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幼少期編
モブ王子のダンス初披露②
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《アレク視点》
ガチガチになってダンスに誘う僕を見てようやく言ってくれましたねと嬉しそうに微笑むアイリーン。
可愛すぎる。
僕も緊張しすぎて大丈夫なのかわからないが、アイリーンは天使の笑顔で僕の手を取ってくれた。
僕ら二人はダンスホールへと移動すると互いに礼をして音楽に合わせて踊り始めた。
い、いよいよ、本番だ。
(ステップ、ステップ、ターン・・・)
僕は頭の中で必死に動作を確認する。
一応、数日前までは体が覚えるぐらいに繰り返し繰り返しステップやターンの練習をしてきた。
しかしこともあろうことか、本番のダンスでは目の前にいる麗しきアイリーンに見惚れてしまい、僕は一瞬にして頭の中が真っ白になってしまった。
正直言ってヤバい。
とにかく、ダンスの手順を忘れた僕はひたすらにアイリーンの動きに合わせて動くことにした。
アイリーンの動きを見ながら必死についていくのが精一杯で無我夢中で踊っているうちに最初の曲が終了してしまった。
次の曲が始まる前に男女ペアは入れ替わる。
僕は不完全燃焼とばかりにアイリーンともう一度踊りたいと告げるとアイリーンは嬉しそうに受け入れてくれた。
「アレクさま、せっかくの舞踏会ですもの。一緒に楽しみましょう」
女神のように微笑むアイリーン。
僕はまたまたアイリーンに惚れ直した。
こうして何曲か踊って僕はようやくアイリーンとのダンスに慣れてきたようだ。
可愛いアイリーンとダンスを楽しみながら踊ることができるようになった。
嬉しい。
幸せすぎる。
そんな幸せなひとときに浸っていた時、
近くに知らない男が僕たちの近くにやって来た。
僕は踊りながらもその男の動向を注視する。
そしてちょうど曲が終わる頃に男はアイリーンのもとにやってきた。優男というか、まあ、この世界イケメンが多いんだけど、この男ももれなく顔面偏差値は高いようだ。
なんだか僕の心の内がモヤモヤしてくる。
「美しいアイリーン様、どうか私と踊ってくれませんか?」
「ごめんなさい。私はアレク様と踊っているの」
「もう曲が終わっているみたいですが?」
「あら、次の曲がまだ始まっていないだけですわ」
「そうか、ならば次にお願いしましょう」
「次などありませんわ、だって、ずっとアレク様と踊らなければなりませんもの」
「・・・わかりました。それでは素直に辞退するとしましょう」
「そうですわね。ああ、せっかくですもの、他のご令嬢と踊ってあげては?貴方のような素敵な方が申し込まれると喜ぶ方は多いと思いますわよ?」
「あなたはその一人ではないようですね」
「ええ、申し訳ありませんわ」
「はあ、わかりました。それでは行くとしましょう」
優男はアイリーンと踊ることを諦めたようで、すぐに他の女の方に向かっていった。
「良かったの?」
「あら、アレク様はわたくしが他の殿方と踊ってほしいのですか?」
「え!?絶対嫌だ!」
「でしたら一緒に踊りましょう。まだ時間はたっぷりとありますわ」
「そうだね。ようやく体が慣れてきたところだ。こうしてアイリーンと踊れるようになって本当に良かった」
「わたくしも嬉しいですわ」
ウフフ♡
幸せだ。
こうして僕とアイリーンは仲睦まじくダンスを踊り続けた。
さすがに先程の男とのやり取りを見た他の者たちもアイリーンにダンスを申し込むことは無理だと悟ったようだ。
ある意味あの男のおかげで僕たち二人はずっと踊り続けられることが出来た。
ま、一応感謝しないとね。
父上も母上も踊っていたようだけど、歳のせいなのか2曲ほど踊ったところで席に戻っていった。
こうしてダンスが終わり、少し休憩しようと僕がアイリーンから離れた時に事件は起きた。
なんとアイリーンの頭上にあった巨大なシャンゼリアが突然落下してきたのだ。
「危ない!」
きゃあああ!!
ざわめく会場は一瞬にして恐怖に包まれた。
シャンデリアの落下スピードは早く、あっという間にアイリーンの頭上へと接近していた。
やばいやばいやばい!!
このままだとアイリーンが死んじゃう!!
間に合え!!
僕はアイリーンを助けるべく、アイリーンの頭上に落ちるシャンデリアに向けて渾身の魔法を放った。
♢
《アイリーン視点》
先程までアレク様とのダンスに興じていたわたくしの上に突然、大きな悲鳴が聞こえたと思っていたら、なんとわたくしの頭上にあった大きなシャンデリアが音を立てて落ちてきたのです。
きゃあああ!
どなたの声がわかりませんが、あちこちから女性の叫び声が聞こえてきました。
もう本当に大きな声ですわね。
叫びたいのはこちらのほうだというのに。
本当に一瞬の出来事でしたわ。
巨大なシャンデリアはあっという間にわたくしの眼前に迫ってきておりますのよ?
これにはさすがのわたくしも恐怖でこの身が思うように動かず狼狽えてしまいましたわ。
こんなにもわたくしの頭は冷静さを保っていたままなのに、すぐに死を意識しました。
人生の走馬灯を見るほど長く生きてもいませんけどもね。ああ、シャンデリア、綺麗ですわね。皮肉ですわ。こんなにも美しいわたくしの死が、あの美しいシャンデリアに押し潰されることだなんて。
確かにこれに押し潰されたら、わたくし・・・助かる見込みはありませんわね。
わたくしがこの若さで死ぬなんて・・・やだ!死にたくありませんわ!!こんな死に方なんて真っ平ごめんです!!
「助けてお祖父様ぁ!!」
ゴオオオオ、ドガァーン!!
え?
それは一瞬のことでした。
突如として現れた巨大な竜巻がわたくしの頭上を通り抜けていきましたの。
それは巨大なシャンデリアを巻き込んで、そのまま会場の外へと吹き飛ばされていきましたわ。その時の大きな破砕音と共に硝子の破片や砕け散った壁の欠片などがダンスホールのあちこちに散らばっていきました。
ど、どうしたのかしら。
わたくし、助かった・・・のですわよね?
これは夢?
いいえ、今ほっぺたをつねったら確かな痛みを感じましたわ。
どういう事ですの?
わたくしが驚き混乱しているところ、ちょうど目の前にいたアレク様のお姿を見て、ようやく事の経緯を理解することができましたわ。
彼がわたくしを助けるために魔法を行使してあの竜巻を放ったのだということ。
それにしても死を意識した時はこんな一瞬でも色々考えられるものなのですね。
いえそうではありませんわ。
そもそもあの魔法は一体、何なのですの!?
お祖父様の話ではアレク様の魔法の実力は王宮魔法師となれる程だと聞きましたけど、間近で見た先程の風魔法は、わたくしの領地にいる元王宮魔法師たちが使う魔法よりもさらに上位のものでしたわ。
さらに無詠唱。
近年、王宮魔法師の総帥であられるガルシア様が無詠唱魔法の論文を発表されて、それ以降、王国魔法師の革命と評されるほどにガルシア様の論文は魔法師界に大きな波紋を呼び起こしました。
いまだに無詠唱の魔法を行使できる魔法師は王国でも5本の指で数えるほどしかいないと言われていますのに・・・。
(なぜ、貴方がその無詠唱魔法を使えますの?)
キラキラと輝くシャンデリアの硝子の破片が美しく飛び散る中でアレク様は真剣な眼差しでわたくしを見つめていました。
トクン・・・。
え?
な、何なんですの?
「アイリーン!!無事で良かった!」
「ア、アレク様!?」
え?いつのまにかアレク様がわたくしの側に来ていますわ?
しかもいつのまにかわたくしを抱きしめてくださっていますわ!
「アイリーン、・・・大丈夫?」
「え、ええ、だ、大丈夫ですわ」
な、何なんですの?
か、顔が熱いですわ。
「アイリーン、顔が赤いけど大丈夫?」
「え!?ええ!だ、大丈夫ですわ!!」
あ、ああ、わ、わたくし、な、何なんですの?
ああ!何故かアレク様がお祖父様のようにステキに見えますわ!
つい先程までこのみすぼらしいお顔がなんだか可愛いとは思っていましたけど、でも、いまはアレク様がお祖父様のようにかっこいいだなんて、ああ、なんだかさっきから体が熱いですわ!
わたくし、一体どうしてしまったのかしら・・・・・・。
♢
《国王アレクサンドル視点》
「さあ、マグダよ、久しぶりに私たちも踊ろうか」
「良いですわね。それではよろしくお願いいたしますわ」
私はマグダと久しぶりのダンスに興じ、踊り終えた後、共にダンスホールから離れ私たちの席に向かった。
その時、事件は起きた。
大きなシャンデリアが砕け散るけたたましい破砕音によって先ほどまでのダンスに興じていたはずのカップルたちは逃げ惑い、音楽隊の奏でる音色は多くの者たちの悲鳴で掻き消された。
「何事だ!」
私は被害状況を把握すべく会場内を見渡した。
すると何故か、ダンスホールの壁には大きな穴が空き、粉々に砕け散ったシャンデリアが床ではなく、穴の空いた壁の向こうに飛んでいったのだ。
そしてアイリーンの側にいた我が息子アレクは、走ってすぐにアイリーンを抱きしめていた。
(何が起きたのだ?)
私は久しぶりに困惑した。
事故が起きた後、近くにいた者たちは急いで外にあったシャンゼリアを片付けるために大勢の力で持ち上げようとするも、なかなか動かせない。
すぐに大きな体躯の男たちが何人も集まってようやくシャンゼリアを撤去することができた。
会場では逃げ惑っていた者たちが今度はざわざわと騒ぎ始めたので私は大きな声で場を鎮めた。
「静粛に!」
私は立ち上がり場を鎮めると、次の指示を出した。
「まだ舞踏会は終わっておらん。騎士団の者たちは警備を厳重にせよ!使用人の者たちはすぐに片付けを始めよ!」
私の掛け声と共に騎士団は警備のために動き出した。使用人たちが撤去したシャンゼリアの後を片付け、フロアの清掃をしてなんとか現場復帰を急いだ。
「この場にいる諸君。突然の事で皆驚いていると思うが、どうかこのまま舞踏会を楽しんでほしい。もう一度言うがまだ舞踏会は終わっておらん。少し音楽を聴きながら食事をしようではないか。ダンスをしたい者はまた踊ると良い。それでもすぐに帰りたい者は馬車の用意をさせよう。」
私はそう言うと席に座った。
貴族たちは突然の事で一時はおどろいたが、すぐに元に戻り、和やかな雰囲気のままに夜会は無事終了した。
舞踏会が終わり、
私は宰相のオシリスと共にごく一部の側近と共に執務室へと戻った。
「すぐに今回のシャンデリアを落とした犯人を探せ」
「はっ!」
このままでは終わらせぬ。
アレクの舞踏会を台無しにした者には正義の鉄槌を下してやる。
あとあのシャンデリアの弁償もしてもらわねば。アレクも、いくらアイリーンが大事とはいえ、あのシャンデリアを修復不可能なほどに壊すとは・・・、
「アレクめ、あのシャンデリアが一体いくらすると思っておるのだ」
あれひとつで国家予算の三割はいくはずだ。
この事件で溜まっていた書類の山も三割ほど増えるであろうな。
ああ、そうだった。壁の穴も修復しなくては、またお金がかかるのか。
アレクもあんな壁に穴を開けるほどの魔法を放たなくても良かったのではないのか・・・いかん、考えただけで腹が立ってきた。
おのれ!
奴らはこの私を怒らせたのだ。
「これ以上、第二王子派の貴族どもの好きにはさせぬ」
私は今回の事件を機に王族に刃を向ける貴族たちを徹底的に潰すべく粛清を始めることにした。
「まあ、それでも第二王子派の奴らがアレクの魔法に驚愕しておったのは痛快であったな」
そうだ、アレクにも王太子となるべく書類仕事を押し付けてやろう。自分の魔法で吹き飛ばしたシャンデリアと壁の修繕費の金額を知れば彼奴も少しは反省するであろう。
そう考えなんとか溜飲が下がったようで胸があたりが軽くなってきた。
私はアレクの将来に明るい兆しを見出せたような気がした。
ガチガチになってダンスに誘う僕を見てようやく言ってくれましたねと嬉しそうに微笑むアイリーン。
可愛すぎる。
僕も緊張しすぎて大丈夫なのかわからないが、アイリーンは天使の笑顔で僕の手を取ってくれた。
僕ら二人はダンスホールへと移動すると互いに礼をして音楽に合わせて踊り始めた。
い、いよいよ、本番だ。
(ステップ、ステップ、ターン・・・)
僕は頭の中で必死に動作を確認する。
一応、数日前までは体が覚えるぐらいに繰り返し繰り返しステップやターンの練習をしてきた。
しかしこともあろうことか、本番のダンスでは目の前にいる麗しきアイリーンに見惚れてしまい、僕は一瞬にして頭の中が真っ白になってしまった。
正直言ってヤバい。
とにかく、ダンスの手順を忘れた僕はひたすらにアイリーンの動きに合わせて動くことにした。
アイリーンの動きを見ながら必死についていくのが精一杯で無我夢中で踊っているうちに最初の曲が終了してしまった。
次の曲が始まる前に男女ペアは入れ替わる。
僕は不完全燃焼とばかりにアイリーンともう一度踊りたいと告げるとアイリーンは嬉しそうに受け入れてくれた。
「アレクさま、せっかくの舞踏会ですもの。一緒に楽しみましょう」
女神のように微笑むアイリーン。
僕はまたまたアイリーンに惚れ直した。
こうして何曲か踊って僕はようやくアイリーンとのダンスに慣れてきたようだ。
可愛いアイリーンとダンスを楽しみながら踊ることができるようになった。
嬉しい。
幸せすぎる。
そんな幸せなひとときに浸っていた時、
近くに知らない男が僕たちの近くにやって来た。
僕は踊りながらもその男の動向を注視する。
そしてちょうど曲が終わる頃に男はアイリーンのもとにやってきた。優男というか、まあ、この世界イケメンが多いんだけど、この男ももれなく顔面偏差値は高いようだ。
なんだか僕の心の内がモヤモヤしてくる。
「美しいアイリーン様、どうか私と踊ってくれませんか?」
「ごめんなさい。私はアレク様と踊っているの」
「もう曲が終わっているみたいですが?」
「あら、次の曲がまだ始まっていないだけですわ」
「そうか、ならば次にお願いしましょう」
「次などありませんわ、だって、ずっとアレク様と踊らなければなりませんもの」
「・・・わかりました。それでは素直に辞退するとしましょう」
「そうですわね。ああ、せっかくですもの、他のご令嬢と踊ってあげては?貴方のような素敵な方が申し込まれると喜ぶ方は多いと思いますわよ?」
「あなたはその一人ではないようですね」
「ええ、申し訳ありませんわ」
「はあ、わかりました。それでは行くとしましょう」
優男はアイリーンと踊ることを諦めたようで、すぐに他の女の方に向かっていった。
「良かったの?」
「あら、アレク様はわたくしが他の殿方と踊ってほしいのですか?」
「え!?絶対嫌だ!」
「でしたら一緒に踊りましょう。まだ時間はたっぷりとありますわ」
「そうだね。ようやく体が慣れてきたところだ。こうしてアイリーンと踊れるようになって本当に良かった」
「わたくしも嬉しいですわ」
ウフフ♡
幸せだ。
こうして僕とアイリーンは仲睦まじくダンスを踊り続けた。
さすがに先程の男とのやり取りを見た他の者たちもアイリーンにダンスを申し込むことは無理だと悟ったようだ。
ある意味あの男のおかげで僕たち二人はずっと踊り続けられることが出来た。
ま、一応感謝しないとね。
父上も母上も踊っていたようだけど、歳のせいなのか2曲ほど踊ったところで席に戻っていった。
こうしてダンスが終わり、少し休憩しようと僕がアイリーンから離れた時に事件は起きた。
なんとアイリーンの頭上にあった巨大なシャンゼリアが突然落下してきたのだ。
「危ない!」
きゃあああ!!
ざわめく会場は一瞬にして恐怖に包まれた。
シャンデリアの落下スピードは早く、あっという間にアイリーンの頭上へと接近していた。
やばいやばいやばい!!
このままだとアイリーンが死んじゃう!!
間に合え!!
僕はアイリーンを助けるべく、アイリーンの頭上に落ちるシャンデリアに向けて渾身の魔法を放った。
♢
《アイリーン視点》
先程までアレク様とのダンスに興じていたわたくしの上に突然、大きな悲鳴が聞こえたと思っていたら、なんとわたくしの頭上にあった大きなシャンデリアが音を立てて落ちてきたのです。
きゃあああ!
どなたの声がわかりませんが、あちこちから女性の叫び声が聞こえてきました。
もう本当に大きな声ですわね。
叫びたいのはこちらのほうだというのに。
本当に一瞬の出来事でしたわ。
巨大なシャンデリアはあっという間にわたくしの眼前に迫ってきておりますのよ?
これにはさすがのわたくしも恐怖でこの身が思うように動かず狼狽えてしまいましたわ。
こんなにもわたくしの頭は冷静さを保っていたままなのに、すぐに死を意識しました。
人生の走馬灯を見るほど長く生きてもいませんけどもね。ああ、シャンデリア、綺麗ですわね。皮肉ですわ。こんなにも美しいわたくしの死が、あの美しいシャンデリアに押し潰されることだなんて。
確かにこれに押し潰されたら、わたくし・・・助かる見込みはありませんわね。
わたくしがこの若さで死ぬなんて・・・やだ!死にたくありませんわ!!こんな死に方なんて真っ平ごめんです!!
「助けてお祖父様ぁ!!」
ゴオオオオ、ドガァーン!!
え?
それは一瞬のことでした。
突如として現れた巨大な竜巻がわたくしの頭上を通り抜けていきましたの。
それは巨大なシャンデリアを巻き込んで、そのまま会場の外へと吹き飛ばされていきましたわ。その時の大きな破砕音と共に硝子の破片や砕け散った壁の欠片などがダンスホールのあちこちに散らばっていきました。
ど、どうしたのかしら。
わたくし、助かった・・・のですわよね?
これは夢?
いいえ、今ほっぺたをつねったら確かな痛みを感じましたわ。
どういう事ですの?
わたくしが驚き混乱しているところ、ちょうど目の前にいたアレク様のお姿を見て、ようやく事の経緯を理解することができましたわ。
彼がわたくしを助けるために魔法を行使してあの竜巻を放ったのだということ。
それにしても死を意識した時はこんな一瞬でも色々考えられるものなのですね。
いえそうではありませんわ。
そもそもあの魔法は一体、何なのですの!?
お祖父様の話ではアレク様の魔法の実力は王宮魔法師となれる程だと聞きましたけど、間近で見た先程の風魔法は、わたくしの領地にいる元王宮魔法師たちが使う魔法よりもさらに上位のものでしたわ。
さらに無詠唱。
近年、王宮魔法師の総帥であられるガルシア様が無詠唱魔法の論文を発表されて、それ以降、王国魔法師の革命と評されるほどにガルシア様の論文は魔法師界に大きな波紋を呼び起こしました。
いまだに無詠唱の魔法を行使できる魔法師は王国でも5本の指で数えるほどしかいないと言われていますのに・・・。
(なぜ、貴方がその無詠唱魔法を使えますの?)
キラキラと輝くシャンデリアの硝子の破片が美しく飛び散る中でアレク様は真剣な眼差しでわたくしを見つめていました。
トクン・・・。
え?
な、何なんですの?
「アイリーン!!無事で良かった!」
「ア、アレク様!?」
え?いつのまにかアレク様がわたくしの側に来ていますわ?
しかもいつのまにかわたくしを抱きしめてくださっていますわ!
「アイリーン、・・・大丈夫?」
「え、ええ、だ、大丈夫ですわ」
な、何なんですの?
か、顔が熱いですわ。
「アイリーン、顔が赤いけど大丈夫?」
「え!?ええ!だ、大丈夫ですわ!!」
あ、ああ、わ、わたくし、な、何なんですの?
ああ!何故かアレク様がお祖父様のようにステキに見えますわ!
つい先程までこのみすぼらしいお顔がなんだか可愛いとは思っていましたけど、でも、いまはアレク様がお祖父様のようにかっこいいだなんて、ああ、なんだかさっきから体が熱いですわ!
わたくし、一体どうしてしまったのかしら・・・・・・。
♢
《国王アレクサンドル視点》
「さあ、マグダよ、久しぶりに私たちも踊ろうか」
「良いですわね。それではよろしくお願いいたしますわ」
私はマグダと久しぶりのダンスに興じ、踊り終えた後、共にダンスホールから離れ私たちの席に向かった。
その時、事件は起きた。
大きなシャンデリアが砕け散るけたたましい破砕音によって先ほどまでのダンスに興じていたはずのカップルたちは逃げ惑い、音楽隊の奏でる音色は多くの者たちの悲鳴で掻き消された。
「何事だ!」
私は被害状況を把握すべく会場内を見渡した。
すると何故か、ダンスホールの壁には大きな穴が空き、粉々に砕け散ったシャンデリアが床ではなく、穴の空いた壁の向こうに飛んでいったのだ。
そしてアイリーンの側にいた我が息子アレクは、走ってすぐにアイリーンを抱きしめていた。
(何が起きたのだ?)
私は久しぶりに困惑した。
事故が起きた後、近くにいた者たちは急いで外にあったシャンゼリアを片付けるために大勢の力で持ち上げようとするも、なかなか動かせない。
すぐに大きな体躯の男たちが何人も集まってようやくシャンゼリアを撤去することができた。
会場では逃げ惑っていた者たちが今度はざわざわと騒ぎ始めたので私は大きな声で場を鎮めた。
「静粛に!」
私は立ち上がり場を鎮めると、次の指示を出した。
「まだ舞踏会は終わっておらん。騎士団の者たちは警備を厳重にせよ!使用人の者たちはすぐに片付けを始めよ!」
私の掛け声と共に騎士団は警備のために動き出した。使用人たちが撤去したシャンゼリアの後を片付け、フロアの清掃をしてなんとか現場復帰を急いだ。
「この場にいる諸君。突然の事で皆驚いていると思うが、どうかこのまま舞踏会を楽しんでほしい。もう一度言うがまだ舞踏会は終わっておらん。少し音楽を聴きながら食事をしようではないか。ダンスをしたい者はまた踊ると良い。それでもすぐに帰りたい者は馬車の用意をさせよう。」
私はそう言うと席に座った。
貴族たちは突然の事で一時はおどろいたが、すぐに元に戻り、和やかな雰囲気のままに夜会は無事終了した。
舞踏会が終わり、
私は宰相のオシリスと共にごく一部の側近と共に執務室へと戻った。
「すぐに今回のシャンデリアを落とした犯人を探せ」
「はっ!」
このままでは終わらせぬ。
アレクの舞踏会を台無しにした者には正義の鉄槌を下してやる。
あとあのシャンデリアの弁償もしてもらわねば。アレクも、いくらアイリーンが大事とはいえ、あのシャンデリアを修復不可能なほどに壊すとは・・・、
「アレクめ、あのシャンデリアが一体いくらすると思っておるのだ」
あれひとつで国家予算の三割はいくはずだ。
この事件で溜まっていた書類の山も三割ほど増えるであろうな。
ああ、そうだった。壁の穴も修復しなくては、またお金がかかるのか。
アレクもあんな壁に穴を開けるほどの魔法を放たなくても良かったのではないのか・・・いかん、考えただけで腹が立ってきた。
おのれ!
奴らはこの私を怒らせたのだ。
「これ以上、第二王子派の貴族どもの好きにはさせぬ」
私は今回の事件を機に王族に刃を向ける貴族たちを徹底的に潰すべく粛清を始めることにした。
「まあ、それでも第二王子派の奴らがアレクの魔法に驚愕しておったのは痛快であったな」
そうだ、アレクにも王太子となるべく書類仕事を押し付けてやろう。自分の魔法で吹き飛ばしたシャンデリアと壁の修繕費の金額を知れば彼奴も少しは反省するであろう。
そう考えなんとか溜飲が下がったようで胸があたりが軽くなってきた。
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