全能はスキルではなく体と同化するアイテムのようなものです。使用しますか? それとも能力を調べますか?】

「能力情報を頼む」

 ガチャ丸が色々と演算をしてくれている。

【了解しました。結果からして全知全能を使用すると、全ての事を理解する事が出来ます。頭の中に沢山の映像として知らせてくれるため、休める暇がありません、一度訪れた場所だと明確に知る事が出来ますが、一度も訪れていない場所だとうまく機能しません、しかしうっすらと見えるので使えるかと思われます。他には敵の強さを判別したりなど機能は数えきれないほどもう測定不能です】

「なんか恐ろしアイテムだな、覚悟が必要か」

 俺は振り返ってみた。
 元々は何もスキルのない自分、船で移動している時にパーティー追放されて船から落とされた。辿り着いた先はまだ未開拓の大陸。
 そこでスキルガチャを習得した。
 ガチャを使用して王国を作り、2度もバブル王国からの侵略を防いだ。
 逆にバブル王国を滅ぼしてしまった。

 そして勇者サルンドと賢者ジョンの実験で生じた真の魔王によりバブル王国があった場所は危険地帯となった。

「だいたいの設置も完了したし2億人を解放してもいいよな」

 執事長ダンディはうやうやしく頭を下げた。

 住む場所はないかもしれない、家族世帯を優先して建物には住まわせる。
 住めなかった人は城の外で狩りでもして暮らしてもらう。
 そうして彼等と自分達が協力してもっと国を広げる。
 敵も何かしらの力で戦力を増やし続ける。
 どちらが勝つなんて分からないけど。

 他の大陸の国々が心配でもあった。

 ベランダからまるで蝶々が鱗粉を飛ばすように、異次元から取り出す2億人の人々。
 
 空から粉の様にまかれた一粒一粒のそれは1人の人間となり出現する。
 1人また1人と立ちあがり、辺りを見回し歓声を上げる者達。
 大勢の人間が涙を流して本当の空に祝福している。
 貴族達は貴族階級がなくなりげんなりしているものもいる。

 きっと犯罪も増え、そしていい事も増える。

「暴力は許しませんがね」

 今の俺はこの国を全て把握している。
 全知全能のアイテムの力だった。

 つまりちょっとでも何か起こるか起こる前兆があれば俺は即座に飛んで行く。

「クシー王よ少しお疲れの様です。1時間の睡眠をどうでしょうか」

「ああ、そうしよう、ちょっと力がって」

 足から力がなくなり地面に倒れそうになった。

「まいったなこれから修行なのに」

 そこには鬼教官のような目をした神速のルームクラフがいた。

「クシー王よ疲れた時こそ修行じゃ」

「あ、はい」

 俺の目は点々になっていた気がする。



 



 



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