18 / 77
幼少期編
辺境伯家の家族
しおりを挟む
「父上!なぜあのような愚かな者にアイリーンを嫁がせるのですか!」
アイリーンの父であり、現当主であるガスタル辺境伯の息子エリックは憤っていた。
事もあろうか、お茶会で気絶する失態を犯した王子に対して容姿だけでなくその凡庸さと頼りなさにやはり王族ではないのではと囁く者もいたのである。挨拶しても碌に返事もしないと機嫌を悪くした貴族も多かった。
ただえさえ王族とは思えない程に平凡な容姿を持つ王子に嫁ぐ事に反対していたエリックはやはりこの縁談は間違っていたのだと憤慨してガスタル辺境伯に直談判していたのである。
「まあ、エリックよ、そう怒るな。陛下はもうアレク王子を王太子にすると決めておられるのだ。今更破棄などあり得んよ」
賽は投げられた。
引き返すことはしない。
そうはっきりと辺境伯は答えた。
それを聞いたエリックは父の意思を変えることは無理だと諦めたようで深く溜息をついてその場を退いた。
ガスタル辺境伯は強かである。
普段なら辺境伯が王族との婚姻の機会などなかなかありえない。それは他の上位貴族がこぞって王家に縁談を持ち込むからだ。
ただえさえ不利な立場にいるのが、たまたま第一王子が凡庸な容姿なだけで、他の貴族たちはアレクを見捨てて第二王子との婚約に精を出している。
こちらもそのままであれば傍観するだけだったのだが、たまたまではあるが、王都に訪れた際、信頼ある宮廷魔法師のガルシアと騎士団のボルトと再会した時のこと。あの厳しい二人がアレクを褒めていたのだ。あまりに珍しいことなのでガスタルも驚いた。
そして状況を正しく理解したのだ。
外面なんぞいくら良くても能力がなければ国は治められない。そしてこの婚姻はチャンスなのだと辺境伯は判断し、エリックにもそのように答えたのだ。
当然だが、エリックは納得していない。
納得はしていないが、父に逆らうこともできない。しかもアイリーンもアレクとの婚姻を望んでいるのだ。
「なぜあのような凡庸な者と」
エリックは理解できなかった。
美しく育ったアイリーンをエリックは殊の外可愛がった。子どもは2人、上に兄がおり、そちらは学園に通っている。
アイリーンは末娘だ。イスタルが同い年であればそちらに嫁がせたかったのだが、アレと同じ歳だったのが災い、無念にも可愛い可愛い娘をあのような凡愚に嫁がせることになってしまったのだ。
エリックが自室に戻ると今度はアイリーンの兄であるアランがやって来た。
「父上!なぜあのような愚かな者にアイリーンを嫁がせるのですか!」
先程、父に対し自分が言ったことと全く同じ事を言ってきた息子に対してやはり親子だなと感じたのは仕方ないこと。
可笑しな話だ。
エリックはフッと笑いながらアランを宥めた。
「アラン、当主の意向だ。諦めろ」
エリックとて納得できていない。説得する気もないので、当主の責任にするしかない。アランもそんなエリックの様子を見て理解したのか少し大人しくなった。
「しかし、このままあの愚か者にアイリーン嫁がせるのはどうなのでしょうか、いくらアイリーンが同意しているとはいえ、このままではあの娘が可哀想です」
「わかっておる、私も当主に直訴したが一切聞いてはもらえなかった。王はあの凡愚を王太子にするのだそうだ!しかも当主はあの凡愚と娘との婚姻が我が一族にとって好機なのだと仰られたのだ!」
悔しそうに拳を握りしめて机を叩くエリック。やはり彼もすぐには納得出来なさそうだ。アランもエリックの本心を知り、状況を正しく理解した。
「わかりました、当主様の意向ということでしたら仕方ありません」
父が怒り出したので逆にアランが冷静になったのはかえって良かったのかもしれない。
しかし、この親子は諦めてはいなかった。
後々、第二王子派と組んでアレクを引き摺り下ろすことを企てるのだった。
♢
アイリーンは自室にて幸せそうに窓の星空を見ている。
「アレク様にやっとお会いできました」
ただその後急に倒れたときは驚きましたがと呟きながら・・・・・・、
「今頃アレク様は無事意識が戻られたのでしょうか」
アイリーンは心配そうに外の景色を眺めていた。
「次はいつお会いできるでしょう」
「今度はちゃんとお話しがしたいわ」
アイリーンは嬉しそうにひとり呟いていた。
アイリーンの父であり、現当主であるガスタル辺境伯の息子エリックは憤っていた。
事もあろうか、お茶会で気絶する失態を犯した王子に対して容姿だけでなくその凡庸さと頼りなさにやはり王族ではないのではと囁く者もいたのである。挨拶しても碌に返事もしないと機嫌を悪くした貴族も多かった。
ただえさえ王族とは思えない程に平凡な容姿を持つ王子に嫁ぐ事に反対していたエリックはやはりこの縁談は間違っていたのだと憤慨してガスタル辺境伯に直談判していたのである。
「まあ、エリックよ、そう怒るな。陛下はもうアレク王子を王太子にすると決めておられるのだ。今更破棄などあり得んよ」
賽は投げられた。
引き返すことはしない。
そうはっきりと辺境伯は答えた。
それを聞いたエリックは父の意思を変えることは無理だと諦めたようで深く溜息をついてその場を退いた。
ガスタル辺境伯は強かである。
普段なら辺境伯が王族との婚姻の機会などなかなかありえない。それは他の上位貴族がこぞって王家に縁談を持ち込むからだ。
ただえさえ不利な立場にいるのが、たまたま第一王子が凡庸な容姿なだけで、他の貴族たちはアレクを見捨てて第二王子との婚約に精を出している。
こちらもそのままであれば傍観するだけだったのだが、たまたまではあるが、王都に訪れた際、信頼ある宮廷魔法師のガルシアと騎士団のボルトと再会した時のこと。あの厳しい二人がアレクを褒めていたのだ。あまりに珍しいことなのでガスタルも驚いた。
そして状況を正しく理解したのだ。
外面なんぞいくら良くても能力がなければ国は治められない。そしてこの婚姻はチャンスなのだと辺境伯は判断し、エリックにもそのように答えたのだ。
当然だが、エリックは納得していない。
納得はしていないが、父に逆らうこともできない。しかもアイリーンもアレクとの婚姻を望んでいるのだ。
「なぜあのような凡庸な者と」
エリックは理解できなかった。
美しく育ったアイリーンをエリックは殊の外可愛がった。子どもは2人、上に兄がおり、そちらは学園に通っている。
アイリーンは末娘だ。イスタルが同い年であればそちらに嫁がせたかったのだが、アレと同じ歳だったのが災い、無念にも可愛い可愛い娘をあのような凡愚に嫁がせることになってしまったのだ。
エリックが自室に戻ると今度はアイリーンの兄であるアランがやって来た。
「父上!なぜあのような愚かな者にアイリーンを嫁がせるのですか!」
先程、父に対し自分が言ったことと全く同じ事を言ってきた息子に対してやはり親子だなと感じたのは仕方ないこと。
可笑しな話だ。
エリックはフッと笑いながらアランを宥めた。
「アラン、当主の意向だ。諦めろ」
エリックとて納得できていない。説得する気もないので、当主の責任にするしかない。アランもそんなエリックの様子を見て理解したのか少し大人しくなった。
「しかし、このままあの愚か者にアイリーン嫁がせるのはどうなのでしょうか、いくらアイリーンが同意しているとはいえ、このままではあの娘が可哀想です」
「わかっておる、私も当主に直訴したが一切聞いてはもらえなかった。王はあの凡愚を王太子にするのだそうだ!しかも当主はあの凡愚と娘との婚姻が我が一族にとって好機なのだと仰られたのだ!」
悔しそうに拳を握りしめて机を叩くエリック。やはり彼もすぐには納得出来なさそうだ。アランもエリックの本心を知り、状況を正しく理解した。
「わかりました、当主様の意向ということでしたら仕方ありません」
父が怒り出したので逆にアランが冷静になったのはかえって良かったのかもしれない。
しかし、この親子は諦めてはいなかった。
後々、第二王子派と組んでアレクを引き摺り下ろすことを企てるのだった。
♢
アイリーンは自室にて幸せそうに窓の星空を見ている。
「アレク様にやっとお会いできました」
ただその後急に倒れたときは驚きましたがと呟きながら・・・・・・、
「今頃アレク様は無事意識が戻られたのでしょうか」
アイリーンは心配そうに外の景色を眺めていた。
「次はいつお会いできるでしょう」
「今度はちゃんとお話しがしたいわ」
アイリーンは嬉しそうにひとり呟いていた。
11
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる