幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一

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第11章 夏のはじまり

第38話 新婚旅行の計画を考えながらイチャイチャ

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 俺たちの新婚旅行は海外にしようという方向になったわけだけど。
 その夜の事。
 自宅の寝室でPCを使って調べものをする俺たち。

「海外旅行ってやること多いんだな……」

 まず、パスポートという代物が必要だ。
 海外での身分証明書でもあり、絶対になくしてはいけないとも。
 そして。

「お金も両替しないとだし。クレジットカードも作った方がいいのかな?」

 椅子に座った俺を首の後ろから抱きしめながら言う百合。
 最近はこの姿勢も好きならしい。
 こういう感じで密着するのは甘えられてる感じが強くて好きだ。
 お風呂上りのシャンプーの香りも……これはハーブ系だろうか?

「アメリカでもヨーロッパでもあった方が良さそうだな」

 クレジットカード。高校生の時でも存在は知っていた。
 でも俺たちにとってはまだまだ現金が基本だ。
 しかし海外に行くとそうは行かないらしい。
 クレジットカードが基本のところも多いとか。

「クレジットカードは二人分作った方が良さそうだよね?」
「そうだな。別行動になった時に困るだろうし」

 クレジットカードの入会手続きとかはいったん後回しだ。

「スーツケース……たまに街中とか電車で見かけるよな」

 あとは洋画の一シーンとか。

「これも二人分だね?」
「別に着替えとか要るだろうしな」

 スーツケース二人分の購入を調べものに追加。
 調べものをしている最中に別の調べものが出て来る。

「あーそっか。海外だと薬も違うかもしれないんだな」

 常備薬は携帯しましょうという事がページには書かれている。

「コンセントまで違うのか。予想以上に色々準備することが多いな」

 しかも、アメリカとヨーロッパで違うし、ヨーロッパでも色々ある。

 お金の問題は数泊は可能なくらいの貯金があるのでなんとかなる。
 しかし、国内だと考えなくていい携帯品が色々あるのがややこしい。
 他にもガイドブックや指差し英会話。などなど。

「やっぱり国内にする?」

 気遣わしげな声が耳元に聞こえて来る。
 耳元で囁かれると少しぞわっと来る……百合もそういう事言うな。
 案外男でも女でもその辺りは同じなのかもしれない。

「何事も挑戦だ。気にするなって」
「ありがと」
「英語の通じやすさを考えると、フランスとかドイツは避けた方がいいな」
「ヨーロッパは英語通じるイメージがあったけど。そうじゃないんだね」

 フランス国内ではフランス語しか通じない地域もあるらしい。
 そして、ドイツもドイツ語しか通じない地域もあるらしい。
 マクドナルドやスターバックスは全世界にあって英語はまず通じるようだけど現地の人しか訪れないような店だとそうでもないとか。

「あんまり聞いたことがない国だと困りそうだし。アメリカのニューヨークとかイギリスのロンドン中心が無難そうだよな」

 新婚旅行とはいえ冒険し過ぎるのも考えものだろう。

「私的にはロンドンのメシマズ体験ツアーも捨てがたい」

 またメシマズの話か。

「普通は美味しい料理を食べたいと思わないか?」

 なんとなく理由の想像もついてしまうけど。

「だって、あのスターゲイジーパイとかうなぎのゼリー寄せとか。きっと忘れられない体験になるよ!」

 もうこの嫁さんは。本当に仕方がない奴だ。
 しかしロンドンにだって美味しいものはいっぱいあるだろう。
 メシマズ体験だけじゃなくてちゃんと美味しいところも探しておこう。
 大都市ロンドンにはきっと色々な店があるに違いない。

「強烈な体験にはなりそうだ。ニューヨークだとどうなるんだ?」
「自由の女神とかタイムズスクエアはやっぱり行ってみたい」
「百合にしては普通だな」
「メシマズ体験は普通じゃないと?」
「百合らしいけど普通ではないな」

 百合も自覚はあるだろうに。

「そこは普通だと言って欲しいお嫁さん的な気持ち」
「わかった。普通だよ普通」
「よろしい」

 様子を見てるとなんとなくじゃれ合いたくて遊んでいる感じだ。
 海外旅行先を考える体でいちゃいちゃしたいというのもあるんだろう。
 俺もこのいちゃいちゃを楽しんでしまってるからお互い様なんだけど。
 
「百合はロンドンの方行きたそうだけど、どうなんだ?」
「うん。どっちかというとロンドンぽい気分」
「じゃあロンドンでまず旅費を計算してみるか」

 出発は……仮に二か月先としておくか。

「へえ。一番安いのだと一人辺り往復75000円か。思ってたよりも安いな」

 往復15万くらいはかかると思ってたのだけど。

「でもこの。アブダビ(AUH)経由って何かな?」

 アブダビ?初めて聞いた地名だ。

「そういえば。経由っていうくらいだから乗り換えっぽいけど」

 飛行機を途中で降りて空港で乗り換えるのか?
 電車の乗り換えしか経験した事がないから実感が湧かない。
 国内だって飛行機は一本で行けるところしか経験がないし。

「アラブ首長国連邦の空港だって」

 高校の授業で出てきた名前だ。
 海外旅行で行く先としては全然イメージが湧かない。
 石油とかイスラム教とかそういう漠然とした印象くらいだ。

「アラブで乗り換えって少し不安かもな」
「うん……乗り換えるのでもヨーロッパの方がいいかも」

 チケットがあるわけだから危険なんてことはないだろう。
 ただ、3時間もの間、普段名前を聞かない国の空港で過ごさないといけない
 少し不安はある。

「少し高いけどシンガポール経由のがあるよ!」
「でかした百合」

 ご褒美に首筋をさすってやる。

「ちょ、修ちゃん。急に……やめっ」

 声が途端に色っぽくなった。

「そう言って嫌じゃないんだろ?」
「嫌じゃないけど~もうちょっと後で」
「わかった」

 調べものの最中にやると色々我慢できなくなりそうだ。
 というわけで調べもの再開。

 元のルートより2万円も高くなるのは少し出費としては痛い。
 しかしシンガポールは有名観光地。
 テレビでもネットでもマーライオンやらなにやらよく聞く。
 初めての海外ではヨーロッパに次いで安心そうな気がする。
 空港もきっと清潔だろうし。

「だとすると、往復で合わせて20万円くらいか……」

 これに何泊かの宿泊料金を加えると一体いくらになるだろうか。
 っと。

「宿も探しておかないとな」
「ロンドンだとアパートメントホテルっていうのがあるみたいだよ」
「響きからするとアパートっぽいけど」
「キッチン付きで簡単な自炊とか出来ちゃうんだって」
「それはそれで楽しそうだな。向こうの食材持ち込んでとか?」
「うん。出来るみたいだよ」
「よし。それで探そう」

 https://www.booking.com というサイトが出てきたので二人で眺めてみる。
 とりあえず四泊くらいで料金を計算してみよう。

「安いのだと4万円台後半で高いと10万円くらいか。せっかくの新婚旅行だし、高めのところ選んでみるか?」

 何せ一生に一度の新婚旅行。あんまりケチケチするのもどうかと思う。
 しかし、あんまりこちらにお金かけると他を楽しめないかもしれない。
 それこそ食事とか。

「ホテルは二人で泊まれれば十分。それより他のところにお金かけよ?」
「そうだな。ずっとホテルに引きこもってるわけじゃなし」
「このアメリカンホテルっていうのどう?」
「なんでロンドンなのにアメリカンなんだろう」
「細かいこと言わない。中心部に結構近いみたいだし」
「よし。とりあえず予約だけ先にしちゃうか」
「大丈夫?」
「エイヤっと日程決めちゃえばなんとかなるって」
「うん。そうしよっか」

 というわけで先に四泊分ホテルだけ仮予約。
 しかし、日本語で予約出来てしまうんだな。
 ちょっと拍子抜けだ。

「でも……ロンドンでダブルベッドで二人っきりかー」
「百合、なんか想像してるだろ」
「私たち新婚さんでしょ?」
「そうなんだけど……いや、そうだな。新婚旅行なわけだし」

 非日常な分ムードも盛り上がるかもしれない。
 と、夜も遅いせいか妙なムードになってるな。

「あの……修ちゃん」

 目を閉じて唇を突き出されて反射的に唇を合わせる。
 お互い舌を絡ませあっているとどんどんムードが出来て行く。

「調べものが途中だけど……いいか?」
「私もそういう気分だったし」

 百合も息が荒くなって来ている。
 きっと、俺と同じように百合も想像してしまったんだろう。
 似たもの同士だ。

 こうして調べものを途中にしたままベッドにもつれこんだ俺たちだった。
 しかし、どうにも俺たちの場合、百合から誘ってくることが多い気がするな。
 ま、考えても仕方がないか。

 異国の地での新婚旅行、少しずつ計画を立てて行くのも楽しい。
 それも百合と二人だからなんだけど。
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