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32.ビンツが逃げたそうです
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今朝早く突然お父様に起こされて、ビンツが逃げ出したと聞いて震え上がったわ。怖くて怖くてガゼルにずっとそばに居てもらったけど結局お父様と一緒に王宮のお父様の執務室に行くことになって、エマとガゼルも一緒に来てもらったわ。最近二人とも仲が良いのよね。執務室と言っても実際には仕切りがあって、執務室の中に小部屋がある感じなの。完全に締めてしまえば分からないもの。小部屋といっても前世で言えば八畳以上はあると思うのよ。あんまり覚えていないけど十畳くらいかしらね?ベッドもテーブルもソファーもあるもの。
「ここでは、ガゼルもエマも友達よ。この部屋は狭いから気を使わないのがルールよ。」
「お嬢様またそんな無理を仰って…。」
「三人でお菓子を食べるの!」
「ロザリー、ここに来たら途端に昔に戻ってしまったのかい?エマたちを困らせてはいけないよ。」
「だってお父様、お父様がお仕事中私はずっとここで待っているのですよ。それとも、お父様のお膝の上に居ても構いませんか?」
「・・・私もそうしてあげたいがそれは流石に無理なお願いだね…。仕方ない、エマたち今日だけロザリーの我が儘に付き合ってやってくれ。」
「「分かりました。」」
「ありがとうございます。お父様大好きですわ。」
「私も早く仕事が終わるように頑張るよ。」
「はい、お父様お待ちしておりますわ。」
お父様は笑顔で執務室に戻って行かれたわ。
「それではお嬢様、まずはお菓子を三人で食べるんでしたか?」
「ええそうよ。私がお茶を入れても良いかしら?」
「お嬢様がですか?それはカルロス様の時にされたらどうですか?」
「そう?じゃあ今日はエマに、お願いするわ。」
「今日はアップルパイですよ。紅茶はアッサムティにしました。どうぞ召し上がれ。ガゼルさんはコーヒーでよろしいですか?」
「ありがとう。エマ殿のコーヒーは美味しいから楽しみだな。」
「エマとお呼びください。ガゼルさんは男爵家の称号を取り戻されて今は男爵様ではないですか。」
「私は家を継ぐ気はありませんから、ずっとお嬢様のそばで御守りします。あの家は弟のデビュタントが済んだら弟に渡します。妹の病気もほとんど良くなっておりますし、いつか良縁に恵まれたらと私は思っております。妹としては元気になってお嬢様に恩返しがしたいと言っていますので結婚するかは分かりませんがね。」
ガゼルが本当に嬉しそうに話すものだからこちらまで嬉しくなってきちゃったわ。
「さぁさ、食べてください。冷めてしまいますよ。」
「そうね、いただきます。まぁ、なんて美味しいのかしら、酸味と甘さのバランスが最高だわ。リンゴの優しい香りが鼻に抜けて幸せ。紅茶の苦さも、ちっとも気にならないわ。この組み合わせ好きだわ。」
「それは良かったです。お嬢様、しっかり食べてくださいね。最近お嬢様は色々とお忙しくてお痩せになられて心配しておりましたのに…またこのようなことがあって…エマは心配でなりません。」
「たしかにお嬢様は痩せすぎだな、もう少し太ったほうがいいですよ。何事も体が資本だからな。」
「そうね。沢山食べるわ。エマもガゼルも食べてね。私一人だとなかなか食が進まないのよ。」
「よく分かっていますよ。さぁエマも食べますからガゼルさんも食べてください。」
「これは有り難い仕事だな。カルロス様に恨まれそうだな。」
「そうだわ!エマ、カルロス様たちの分もあるかしら?」
「もちろんありますよ。後で届けましょうね。」
「流石エマだわ。ありがとう。」
私たちはひたすら食べてもうお腹がいっぱいだわ。三つも食べちゃった。その後、私は気になっていたことを聞いてみたの。
「ねぇ、魔法使いってやっぱりおばあさんなのかしら?黒いローブとか着てるのかしら?」
「そんな不気味な格好はしていませんし、男性ですよ。今は三人しかいないはずです。その三人の方も結婚されていないので魔法使いも終わりでしょうね。そのうちの一人が誘拐されたんだそうです。」
「まぁ可哀想に、大丈夫なのかしら?」
「二人の魔法使いの方がかなり怒ってみえて、今回の件で犯人が絞られたので犯人が見つかるのも時間の問題だと言ってましたよ。」
「ガゼルはなんでそんなに詳しいの?」
「俺、他の人より耳がめちゃくちゃいいみたいなんです。隣りの声が丸聞こえですから。」
「そう言えば、この間も馬の蹄の音を聞き分けていたものね。ガゼルは凄いわ。」
「問題はその魔法使いの方の魔法の効力が解けたということはその方の命が危険らしく、焦っておられるようですよ。」
「それは大変じゃない、早く助けないと。」
私は思わず執務室にいるお父様の前に駆け出していたわ。
「お父様、魔法使いさんを絶対に助けてあげてください。私に出来ることがあれば仰ってください。」
「ロザリー、仕事中に入ってきては駄目だよ。」
「でもビンツは私を捕まえようとしているのでしょう?私のせいで誰かが苦しんでいるなんて耐えられませんわ。」
「宰相殿の娘殿は心も綺麗でお美しい方なのですね。始めまして、魔法使いのアルと言います。こちらがデルです。そして誘拐されたのがビルです。私たちは三つ子でしてそっくりでしょう。」
「ご令嬢のお気持ちは大変嬉しいんですが危険な目に合せるわけにはいきません。ただご令嬢の髪の毛を一本いただけないでしょうか?」
「ええ、もちろんそれでお役に立てるのであればどうぞ。」
「ありがとうございます。それではいただきます。」
「あら?全く痛くないわ。」
「気付かれるようでは魔法使いとは言えませんので、では失礼して…。」
「えっ?私?」
「魔法の痕跡は既に追えました。いまから乗り込みます。場所はここから二キロ程離れた場所です。人数は総勢五十人といったところでしょうか。」
「それくらいなら私ども二人で、余裕ですが、ビルを取られているのであえてロザリー嬢を渡す真似をします。そこでビルを無事に助けてから一網打尽にします。」
「あの?もっと強い方を私の姿にしてはどうですか?例えばカルロス様とか…。」
「残念ながらビルしかその魔法は使えないのです。私たちは自分が変身することしか出来ません。それも知ったうえでビルを誘拐したのだと思います。」
「では、私を連れて行ってください。私にはカルロス様がいますから。」
「いいのですか?宰相殿?」
「はぁ~、駄目だと言ってもこの子は行くでしょうから、少し待ってください。カルロスくんを呼んでくれ。」
しばらくしてカール様が来てくださったわ。今日も、素敵。
「ここでは、ガゼルもエマも友達よ。この部屋は狭いから気を使わないのがルールよ。」
「お嬢様またそんな無理を仰って…。」
「三人でお菓子を食べるの!」
「ロザリー、ここに来たら途端に昔に戻ってしまったのかい?エマたちを困らせてはいけないよ。」
「だってお父様、お父様がお仕事中私はずっとここで待っているのですよ。それとも、お父様のお膝の上に居ても構いませんか?」
「・・・私もそうしてあげたいがそれは流石に無理なお願いだね…。仕方ない、エマたち今日だけロザリーの我が儘に付き合ってやってくれ。」
「「分かりました。」」
「ありがとうございます。お父様大好きですわ。」
「私も早く仕事が終わるように頑張るよ。」
「はい、お父様お待ちしておりますわ。」
お父様は笑顔で執務室に戻って行かれたわ。
「それではお嬢様、まずはお菓子を三人で食べるんでしたか?」
「ええそうよ。私がお茶を入れても良いかしら?」
「お嬢様がですか?それはカルロス様の時にされたらどうですか?」
「そう?じゃあ今日はエマに、お願いするわ。」
「今日はアップルパイですよ。紅茶はアッサムティにしました。どうぞ召し上がれ。ガゼルさんはコーヒーでよろしいですか?」
「ありがとう。エマ殿のコーヒーは美味しいから楽しみだな。」
「エマとお呼びください。ガゼルさんは男爵家の称号を取り戻されて今は男爵様ではないですか。」
「私は家を継ぐ気はありませんから、ずっとお嬢様のそばで御守りします。あの家は弟のデビュタントが済んだら弟に渡します。妹の病気もほとんど良くなっておりますし、いつか良縁に恵まれたらと私は思っております。妹としては元気になってお嬢様に恩返しがしたいと言っていますので結婚するかは分かりませんがね。」
ガゼルが本当に嬉しそうに話すものだからこちらまで嬉しくなってきちゃったわ。
「さぁさ、食べてください。冷めてしまいますよ。」
「そうね、いただきます。まぁ、なんて美味しいのかしら、酸味と甘さのバランスが最高だわ。リンゴの優しい香りが鼻に抜けて幸せ。紅茶の苦さも、ちっとも気にならないわ。この組み合わせ好きだわ。」
「それは良かったです。お嬢様、しっかり食べてくださいね。最近お嬢様は色々とお忙しくてお痩せになられて心配しておりましたのに…またこのようなことがあって…エマは心配でなりません。」
「たしかにお嬢様は痩せすぎだな、もう少し太ったほうがいいですよ。何事も体が資本だからな。」
「そうね。沢山食べるわ。エマもガゼルも食べてね。私一人だとなかなか食が進まないのよ。」
「よく分かっていますよ。さぁエマも食べますからガゼルさんも食べてください。」
「これは有り難い仕事だな。カルロス様に恨まれそうだな。」
「そうだわ!エマ、カルロス様たちの分もあるかしら?」
「もちろんありますよ。後で届けましょうね。」
「流石エマだわ。ありがとう。」
私たちはひたすら食べてもうお腹がいっぱいだわ。三つも食べちゃった。その後、私は気になっていたことを聞いてみたの。
「ねぇ、魔法使いってやっぱりおばあさんなのかしら?黒いローブとか着てるのかしら?」
「そんな不気味な格好はしていませんし、男性ですよ。今は三人しかいないはずです。その三人の方も結婚されていないので魔法使いも終わりでしょうね。そのうちの一人が誘拐されたんだそうです。」
「まぁ可哀想に、大丈夫なのかしら?」
「二人の魔法使いの方がかなり怒ってみえて、今回の件で犯人が絞られたので犯人が見つかるのも時間の問題だと言ってましたよ。」
「ガゼルはなんでそんなに詳しいの?」
「俺、他の人より耳がめちゃくちゃいいみたいなんです。隣りの声が丸聞こえですから。」
「そう言えば、この間も馬の蹄の音を聞き分けていたものね。ガゼルは凄いわ。」
「問題はその魔法使いの方の魔法の効力が解けたということはその方の命が危険らしく、焦っておられるようですよ。」
「それは大変じゃない、早く助けないと。」
私は思わず執務室にいるお父様の前に駆け出していたわ。
「お父様、魔法使いさんを絶対に助けてあげてください。私に出来ることがあれば仰ってください。」
「ロザリー、仕事中に入ってきては駄目だよ。」
「でもビンツは私を捕まえようとしているのでしょう?私のせいで誰かが苦しんでいるなんて耐えられませんわ。」
「宰相殿の娘殿は心も綺麗でお美しい方なのですね。始めまして、魔法使いのアルと言います。こちらがデルです。そして誘拐されたのがビルです。私たちは三つ子でしてそっくりでしょう。」
「ご令嬢のお気持ちは大変嬉しいんですが危険な目に合せるわけにはいきません。ただご令嬢の髪の毛を一本いただけないでしょうか?」
「ええ、もちろんそれでお役に立てるのであればどうぞ。」
「ありがとうございます。それではいただきます。」
「あら?全く痛くないわ。」
「気付かれるようでは魔法使いとは言えませんので、では失礼して…。」
「えっ?私?」
「魔法の痕跡は既に追えました。いまから乗り込みます。場所はここから二キロ程離れた場所です。人数は総勢五十人といったところでしょうか。」
「それくらいなら私ども二人で、余裕ですが、ビルを取られているのであえてロザリー嬢を渡す真似をします。そこでビルを無事に助けてから一網打尽にします。」
「あの?もっと強い方を私の姿にしてはどうですか?例えばカルロス様とか…。」
「残念ながらビルしかその魔法は使えないのです。私たちは自分が変身することしか出来ません。それも知ったうえでビルを誘拐したのだと思います。」
「では、私を連れて行ってください。私にはカルロス様がいますから。」
「いいのですか?宰相殿?」
「はぁ~、駄目だと言ってもこの子は行くでしょうから、少し待ってください。カルロスくんを呼んでくれ。」
しばらくしてカール様が来てくださったわ。今日も、素敵。
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