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第4章 冒険破壊【開拓】

第53話 失われた故郷

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 まず、俺達が高速で街道を走っていると、首都ファイガーが見えて来た。
 城壁をジャンプで通り越したので、門番に「どういったご用件で?」と問われる前に侵入する事に成功。

 後は暗闇の中、リリファーナと手を繋いで他の人間にばれないように冒険者ギルドの裏門から入る。
 そこにはテトトスさんが腕組みをして立っていた。

「姉よ、久しぶりだな」

「テトトス!」

 リリファーナとテトトスは軽い抱擁を交わし合いながら。

 3名はギルドマスターの部屋にて密会を始めた。

「ふむ、村の復興は順調そうで良かったよ、それと、リッドン王子の事だが、帝王とは別で動いている。だが帝王の動きも最悪かもしれない」

「それはどういう」

 オーディンの世界共鳴でも把握しきれていない事。
 恐らく何か強い物や人がいるのだろう。
 もしかしたら帝王そのものが。

「侵略戦争を始めようとしている。リッドン王子はそれとは別に、戦力を蓄えて、父親が攻めていったら首都ファイガーを乗っ取る計画じゃったようだ」

「なぜ、テトトスが知っているか疑問なのだが」

「冒険者とは多くの情報を掴んでいるものだよ」

「それもそうだが」

 俺も頷き。

「とはいえ、彼等の情報網のおかげだがな墓場の傭兵団よ」

 突然扉が開き、墓場の傭兵団のメンバーが入ってきた。
 顔のない彼はボウであった。

「お久しぶりですカイルード様」

「ノッペラボウ、いやボウか、久しぶりです」

「それがしが探していた翼のある故郷を滅ぼした元凶を見つけたのです、本来は違う任務でしたが」

「それがファイガスタ帝国?」

「はい……」

 ノッペラボウのボウは武術で戦う人間だ。右手と左手には籠手を装備してある。
 今日の衣服は少しさらりとしていて黒っぽく動きやすそうだ。
 彼はかつて存在しない領地の王子であり、生まれつき顔がなかったと聞いている。
 なぜか見る事も臭いを感じる事も出来るそうだ。
 
 彼に対しての国民の人当りは最悪だったらしく、でも父親と母親は彼を愛した。

 その存在しない領地には翼が存在していた。
 人間の形を取り、翼の形をとる。
 文献では天使族とされる。

 俺も一応調べた。
 だが天使族は天使狩りにあった。

 誰がやったのかは知らなかったが。

「天使族は天国に近いとされる生物で、その滅びた王国にはセフィロトの文献が残っています。それを奪ったのがこの国の王、いや帝王ラッドンでございます」

「復讐か?」

「いえ、それがしはそういうものとは無縁ですし、我が友キャンベルに言わせれば笑ってしまう事らしいです。なので、この世界の崩壊を止める為に戦います。しかし、この手で一度ラッドンと手合わせはしたいと思っています」

「そうか、それは否定はしない」

「機会はカイルード様に奪われてしまいそうですが」

「そうかな」

「本題に入りましょう、あなたが村復興とリリファーナ様を助けている間、それがし達は調べ尽くしました。この国はジスタラン王国を支配しようと目論み、100億の兵士を募っております」

「まじかよ、ってかどこにそんな大群が」

「ファイガスタ帝国が領地108個。全ての領地から招集をかけました。近く侵略が始まります。そこに英雄はおります。ラッドンは異世界の英雄ではなくこの世界の英雄を蘇生させました」

「なんだそれ」

「かつてファイガスタ帝国には15人の英雄ありと言われました、彼等です」

「多すぎだろ」

「リッドン王子はそれには叶わず背後を狙っておりました」

「そうだろうな」

「集められた兵士は地下に待機させ、1人また1人と集まっています。この首都ファイガーの地下に現在50億の兵士と15人の英雄がいます」

「は、はは」

「どういう原理で蘇らせたか調べたのですが、セフィロトの技術らしいです。天国から招待したと」

「異世界の英雄は地獄なのにこの世界の英雄は天国なのな」

「その原理はよくわかりませんが」

「そういう物なのかもな、前を向くのと後ろを向くのが同じ原理のようにな」

「おそらくそうかと」

 原理は不明だが、考えて見る価値はありそうだ。

「俺とリリファーナはナイナを助けて、村を復興させ、ジスタラン王国に1度帰還する。お前達も命を優先させろ」

「了解です、所でテトトスさんにあなたの事を伝えたのですが」

「わしもジスタラン王国に行くぞ、どうせリリファーナも行くんだろ、眼が乙女だぞ」

「うるさいわい」

 リリファーナが首を振る。

「歓迎するよ」

「正規ルートを通って、冒険者ギルドとしてではなく1人の冒険者として行こう、この国は姉をこき使いすぎた、もう愛想つきたわい、それに従妹のリルファーネもいるしのう」

「じゃあ、俺達はリッドン王子の領地シシガァーに向かうよ」

「お気をつけて、そうだ。カイル様それがしが行っても足手まといにしかならないと思いますが、付いて行ってもよろしいでしょうか、少しは役に立つかと」

「それは、助かるよ、では行こう」

 テトトスギルドマスターに会釈して、俺とリリファーナとボウは走り出した暗闇の中を。

====領地シシガァー====

「ふざけるなああああああ」

 テーブルを破壊し、本棚を破壊し、壁に穴をあけるリッドン王子は怒り心頭に叫んでいた。
 その傍では黒装束の男がしっかりと地に足をつけて立ちすくんでいた。

「リッドン王子、ナイナさんが眠られましたのでお静かに」

「うるさいハンゾウ、もうお前だけだ。お前は異世界の忍つまりアサシンだったな、あいつを殺せ、カイル馬鹿を殺すんだよ」

「それは無理です。拙者はナイナ様の護衛でして」

「そんなのはいらない」

「それは無理です。忍たるもの一度命じられたものは守ります。それがリリファーナ様であろうとリッドン様であろうとです」

「うむ、仕方ない、兵士を募ろう、ここには10万の兵士がいる。英雄がお前しかいないのは気が滅入るが」

「た、大変です」

「何事だ」

「カイルードと名乗る冒険者が門を破壊して入ってきました。顔無き翼の男とリリファーナ様を背負ってです」

「は、はぁああ、獲物は自分から来たようだな、さてと準備するか、どうやって奴隷化してくれよう」

 ぐへへへと気持ちの悪い笑い方をしながらリッドン王子は部屋から出ていく。

「ナイナ様、リッドン王子が出ていきました」

「うむ、良かった。色々と世話かけるわね、ハンゾウ、あなたの奴隷化が解かれてる事に気付いて無いみたい」

「御意にです。リリファーナ様が最初にあなたを守るように命じられていた命令が残っていて助かりました」

「ハンゾウ、無理はしないで、隙を見て、やってちょうだい」

「良いのですか、一応あれでもナイナ様の許嫁では」

「私の領地はあの方に乗っ取られるくらいなら滅んだ方がましよ」

「それもそうですね、リリファーナ様が聞けば笑うでしょうが」

 ナイナはシシガァー領地の隣にあるラルファス領地の領主の娘。
 リリファーナとは友達ではあったとハンゾウは聞いている。

「少し見てきます」

 ハンゾウは膝を屈している姿から立ち上がった。

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