転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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幼少期編

お茶会

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《アレクサンドル国王視点》

ようやくアレクの婚約発表のためのお茶会を開くことが出来るようになった。

通常、王子の婚約発表ともなれば王宮にて国王自らが大々的に発表し、貴族だけでなく全ての王国民が王子の婚約を祝うものだ。

そして夜には舞踏会が開かれて王子は婚約者とのダンスお披露目となる。

舞踏会を開く時期はもう決めてあるものの、アレクは未だ婚約者と会っていないため、婚約発表の前の段階としてお茶会を開催することにした。

一応、今回のお茶会では私の判断でアレクの婚約者選びの際に難色を示した貴族たちをお茶会には呼ばないことにした。

王族のお茶会に呼ばれなかった事を知れば、アイツらも後悔することだろうな。

しかし今回のお茶会だけではなく、アレクの婚約に関しては私にとって心配が尽きない。

今回、当の主役であるアレクは幼少期のそのほとんどを魔法と剣の鍛錬に費やしたためか、貴族社会において王族の身の処し方をあまり知らない。アレクの家庭教師であるアバウトからの報告では座学では教えているらしいが圧倒的に経験が足りないのが心配だ。

アレクはこの国の王族であり第一王子である。王族ゆえに家臣たちに媚びへつらう必要は無いのだが、私から見て息子であるアレクは感情を表に曝け出すことが多く、また貧相な顔立ちゆえ貴族たちに舐められる可能性がある。

ゆえにお茶会では婚約発表前の事前準備としてアレクには貴族たちとの交流には慣れてもらわなくてはならないのだ。

今回お茶会に招待したのは辺境伯派と中立派だ。ここ最近私に縁談を進めたり第二王子のイスタルに縁談を申し込んでくる貴族たちは招待するはずがない。

不安要素は排した。

「これでなんとかなれば良いのだがな」

私は頭を抱えて執務室を出ると、そのまま王妃の部屋へと足を運んだ。



王国では急遽、国王自らの招待によるお茶会が開催されるとあって貴族たちは驚愕した。

お茶会の内容も貴族たちを驚かせた。

アレク第一王子の婚約者として辺境伯の孫娘アイリーンが選ばれ、これで縁談が決まったという。

貴族たちはアレク王子が婚約できたことに驚いたが、今まで縁談を断ってきた貴族たちはお茶会に招待されなかったことに気づき、国王が第一王子を王太子にすべく大事にしていたのだとようやく理解した。

そして今までの対応がまずかったことを悔やんだものの、今更どうにかなるまいとやはり第二王子を王太子にという声をあげ出す貴族も数多くいた。

そしてお茶会に呼ばれなかった貴族たちはこぞって第二王子擁立派として結託することになる。

一方、当事者であるアレクはお茶会の前から浮き足立っていた。



《アレク視点》

僕はお茶会の一週間前、偶然にも婚約者であるアイリーンの姿絵を見てしまった。

父上が婚約者の顔を全然見せてくれなかった事を愚痴っていたところに愛妹のマリアが僕の婚約者であるアイリーンの姿絵を見せてくれたのだ。

どうや父上から借りてきたらしい。
僕はマリアからアイリーンの姿絵を拝借した。

また剣の師匠であるボルトもアイリーンの容姿について僕に話してくれた。

いわく美少女であると、

そしてアイリーンの姿絵を見てしまった僕はアイリーンの可愛らしさにもう思わず魅了させられてしまったのだ。

僕の目はいまやアイリーンの姿絵に釘付けだ。

今すぐ会いたい。
でもまだ会えない。

そう、お茶会当日まではアイリーンに会えない。

僕は愛妹から貰ったアイリーンの姿絵を大事にした。それこそベットに入った時にはアイリーンの姿絵を抱えて寝ていたほどだ。

そんな僕の姿を見たメイドのサーシャからは「アレク様、このようなことは気持ち悪いからおやめください」と言われてしまった。

仕方なくアイリーンの姿絵を机の上に置くことで納得し、僕は、ほぼ毎日、寝る前に机に置いたアイリーンの姿絵を見ることにした。

(王の予想通り)それ以降、僕はアイリーンに心を乱されてしまい、鍛錬にも集中できずボルト師匠にしごかれていた。

また魔法の訓練の時には集中が足りず、思わず巨大な火の玉を出してしまい、僕の住んでいる屋敷の隣りにあった倉庫を丸焼けにしてしまった。

流石に父上も怒り、僕はこっ酷く説教された。僕も懲りたはずなのだけれど、気がつけば元に戻ってしまうとのことだ。

父上は、最近の僕の状況に呆れてしまったようで、仕方なくアイリーンとの婚約を破棄させようかと言ってきた。

僕は絶望した。

アイリーンとの婚約を破棄するだって!?
婚約破棄なんてぜったい嫌だ!!

嫌だ嫌だ嫌だ!!

僕は顔を真っ青にして土下座して、「もう二度としません!心から神に誓います!!」と父上に必死になって縋った。

父上は僕の必死さが伝わったのか、よほどアイリーンに惚れたのだろうと婚約破棄の話は無かったことにしてくれた。さらに父上は母との出逢いを思い出したのか、ニヤけながら若かりし頃の思い出話を語り出す。

側近などはそんな父の様子を見て頭を抱えていた。

そんなこんなで、お茶会の当日。

僕は普段よりもお洒落な衣装を着ていた。でもなんとなく様にはなってはいるものの完全に衣装に負けていた。

自分でも似合わないのはわかってる。

でも緊張の方がもっと酷い。僕は久しぶりのお茶会でガチガチになり、貴族たちが挨拶にきてもどう返せば良いかわからなかった。

アバウト先生からあれほど教えられたんだけどな。習ったことを全然活かせていない。

なので必死に『人』という字を3回手のひらに書いては飲む仕草を繰り返ししてみてはいるものの、状況はまったく変わらず、未だ緊張から脱する気配はない。

どうしよう・・・・・・。

僕は完全に場に呑み込まれていた。

そんな状況でようやくアイリーンの登場である。僕のもとに近づいてカーテシーをする少女がいた。

「アレク様、私はガスタル・サラトム辺境伯の孫娘アイリーンでございます」

見事なほど綺麗な所作、美少女アイリーンは所作も含めて本当に美少女だった。

異世界ならではの水色がかったカラフルな艶のある綺麗な髪はツインテールに結ばれており、小柄でありながらもスラリとした体躯。

ぱっちりとした可愛らしい目はアレクをしっかりと見つめている。

まつ毛も長い。目の色はアクアブルーだった。

愛くるしい唇は喜びを表しているのか口角は上がり微笑みを浮かべている。

衣装は桜色に近い可愛らしいふわりとしたフリルのついたもの、しかも清楚。僕の過去世の中で見てきたどのアイドルよりも可愛く、僕の推しのアイドルだって霞むほどの美少女っぷりだった。

アイリーンはまだまだ幼いものの将来を期待できるほど美しく整えられた容姿だった。

そして姿絵よりも実物はもっと美しかった。

「ア、アレクです」

僕の緊張はさらに酷くなり、もはやブリキ人形のようになりつつある。全身に力が入らない。今魔獣が現れたら何も出来ず殺されてしまうかもしれない。

僕は懸命に動かない手を無理矢理動かした。
僕はぎこちない動作で震える手をなんとか動かしてアイリーンと握手を交わす。

ようやく念願のアイリーンの手に触れることが出来た。

うわっ!やばっっ!!なんて柔らかい手なんだ!!
綺麗で柔らかいし、真っ白だし!指も細い!

まさに天使の手!!

僕はさらに緊張した。

「わたくし、アレク様にお会いできる日を心待ちにしておりましたの」

「ふふっ」と和かに微笑んだアイリーンの笑顔はかなりの破壊力があった。

しかもアイリーンの柔らかな両手はいつのまにか僕の右手をやんわりと包むように掴んでいる。

え?天使の手が、ダブル?
これは、夢?

僕は緊張のあまり言葉すら出ない状態になってしまった。

「アレク様?どうかされましたの?」
「・・・・・・」
「アレク様?」
「・・・・・・」

(我、一片の悔いなし!)

僕は一瞬にして気を失った。



《アレクサンドル視点》

アレクが気絶して倒れたそうだ。

慌てて駆け寄ると我が息子は満足(満悦)した顔で天に召されたかのように微笑んでいた。

「何があったのだ?」

婚約者となったアイリーンは驚いたまま困惑している。事情を聞けば、何故倒れたのかよくわからないが、握手した途端にアレクはすぐに気を失って倒れてしまったとのこと。

私は近くの従者を呼んだ。
そしてアレクをすぐに館の寝室へと運ばせた。

周囲の貴族たちは驚いてどうしたものかとたじろいていたが、私とて必死だ。なんとか場を和ませて、お茶会はかろうじて中止にはならないよう努めた。

アレクのことが心配だったのかアイリーン嬢は付き添いたいと申し出てくれたものの、それはいけないと妻と娘のマリアが代わりにアレクの容態を見に行ってくれた。

そしてアイリーンは辺境伯と共にお茶会に残ることになった。

私としても辺境伯の家族との絆を深めることをしっかりとアピールしておきたかった。

それはアレクとアイリーンとの婚約を公にしたことで王太子はアレクであると貴族たちに示すため公表したかったからだ。

私の思惑は成功し、勝ち馬に乗りたい貴族たちはそのメッセージをしっかりと受け止めてくれた。辺境伯家も今回のお茶会で王族との婚約が確定したとあって安心はしてくれたようだ。

一応、結果は及第点としよう。
そう思わないと私が報われぬ。

なんともこんなに疲れたお茶会は生まれて初めてだ。

「二度とこんな目に遭いたくない」

私は今日一日を振り返り、今までの人生の中でもっとも面倒で大変な日だったと深いため息を漏らした。そして筆にインクをつけ、怒りを込めないように努めて今日の出来事を日誌に綴るのであった。
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