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4.祝福と忠誠と
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「おかえりなさい、夕謡、詩菜ちゃん!」
「伯母さま?」
九重家の玄関で、夕謡の母でありわたしの伯母である九重有花が出迎えてくれた。
伯母さまは九重家当主の務めで普段は忙しくしている。それがどうしたことだろう。
「夕謡、念願叶ってついに詩菜ちゃんのクリフェラ係になったんですって? もう、アイドルなんてちゃっちゃと辞めちゃいなさいって言ってたのに、今まで詩菜ちゃんを待たせて」
伯母さまはとてもとても嬉しそうに言った。そんな伯母さまに夕謡は苦笑して答える。
「事務所やファンへの責任もあるから。……ていうか母さん、僕が詩菜のクリフェラ係になりたがってるって、知ってたんだね」
「何言ってるの。あなた、私が詩菜ちゃんにクリフェラ係をつけようとするのを、必死で邪魔したじゃない」
わたしは夕謡と伯母様の顔を交互に見た。そうか、今まで伯母様がわたしにクリフェラ係を世話しなかった――できなかったのには、そういう理由があったんだ。
「今晩はお祝いしないとね。夕謡の念願が叶ったお祝いと、詩菜ちゃんの初のクリフェラ祝いよ」
「大袈裟だよ、母さん」
「あら、夕飯も抜きで奉仕に没頭したいかしら?」
「母さん!」
そこへ、ぱたぱたと少女が駆けてきた。左右には二人の男性を従えている。
「お兄さま、詩菜お姉さま!」
「夢芽ちゃん」
九重夢芽――夕謡の妹にして、九重家次期当主だ。ふわふわの長い髪に、陶磁器のような肌。夢芽ちゃんは、まるでドールのような美少女なのだ。
その夢芽ちゃんが従えるのは、双子の真と清。九重家の使用人にして、夢芽ちゃんの専属クリフェラ係である。
「お姉さま、お兄さまがクリフェラ係になられて良かったわ! おめでとう……!」
夢芽ちゃんはわたしの両手をとり、まるで自分のことのように喜んでくれる。
「おめでとうございます、詩菜さま」
「とてもようございました」
夢芽ちゃんの背後で、真と清も軽く両手を叩いて祝福してくれる。
皆に総出で祝われて、わたしはこそばゆさを抑えられない。そっと夕謡を見上げると、彼はそこはかとなく誇らしそうな表情をしていた。
「今夜は夕飯の時間を早めるから、これまでのぶんを取り戻しなさいね、夕謡」
「もちろんだよ、母さん。詩菜にはこれまで辛い思いをさせたから、たっぷりと満たしてあげる。ね、詩菜?」
わたしは思わずうつむいたけれど、やがてしっかり顔を上げた。夕謡の、みんなの想いにわたしも応えるべきだと思ったのだ。
「ありがとう、夕謡。これからも……よ、よろしくお願いします……」
語尾は消え入りそうになってしまったが皆に思いは伝わったようだ。伯母さまも夢芽ちゃんも真と清も、嬉しそうに微笑んでいる。
夕謡はそんなわたしの右手をそっと手にとった。
「僕のお姫さま。僕はきみに永久の忠誠を誓うよ」
そうして恭しく手の甲にキスを落としてくれたのだった。
「伯母さま?」
九重家の玄関で、夕謡の母でありわたしの伯母である九重有花が出迎えてくれた。
伯母さまは九重家当主の務めで普段は忙しくしている。それがどうしたことだろう。
「夕謡、念願叶ってついに詩菜ちゃんのクリフェラ係になったんですって? もう、アイドルなんてちゃっちゃと辞めちゃいなさいって言ってたのに、今まで詩菜ちゃんを待たせて」
伯母さまはとてもとても嬉しそうに言った。そんな伯母さまに夕謡は苦笑して答える。
「事務所やファンへの責任もあるから。……ていうか母さん、僕が詩菜のクリフェラ係になりたがってるって、知ってたんだね」
「何言ってるの。あなた、私が詩菜ちゃんにクリフェラ係をつけようとするのを、必死で邪魔したじゃない」
わたしは夕謡と伯母様の顔を交互に見た。そうか、今まで伯母様がわたしにクリフェラ係を世話しなかった――できなかったのには、そういう理由があったんだ。
「今晩はお祝いしないとね。夕謡の念願が叶ったお祝いと、詩菜ちゃんの初のクリフェラ祝いよ」
「大袈裟だよ、母さん」
「あら、夕飯も抜きで奉仕に没頭したいかしら?」
「母さん!」
そこへ、ぱたぱたと少女が駆けてきた。左右には二人の男性を従えている。
「お兄さま、詩菜お姉さま!」
「夢芽ちゃん」
九重夢芽――夕謡の妹にして、九重家次期当主だ。ふわふわの長い髪に、陶磁器のような肌。夢芽ちゃんは、まるでドールのような美少女なのだ。
その夢芽ちゃんが従えるのは、双子の真と清。九重家の使用人にして、夢芽ちゃんの専属クリフェラ係である。
「お姉さま、お兄さまがクリフェラ係になられて良かったわ! おめでとう……!」
夢芽ちゃんはわたしの両手をとり、まるで自分のことのように喜んでくれる。
「おめでとうございます、詩菜さま」
「とてもようございました」
夢芽ちゃんの背後で、真と清も軽く両手を叩いて祝福してくれる。
皆に総出で祝われて、わたしはこそばゆさを抑えられない。そっと夕謡を見上げると、彼はそこはかとなく誇らしそうな表情をしていた。
「今夜は夕飯の時間を早めるから、これまでのぶんを取り戻しなさいね、夕謡」
「もちろんだよ、母さん。詩菜にはこれまで辛い思いをさせたから、たっぷりと満たしてあげる。ね、詩菜?」
わたしは思わずうつむいたけれど、やがてしっかり顔を上げた。夕謡の、みんなの想いにわたしも応えるべきだと思ったのだ。
「ありがとう、夕謡。これからも……よ、よろしくお願いします……」
語尾は消え入りそうになってしまったが皆に思いは伝わったようだ。伯母さまも夢芽ちゃんも真と清も、嬉しそうに微笑んでいる。
夕謡はそんなわたしの右手をそっと手にとった。
「僕のお姫さま。僕はきみに永久の忠誠を誓うよ」
そうして恭しく手の甲にキスを落としてくれたのだった。
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