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50.久しぶりの学園です①

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久しぶりの学園だというのに朝からサリーに注意事項を山ほど言われて頭がパンクしそうよ。私が言っちゃいけないことを、ぽろりと言わないか心配なんですって。まぼろしの薬のこととか、ラムルのこととか、色々…。
大体今まで学園を休んでいたことは体調不良になっているんですって、今まで病気をしたことがないから、しっかり良くなるまで様子を見ていたって言えばいいらしいけど、忘れそうね。本当はそもそもが知恵熱だから、心苦しいわ。

お兄様がシルバーに私のフォローを頼んでくれているとサリーは言っていたけど、シルバーで大丈夫かしら。私がぶつぶつ言っていると、サリーが手紙を差し出してきた。何かしら?もう馬車に乗るところなのに。
「アーサー様からです。学園に行く時に渡すようにと言われています。」
「アーサーから!」
アーサーには、なんとなくこうなることが分かっていたのかしら?

私は馬車の中でどきどきしながら手紙を開けてみた。


~大好きなマリーへ~

君がこの手紙を読んでいるってことは、僕はマルクと結界を張りに出かけたんだね。知っていると思うけど、僕は本当にマリーと離れるのがつらいんだ。離れたくないんだよ。だけど、これだけは絶対にやり遂げないといけないことだものね。そうしないと、マリーもマルクも僕も絶対に後悔する。誰も幸せになれないから。僕は絶対にマルクと一緒にマリーのもとに帰って来るからね。たぶん、沢山魔獣にも遭遇すると思うけど、ちゃんと、騎士団で鍛えてきたし、僕は強いから安心して。だから一つだけ約束して、学園生活をうんと楽しむこと。そして僕が帰ってきたら楽しかったことを全部聞かせてね。僕はそれを楽しみに頑張るから。
追伸:デートの時の黒バラと青バラを記録の水晶からガラス玉に転写してみたよ。僕とお揃いのネックレスだよ。ガラス玉だけど綺麗でしょ?青バラと黒バラがくっついて入っているから僕とマリーみたいでしょ。離れていてもいつも一緒。ちょっとカッコつけちゃったね。~マリーを誰よりも愛しているアーサーより~

涙がぽろぽろ出てきて止まらなかった。馬車の中で良かったわ。ガラス玉の中の黒バラと青バラは寄り添いながら咲いているように見えた。アーサーに沢山楽しいことを話せるようにうんと、学園を楽しまないとね。泣いている場合じゃないわ。マリーファイトよ!

馬車を降りると目の前にシルバーが立っていた。
「おはよう。もしかして待っていてくれたの?」
「うん、今日からマルク殿もアーサー殿もいないでしょ。」
「そうね…。」
「それにね、デビュタントの時からマルク殿に頼まれていたんだ。結界を張りに行く時はマリーのことをよろしくねって。」

「とても心配性なお兄様なの。シルバーごめんなさいね。」
「大丈夫だよ。馬車の停留所も隣だし、マルク殿に頼りにされて僕も嬉しいんだよ。さぁクラスに行こう。」
「ええ、シルバーありがとう。」
それからクラスのみんなにはシルバーが上手に説明してくれたので何の心配もいらなかった。シルバーで大丈夫かなーなんてちょっとだけ思ってごめんなさい。あなたはたしかに優秀な我が国の宰相様の息子さんだわ。

午後の授業はいきなりテストだったけど、古語に数学に歴史、たぶん百点ね。だってひらがなに、中学の基礎レベルの数学でしょ。あとはお兄様にがんがん詰め込まれた歴史だもの。午後の植物学はアン先生が今日から戻ってこられたから(平民街で解熱剤とか薬の調合しているのをお見かけしたわ。)今日がみんなも初めてらしいから良かったわ。それよりも今はランチよ、お腹が空いて倒れそうよ。

「ルナ、アンナ、早く食堂に行きましょう。」
「マリーったら本当に元気になって良かったわ。」
「うん、心配かけてごめんね。シルバーとレッドも早く行こう。」
五人で向かっていると、ルナがレッドとアンナがいい感じになっていると教えてくれた。いい感じ?それって恋人ってこと?たしかにレッドのお世話をアンナが焼いている感じで、レッドも案外嬉しそう?な感じだわ。見ているこっちまで幸せになれるわ。

ランチを食べながらルナが、
「そろそろ来月のデザートを決めない?」
って話しかけてきた。私もそう思っていたので、ララ嬢に言われたフルーツの話をしてみたら、二人とも喜んでくれた。
「色々なフルーツを食べやすく角切りにして、そのまま食べてもいいし、トッピングでヨーグルトやソフトクリームを入れたり、そこにジャムや蜂蜜をかけるなんてどうかしら?」

「マリー素敵じゃない。とてもいいと思うわ。」
アンナが賛成してくれて、ルナも頷いてくれている。
「二人ともありがとう。フルーツは無償で提供してくださるそうだし、これなら食堂のおば様たちの負担も少ないかなーって思ったの。」

「それならほぼ決まりね。来月のデザートの日が楽しみだわ。フルーツの種類が決まったらあとは私とルナでレシピを作って渡しておくわ。」
「そうね、どんなフルーツがあるか、楽しみね。」
早速、私たちは中庭でララ嬢を見つけてフルーツの確認をしたら、逆にララ嬢がアンナとルナに好きなフルーツを聞いてくれて、ララ嬢とルナとアンナで話が盛り上がっている。こうなると女の子は長いのよね。ララ嬢と初対面とは思えないわね。

そんなことを考えていると、レッドが頼みがあると言ってきて、なぜかカエルを捕まえる方法を中庭の池で教えることになった。短時間でコツを掴めたようで喜んでいたけど私は誰かに見つからないかはらはらして疲れたわ。

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