転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

文字の大きさ
11 / 77
幼少期編

アマリアの観察日誌

しおりを挟む
 月の裏側には様々な宇宙人たちの拠点がある宇宙基地が存在する。

 アルタイルから来たアマリアは地球探索チームの仕事終わりに月の裏側にある拠点に帰っていた。

「ふっふっふーん♪」

 拠点にある自室へと戻ったアマリアはさっと宇宙服を脱いで地球から持ってきたポテトチップスとコーラを上機嫌で食べはじめた。

 ぱりぽり、

 ごくっっ、ごくっっ!

 ぷはぁぁぁあ!!

「コレよ!コレ!!私が地球探索に求めていたものはコレなのよ!!地球の食べ物はなんて美味しいのかしら!!」

 ここ数年、基地にある簡易な食事、栄養ドリンクとサプリメントばかりで、そもそも食事に疎いアルタイル星人にとって地球の食べ物に興味を持つ者は私以外にいなかった。

だからこそ地球の食べ物を入手する許可を得るまでには時間がかかってしまった。

 私が地球の食べ物に目覚めたのは偶然だった。

 話は少し遡る。

 それは溺死していた地球人(佐藤明)を救出し、とある惑星へと転生させた後、現場付近に彼の家族が持ってきていたポテトチップスとコーラという物があった。

それは失った子のために泣きながら弔いの品として置いていったものだった。

 私はそれらの食べ物に対して、つい好奇心を持ってしまい、ついつい弔いの品であるポテトチップスとコーラを拝借してしまったのだ。どうせ本人もいないんだしね。

しかし、ポテトチップスとコーラというものが何なのかわからなかったため、地球人の資料を調べ、彼らの生活を観察してこれが食べ物であるとわかったのである。

私は地球人の食文化というものに興味が湧いた。

 しかし私たちアルタイル人にとって地球の食べ物が体に合うかはわからなかったため、仕方なくアルタイルから連れてきた小動物を使って臨床実験を行い、また、ポテトチップスとコーラの成分を調べて生体反応への副作用がないかをとことん調べ尽くした。

 結果は先ほどの通りである。

 『毒物反応なし』

「よし!これで安心して口の中に入れられるわ!」

嗜好品というものを初めて経口摂取した私は地球の味覚というものに新しい感動を覚えた。

「こ、これが、地球の味!」

 母星ではここ最近、食料問題の対策としてサプリメントや培養した食材を食べることが多かった。しかも調味料という概念のない素材のみの食材しか今まで食したことがなかったのだ。

 ポテチという魅惑の食べ物によって地球人の味に目覚めた私は思わず悦に入ってしまった。

その至福のひとときの中、窓から見える地球という星は太陽に照らされて蒼くその美しい姿を表している。

 「やはり地球が美しいから、食べ物も美味しいのかしら」

私は感動のあまり涙を流しながらポテトチップスを貪り尽くす。

 シュワシュワと泡を立てるコーラは今まで飲んだどの栄養ドリンクよりもはるかに美味である。

「こんなに美味しいものを地球人たちは食べているのか」

 けしからん奴らだ。

 パリパリッ、モグモグ、しかし、パリッ、モグモグ、何とも、むぐ、グビグビ、けしからん、ぷはー!!いやあ、ほんとけしからん!非常にけしからん!!ゲフッ!!

 うっ!?
 は、鼻が痛い!!

 何だ?これは!?

 アマリアは炭酸飲料の刺激ゆえの鼻の痛みに驚き、思わず己の鼻を押さえた。

つーん、

「ふう、痛くなくなったな。確かに毒性は無いはずなのに、これは何だったのだ?」

私はコーラの成分表をもう一度確認した。
特に問題はないようだ。

しかし、痛みが和らぐとまた飲みたくなってしまう。

「コーラ・・・・・・何と恐ろしい飲み物なのだ」

グビッ、グビッ!ぷはー!!


はっ!?

 気がつけば私が持っていたコーラは空になり、ポテチの入った袋もすみっこに粉のようなポテトが一欠片しか残っていない。

「な、なんということだ・・・・・・」

 ポテトチップス。
 これもなんと恐ろしい食べ物なのだろうか。見ての通り夢中で食べてしまったせいで袋の中は空っぽ、もう無くなってしまった。

満腹感はある。
にもかかわらず、もっと欲しい、もっと食べたいと願ってしまうのだ。

なんとも恐ろしい・・・・・・。

私はこの欲求に抗えないのか。
いや、アルタイルの誇りにかけて、私はこの欲求には抗わなければならない。

「でも、もっと食べたいな・・・・・・」

空袋となったポテチの袋を名残惜しそうに見つめるアマリアの心の中はいま、己の欲求に抗うべく葛藤していた。

(私は地球の貨幣を持っていない。地球人に紛れて生活する容姿ではないし、ここに来たのはあくまでも地球という星の文明の調査に来たけなのだ)

「私は誇り高きアルタイル人だ!こんな地球の食べ物なんぞに振り回されてたまるか!」

 アマリアはポテチの袋を両手でクシャクシャにして潰すとそのままゴミ箱に捨てた。

(今回の件も上司にバレたらヤバい問題だ)

 調査員が密かに死んだ地球人を復活させ、勝手に昔の惑星に転送したとバレたら強制送還の後、確実にクビになるだろう。
しかも地球の食べ物を無断で勝手に食べてしまっているのだ。

「これ以上、問題を起こしてはいけない。うぅ、我慢・・・・・・」

 アマリアは己の欲を振り払うように勢いよくコーラの空き缶をごみ箱に投げ入れた。

「でも、また今度地球に行った時に持って帰ろうかな」

 懲りない性分であった。

⭐︎

 アマリアはこうした中毒性のある食べ物の存在に対する免疫はなかったようだ。地球の味覚に対してやや、いや、すでに中毒になりつつある。

 アマリアの行為は明らかに越権行為であった。しかしアルタイル星人の特徴として、彼女たちは旺盛な好奇心には抗えずにそのままのめり込んでしまうところがある。
 今回も好奇心ゆえについつい問題を大きくしてしまっているようだ。

⭐︎

「そういえばあの地球人はどうなってるかな?」

 私は調査対象の昔のとある惑星に転生(転送)させた地球人の生体反応を調べるためにあの地球人が転生した頃に合わせて転送しておいた不可視の監視カメラを起動させ、目の前にある大きなモニターに映した。

 砂嵐の画面がすぐ切り替わり、金髪碧眼の小さな男の子がモニターに映し出される。

「やった!成功だわ!あれ?なんかあの子供、あの星の人間にしては変な顔立ちをしているわね」

 私は映像の時間を戻して転生する前の地球人の姿を再度モニターに映し出した。

「あれ?前(前世)の顔のままじゃないの!なんで?」

 私は原因を探るべく、転生した時のことを思い出した。

「ああ!霊体が前世のままだったから子宮に転送したときにうまく変換されなかったのね」

 人間の転生、生まれ変わりは通常その星にある霊界と呼ばれる高次元世界で行われる。
 そこでは霊体を3次元世界の肉体に合わせて変換させ、魂の状態を調整してから転送するのが通例である。

 私はその過程を飛ばして直接あの星の人間の母胎に魂をそのまま転送してしまったのだ。

「あちゃあ、んー、もういまさらだし、どうしようもないし、……ま、いっか」

 どうせバレなければ良いのよと、なにかよくわからない事を呟きながらアマリアはここ数年のアレクの生活を早送りで観察した。

「へぇ、魔法が使えるようになったんだ。そういえばあの星の人間たちは神の威神力を扱える数少ない種族だったわね」

この3次元世界において、人類は神の権能を使う術を知らないため、神の使徒が地上界にて教えるのが通常だ。ただ、この星の人間たちは自然界の現象を意図的に操ることができる稀有な存在なのだ。

「たしか魔法だったかしら。便利よね」

不意におねしょ疑惑で困惑するあの子供を見て私は笑い転げた。

ただ彼なりに努力したのか、幼少期から魔法の力を発現するところを見て私は素直に驚いた。

「異世界転生って地球人の一部には人気あるみたいだけど、違う環境に生まれ変わってから努力するのに憧れるってどうなのかしら?だったら今生の人生をもっと頑張れば良いのにねえ」

頬杖をついた私は思わず呟いてしまう。

地球人の文明はやや複雑だ。国家によって仕組みは異なるが、かつての封建制度や民主主義と謳う人間たちは異星人たる私たちの認識からは生きにくい社会の中で生活をしている。

働かない人間、人の富を当てにする人間など、私にはとうてい理解できない。いまだ調査中とはいえ、地球人の思考にやや理解できないところは多い。

「ま、これ以上は考えても結論には届かないわね。この子供も異世界転生してから生を充実しているようでなによりね!今後の成長を見守りましょうか」

 こうしてアレクの異世界生活を観察したアマリアはモニターを消し、あくびをしながら自分の睡眠用カプセルに入るのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...