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学園編
剣術の稽古
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魔法能力の鑑定試験や体力テストではアレクの剣技の素晴らしさと魔法行使での惨劇が瞬く間に全生徒に広がり、生徒たちからは「初代アルテマ王の再来」と称されるようになった。
この噂を広めたのはだれかはわからないが魔力テストの時のように生徒たち全員から無視されることはなくなったようだ。未だ他の生徒たちと少し距離は感じるものの以前よりはまだ待遇が良くなったとアレクはほっこりしているようだ。
ちなみに噂の発信源はアイリーンである。
アイリーンは初代国王アルテマの名を使いアレクが時期国王となるべく情報操作に勤しんでいた。
そして実際にアルテマ王と同じく魔法全属性の使い手であり、剣術は元騎士であるドルトンともやり合えるだけの実力とあれば学園生徒たちもアレクがアルテマ王の再来と言われても納得するだけのものがあった。
この噂の影響はそれだけではない。この学園でアレク王子と敵対関係にある教頭を筆頭に第二王子派の教師や生徒たちから次は何をしでかすのかわからないと密かに恐れられるようになっていたのだ。
アレクがやらかした魔力テストの惨事も意外に怪我の功名となっていた。
ただアレクを特別視することに危惧したヘンリー教頭はアレクをどうにかして亡き者にせんと謀を企てるのであった。
♢
剣術テストが終わり、
体力テストの総合点はアレクが一位、サラが二位となった。
二人は同年代と比べて剣術のレベルが遥かに高いため、ドルトン先生から二人だけ特別に上級生と一緒に剣術の授業を受けるようにとの通達を受けた。
そしていよいよ今日から剣術の授業の1日目が始まる。
サラは朝っぱらから上機嫌でもっと強くなりたいと鼻息を荒くして張り切っている。
サラはアレクの護衛騎士として忠誠を誓う際に「このままで満足してはおりません。さらに、今以上強くなってみせます」と言ったため、アレクの日課である朝の鍛錬ではサラも一緒になって稽古をすることになった。
ただアレクは先日のサラの忠誠の誓いを勘違いして受け止めてしまい、それ以降サラが自分に懸想しているのではないかと妙に意識していた。
サラも見た目は落ち着いた先輩女子なのだが、中身は末っ子なのか人懐っこいところがえり甘え上手、また年上に可愛がられるタイプだった。
アレクは前世と同じく、今回も長男である。
なので末っ子サラとは相性が良かった。
どことなく面倒見の良いアレクと人懐っこいサラは側から見ても仲睦まじく見られるようになっていたのだ。
そしてそれがアレクにとって新たな問題の引き金になるとは思いもしなかったのだ。
「アレク様、そろそろ剣術の授業が始まりますよ」
「あ、そうだ。それじゃ行こうか」
「はい」
「アレク様、頑張ってくださいませ」
「ありがとうアイリーン、行ってくるよ。はあ、僕もアイリーンたちと同じ授業を受ければ良かったよ」
「仕方ありませんわ。わたくしのことは気になさらず剣術の鍛錬に行ってきてくださいませ」
「うん」
「強いアレク様はわたくしは好きですわ。どうか今以上に強くなって立派な王となってくださいませ」
「わかった。行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
アレクはサラを伴って修練場へと向かって行った。
「メリア、わたくしたちもそろそろマナーの講習へ行きますわよ」
「かしこまりました」
アイリーンとメリアは騎士コースではないため剣術の授業を受けないことにしていた。そのため特別枠として王族となるためのマナー講座を受けさせてもらえることになったのだ。
教室に残された二人は自分たちの受ける教室へ移動する。アイリーンの後ろを歩くメリアは不安な表情で主人を見ている。
誰もいない通路を二人の足音だけが響いている。
自分の側使いと大した会話もなくただ黙し目的地へと進むアイリーン。
その沈黙の間がメリアに決断を促したのか意を決してアイリーンに言葉をかけた。
「アイリーン様」
「何ですの?」
「アイリーン様はよろしいのですか?」
「何のことです?」
「アレク王子とサラがいつも一緒にいるので妙な噂が立っておりますけど・・・」
「彼女はアレク様の護衛騎士ですのよ?一緒にいるのは当然ですわ」
「でも」
「メリア、そんな事で心配するようではとても王族の側近にはなれませんわよ?」
「私は王族の側近の立場など求めておりません。ただアイリーン様のお側にいたいだけなのです」
「ならば共に強くならねばなりません。このような些末な事で感情を乱してはなりませんよ」
「はい・・・」
「さあ、はやく行きますわよ」
「・・・・・・」
メリアは知っていた。
アイリーンの持っている扇子の持ち手部分が折れていることを。
今でもアイリーンが強く握りしめているだけでみしみしと扇子の軋む音が聞こえる。
(アイリーン様・・・)
メリアはこれ以上何も言わず、ただ主の後ろをついていくだけだった。
♢
初の剣術の授業を受けることになったアレクとサラは颯爽と鍛錬場へ向かう。
「アレク様!いよいよ剣術の授業ですね!私、嬉しくて昨日はあまり寝れませんでした!」
「それって危なくない?寝不足で怪我したら洒落にならないよ?」
「いや!怪我なんてポーション飲んどけば大丈夫です!はやく上級生たちと戦いたいです!」
寝不足で目は血走っており息をハアハアとしながら興奮するサラを見てドン引きするアレク。
サラのその姿はまるでバトルジャンキーだった。
(黙っていたら美少女なのにな。残念属性持ちとは・・・、それはそうと、サラのやつこんな危なそうな奴だったっけ?)
出会ってそんなに経っていないはずなのだが、こんなんだったっけ?とアレクも不思議がる。
時々ドキドキするほどの可愛らしさを印象付けるサラなのだが、今日はハイテンション過ぎて危ない薬に手を出している奴にしか見えない。
アレクは少し興奮したサラと距離を取りつつ急ぎ足で修練場に向かった。
「よく来たな!」
上級生たちが迎えてくれた。
しかしアレク王子を喜んで迎えてくれているような感じはしない。むしろ逆に敵陣に入ったような危機感を覚える。
(何か嫌な感じがするな)
そんな中、上級生たちの後ろから長身で美丈夫な男が前に出てきた。
「ようこそ!アレク王子!そしてサラだったかな?私はカインという。ドルトン先生から聞いたが二人ともかなり実力があるそうじゃないか。是非我々と手合わせをしていただこう!」
カインは二本の木剣を持っていた。
周りの生徒たちもニタニタと笑みを浮かべながら各々木剣を持っていた。
サラは上級生の醸し出す異様な雰囲気に押されたのか思わず息を呑んだ。
アレクは武者震いをしながら何も言わずに木剣を構えた。
「で、カイン先輩、僕らは最初に誰と戦えばいいんですか?」
アレクは質問した。
「そうだな。それじゃあ俺たちと一対一で手合わせしてもらおうか」
(は?それって、こっちが圧倒的にキツいよな)
アレクとサラは上級生全員と手合わせしろということだ。
空手の百人組手みたいなものである。
「サラ、どっちからやる?」
「では私が最初に」
「わかった」
とりあえずサラから先に手合わせすることになった。
サラの前に上級生の一人が出てきた。
ちょっと強そうな感じだが、こいつら本当に俺と歳近いのか?とアレクが疑いたくなるほど老けた外見で、少なくとも十代半ばには見えない。見た目アラサーのようなおっさん達ばかりだ。
サラはよろしくお願いします!と一礼し、剣を構える。
相手は先に攻撃を仕掛けてきたがサラは冷静に剣で受け止めて反撃する。
相手はサラの動きについていけずに剣をモロにくらった後、蹲るように倒れる。
「それまで!サラの勝ち!」
それからサラは難なく五人抜きをした。
「ほう、なかなかやるな」
上級生が5人抜きされたのにカインはまだ余裕の笑みを残している。
では次!
次の相手は丸坊主で体格の良い男だった。こちらを舐めているのかヘラヘラと笑いながら前に出てきて本当に態度が悪い。
サラはよろしくお願いします!と一礼し、剣を構えた。
対し、対戦相手の上級生はだらしなく剣を持ちニヤニヤと半笑いでサラを値踏みするように睨め付けるのであった。
サラも侮辱されているのが分かった様で自身から攻撃に出る。
すぐに袈裟斬りから入ったのだが、剣で受け止められながら上手く絡め取られる。
サラも今まで戦ってきた事のない相手だったためか相手のフェイントを混ぜた攻撃とラフプレーに翻弄される。
サラはサラで実力はあるのだが、攻撃が素直すぎて相手にすぐに見切られているように見えた。
攻撃が当たらないサラは焦ってしまい無理に攻撃してしまう。
そこを狙われたのか上級生に足を掬《すく》われたサラはひっくり返ってしまう。
地面に背中を打ちつけたサラは咳をして苦しんだ。そんなサラの顔を上級生の男は足で踏みつける。しかしすんでのところでサラは男の足を両手で掴み足を投げ払った。
「おい!何やってんだ!」
「は?何言ってるんだ?鍛錬に決まってるじゃないか」
「アイツが女の子の顔を足で踏もうとしていたぞ!」
「え?そんなことしていたか?」
「俺らには全く見えなかったがなあ」
へらへらと笑いながら答える上級生たち。
そんな人を馬鹿にした態度にアレクは久しぶりにカチンときた。
(あの野郎!)
「おいおい、もう終わりか?」
サラは苦しそうに立ち上がり剣を構える。
しかし、そんなサラを制して庇うようにアレクが前に出てきた。
「それじゃあ次は私と手合わせ願おうか」
アレクが剣を構えると相手も構える。
アレクは素早く相手に近づき上段から剣を振り下ろす。
相手はニヤリと剣で受けようと構える。
アレクはすぐに剣筋を切り替えて下から上に振り抜くと相手はかろうじて避けた。しかしアレクはすぐさま追撃する。
また上段から剣を振り下ろすと同じように構えるが相手はもう騙されないと警戒している。
アレクは次に目線のフェイントで剣筋を切り替えるようなフリをすると相手はまんまと引っかかり、慌てて構えを変えた。
結局アレクは上段のまま剣を振り下ろすと相手は防御が間に合わず頭上に木剣が強烈な勢いで当たった。
「ア、アレク王子の勝ち!」
アレクは息を吐き、呼吸を整えて次の相手に備える。
サラは関心しながら二人の試合を観ていた。
「サラ!お前の剣筋は正直過ぎて相手に読まれやすい!フェイントを含めた駆け引きができるように私の戦い方を観ておけ!」
アレクがそう言うとサラは涙を流しながら「はい!」と答えた。
次の相手はまたゴツい奴が来た。ただ背が低く固太りタイプの生徒だった。
はじめっ!
ゴツっ!!
「ア、アレク王子の勝ち」
「す、すごい!」
サラは関心しっぱなしだ。
「次!」
ゴツっ!!
「次」
ドスン!!
「つ、次」
ドスっ。
最初に強い奴ばかりが出てきたからか後半の相手は大した事がなかった。あっという間に三十人抜きしたアレクを恐れはじめた上級生たちは次誰がでるかで揉め始めるのだった。
そうして最後になってやっとカインが出てきた。
「アレク王子がこんなに出来るとは思いませんでしたよ。ただ、大分お疲れのようですがな。フフ!それでは私が最後にお相手しましょうか!」
カインがそう言うとお互い木剣を構えた。
ちょうどその時、
「アレク様~♡頑張ってください♡」
アイリーンが授業を終えて見学に来た。
「「アイリーン!!」」
なぜかアレクだけではなくカインまでもがアイリーンの名を呼んだ。
「アイリーン!僕だ!カインだ!もちろん覚えているだろう?」
「んん?どなたですか?」
アイリーンは首をかしげる。
「君とは昔からからよく遊んでいたじゃないか!隣の領地にいた時からよく遊びに来てたカイン兄さんだよ!」
「すみません。あまり小さい頃のことは覚えていないので」
カインはショックで項垂れる。
「アレク様頑張ってくださいね♡」
アイリーンは誤魔化すかのようにニコリと笑った。
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ちなみに噂の発信源はアイリーンである。
アイリーンは初代国王アルテマの名を使いアレクが時期国王となるべく情報操作に勤しんでいた。
そして実際にアルテマ王と同じく魔法全属性の使い手であり、剣術は元騎士であるドルトンともやり合えるだけの実力とあれば学園生徒たちもアレクがアルテマ王の再来と言われても納得するだけのものがあった。
この噂の影響はそれだけではない。この学園でアレク王子と敵対関係にある教頭を筆頭に第二王子派の教師や生徒たちから次は何をしでかすのかわからないと密かに恐れられるようになっていたのだ。
アレクがやらかした魔力テストの惨事も意外に怪我の功名となっていた。
ただアレクを特別視することに危惧したヘンリー教頭はアレクをどうにかして亡き者にせんと謀を企てるのであった。
♢
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二人は同年代と比べて剣術のレベルが遥かに高いため、ドルトン先生から二人だけ特別に上級生と一緒に剣術の授業を受けるようにとの通達を受けた。
そしていよいよ今日から剣術の授業の1日目が始まる。
サラは朝っぱらから上機嫌でもっと強くなりたいと鼻息を荒くして張り切っている。
サラはアレクの護衛騎士として忠誠を誓う際に「このままで満足してはおりません。さらに、今以上強くなってみせます」と言ったため、アレクの日課である朝の鍛錬ではサラも一緒になって稽古をすることになった。
ただアレクは先日のサラの忠誠の誓いを勘違いして受け止めてしまい、それ以降サラが自分に懸想しているのではないかと妙に意識していた。
サラも見た目は落ち着いた先輩女子なのだが、中身は末っ子なのか人懐っこいところがえり甘え上手、また年上に可愛がられるタイプだった。
アレクは前世と同じく、今回も長男である。
なので末っ子サラとは相性が良かった。
どことなく面倒見の良いアレクと人懐っこいサラは側から見ても仲睦まじく見られるようになっていたのだ。
そしてそれがアレクにとって新たな問題の引き金になるとは思いもしなかったのだ。
「アレク様、そろそろ剣術の授業が始まりますよ」
「あ、そうだ。それじゃ行こうか」
「はい」
「アレク様、頑張ってくださいませ」
「ありがとうアイリーン、行ってくるよ。はあ、僕もアイリーンたちと同じ授業を受ければ良かったよ」
「仕方ありませんわ。わたくしのことは気になさらず剣術の鍛錬に行ってきてくださいませ」
「うん」
「強いアレク様はわたくしは好きですわ。どうか今以上に強くなって立派な王となってくださいませ」
「わかった。行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
アレクはサラを伴って修練場へと向かって行った。
「メリア、わたくしたちもそろそろマナーの講習へ行きますわよ」
「かしこまりました」
アイリーンとメリアは騎士コースではないため剣術の授業を受けないことにしていた。そのため特別枠として王族となるためのマナー講座を受けさせてもらえることになったのだ。
教室に残された二人は自分たちの受ける教室へ移動する。アイリーンの後ろを歩くメリアは不安な表情で主人を見ている。
誰もいない通路を二人の足音だけが響いている。
自分の側使いと大した会話もなくただ黙し目的地へと進むアイリーン。
その沈黙の間がメリアに決断を促したのか意を決してアイリーンに言葉をかけた。
「アイリーン様」
「何ですの?」
「アイリーン様はよろしいのですか?」
「何のことです?」
「アレク王子とサラがいつも一緒にいるので妙な噂が立っておりますけど・・・」
「彼女はアレク様の護衛騎士ですのよ?一緒にいるのは当然ですわ」
「でも」
「メリア、そんな事で心配するようではとても王族の側近にはなれませんわよ?」
「私は王族の側近の立場など求めておりません。ただアイリーン様のお側にいたいだけなのです」
「ならば共に強くならねばなりません。このような些末な事で感情を乱してはなりませんよ」
「はい・・・」
「さあ、はやく行きますわよ」
「・・・・・・」
メリアは知っていた。
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今でもアイリーンが強く握りしめているだけでみしみしと扇子の軋む音が聞こえる。
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「いや!怪我なんてポーション飲んどけば大丈夫です!はやく上級生たちと戦いたいです!」
寝不足で目は血走っており息をハアハアとしながら興奮するサラを見てドン引きするアレク。
サラのその姿はまるでバトルジャンキーだった。
(黙っていたら美少女なのにな。残念属性持ちとは・・・、それはそうと、サラのやつこんな危なそうな奴だったっけ?)
出会ってそんなに経っていないはずなのだが、こんなんだったっけ?とアレクも不思議がる。
時々ドキドキするほどの可愛らしさを印象付けるサラなのだが、今日はハイテンション過ぎて危ない薬に手を出している奴にしか見えない。
アレクは少し興奮したサラと距離を取りつつ急ぎ足で修練場に向かった。
「よく来たな!」
上級生たちが迎えてくれた。
しかしアレク王子を喜んで迎えてくれているような感じはしない。むしろ逆に敵陣に入ったような危機感を覚える。
(何か嫌な感じがするな)
そんな中、上級生たちの後ろから長身で美丈夫な男が前に出てきた。
「ようこそ!アレク王子!そしてサラだったかな?私はカインという。ドルトン先生から聞いたが二人ともかなり実力があるそうじゃないか。是非我々と手合わせをしていただこう!」
カインは二本の木剣を持っていた。
周りの生徒たちもニタニタと笑みを浮かべながら各々木剣を持っていた。
サラは上級生の醸し出す異様な雰囲気に押されたのか思わず息を呑んだ。
アレクは武者震いをしながら何も言わずに木剣を構えた。
「で、カイン先輩、僕らは最初に誰と戦えばいいんですか?」
アレクは質問した。
「そうだな。それじゃあ俺たちと一対一で手合わせしてもらおうか」
(は?それって、こっちが圧倒的にキツいよな)
アレクとサラは上級生全員と手合わせしろということだ。
空手の百人組手みたいなものである。
「サラ、どっちからやる?」
「では私が最初に」
「わかった」
とりあえずサラから先に手合わせすることになった。
サラの前に上級生の一人が出てきた。
ちょっと強そうな感じだが、こいつら本当に俺と歳近いのか?とアレクが疑いたくなるほど老けた外見で、少なくとも十代半ばには見えない。見た目アラサーのようなおっさん達ばかりだ。
サラはよろしくお願いします!と一礼し、剣を構える。
相手は先に攻撃を仕掛けてきたがサラは冷静に剣で受け止めて反撃する。
相手はサラの動きについていけずに剣をモロにくらった後、蹲るように倒れる。
「それまで!サラの勝ち!」
それからサラは難なく五人抜きをした。
「ほう、なかなかやるな」
上級生が5人抜きされたのにカインはまだ余裕の笑みを残している。
では次!
次の相手は丸坊主で体格の良い男だった。こちらを舐めているのかヘラヘラと笑いながら前に出てきて本当に態度が悪い。
サラはよろしくお願いします!と一礼し、剣を構えた。
対し、対戦相手の上級生はだらしなく剣を持ちニヤニヤと半笑いでサラを値踏みするように睨め付けるのであった。
サラも侮辱されているのが分かった様で自身から攻撃に出る。
すぐに袈裟斬りから入ったのだが、剣で受け止められながら上手く絡め取られる。
サラも今まで戦ってきた事のない相手だったためか相手のフェイントを混ぜた攻撃とラフプレーに翻弄される。
サラはサラで実力はあるのだが、攻撃が素直すぎて相手にすぐに見切られているように見えた。
攻撃が当たらないサラは焦ってしまい無理に攻撃してしまう。
そこを狙われたのか上級生に足を掬《すく》われたサラはひっくり返ってしまう。
地面に背中を打ちつけたサラは咳をして苦しんだ。そんなサラの顔を上級生の男は足で踏みつける。しかしすんでのところでサラは男の足を両手で掴み足を投げ払った。
「おい!何やってんだ!」
「は?何言ってるんだ?鍛錬に決まってるじゃないか」
「アイツが女の子の顔を足で踏もうとしていたぞ!」
「え?そんなことしていたか?」
「俺らには全く見えなかったがなあ」
へらへらと笑いながら答える上級生たち。
そんな人を馬鹿にした態度にアレクは久しぶりにカチンときた。
(あの野郎!)
「おいおい、もう終わりか?」
サラは苦しそうに立ち上がり剣を構える。
しかし、そんなサラを制して庇うようにアレクが前に出てきた。
「それじゃあ次は私と手合わせ願おうか」
アレクが剣を構えると相手も構える。
アレクは素早く相手に近づき上段から剣を振り下ろす。
相手はニヤリと剣で受けようと構える。
アレクはすぐに剣筋を切り替えて下から上に振り抜くと相手はかろうじて避けた。しかしアレクはすぐさま追撃する。
また上段から剣を振り下ろすと同じように構えるが相手はもう騙されないと警戒している。
アレクは次に目線のフェイントで剣筋を切り替えるようなフリをすると相手はまんまと引っかかり、慌てて構えを変えた。
結局アレクは上段のまま剣を振り下ろすと相手は防御が間に合わず頭上に木剣が強烈な勢いで当たった。
「ア、アレク王子の勝ち!」
アレクは息を吐き、呼吸を整えて次の相手に備える。
サラは関心しながら二人の試合を観ていた。
「サラ!お前の剣筋は正直過ぎて相手に読まれやすい!フェイントを含めた駆け引きができるように私の戦い方を観ておけ!」
アレクがそう言うとサラは涙を流しながら「はい!」と答えた。
次の相手はまたゴツい奴が来た。ただ背が低く固太りタイプの生徒だった。
はじめっ!
ゴツっ!!
「ア、アレク王子の勝ち」
「す、すごい!」
サラは関心しっぱなしだ。
「次!」
ゴツっ!!
「次」
ドスン!!
「つ、次」
ドスっ。
最初に強い奴ばかりが出てきたからか後半の相手は大した事がなかった。あっという間に三十人抜きしたアレクを恐れはじめた上級生たちは次誰がでるかで揉め始めるのだった。
そうして最後になってやっとカインが出てきた。
「アレク王子がこんなに出来るとは思いませんでしたよ。ただ、大分お疲れのようですがな。フフ!それでは私が最後にお相手しましょうか!」
カインがそう言うとお互い木剣を構えた。
ちょうどその時、
「アレク様~♡頑張ってください♡」
アイリーンが授業を終えて見学に来た。
「「アイリーン!!」」
なぜかアレクだけではなくカインまでもがアイリーンの名を呼んだ。
「アイリーン!僕だ!カインだ!もちろん覚えているだろう?」
「んん?どなたですか?」
アイリーンは首をかしげる。
「君とは昔からからよく遊んでいたじゃないか!隣の領地にいた時からよく遊びに来てたカイン兄さんだよ!」
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