転生したら王子だったけど僕だけ前世のまま(モブ顔)だった( ゜д゜)

あんこもっち

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学園編

剣術の稽古②

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サトゥーラ王国には三つの騎士団がある。

青銅《ブロンズ》騎士団は入りたての見習い、若手や古参でも指導役の人たちで構成されている。ちなみに入団したてのサラの兄が在籍している。

その上は黒鉄《アイアン》騎士団と呼ばれ、歴戦の猛者、戦闘のプロ集団たちが揃っている。元傭兵も多く、サラの父ボルトが黒鉄騎士団の団長を務めている。

白金《プラチナ》騎士団、
主に貴族で構成されており、魔法が使えて剣で戦える魔法剣士が主体。
白金騎士団の団長は侯爵家の嫡男が務めており、美しさと強さを兼ね揃えた聖騎士として令嬢たちからは大人気である。
他の団員たちも容姿が整っており女性にモテる者が多いため、むさくるしい男衆が多い黒鉄騎士団とは相性が悪く、妬み嫉みなどが原因なのかどちらかが厄介事を起こしてですぐに喧嘩する。

要するに仲が悪い。

カインの祖父ヨーゼフは伯爵であり父ダルタニアンは白金騎士団の副団長である。

ヨーゼフの治める領地と辺境伯の領地が近いのとアイリーンの祖父ガスタルとヨーゼフは仲が良かったためにカインが小さい頃は祖父と共に連れられて辺境伯の領地に赴くことが度々あった。

アイリーンは小さい頃から天使のように可愛らしいと評判であった。

祖父に連れられて辺境伯の領地へ赴いたカインはアイリーンに出会い瞬く間に一目惚れしてしまう。

それからはしょっちゅう遊びに来てはアイリーンをよく誘って屋敷の庭などで遊んでいた。

アイリーンにとってはもう一人の兄のような感じではあったが、恋愛感情の好き嫌いとかは特に無くカインがしつこく遊びに誘うものだから仕方なく付き合ってあげている程度だった。

ただアイリーンも小さい頃は結構お転婆だったのでカインと共に野原を駆けめぐり泥粘土をつくったり木の枝でチャンバラごっこをやったりといつもはしゃいで遊んでいた。

カインはアイリーンが大好きだったこともありアイリーンをかなり甘やかしていたのが災いだったのか、アイリーンはよくカインに悪戯をして遊んでいた。

落とし穴をつくってカインを落としたり、池に突き落としては浮き輪を近くに投げるだけで助けようとしなかったり、泥団子で雪合戦みたいなことをしたり、雪合戦では雪の中に石を入れてみたりなどなど。

遊んでスッキリした後、夕方になって屋敷に戻るとアイリーンの母キャサリンは鬼のような形相で待ち構えており服を汚して泥だらけで帰ってくるアイリーンを厳しく叱っていた。

そんな時アイリーンはすかさずカインのせいにしてそそくさと逃げるように自分の部屋に戻るのであった。

アイリーンが7歳の頃、祖父ガスタルとカインの祖父ヨーゼフが口論となり二人は徐々にヒートアップして、しまいには歳も考えずに殴り合う始末。そして挙句の果てには互いに絶交を言い渡し、それ以降二度と互いの領地をまたぐことは無くなった。

それ以降、可哀想なカインは大好きだったアイリーンとは全く会えなくなり、ついには学園に入学するために王都へ行くことになる。

初恋を拗らせてしまったカインはアイリーンに執着し、学園に入っても他の令嬢に想いを寄せることなく剣術の稽古に励むのであった。

それから数年後、

カインにとって信じられないというか、受け入れられない知らせが届く。

それはアイリーンが婚約したという知らせだった。

お相手はあの貴族内では不人気と有名で凡庸な顔をしたアレク王子だ。

「ぬぅおおお!許せん!よ、よくも俺のアイリーンを奪ってくれたな!!」

初恋拗らせ男カインは激怒する。

「なぜあのような者と婚約したのだ!俺の方が何万倍も彼女に相応しいというのに!」

しかし伯爵家出身のカインごときでは王族の婚約に反対できるはずもない。ましてや未だ学園に通う一学生でしかないカインが二人の婚約を破談にし、さらに横恋慕することなど叶うはずもなかった。

しかしカインはあきらめきれなかった。

この思ったよりしつこい男は今後どうすれば良いかを真剣に考えた。

「そ、そうだ!アイリーンが直接あいつに婚約破棄を申し込めば良いのだ!来年には二人が学園に入学する。その時に俺があのダメ王子を叩きのめしてアイリーンに愛の告白をすれば良いのだ!」

名案を得たとばかりにほくそ笑むカインは己の願望に忠実だった。

そして女性が引くぐらいに薄気味悪い笑みをしてアイリーンの幼少時の姿絵をうっとりと見つめている。

盲目な恋、

そんな病的なまでにアイリーンに恋焦がれているカインは未だ現実を知らない。



修練場ではアレクとカインが戦っている。

実力はどっちもどっち。

一見互角には見えた戦いも少しずつアレクの方が連戦の疲れもあってか不利な状況となっていた。

カインはアイリーンに良いところを見せたいとばかり張り切って戦っており、学年差も考えずに全身全霊、つまり最大の実力、全力を出してアレクと戦っている。

アレクの方はアイリーンの前で負けるわけにはいかないと必死で応戦している。

これは女を賭けた男と男の意地の戦いである。

「「こいつに負けるわけにはいかない」」

ただし、よく考えてみるとカインの方が圧倒的に有利な条件での試合であった。

学年差、体格差、しかもアレクは連戦しており体力の消耗が激しい。カインはまだまだ余裕。

全くもってアンフェアな戦いであり客観的にはただの後輩いびりだった。

実はカインのクラスは学園では四年生であり最高学年である。

しかも卒業後は騎士団への入団が既に決まっているという騎士コースの中では最も実力のあるエリートクラス。

アレクはカインたち上級生が何学年上なのかを知らない。

ドルトン先生からも知らされていない。

そんな奴らと今戦わされているということすらアレクは知らない。

しかしそんな最高学年のエリートたちと渡り合っているアレクもまた凄かった。

サラはアレクとカインの戦いを見て感涙に咽ぶと同時に手を合わせてありがたやと拝んでいた。どうやら敵味方関係なく双方の強さに感動しているようだった。

本当はサラの兄もこの場にいるはずだったのだが、サラが自分の剣術の授業に受けに来るとわかった後、慌てて授業をボイコットしたようだ。

そして今アレクが戦っている相手であるカインはサラの兄が唯一勝てない相手だった。
つまりそれだけの実力なのである。

にもかかわらずカインは上級生でありながら私情をはさみ本来剣を向けてはならない王族相手に対し本気で戦っているのだ。

大人気ない。

アレクは連戦の疲れもあってもうヘトヘトで剣を受けるだけでも精一杯だった。カインは己が優位に立っていることを理解し更に調子に乗った。

「ははは!これでもくらえ!」

ブレードスラッシュ!

これは剣に風の魔法を纏わせて衝撃波をくりだすカインの得意技だ。

カインの一振りで生じた風の刃は体力を消耗したアレクを襲う。

ちなみに剣術の稽古では魔法の使用は禁止されている。理由はもちろん危ないから。過去において剣術の鍛錬中に勝手に魔法剣技を用いた事件が幾度も発生しており、時には殺傷沙汰になったことさえあるのだ。

故に騎士コースの生徒が訓練中に魔法を使う場合は担当教師の監視のもと安全な場所で行われることになっている。

しかも対人戦での魔法の行使は基本的に使用不可である。

にもかかわらず完全に出来上がってしまったカインはもはやルールなどは完全に頭に無くやりたい放題だった。

しかしそれが却って自らの首を絞めることになる。

(え?魔法使っても良かったの?)

カインの剣技を見てアレクは自身も魔法で反撃する。

ソニックブーム!!

ブレードスラッシュの上位版。
威力はもちろんソニックブームが遥かに上である。

アレクの一振りで生じたのは鉄の棒が曲がるほど強烈な衝撃波。

そんなアレクのソニックブームはカインが放ったブレードスラッシュなどあっさり掻き消すと同時にその衝撃波はさらにカインをも襲った。

カインは咄嗟に剣を前に構えて防御の姿勢をとったが時すでに遅く、木剣はあっさりとへし折れてしまい、カインは衝撃を躱しきれずにそのまま後ろの壁へと吹き飛ばされてしまう。

どっかーーーーん!!!

アレクが出した風魔法の剣技はカインだけでなく他の上級生も巻き込んでしまい、全員もれなく修練場の壁にまで吹き飛ばされてしまった。

修練場の壁にはアレクの技によって大きく抉られた痕が残り、上級生たちは頭やら腕やら足など各々体の一部を壁の中に埋め込まれてしまった。その惨状はさっきまで拝みながら応援していたサラでさえ目を覆うほどのものであった。

今回の件はかろうじて死者を出さずには済んだものの、その場にいた上級生たちはアレクの攻撃に吹き飛ばされて全員大怪我を負っている。

そんな大惨事の現場でアイリーンの側使いメリアが慌てて救援要請として先生を呼びに行ってくれた。

そのおかげもあって怪我した生徒たちは全員もれなく救護室へと運ばれていった。

アレクはまたもや学園長に呼び出されて事情聴取を受けることになる。

かくかくしかじかと説明するアレク。

しかしアーシェラ学園長はすぐ納得せずにその場にいたサラに説明を求める。

サラは客観的な事実だけを説明した。

サラの説明を受けたアーシェラ学園長はようやく一連の流れを理解した。

そして今回はアレクに非がなかったためだけアレクと上級生たちは注意だけにとどまったが、今後二度と剣術の稽古では魔法は使わないようにと念を押した。

こうしてアレクの噂話に誤解が生じると同時に伝説がまた一つ増えるのであった。

なんとアレクが上級生を残らず救護室送りにしたとして同級生たちから更に恐れられるようになったそうな。
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