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学園編
モブ王子の入学③
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いよいよ入学式が始まった。
「静粛に!これより王立学園入学式をおこなう!」
学園の先生の誰かが声を発するとすぐに大勢の生徒が静かになり場は静まる。
「学園長の祝辞である!」
(ああ、なんか懐かしいなこれ)
僕は過去世の入学式を思い出して思い耽っているうちに、学園長アーシェラの挨拶が始まった。
「皆さん!学園入学おめでとう!私はこの学園の長であるアーシェラです。私はこれから君たちを4年間指導することになります。この学園では魔法や剣術、そして様々な学問を学ぶことが出来ます。そしてここには貴方達の先人たちが培ってきた叡智があり、どうかその先人達の築いた叡智を真剣に学んでいってほしいのです。そして先人たちを超えてこの国の繁栄に貢献していってもらいたい!皆が自分達に合った特技を活かし、そして国の発展のために尽力を尽くしてほしい。そのために我々教師陣も全力でサポートします。さあ!みんな!頑張りましょう!」
学園長は最後には場を盛り上げながらも最後は厳かな佇まいを醸し出したまま壇を降りた。
(校長先生絶好調だな)
昔、いや過去世か、つい懐かしくて小学生の頃に流行ったダジャレを思い出してしまった。そんなくだらない事を考えていた僕以外の生徒たちはちゃんと真面目に学園長の話を聞いていたようで彼女の掛け声に感化されたのか皆やる気に満ちていた。
「次にサトゥーラ国国王アレクサンドル王より祝辞をいただく!」
壇上には父である国王がマイクに似た拡声器の前に立ち祝辞を述べる。
「諸君!本日は学園への入学本当におめでとう!これから君たちは4年間この学園で様々に知識を学ぶ事になるだろう。そして皆一人一人が立派に成長し、この国を支えていってほしい。それが建国の父、初代国王であるアルテマ王の願いであり、この学園を創ったときの理念である!どうか学園での生活を後悔のないものにしてほしい」
アレクサンドル王は威厳を示しつつ壇上を去った。
僕は見知った2人の挨拶のせいか、前世において入学式を経験しているせいか、すでに早く終わらないかなと思いながらダラダラしていた。
そしてそんな僕の隙を狙ったかのように、
「それでは新入生代表!アレク王子の挨拶です!」
突然、白羽の矢が当たる。
「は、い、うぇえ!?」
いきなり名前を呼ばれた僕は当然ながら驚いた。
(僕?挨拶しろって聞いてないけど)
突然のハプニングで慌てふためく僕に向けて会場の皆の視線が集中する。
「ア、アレク王子!ここにいませんか!?」
司会の教師が慌てて僕を探し出した。
(やばい!早く返事しないと)
ここでこんな悪目立ちはしたくない。
「はい!」
僕は速やかに現状を受け入れた。
そして慌てて壇に上がると目の前には大勢の生徒が僕を見ていた。
(うわっ緊張するな!・・・いやいや落ち着け、よく考えたらアイリーンと話しているよりもずっと冷静に考えられているじゃないか)
そうそう、簡単なことだ。
アイリーンや魔獣と対峙した時のことを思い浮かべたら今目の前にいる生徒たちなんて蟻が群がっているようなもんさ。
そう考えた僕はようやく落ち着きを取り戻すことができた。
いや、なんか懐かしいな。
そういや昔入学式で挨拶したんだった。
そうそう、あの頃もだいぶ緊張したんだよな。
あの時何言ったっけ。
僕は前世の頃を思い出しながら今の状況と重ね合わせた。
すると昔の記憶が甦ってすらりと言葉が出てきた。
「暖かな春の訪れとともに、私たちは学園の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。
学園は4年間ということできっとあっという間に過ぎていくことと思います。1日1日悔いのないよう大切に過ごしていきたいです。勉学に励みこの国を支えられるよう頑張りたいと思っています。
そして生涯付き合っていけるような友を作ることができたらなと思っています。
先生方、それから来賓の方々これから厳しいご指導のほどよろしくお願いします。時には間違った道へ進もうとしてしまうこともあるでしょう。その時は優しく力を貸していただけると嬉しいです」
ぺこり。
話し終えた僕はシンとした場の雰囲気に耐えきれずお辞儀をしてサッサと壇を降りた。
(はー、危なかったなあ。前世で一回だけ入学式の挨拶しといて助かったよ。良かったー。まさかいきなり挨拶しろって言われるとは思わんかった)
緊張が解けたと思っていたが、気がつけば落ち着いたはずの胸はバクバクと激しい心音が鳴り響いており、僕の身体は熱いのか寒いのかもわからないほどに熱く冷たい状態になっていた。
内心焦りながらもちゃんと挨拶できたことに自分で自分を褒めてあげたい。やはり過酷な鍛錬によって度胸がついたんだろうな。
今までの経験は決して無駄ではなかったんだ。うん。
それでも久しぶりの壇上での挨拶とあって僕は随分と緊張していたようだ。
手の汗と脇汗が止まらない。
鍛錬をしたわけでもないのに緊張のせいですでに汗だくだ。
僕は元の場所に戻るとすぐに誰にも気づかれぬようハンカチで首の周りと手を拭いた。すると今度は殺気にも似た不愉快な視線が幾つか僕に向けられているのを感じた。
ん?なんか一部面白くなさそうな顔をした面々がいるな。
ていうか僕のこと睨んでる?
あれは貴族の子どもか?
よく見たら上級生と先生たちの中にも僕を睨んでいるみたいだな。
なんか不良(ヤンキー)みたいでやだなぁ。絡まれないように気をつけないと。
あれ?でも僕は王子なんだよな?なんで王族の僕にあんなに睨んでくるんだ?
んー、まあ、これ以上、考えても仕方ないな。自分の挨拶も終わったことだし後は終わるまで待つだけだわ。
こうしてようやく入学式が終わった。
父上は僕が焦りながらもしっかり挨拶ができたところを見て安心したようで入学式が終わると僕に労いの言葉をかけてくれた。
その後僕たち新入生は入学式が終わると教室に戻った。
僕が教室に戻るとアイリーンはすでに着席しており、隣にはすでにメリアが座っていた。
(アイリーンの隣は誰にも譲らない!)
僕は他の誰にも座らせないぞとばかりにすかさずアイリーンの隣に座った。
そんな僕のあからさまな行動を見て嬉しかったのかアイリーンは喜色に満ちた満面の笑顔となっている。
「アレク様、先程のご挨拶とても素晴らしかったですわ!」
「え?そう?いやあ、アイリーンに言われると照れちゃうな」
と素晴らしい笑顔で褒めてくれた。
しばらくすると入学式の前に案内してくれたあの小ちゃい先生がまた教室にやってきて自己紹介をはじめた。
「わ、私の名前はフランです。これから一年間皆さんを教える事になります。私の専攻は魔法科ですので、みなさんどうぞよろしくお願いします!」
少し緊張しながらフラン先生は挨拶した。
「それではこれから学園での規則や授業のとり方を説明していきますね」
そう言ってフラン先生は学園のカリキュラムを説明してくれた。
僕たちが受ける授業と各校舎の説明、身分によって受けられる授業、立ち入り禁止区域の説明、などなど。
そして学園でのスケジュールを教えてくれた。
7時 起床
8時 朝食
9時 授業開始
12時 昼食、休憩
13時 授業
16時 帰寮
18時 夕食とお風呂
22時 就寝(強制ではない)
それ以外は自由時間だ。
7歳から約5年間早朝からの鍛錬と過密スケジュールを経験した僕にとってはここは天国のような環境であった。
(本当にこれでいいのか?毎朝5時から起きなくてもいいんだよな?あの過密スケジュールは学園に通っていてもやらなくちゃいけないかと思ったよ。いやー、本当に良かったわー!)
「アレク様はどの授業を受けられますの?」
アイリーンが聞いてきた。
「一応ひととおり授業を受けてみて、気に入ったら続けて通おうかなと考えてるよ」
「まあ!それは素晴らしいですわ!私もアレク様と一緒に授業を受けますわ!」
(天使か!)
「でもアイリーンは剣術は受けないんじゃないの?」
「いいえ、領地にいた頃はお祖父様から多少の手ほどきは受けておりましたの」
「へえーすごいな!でもその割には手が綺麗だね」
アイリーンには剣だこがない。
幼少から剣を握っていた僕には両手に立派な剣だこがあるのでアイリーンの綺麗な手に違和感を感じた。
「それは淑女として多少の護身術は身につけておきませんと暴漢などに襲われては困りますもの。そういうことでお祖父様が直接わたくしに剣術を教えてくださったのです。もちろん鍛錬が終わった後はポーションで手を洗い、保湿クリームで手荒れを防いでましたわ」
アイリーンにそう言って自分の両手を見せてくれた。
「へぇーーー」
(知らんかったわー)
ボルトの奴、あれだけシゴキまくったあげく王子である俺の体を傷物にしやがって!
まあでもよく考えたら僕男だし別にいいのか。それに手の剣だこも頑張った時の証みたいなもんだしな。
「まあ、アイリーンが一緒に受けられるのなら僕も嬉しいよ」
「うふふ♪楽しみですわね♪」
アイリーンの隣の座るメリアは何も語らずにただ隣にいるだけだった。一応、側使いとしてアイリーンと共に学園で学ぶことになったのだが、本当の目的はアイリーンのお目付け役だそうで、一応アイリーンの行動はメリアを通して当主のガスタル辺境伯に報告することになっているらしい。
「そんなこと僕に話していいの?」
「別にどうでも良い内容ですから構いませんわ」
「御当主様はアイリーン様のことを信頼なさっておられますので、私はお目付け役という立場を与えられただけで本当は学園で勉強できるようにと御当主様が取り計らってくださっただけなのです」
メリアは申し訳なさそうな顔で話してくれた。
「ガスタル辺境伯は素晴らしい御人だね」
「はい!素晴らしいお祖父様ですわ!」
鼻を高くして祖父自慢するアイリーンがとても可愛い。
「それじゃあアイリーンと一緒に授業を受けられるように僕も頑張るよ」
「はい、わたくしも楽しみにしておりますわ」
そんな僕たちの会話を聞いていた一部の生徒たちはアイリーンの発言を聞いて自分も一緒に受けようかなと密かに考えているようだ。
アイリーンは可愛い。
だからか、アイリーンに恋焦がれる男子は多いみたいだ。
それで僕のことが気に入らないのか。
嫉妬か、嫌悪か、
同級生たちの一部はそんな視線を僕にぶつけてくる。僕は入学式の時に感じた不愉快な視線の原因がわかって少し安堵した。
ま、仕方ないよな。あんなに可愛らしい子の婚約者になったんだもんな。まあそれに僕は王子なんだし、あからさまに嫌がらせをしてくる奴なんていないだろ。
そういうことで僕は不快な視線に耐えることにした。
そしてようやくオリエンテーションも終わり、無事入学初日を終えることが出来た。
入学早々色々あったけど、明日もまあなんとかなるだろ。
いよいよ明日から学園での授業が始まるのだ。明日への期待を胸に抱いて僕は寮へと戻った。
「静粛に!これより王立学園入学式をおこなう!」
学園の先生の誰かが声を発するとすぐに大勢の生徒が静かになり場は静まる。
「学園長の祝辞である!」
(ああ、なんか懐かしいなこれ)
僕は過去世の入学式を思い出して思い耽っているうちに、学園長アーシェラの挨拶が始まった。
「皆さん!学園入学おめでとう!私はこの学園の長であるアーシェラです。私はこれから君たちを4年間指導することになります。この学園では魔法や剣術、そして様々な学問を学ぶことが出来ます。そしてここには貴方達の先人たちが培ってきた叡智があり、どうかその先人達の築いた叡智を真剣に学んでいってほしいのです。そして先人たちを超えてこの国の繁栄に貢献していってもらいたい!皆が自分達に合った特技を活かし、そして国の発展のために尽力を尽くしてほしい。そのために我々教師陣も全力でサポートします。さあ!みんな!頑張りましょう!」
学園長は最後には場を盛り上げながらも最後は厳かな佇まいを醸し出したまま壇を降りた。
(校長先生絶好調だな)
昔、いや過去世か、つい懐かしくて小学生の頃に流行ったダジャレを思い出してしまった。そんなくだらない事を考えていた僕以外の生徒たちはちゃんと真面目に学園長の話を聞いていたようで彼女の掛け声に感化されたのか皆やる気に満ちていた。
「次にサトゥーラ国国王アレクサンドル王より祝辞をいただく!」
壇上には父である国王がマイクに似た拡声器の前に立ち祝辞を述べる。
「諸君!本日は学園への入学本当におめでとう!これから君たちは4年間この学園で様々に知識を学ぶ事になるだろう。そして皆一人一人が立派に成長し、この国を支えていってほしい。それが建国の父、初代国王であるアルテマ王の願いであり、この学園を創ったときの理念である!どうか学園での生活を後悔のないものにしてほしい」
アレクサンドル王は威厳を示しつつ壇上を去った。
僕は見知った2人の挨拶のせいか、前世において入学式を経験しているせいか、すでに早く終わらないかなと思いながらダラダラしていた。
そしてそんな僕の隙を狙ったかのように、
「それでは新入生代表!アレク王子の挨拶です!」
突然、白羽の矢が当たる。
「は、い、うぇえ!?」
いきなり名前を呼ばれた僕は当然ながら驚いた。
(僕?挨拶しろって聞いてないけど)
突然のハプニングで慌てふためく僕に向けて会場の皆の視線が集中する。
「ア、アレク王子!ここにいませんか!?」
司会の教師が慌てて僕を探し出した。
(やばい!早く返事しないと)
ここでこんな悪目立ちはしたくない。
「はい!」
僕は速やかに現状を受け入れた。
そして慌てて壇に上がると目の前には大勢の生徒が僕を見ていた。
(うわっ緊張するな!・・・いやいや落ち着け、よく考えたらアイリーンと話しているよりもずっと冷静に考えられているじゃないか)
そうそう、簡単なことだ。
アイリーンや魔獣と対峙した時のことを思い浮かべたら今目の前にいる生徒たちなんて蟻が群がっているようなもんさ。
そう考えた僕はようやく落ち着きを取り戻すことができた。
いや、なんか懐かしいな。
そういや昔入学式で挨拶したんだった。
そうそう、あの頃もだいぶ緊張したんだよな。
あの時何言ったっけ。
僕は前世の頃を思い出しながら今の状況と重ね合わせた。
すると昔の記憶が甦ってすらりと言葉が出てきた。
「暖かな春の訪れとともに、私たちは学園の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行っていただき大変感謝しています。
学園は4年間ということできっとあっという間に過ぎていくことと思います。1日1日悔いのないよう大切に過ごしていきたいです。勉学に励みこの国を支えられるよう頑張りたいと思っています。
そして生涯付き合っていけるような友を作ることができたらなと思っています。
先生方、それから来賓の方々これから厳しいご指導のほどよろしくお願いします。時には間違った道へ進もうとしてしまうこともあるでしょう。その時は優しく力を貸していただけると嬉しいです」
ぺこり。
話し終えた僕はシンとした場の雰囲気に耐えきれずお辞儀をしてサッサと壇を降りた。
(はー、危なかったなあ。前世で一回だけ入学式の挨拶しといて助かったよ。良かったー。まさかいきなり挨拶しろって言われるとは思わんかった)
緊張が解けたと思っていたが、気がつけば落ち着いたはずの胸はバクバクと激しい心音が鳴り響いており、僕の身体は熱いのか寒いのかもわからないほどに熱く冷たい状態になっていた。
内心焦りながらもちゃんと挨拶できたことに自分で自分を褒めてあげたい。やはり過酷な鍛錬によって度胸がついたんだろうな。
今までの経験は決して無駄ではなかったんだ。うん。
それでも久しぶりの壇上での挨拶とあって僕は随分と緊張していたようだ。
手の汗と脇汗が止まらない。
鍛錬をしたわけでもないのに緊張のせいですでに汗だくだ。
僕は元の場所に戻るとすぐに誰にも気づかれぬようハンカチで首の周りと手を拭いた。すると今度は殺気にも似た不愉快な視線が幾つか僕に向けられているのを感じた。
ん?なんか一部面白くなさそうな顔をした面々がいるな。
ていうか僕のこと睨んでる?
あれは貴族の子どもか?
よく見たら上級生と先生たちの中にも僕を睨んでいるみたいだな。
なんか不良(ヤンキー)みたいでやだなぁ。絡まれないように気をつけないと。
あれ?でも僕は王子なんだよな?なんで王族の僕にあんなに睨んでくるんだ?
んー、まあ、これ以上、考えても仕方ないな。自分の挨拶も終わったことだし後は終わるまで待つだけだわ。
こうしてようやく入学式が終わった。
父上は僕が焦りながらもしっかり挨拶ができたところを見て安心したようで入学式が終わると僕に労いの言葉をかけてくれた。
その後僕たち新入生は入学式が終わると教室に戻った。
僕が教室に戻るとアイリーンはすでに着席しており、隣にはすでにメリアが座っていた。
(アイリーンの隣は誰にも譲らない!)
僕は他の誰にも座らせないぞとばかりにすかさずアイリーンの隣に座った。
そんな僕のあからさまな行動を見て嬉しかったのかアイリーンは喜色に満ちた満面の笑顔となっている。
「アレク様、先程のご挨拶とても素晴らしかったですわ!」
「え?そう?いやあ、アイリーンに言われると照れちゃうな」
と素晴らしい笑顔で褒めてくれた。
しばらくすると入学式の前に案内してくれたあの小ちゃい先生がまた教室にやってきて自己紹介をはじめた。
「わ、私の名前はフランです。これから一年間皆さんを教える事になります。私の専攻は魔法科ですので、みなさんどうぞよろしくお願いします!」
少し緊張しながらフラン先生は挨拶した。
「それではこれから学園での規則や授業のとり方を説明していきますね」
そう言ってフラン先生は学園のカリキュラムを説明してくれた。
僕たちが受ける授業と各校舎の説明、身分によって受けられる授業、立ち入り禁止区域の説明、などなど。
そして学園でのスケジュールを教えてくれた。
7時 起床
8時 朝食
9時 授業開始
12時 昼食、休憩
13時 授業
16時 帰寮
18時 夕食とお風呂
22時 就寝(強制ではない)
それ以外は自由時間だ。
7歳から約5年間早朝からの鍛錬と過密スケジュールを経験した僕にとってはここは天国のような環境であった。
(本当にこれでいいのか?毎朝5時から起きなくてもいいんだよな?あの過密スケジュールは学園に通っていてもやらなくちゃいけないかと思ったよ。いやー、本当に良かったわー!)
「アレク様はどの授業を受けられますの?」
アイリーンが聞いてきた。
「一応ひととおり授業を受けてみて、気に入ったら続けて通おうかなと考えてるよ」
「まあ!それは素晴らしいですわ!私もアレク様と一緒に授業を受けますわ!」
(天使か!)
「でもアイリーンは剣術は受けないんじゃないの?」
「いいえ、領地にいた頃はお祖父様から多少の手ほどきは受けておりましたの」
「へえーすごいな!でもその割には手が綺麗だね」
アイリーンには剣だこがない。
幼少から剣を握っていた僕には両手に立派な剣だこがあるのでアイリーンの綺麗な手に違和感を感じた。
「それは淑女として多少の護身術は身につけておきませんと暴漢などに襲われては困りますもの。そういうことでお祖父様が直接わたくしに剣術を教えてくださったのです。もちろん鍛錬が終わった後はポーションで手を洗い、保湿クリームで手荒れを防いでましたわ」
アイリーンにそう言って自分の両手を見せてくれた。
「へぇーーー」
(知らんかったわー)
ボルトの奴、あれだけシゴキまくったあげく王子である俺の体を傷物にしやがって!
まあでもよく考えたら僕男だし別にいいのか。それに手の剣だこも頑張った時の証みたいなもんだしな。
「まあ、アイリーンが一緒に受けられるのなら僕も嬉しいよ」
「うふふ♪楽しみですわね♪」
アイリーンの隣の座るメリアは何も語らずにただ隣にいるだけだった。一応、側使いとしてアイリーンと共に学園で学ぶことになったのだが、本当の目的はアイリーンのお目付け役だそうで、一応アイリーンの行動はメリアを通して当主のガスタル辺境伯に報告することになっているらしい。
「そんなこと僕に話していいの?」
「別にどうでも良い内容ですから構いませんわ」
「御当主様はアイリーン様のことを信頼なさっておられますので、私はお目付け役という立場を与えられただけで本当は学園で勉強できるようにと御当主様が取り計らってくださっただけなのです」
メリアは申し訳なさそうな顔で話してくれた。
「ガスタル辺境伯は素晴らしい御人だね」
「はい!素晴らしいお祖父様ですわ!」
鼻を高くして祖父自慢するアイリーンがとても可愛い。
「それじゃあアイリーンと一緒に授業を受けられるように僕も頑張るよ」
「はい、わたくしも楽しみにしておりますわ」
そんな僕たちの会話を聞いていた一部の生徒たちはアイリーンの発言を聞いて自分も一緒に受けようかなと密かに考えているようだ。
アイリーンは可愛い。
だからか、アイリーンに恋焦がれる男子は多いみたいだ。
それで僕のことが気に入らないのか。
嫉妬か、嫌悪か、
同級生たちの一部はそんな視線を僕にぶつけてくる。僕は入学式の時に感じた不愉快な視線の原因がわかって少し安堵した。
ま、仕方ないよな。あんなに可愛らしい子の婚約者になったんだもんな。まあそれに僕は王子なんだし、あからさまに嫌がらせをしてくる奴なんていないだろ。
そういうことで僕は不快な視線に耐えることにした。
そしてようやくオリエンテーションも終わり、無事入学初日を終えることが出来た。
入学早々色々あったけど、明日もまあなんとかなるだろ。
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