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戦争

ジュドーさんって・・・

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 実は、この工房は辺境伯の屋敷の裏庭に建設されて居た、元蔵だった建物をナノマシンで改修したのである。
 従って私は、まるでこの屋敷に勤めている使用人さながらの出勤をしてこの強化装甲を開発して居た訳なのだ。
 何だかもうすっかり屋敷の警備兵と顔なじみだったりする。
 だけどね、多分なんだけど、彼らは私が戦争の為の道具を作る為に来ている技師と言う認識では無い気がするんだよね、多分なんだけど、最近になって教会に出資を始めて孤児院の設立に向けて尽力して居る辺境伯がお気に入りにして妾にしようとしている孤児と思われて居る節が強い・・・
 朝来て夜遅く帰るからね、一日一緒に居て夜伽してから帰るとか思われてそうなんだけどさぁ・・・
 まぁ知らぬが花っつー事で、ほっといてるけど。
 でもまぁ、それも今日で認識が変わる筈だった。
 何故なら、ついに完成したから!
 たった一機だけのプロトタイプだけどな。
 さて、それでは早速、搭乗と行きますかね。
 動力は超小型原子炉なので、基本的に数日は稼働し続ける事が出来る。
 そのエネルギーをバッテリーで貯めて一気に放出すれば、電磁砲≪レールガン≫もつかえるほどの代物だ。
 炉が起動すると自動的に充電もされるようになっている。
 この出鱈目に高性能のバッテリーはもちろん、私が発明した最新のものだ。
 この強化装甲に搭載して居る程度のサイズでも、200GW/hの電力を有する、もう少し研究して最適化すればこの5倍は行けるんじゃ無いだろうかとは思うけど、ここの設備ではそんな研究も今は未だ難しそう。
 まぁ、この世界の現状であれば十分すぎるだろうと思う。
 ちなみに搭載している原子炉の方は工房の電力を賄う為に作った物と同型のポータブル版だ。
 スタートするとまず、原子炉エンジンが起動。
 20分で、稼働可能電力が充電終了。
 初めだから時間掛かるだけですよ?
 バッテリー空っ欠だもんね。
 動けるようになったので、搭乗して動かして見る。
 腕、足、うん、ちゃんと動くな。
 この際だからパラパラでも踊って見たりして・・・冗談だが。
 私にそんなもの踊れる訳無いだろ、ずっと研究と開発に明け暮れてた典型的引き籠り科学者だったんだから。
 でもタップダンス位なら・・・
 すみません嘘付きました、タップも踊れません、ちょっと見栄張りました。
 ともあれ、裏庭に在るこの工房から一歩踏み出せばそこは当然ながら辺境伯の屋敷の裏と言う事だ。
 こんな狭い所でローラーダッシュなんかしたら確実に屋敷破壊なんて事に成るので、ゆっくり歩いて工房の敷居の外に出る。
 すると、目の前に執事のジュドーさんがぁっ!
 あっぶなっ! うっかり踏み潰す所だったYO!
 姿勢制御と回避行動用にと思って搭載しておいたエアースラスターのお陰でギリギリ回避できた。
 やはり転ばぬ先の杖は重要だよね。
 ただとっさの事だったもんで、動きが歌舞伎のようになってたのは否めないんだけどさ。
 どんなってほら、片足立ちでトントンと飛びながら舞台の中央に出て来て首回して大見得切る奴、あれにそっくりな動きになっちゃってちょっと恥ずかしかった。
 これでジュドーさんが、よっ!中村屋っ!とか声掛けしてくれたりしたら未だ良かったけど異世界だし無理だっしょ?
 お陰で一人で変な格好してるだけになって非常に恥ずかしかったんだよ。
 まだパラパラの方が良いよね。
「おお、エリー殿、ついに完成したのですか?これが強化装甲とか言う奴ですな?」
「ああ、丁度良かった、ジュドーさん、複座式で作ったプロトタイプなんだけどね、そのまま細部調整して領主専用機になる予定なんだ、勿論あんたと伯爵様の二人乗り用ね。」
「それは私も乗れると言う事ですね、でしたら今乗せて貰っても宜しいですか?」
「ああ、はいはい、どうぞ。」
 立膝にしゃがんで搭乗スタイルにして、ジュドーさんを後部座席に乗せると操作を教えて見る事にした。
 結果から言うと、ジュドーさんは飲み込みが妙に早く、僅か30分ほどで、あっという間に私より上手いんじゃ無いかと言うくらいに操って見せた。
 何だかスゲェな、この人・・・
 まぁ、操作自体は難しいものでは無くて、手足を動かす事でその通りに動くような操作性になってるから身体能力が高いって事なんだろうけどね。
 この初老の爺さんがそこまでと言うのは少々驚きではあるけど。
 これだったらニューロテクノロジーも導入して脳波検知ヘルメットでもっと反応速度上げたら面白い事に成りそうだ。
 って言うかジュドーさんに電脳化施しても良いですか?
 あ、だめ?
 一応本人に確認して見たら被せ気味に断られた、残念。(チっ)
 電脳化したらメットなんか無くてもリンク出来るのになぁ。
 裏庭でこんなもんが走ったりしてりゃ気が付くのも当然だが、しばらくするとセドリック辺境伯が様子を見に出て来た。
 そしてアッサリ腰を抜かしたのだった・・・
 ああはいはい、普通そう言う反応になるわな、ジュドーさんが驚かなさ過ぎるだけでさぁ。
「な・なななな・・・なんだこれは!」
 慌てふためく辺境伯様、おしっこチビって無いでしょうね、大丈夫?
「これはセドリック様、素晴らしいですぞ、この強化装甲と言う奴は。」
 何だかご機嫌だわ、ジュドーさんってば・・・
 なんかね、悪ガキに与えちゃイケナイ玩具あげちゃった気分なんだけど気のせいかな。
 しいて言うならば暴れん坊の男子高校生にバイク買い与えちゃった気分と言うか・・・
 真っ先に前線に飛び込んで行きそうな怖さがあるんだよな、この人。
 特攻隊長と言うか、切り込み隊長的な?
「こ・・・これがそうなのか!ついに完成したのか!?」
「そうだよ、これが強化装甲、搭乗型ロボットと言う括りなんだけど、そうだな、判り易く説明すると、ゴーレムみたいなもん?」
 魔法が無い可能性が高いこの世界にゴーレムと言う物が認識にあるかどうかは知らないけどもね。
「ご、ゴーレムだと!? おとぎ話の怪物では無いか。」
「おとぎ話で怪物なの?」
「ああ、魔法使いの操る怪物の事だな。」
「へぇ、そうなんだ、でもこのゴーレムは普通にジュドーさんにも操れる、勿論貴方にもね。」
 と言ってコックピットの前部座席から飛び降り、乗って見ろと勧めて見たのだった。
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