転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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幼少期編

モブ王子の人生初舞台

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アレクとアイリーンの婚約発表が王城にて行われた。

王国内では第一王子の婚約発表ともあり祝福のムードに包まれた。王宮での婚約発表が終わるといよいよ祝賀パーティーとして王城内にて舞踏会が始まる。

この世界の舞踏会でも表舞台は華やかであるが反面、裏の舞台も存在する。特に今回の舞踏会においては貴族たちの陰謀や勢力争いなどが蔓延しており、第二王子派の貴族たちは第一王子の失脚を狙うべく、あちこちで画策し、罠を張り巡らせていた。

王族のくせに貴族社会の情報に疎いアレクの存在はネギを背負った鴨のようなものだろうか。アレクが何も知らずに己の婚約発表による祝賀パーティーとしてただ参加するだけというのは貴族たちにいいように利用されてしまうだけで、実は非常に危険な状況ではあった。

アレクサンドル国王もアレクに対して政治の裏の部分をいつ見せるかと考えてはいるが、まだ純朴なアレクに政治の汚い世界を見せてどうなるかが読めないため、父としての情もあってか少し躊躇しているようだ。

故に父アレクサンドル国王はアレク失脚を狙う第二王子派への対応を自ら指揮し、なんとか事件にならないよう未然に防いでいた。

かたや婚約者アイリーンの方はすでにそうした貴族の裏の世界を知っており、祖父ガスタル辺境伯の部下たち、特に諜報部から情報を聞き出して社交界での要注意人物を洗い出していた。

そしてアレクを護るために未来の嫁として健気に舞踏会への準備を進めていたのである。



《アレク視点》

王宮での婚約発表が終わり、僕は夜の舞踏会の準備として着替えるべく自室に戻っていた。

「アレクさま、お着替えの用意が整いました」
「ありがとう、セバス」

今日はサーシャが用事のために不在で代わりにセバスが僕の世話をしてくれることになっていた。

セバスは優しく微笑みながらにこやかな顔で僕の服を手渡してくれる。

ん?

セバスの近くには大きなゴミ袋が置いてあったのを見つけて、僕はつい気になってしまった。

「セバス、あれは何?」
「あれはゴミです」

「そうなんだ。あれ?僕の部屋そんなに汚れてたっけ?あんなの朝は無かったと思うんだけど」

「アレク様が戻って来られる間に何部屋か掃除をしておったのです」

「そうだったんだ。セバスお疲れ様」

「ホッホッホ、優しいお言葉をいただき感謝の極み、ありがとうございます」

セバスは僕の着替えが終わると割と大きなゴミ袋を軽々と持ち上げた。

「アレク様、セバスはちょっとゴミを捨てに行ってきます」

「ああ、わかった。着替えの用意もありがとう。でもそんな大きなゴミ袋一人で大丈夫?」

「ホッホッホ、大したことはありません。それではちょっと焼却炉に棄てて来ます」

「うん、いってらっしゃい」
「ええ、行ってきます」

こうした何気ないやり取りの中で実は多くの暗殺者をゴミとして処理するセバスは裏の世界で特に暗殺者たちからもたいそう恐れられている存在であったらしい。

僕がそのことを知ったのは王太子になってから後のことだ。

さて、いよいよ僕の社交界デビューの時がきた。

舞踏会に参加するのは今日が初めてだが、マナーに関しては王族教育の一環として幼少の頃から教育されているため特に問題はない。

小さい頃から週に一度は教育担当であるアバウト先生からダンスを師事してもらっていたのもアイリーンとの婚約が決まったことでここ最近になってからは特に本格的な指導のもと練習している。

それこそアイリーンのために剣術同様、血反吐を吐くほどに真剣にダンスの練習をした。

またアバウト先生からはダンスだけでなく、社交界に参加する貴族たちの姿絵と情報などの詳細も教えてもらっていた。

僕にとってはどうでもいいオッサンでも貴族の派閥の中では有力者だったりするので社交界の怖さを直に知っているアバウトはかなり真剣に、それはもう丁寧に教えてくれた。

こうして今日という日に備えて僕は王子として恥をかかない程度の準備はしてきた・・・つもりだ。

「アレク殿下、それでは舞踏会会場へとご案内いたします」
「ああ」

王の側近がやってきて僕は先にまだ誰も居ない準備中の舞踏会会場へと移動した。

今夜開催される舞踏会のパーティー会場は圧巻であった。ダンスホールはとても広くて前世の小学校の体育館の倍ほどの面積があり、天井の高さも10メートル以上はある。なんならダンスではなく剣術の練習をしたいほどだ。天井には豪奢なシャンデリアがその巨大な存在感を示すべく目がチカチカするほどに光り輝いている。

僕は思わず「異世界すげえな」などと感嘆としたほどだ。

王子なのに。

側近は苦笑いしつつもその先は何も言わずに今度は会場入り口まで案内してくれた。

すでに招待された来客たちは集まっており、ダンスホール会場の入り口は賑やかなようだ。

僕は思わず想像してしまう。

目を瞑ると目の前には愛しのアイリーンがいた。2階にはバルコニー席もあり、みんなここでシャンパンを飲んでいる。彼女は両手にシャンパングラスを持ち、その1つを僕に手渡してくれた。

「はい、アレク様♡どうぞ♡」

「アイリーン♡ありがとう♡」

僕は幸せそうにシャンパンを飲む。

アイリーンはシャンパンを飲みながら僕に寄りかかるように体を寄せてきた。

(お♡)

僕は(だらしない顔で)アイリーンを凝視めつつ、シャンパンを飲み続ける。

そして、

「アレク様!なんてダンスがお上手なのかしら!」

アレクとアイリーンの2人は優雅にダンスを踊る。(普段より100倍カッコよく見える)僕はキメ顔でキレッキレのダンスを踊っていた。

「フフフ、アイリーンと一緒に踊っているから上手く踊れているのかな」

「まあ♡アレク様♡」

あはは、

うふふ、

うへへへ・・・・・・。

「アレク殿下?」

訝しげに妄想中の僕に声をかける側近。
よって僕はあっさりと現実に引き戻された。

「あ、ああ、し、失礼。それて、何だったかな?」

「その、これで案内が終わりましたので、私はここで失礼させていただければと思いまして」

「あ、ああ、わかった。案内ありがとう」

こうして王の側近はそそくさと会場から去っていった。一応、会場には着いたものの、ダンスホールへの入場は順番があるようで少しずつ案内されているようだ。

王族である僕たちの入場は最後になるそうだ。そして僕が来たときに合わせたのかと思うぐらい丁度良いタイミングでアイリーンがやって来た。

「アレク様、お待たせいたしました」

ナイトドレスを着たアイリーンは言葉では言い表せないほどの美しさだ。アイリーンの周囲にはキラキラのエフェクトがかかっているように見える。

プリンセスラインのドレスは純白で清楚な感じを出しており、まるでウェディングドレスのように見える。一応、王子の婚約者ともなれば当たり前なのだが年齢的なこともあり彼女のドレスは露出を抑えられている。

ともかく僕には到底描写しきれないほどアイリーンは美しい。

打ち震えるほどの感動。
僕はいま目の前にいるアイリーンに釘付けだ。故にアイリーンと初めて会ったお茶会の時のように緊張で固まってしまいそうになっている。

それでも前日の特訓のおかげか、とりあえず自分のお尻をつねってなんとか意識を取り戻した。

(今のはヤバかった。な、なんて美しさだ)

「キ、キレイダ」
「ありがとうございます」

ウフフ♡

アイリーンが優しく微笑むので、僕はもう一度お尻をつねる。

これで今回の舞踏会で父上から気絶するなという試練は無事に乗り越えることができた。

「アイリーンハトテモウツクシイネ」

感動し過ぎていまだに語彙が単調になってはいるが、次の山場としてアイリーンをエスコートするということはかろうじて思い出すことが出来た。

次々と案内される貴族たち、

そしてとうとう最後となる。

僕とアイリーンの入場だ。

「それではアレク王子とアイリーン辺境伯令嬢の入場です!」

使用人が扉を開けるとホールでは大勢の人たちが拍手をおくっていた。

かなり賑やかな様子だ。

僕は姿勢を正して深呼吸をする。
隣には美しすぎるアイリーンがいるためプレッシャーでしかないが、なあに今世の僕はこれまでに数多くプレッシャーに晒されてきたのだ。

このぐらいのプレッシャーなどは、もはや今更である。一度アイリーンの美しい姿を見ておけばなんとか耐えられる。初見さえ耐えることができれば後はなんとかなる。なんとかなるなんとかなるなんとか・・・・・・よし!

「それでは、まいりましょう」

僕はアイリーンの手を取り、自らの腕に回すとアイリーンも僕の肘の方にそっと手を入れて腕組みをしてくれた。

あとは歩くだけ。

アイリーンをエスコートをする。

歩くだけ、

これでミッションインコプリート。

よし!

僕たちが少しずつ前に出て歩き出すと拍手の音はさらに大きくなった。

嬉しそうに拍手する貴族たち。
辺境伯も皆に合わせて拍手している。

案内されて歩き出した僕たちは父アレクサンドル国王の元まで歩いていく。

アレクサンドル国王と母の王妃マグダは嬉しそうに僕たち2人を見つめてくれている。

僕たちが国王と王妃の前にたどりつくと並んで一礼をした。

するとアレクサンドル国王は立ち上がり、夜会のはじまりを告げる。

「それでは舞踏会をはじめようではないか!」

こうして王族主催の舞踏会が始まった。

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