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幼少期編
母は子を想う
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(アレクの母親視点)
私はアレクサンドル・サトゥーラ国王の妻、マグダ・サトゥーラですわ。
アレクが生まれた時は、それはもうとても可愛い赤子でした。
ただ少し顔立ちに違和感がありましたの。
でもその時はあまり気にしていませんでした。
ただはっきりと顔立ちに違いを感じたのはアレクが生まれて三月ほど経った頃でしょうか。
しかし私も初めての御子でしたので、もう少し成長して大きくなる頃には私か陛下のどちらかには似てくるのではと思いました。
乳母にも相談しましたが、同じ意見でしたので、このまま様子を見ることとなりました。
アレクが生まれて1年後にはもう誤魔化しようもないくらい私たちとは顔立ちが違っていました。
そしてその時にはっきりと陛下との御子ではないとわかったのです。
それからはいつもアレクを殺してそのままこの命を絶とうかということだけ考えていました。陛下以外との殿方とのお付き合いなどありませんでしたし、陛下以外の殿方と通じて貞操を失うことなど考えたこともありませんでした。
知らないうちに他人の子を孕ませられたのではないかと考えた時は悍ましくて全身が震えて涙が出てきた程、苦しく悲しみの中に苛まれておりました。
それからすぐです。
陛下が私を呼び出され、アレクが違う子ではないかと直接問われた時は、全身が硬直し、涙が出てきましたし、陛下の前ではしたなくも泣き崩れてしまいました。
ただ陛下が信じて下さらなくとも不貞はなかったと言うしかありません。私も覚悟を決めて、不貞が事実であればアレクと共に自決することを陛下に告げました。その後、陛下は深妙な顔で仰いました。
それは王族に伝わる「血族顕彰の儀」というものがあり、それでアレクが本当の子かどうかを調べるということでした。
私としては真実を知る機会をいただけるとわかったことがなによりでした。アレクが陛下の子であるのか、そうではないのかがわかるのであれば、真実がどちらでも私はそれを受け入れますと覚悟を決めました。
そしてその結果、儀式によってアレクは本当に陛下の子であるという事がわかりました。
しかも魔法の適性が全適性という初代国王以来の誰もいなかった希少な能力を有していることもわかりました。
その時はもう喜びと安堵感でいっぱいでした。
アレクが実の子であるとわかったあの日から陛下はますます私を愛してくださるようになりました。陛下が私を見捨てられなかったことに心から安堵しましたし、何より私も陛下を愛する想いが一層強くなりました。
そうして次なる愛の結晶としてイスタルが生まれ、またその次は女の子マリアが生まれました。
アレク以外の子供たちは私たちによく似ております。
2人とも可愛らしくて、イスタルは髪の色は私と同じですが顔立ちは陛下によく似ております。マリアは私の小さい頃によく似ていると陛下がおっしゃってくださいました。陛下が私の小さい頃を存じておられた事を知ってなんだか嬉しくて、その頃から私を好いておられたのかしらと思うと少し恥ずかしい気持ちになりました。
あれから数年が経ち、アレクが5歳の頃です。アレクが急に魔法が使えるようになったと陛下が仰いました。そして王宮でも有名な魔法師であられるガルシア様を魔法の教師につけるということになり、それからアレクは毎日魔法の修行に明け暮れておりました。
アレクはいつも夕食後には私に挨拶に来てくれてますし、マリアともよく遊んでいるところを見ております。あの頃のアレクは毎日子どもとは思えない程に疲れた顔をしており、母として心配ではありましたが、陛下は「心配いらない、私たちの子を信じなさい」と仰いましたので私もアレクを信じて見守ることにしました。
さらにはアレクが9歳の頃です。
かの有名な騎士団所属のボルトに剣術をアレクに教えさせるというのです。
さすがに私はまだ早いのではと陛下にお伝えしましたが、アレクが王となるのであれば強くなければならないとのことで、私も陛下の一存であればと納得しようとしました。
ただただ心配でありましたが私は見守ることしかできません。それに他の子たちも成長しており、イスタルもマリアもしっかりと王族としての教育を熱心に受けており、王家としての佇まいが年を重ねると共に少しずつ身についてきたように思います。
そしてアレクが11歳の頃、アレクの縁談がまとまりました。
この頃、アレクの容姿が原因でアレクへの縁談は全く決まらずに陛下も頭を抱えておられました。それどころか何故か第二王子であるイスタルへの婚姻を結ぼうとする貴族が年々増えているのです。
陛下はアレクを王太子にすることはもう何年も前から決めていらっしゃいましたので、他の貴族たちも理解していると思っていたのですが、やはり王族としてアレクの容姿は貴族たちにはならなか受け入れてもらえないようでした。
アレクの縁談がなかなか見つからなかった時に何故か急にガスタル辺境伯からの縁談申し込みの話が飛び込んできたのです。
私も驚いてしまいましたが、実はボルトとガルシア様のおかげでガスタル辺境伯がアレクに興味を示してくださったとのことです。
さらに驚いたのはガスタル辺境伯の孫娘アイリーンもアレクとの婚姻に同意してくれているとのことでした。
他の貴族の娘たちはアレクの姿絵を見て皆婚約を嫌がったと聞いておりましたので、正直どうしてアレクを気に入ったのかわかりませんでした。
アレクも魔法と剣術には優れているものの器量はそこまで良いとは言えません。
我が子としては可愛いと思うものの、異性として考えたならば、アレクの容姿は確かに魅力を感じられませんので致し方がありませんでした。
しかし辺境伯の孫娘との縁談が決まったことは本当に僥倖でした。
アレクとの婚約が決まり、お茶会を催すこととなりました。
これからは私たち女の仕事です。
陛下も貴族に声をかけておられましたが、妻として王家主催のお茶会なのですから、ましてやアレクの晴れ舞台です。
今まで見守ることしか出来なかった私は、やっとアレクのためにできることがあると思い、侍従の者たちに指示を出し、関係者には声をかけていきました。
屋敷の者たちもアレクのためにと皆一丸となってお茶会の準備に取り掛かりました。
そしてようやくお茶会の日を迎えることになりました。
私は久しぶりのお茶会で張り切っておりましたが、どうやら主役であるはずのアレクの様子がおかしいのです。
「体調が悪いのかしら」
調子が悪いのかと思いましたが、前日までアイリーン嬢と会える事に心待ちにしておりましたので余程楽しみにしていたのでしょうと思っていたのです。
ただアレクに挨拶する貴族に対して全く返事もせず、貴族たちもどうすれば良いかわからない様でした。
陛下が少しお顔を引き攣らせておられたのですが、アレクのためにしっかりとフォローされて貴族たちにも声をかけていらっしゃるので、私は必死でこのお茶会の成功を願わずにはいられませんでした。
隣ではマリアがしきりに「アイリーンさまがとっても可愛いですの♡」と喜んでいましたので私もマリアの可愛らしい姿を見てほっこりとしました。
そして事件は起こりました。
アイリーン嬢がアレクに挨拶をしていた時のことです。
アレクの様子がもともとおかしいと思っていたのが、益々酷くなっていたのです。
そしてこともあろうかアイリーン嬢と手を触れた途端にアレクが倒れてしまったのです。
この時、アレクを王太子にさせまいと何者かが暗殺を企てたのかと思いました。慌ててアレクを寝室に運び、医者も呼びました。
アイリーン嬢がついて行きますと言ってくださいましたが、いま主役の2人がいなくなるのは問題になりますのでと丁重にお断りしました。そして私とマリアが様子を看に行くことにしたのです。
アレクの容態を確認しに行くと、医者の診断では特に毒物などに侵されている心配はありませんとのことでした。
また、どこか斬られたり毒矢が刺さったような傷跡も見当たりませんでしたとのことです。
私はホッとして、「それならばどうしてアレクは倒れたのですか?」と医者に問いました。
医者はこう答えたのです。
「わかりません、ただ敢えて答えるならばおそらく緊張が原因ではないかと……」
しかもアイリーン嬢の美しさに充てられて気絶したのではないかと答えたのです。
さすがに私もそれは無いのではと思いましたが、そうでもないようで、驚いたのはお茶会が無事に終わり陛下がこちらに来られた時の事、アレクの気絶の原因を陛下にお話すると陛下も「そうかもしれないな」と仰られたのです。
どうやらアレクはうら若き美しい乙女に弱いらしいのです。
そういえば侍従たちからもアレクが毎晩、薄気味悪い顔でアイリーン嬢の姿絵を見ていると噂しておりました。
さすがに不敬ではないかと皆を嗜めておいたのですが、皆が思うアレクへの評価は思ったより悪いようです。
次の王になるのであればこのままでは許されないでしょう。
「アレクに良き天運がありますように」
私は縋るようにな思いで天の神に祈りを捧げるのでした。
私はアレクサンドル・サトゥーラ国王の妻、マグダ・サトゥーラですわ。
アレクが生まれた時は、それはもうとても可愛い赤子でした。
ただ少し顔立ちに違和感がありましたの。
でもその時はあまり気にしていませんでした。
ただはっきりと顔立ちに違いを感じたのはアレクが生まれて三月ほど経った頃でしょうか。
しかし私も初めての御子でしたので、もう少し成長して大きくなる頃には私か陛下のどちらかには似てくるのではと思いました。
乳母にも相談しましたが、同じ意見でしたので、このまま様子を見ることとなりました。
アレクが生まれて1年後にはもう誤魔化しようもないくらい私たちとは顔立ちが違っていました。
そしてその時にはっきりと陛下との御子ではないとわかったのです。
それからはいつもアレクを殺してそのままこの命を絶とうかということだけ考えていました。陛下以外との殿方とのお付き合いなどありませんでしたし、陛下以外の殿方と通じて貞操を失うことなど考えたこともありませんでした。
知らないうちに他人の子を孕ませられたのではないかと考えた時は悍ましくて全身が震えて涙が出てきた程、苦しく悲しみの中に苛まれておりました。
それからすぐです。
陛下が私を呼び出され、アレクが違う子ではないかと直接問われた時は、全身が硬直し、涙が出てきましたし、陛下の前ではしたなくも泣き崩れてしまいました。
ただ陛下が信じて下さらなくとも不貞はなかったと言うしかありません。私も覚悟を決めて、不貞が事実であればアレクと共に自決することを陛下に告げました。その後、陛下は深妙な顔で仰いました。
それは王族に伝わる「血族顕彰の儀」というものがあり、それでアレクが本当の子かどうかを調べるということでした。
私としては真実を知る機会をいただけるとわかったことがなによりでした。アレクが陛下の子であるのか、そうではないのかがわかるのであれば、真実がどちらでも私はそれを受け入れますと覚悟を決めました。
そしてその結果、儀式によってアレクは本当に陛下の子であるという事がわかりました。
しかも魔法の適性が全適性という初代国王以来の誰もいなかった希少な能力を有していることもわかりました。
その時はもう喜びと安堵感でいっぱいでした。
アレクが実の子であるとわかったあの日から陛下はますます私を愛してくださるようになりました。陛下が私を見捨てられなかったことに心から安堵しましたし、何より私も陛下を愛する想いが一層強くなりました。
そうして次なる愛の結晶としてイスタルが生まれ、またその次は女の子マリアが生まれました。
アレク以外の子供たちは私たちによく似ております。
2人とも可愛らしくて、イスタルは髪の色は私と同じですが顔立ちは陛下によく似ております。マリアは私の小さい頃によく似ていると陛下がおっしゃってくださいました。陛下が私の小さい頃を存じておられた事を知ってなんだか嬉しくて、その頃から私を好いておられたのかしらと思うと少し恥ずかしい気持ちになりました。
あれから数年が経ち、アレクが5歳の頃です。アレクが急に魔法が使えるようになったと陛下が仰いました。そして王宮でも有名な魔法師であられるガルシア様を魔法の教師につけるということになり、それからアレクは毎日魔法の修行に明け暮れておりました。
アレクはいつも夕食後には私に挨拶に来てくれてますし、マリアともよく遊んでいるところを見ております。あの頃のアレクは毎日子どもとは思えない程に疲れた顔をしており、母として心配ではありましたが、陛下は「心配いらない、私たちの子を信じなさい」と仰いましたので私もアレクを信じて見守ることにしました。
さらにはアレクが9歳の頃です。
かの有名な騎士団所属のボルトに剣術をアレクに教えさせるというのです。
さすがに私はまだ早いのではと陛下にお伝えしましたが、アレクが王となるのであれば強くなければならないとのことで、私も陛下の一存であればと納得しようとしました。
ただただ心配でありましたが私は見守ることしかできません。それに他の子たちも成長しており、イスタルもマリアもしっかりと王族としての教育を熱心に受けており、王家としての佇まいが年を重ねると共に少しずつ身についてきたように思います。
そしてアレクが11歳の頃、アレクの縁談がまとまりました。
この頃、アレクの容姿が原因でアレクへの縁談は全く決まらずに陛下も頭を抱えておられました。それどころか何故か第二王子であるイスタルへの婚姻を結ぼうとする貴族が年々増えているのです。
陛下はアレクを王太子にすることはもう何年も前から決めていらっしゃいましたので、他の貴族たちも理解していると思っていたのですが、やはり王族としてアレクの容姿は貴族たちにはならなか受け入れてもらえないようでした。
アレクの縁談がなかなか見つからなかった時に何故か急にガスタル辺境伯からの縁談申し込みの話が飛び込んできたのです。
私も驚いてしまいましたが、実はボルトとガルシア様のおかげでガスタル辺境伯がアレクに興味を示してくださったとのことです。
さらに驚いたのはガスタル辺境伯の孫娘アイリーンもアレクとの婚姻に同意してくれているとのことでした。
他の貴族の娘たちはアレクの姿絵を見て皆婚約を嫌がったと聞いておりましたので、正直どうしてアレクを気に入ったのかわかりませんでした。
アレクも魔法と剣術には優れているものの器量はそこまで良いとは言えません。
我が子としては可愛いと思うものの、異性として考えたならば、アレクの容姿は確かに魅力を感じられませんので致し方がありませんでした。
しかし辺境伯の孫娘との縁談が決まったことは本当に僥倖でした。
アレクとの婚約が決まり、お茶会を催すこととなりました。
これからは私たち女の仕事です。
陛下も貴族に声をかけておられましたが、妻として王家主催のお茶会なのですから、ましてやアレクの晴れ舞台です。
今まで見守ることしか出来なかった私は、やっとアレクのためにできることがあると思い、侍従の者たちに指示を出し、関係者には声をかけていきました。
屋敷の者たちもアレクのためにと皆一丸となってお茶会の準備に取り掛かりました。
そしてようやくお茶会の日を迎えることになりました。
私は久しぶりのお茶会で張り切っておりましたが、どうやら主役であるはずのアレクの様子がおかしいのです。
「体調が悪いのかしら」
調子が悪いのかと思いましたが、前日までアイリーン嬢と会える事に心待ちにしておりましたので余程楽しみにしていたのでしょうと思っていたのです。
ただアレクに挨拶する貴族に対して全く返事もせず、貴族たちもどうすれば良いかわからない様でした。
陛下が少しお顔を引き攣らせておられたのですが、アレクのためにしっかりとフォローされて貴族たちにも声をかけていらっしゃるので、私は必死でこのお茶会の成功を願わずにはいられませんでした。
隣ではマリアがしきりに「アイリーンさまがとっても可愛いですの♡」と喜んでいましたので私もマリアの可愛らしい姿を見てほっこりとしました。
そして事件は起こりました。
アイリーン嬢がアレクに挨拶をしていた時のことです。
アレクの様子がもともとおかしいと思っていたのが、益々酷くなっていたのです。
そしてこともあろうかアイリーン嬢と手を触れた途端にアレクが倒れてしまったのです。
この時、アレクを王太子にさせまいと何者かが暗殺を企てたのかと思いました。慌ててアレクを寝室に運び、医者も呼びました。
アイリーン嬢がついて行きますと言ってくださいましたが、いま主役の2人がいなくなるのは問題になりますのでと丁重にお断りしました。そして私とマリアが様子を看に行くことにしたのです。
アレクの容態を確認しに行くと、医者の診断では特に毒物などに侵されている心配はありませんとのことでした。
また、どこか斬られたり毒矢が刺さったような傷跡も見当たりませんでしたとのことです。
私はホッとして、「それならばどうしてアレクは倒れたのですか?」と医者に問いました。
医者はこう答えたのです。
「わかりません、ただ敢えて答えるならばおそらく緊張が原因ではないかと……」
しかもアイリーン嬢の美しさに充てられて気絶したのではないかと答えたのです。
さすがに私もそれは無いのではと思いましたが、そうでもないようで、驚いたのはお茶会が無事に終わり陛下がこちらに来られた時の事、アレクの気絶の原因を陛下にお話すると陛下も「そうかもしれないな」と仰られたのです。
どうやらアレクはうら若き美しい乙女に弱いらしいのです。
そういえば侍従たちからもアレクが毎晩、薄気味悪い顔でアイリーン嬢の姿絵を見ていると噂しておりました。
さすがに不敬ではないかと皆を嗜めておいたのですが、皆が思うアレクへの評価は思ったより悪いようです。
次の王になるのであればこのままでは許されないでしょう。
「アレクに良き天運がありますように」
私は縋るようにな思いで天の神に祈りを捧げるのでした。
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