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49.恋愛初心者ですが、大丈夫でしょうか

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「カサブランカ公爵様。デビュタント以来ですね。お久しぶりでございます。」
本当はこの間こっそりお家にお邪魔しましたけどね。
「ああ、マリー嬢、ありがとう。君のおかげで、キャサリンに思いを届けることができた。私たちに両片思いであることを教えてくれてありがとう。本当に感謝している。」
あら?『両片思い』が標準語になる日も近いかもしれないわね。

「それはおめでとうございます。気持ちが擦れ違ったままでは寂しいですものね。」
「それで何だが、私は今までの時間を取り戻したくて、いや、やり直したくて、結婚式をもう一度と言ってみたんだ。もちろん大きな式ではなくて小さなもので、でも断られた。」
「そうですか、ちなみに、小さなものとはどのくらいの規模ですか?」
「せいぜい三百人くらいで…。」
それは、この国の宰相様にとっては小さいかもしれないけど一般的には小さくないわね。

「それならと、新婚旅行だけでもと思って計画を立て始めたんだ。」
「新婚旅行は行かなかったんですか?」
「嫌われていると思っていたからね。」
「そうですか?ちなみにどこにどのくらい行こうとしていたんですか?」

「隣国に一週間くらい。」
無理ね。あなたは宰相様ですよ。
「でも、その計画がキャサリンに見つかって、あなたはきちんと宰相としての仕事をしてくださいと叱られてしまったんだよ。」
そうでしょうね。キャサリン様が正しいですね。
「私は何をすればキャサリンが喜んでくれるのか分からなくなってしまって。」

それでこんな状態になってしまったのね。うちのお父様とお母様の方がましだったわ。
「えーと、たぶんカサブランカ公爵様のお仕事の負担になるようなことをキャサリン様は望んでいないと思いますよ。誰だって好きな人に無理はさせたくないですものね。ですから、私でしたら、一緒にいる時に今まで言ってもらえなかった分、言葉で愛情を伝えてもらうだけでも十分嬉しいですね。」
「そんなことでキャサリンは喜んでくれるだろうか?」

「逆の立場を想像してみてください。朝起きていつもならおはようだけだったのが、キャサリン様から一言愛情のこもった言葉をいただけたらどうですか?」
「し、しあわせだ。」
まぁ、何て素直なお方なんでしょう。真っ赤になっていらっしゃるわ。

「公爵様が幸せだと思うことをされればいいのですよ。今までしたかったことでもよろしいかと。例えば庭園を一緒に散策したことはありますか?」
「ない。ずっとしたいと思っていた。」
良かった。目がきらきらと輝きだしたわ。

「きっと、キャサリン様も同じ気持ちです。」
「他にもあれば、本当に申し訳ないが教えてくれないか?」
まぁ、こんな小娘に頭を下げるなんて、とても好感が持てるわね。
でも、私も恋愛初心者なんで、そんなに頼りにされても困るんですけど。とりあえず、私がアーサーにして欲しいことを何でも言ってみようかしら。

「そうですね。一緒にお部屋でくつろぐだけでも喜ばれると思いますよ。今まで一緒にお部屋でお互いに今日あった何気ないことを聞いたりしたことがありますか?」
「全くない。聞いてみたいとは思っていた。」
「同じソファーで座って話すだけでも嬉しいですし、何気なく好きな食べ物やお花を聞いてみてはいかがですか?」
何だか私、生意気かしら?心配になって公爵様の方を見ると、きらきらとした瞳で一生懸命メモを取っていた。大丈夫みたいね。

「でも、まずはしっかりと仕事をなさって下さい。そうしないとキャサリン様が心配しますよ。」
「そ、そうだな。ありがとう。良ければ師匠とお呼び…。」
「絶対にだめです。」

師匠とか、絶対に嫌ですからね。口づけすらしたことすらないのに、冗談じゃないわ。アーサーが額にしてくれた挨拶程度のキスでいっぱいいっぱいなのに、恥ずかしい。

カサブランカ公爵様は元気を取り戻して、執務室に戻って行った。
「シルバー、絶対に師匠なんて言わせないでね。」
「もちろんだよ。絶対に言わせないから、そんなに怖い顔しないでよ。」
誰がそんなに怖い顔させていると思っているのよ。

「次からはシルバーが公爵様の相談に乗ってあげて。」
「それは無理だよ。結婚式は父上の案だったけど、新婚旅行は僕の案だったんだ。」
段々キャサリン様が可哀想になってきたわ。
「分かったわ。次からはキャサリン様にシルバーが直接聞いてあげて、家の中で公爵様とどんな風に過ごしたいかそれだけでいいから。」

「それなら僕にも出来るからやってみるよ。」
キャサリン様、今後はたぶん、変な提案は無くなると思いますよ。
「それじゃあシルバーまた明日学園で会いましょうね。」
「うん、また明日。」

行きは四人(お父様、お兄様、アーサー、私)で乗ってきた馬車に帰りは私だけでとても淋しかったけど。みんな頑張っているんだものね。

ブラックリリー公爵家の自室に戻って、私は私にできることを考えていた。それはもちろん魔道具に魔力を貯めることだけど、もっと早く貯める方法はないかと考えていたの。うーん、まぼろしの薬の時はアーサーに褒めてもらった後に能力が上がったのよね。私が幸せな気持ちになればいいってことかしら?悩んでいても仕方がないわね。一度やってみましょう。私は昨日のアーサーとのデートを思い出してみた。このあと、思いっきり自分の世界に入り込んでしまった私は、にやにやしたり、へらへらしたり、奇声をあげたり、真っ赤になったりと…。そうとう気味が悪かったみたいで、サリーに怖ろしいと言われてしまったわ。しかし結果は大成功。ブレスレットにとても早く魔力を沢山貯めれたの。どういう仕組みかは分からないけど本当にマジックね。サリーには、学園では絶対にやめて下さいと釘をさされたけどね。

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