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十話④
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ズガアァン!!
「ご主人ー!頑張ってー!」
ズガアァン!!
「さっさと倒して帰るえー」
マザースパイダーが地を砕く音の合間に、マグちゃん金ちゃんの緊張感の無い声が響く。
運動会じゃないんだから、もうちょっと緊張感持ってよ。
そんな皆の声を聞きつつ、私はマザースパイダーの足や糸を躱し続けていた。
スピードは全然見切れる程度だし、正直当たったとしてもどうと言うことはない。
皆の緊張感の無さも納得の実力差だ。
にも拘らず、私は攻めあぐねていた。
何でかって言うと……。
『キョォォォォォ!!!!!』
攻撃を躱し続ける私に痺れを切らしたのか、マザースパイダーがかな切り声を響かせた。
「うわぁぁぁ!キショイキショイキショイ!」
柘榴を思い出させる開いた口の気持ち悪さに、私は思わず後ろに下がった。
これこそが私の攻めあぐねている理由。マザースパイダーがいくらなんでも気持ち悪すぎるのだ。
いや、ふざけてる訳じゃないんだよ?
でも考えて見てよ。目の前にはタランチュラを一万倍大きくしたみたいな大蜘蛛。周囲には蓮コラみたいに密集した卵とフレッシュな死体たちが居るんだよ!?
こんな状況でまともに戦えるわけ無いじゃん!
触りたくないから殴ったり出来ないし……。
そうだ!ウインドカッターならいけるんじゃない?
「ウインドカッター!!」
たちまち私の手から放たれた風の刃はマザースパイダーというデカイ的に着弾した。
しかし……。
キョォォォォォ!!!!
ウインドカッターでは致命傷には至らないどころか、さらに怒らせてしまったようだ。
マザースパイダーの攻撃がどんどんと激しくなっていく。
こりゃウインドカッターには期待しない方が良さそうだね。てことは本当に肉弾戦するしかないか。
しかし、マザースパイダーの乾いた血のように赤黒い六つの目や毒でも分泌されているのかトロミのある光沢を帯びた牙が私の決心を鈍らせた。
いやいやいやムリムリムリムリ!
だけど私の体力も有限だ、ずっと躱し続けるにも無理がある。
これは、覚悟を決めるしかないのか……?
うぅ……やだよぉ。
「何をしてるんだえ?ご主人なら一発で倒せるるだろ?」
「コイツ気持ち悪いから触りたくないんだよぉ!」
「そんなこと言ってる場合かえ……」
そう言って金ちゃんはため息をついた。
呆れた顔もカワイイー!!見とれちゃいそう!
ズルッ。
「あっヤベッ!」
まんまと見とれてしまったその瞬間、足元にあったフレッシュ死体に気が付かず、私は体制を崩してしまった。
ピュルルル、ピシッ!
その一瞬の隙をつかれ、マザースパイダーが放った糸が私をおくるみにした。
うわぁ、気持ち悪い生暖かさだ。汗だくのオッサンに抱きつかれてるみたい。
「ご主人ー!大丈夫ー!?」
「大丈夫かえご主人!早く抜け出すえ!」
そうしたいのは山々なんだけど……。
抜け出そうと踠いてみるも、糸は切れるどころかびくともしない。
むしろ踠く程に体にへばりつき、身動きがとれなくなっていく。
あ、これ本当にヤバイかも……。
「今行くよご主人ー!」
「助けてやるえ!」
キョォォォォォ!!!
私を助け出そうと金ちゃんとマグちゃんが動いたその時、マザースパイダーが叫んだ。
するとそれまで動かなかったケイブスパイダー達がマグちゃんの達の前に立ちはだかった。
マグちゃんと金ちゃんはそれぞれ応戦するが、数が多すぎて完全に足止めされてしまっている。
「早く抜け出すえご主人!」
敵の群れの中から金ちゃんが声援を送ってくれている。
だからそれが出来ないんですって。
どうにかして抜け出そうと踠いていると、急にクンと足元を引っ張られ、私はどさりと地面に倒れた。
そしてズルリズルリとマザースパイダーの方へと引きずられていった。私につけた糸を手繰り寄せているのだ。
やめて!私なんか食べても美味しくないよ!!
「頑張って抜け出すえ!」
悲痛な叫び声に変わった金ちゃんの声が聞こえる。
頑張るったってどうすれば……そうだ!
「ご褒美!なんかこの窮地抜け出したらご褒美が欲しい!そしたら頑張れる気がする!」
自分で言うのも何だけど、私は猫ちゃんのためならネジの一本や二本は外しきれるからね。
「ご褒美かえ!?そんな急に言われても……」
そうしている間にも、糸はどんどんと手繰り寄せられていく。
マザースパイダーの気色悪い顔はすでに眼前にまで迫っていた。
「あぁぁぁ早く!食べられちゃうよ!!!」
「あぁもう分かったえ!これが終わったらワッチのこと一時間撫で放題……」
刹那、
私は一瞬にして拘束を振りほどいた。
直後、目に止まらぬスピードでマザースパイダーの頭上へと移動し、おもむろに拳を振り上げた。
ズドンッッッ!!!!!
振り下ろされた拳はマザースパイダーの頭にめり込み、その衝撃でマザースパイダーは頭から地面に打ち付けられた。
「ウインドカッター!!!」
間髪いれず私は金ちゃんマグちゃんのいる方向にウインドカッターを放った。風の刃が蜘蛛を蹴散らしていく。
ご褒美の発表から一秒とかからず、私は敵を殲滅した。いやぁ我ながら恐ろしいね。
さて……。
「金ちゃ~ん、ご褒美……ご褒美ちょうだい!」
「まっ……待つえ!そんな体液まみれのまま近づくんじゃ……うわぁぁ!抱き付くなえ!」
有無を言わさず抱き付いた私を、金ちゃんは腕を突っ張り棒のようにして拒絶した。
「良いじゃん自分で言ったんでしょ!あんな気持ち悪い奴と戦ったんだから癒してよ~」
「嫌だえ~!」
「ギャハハハハ!本当にマザースパイダーを倒してやがる!!」
私と金ちゃんの蜜月を切り裂くように、下品な声が突如として洞窟に響いた。
誰だよ……今良いところだったのに!!!
声の主を確かめようと振り向くと、洞窟の入り口にボロを着た大男が立っていた。
「ご主人ー!頑張ってー!」
ズガアァン!!
「さっさと倒して帰るえー」
マザースパイダーが地を砕く音の合間に、マグちゃん金ちゃんの緊張感の無い声が響く。
運動会じゃないんだから、もうちょっと緊張感持ってよ。
そんな皆の声を聞きつつ、私はマザースパイダーの足や糸を躱し続けていた。
スピードは全然見切れる程度だし、正直当たったとしてもどうと言うことはない。
皆の緊張感の無さも納得の実力差だ。
にも拘らず、私は攻めあぐねていた。
何でかって言うと……。
『キョォォォォォ!!!!!』
攻撃を躱し続ける私に痺れを切らしたのか、マザースパイダーがかな切り声を響かせた。
「うわぁぁぁ!キショイキショイキショイ!」
柘榴を思い出させる開いた口の気持ち悪さに、私は思わず後ろに下がった。
これこそが私の攻めあぐねている理由。マザースパイダーがいくらなんでも気持ち悪すぎるのだ。
いや、ふざけてる訳じゃないんだよ?
でも考えて見てよ。目の前にはタランチュラを一万倍大きくしたみたいな大蜘蛛。周囲には蓮コラみたいに密集した卵とフレッシュな死体たちが居るんだよ!?
こんな状況でまともに戦えるわけ無いじゃん!
触りたくないから殴ったり出来ないし……。
そうだ!ウインドカッターならいけるんじゃない?
「ウインドカッター!!」
たちまち私の手から放たれた風の刃はマザースパイダーというデカイ的に着弾した。
しかし……。
キョォォォォォ!!!!
ウインドカッターでは致命傷には至らないどころか、さらに怒らせてしまったようだ。
マザースパイダーの攻撃がどんどんと激しくなっていく。
こりゃウインドカッターには期待しない方が良さそうだね。てことは本当に肉弾戦するしかないか。
しかし、マザースパイダーの乾いた血のように赤黒い六つの目や毒でも分泌されているのかトロミのある光沢を帯びた牙が私の決心を鈍らせた。
いやいやいやムリムリムリムリ!
だけど私の体力も有限だ、ずっと躱し続けるにも無理がある。
これは、覚悟を決めるしかないのか……?
うぅ……やだよぉ。
「何をしてるんだえ?ご主人なら一発で倒せるるだろ?」
「コイツ気持ち悪いから触りたくないんだよぉ!」
「そんなこと言ってる場合かえ……」
そう言って金ちゃんはため息をついた。
呆れた顔もカワイイー!!見とれちゃいそう!
ズルッ。
「あっヤベッ!」
まんまと見とれてしまったその瞬間、足元にあったフレッシュ死体に気が付かず、私は体制を崩してしまった。
ピュルルル、ピシッ!
その一瞬の隙をつかれ、マザースパイダーが放った糸が私をおくるみにした。
うわぁ、気持ち悪い生暖かさだ。汗だくのオッサンに抱きつかれてるみたい。
「ご主人ー!大丈夫ー!?」
「大丈夫かえご主人!早く抜け出すえ!」
そうしたいのは山々なんだけど……。
抜け出そうと踠いてみるも、糸は切れるどころかびくともしない。
むしろ踠く程に体にへばりつき、身動きがとれなくなっていく。
あ、これ本当にヤバイかも……。
「今行くよご主人ー!」
「助けてやるえ!」
キョォォォォォ!!!
私を助け出そうと金ちゃんとマグちゃんが動いたその時、マザースパイダーが叫んだ。
するとそれまで動かなかったケイブスパイダー達がマグちゃんの達の前に立ちはだかった。
マグちゃんと金ちゃんはそれぞれ応戦するが、数が多すぎて完全に足止めされてしまっている。
「早く抜け出すえご主人!」
敵の群れの中から金ちゃんが声援を送ってくれている。
だからそれが出来ないんですって。
どうにかして抜け出そうと踠いていると、急にクンと足元を引っ張られ、私はどさりと地面に倒れた。
そしてズルリズルリとマザースパイダーの方へと引きずられていった。私につけた糸を手繰り寄せているのだ。
やめて!私なんか食べても美味しくないよ!!
「頑張って抜け出すえ!」
悲痛な叫び声に変わった金ちゃんの声が聞こえる。
頑張るったってどうすれば……そうだ!
「ご褒美!なんかこの窮地抜け出したらご褒美が欲しい!そしたら頑張れる気がする!」
自分で言うのも何だけど、私は猫ちゃんのためならネジの一本や二本は外しきれるからね。
「ご褒美かえ!?そんな急に言われても……」
そうしている間にも、糸はどんどんと手繰り寄せられていく。
マザースパイダーの気色悪い顔はすでに眼前にまで迫っていた。
「あぁぁぁ早く!食べられちゃうよ!!!」
「あぁもう分かったえ!これが終わったらワッチのこと一時間撫で放題……」
刹那、
私は一瞬にして拘束を振りほどいた。
直後、目に止まらぬスピードでマザースパイダーの頭上へと移動し、おもむろに拳を振り上げた。
ズドンッッッ!!!!!
振り下ろされた拳はマザースパイダーの頭にめり込み、その衝撃でマザースパイダーは頭から地面に打ち付けられた。
「ウインドカッター!!!」
間髪いれず私は金ちゃんマグちゃんのいる方向にウインドカッターを放った。風の刃が蜘蛛を蹴散らしていく。
ご褒美の発表から一秒とかからず、私は敵を殲滅した。いやぁ我ながら恐ろしいね。
さて……。
「金ちゃ~ん、ご褒美……ご褒美ちょうだい!」
「まっ……待つえ!そんな体液まみれのまま近づくんじゃ……うわぁぁ!抱き付くなえ!」
有無を言わさず抱き付いた私を、金ちゃんは腕を突っ張り棒のようにして拒絶した。
「良いじゃん自分で言ったんでしょ!あんな気持ち悪い奴と戦ったんだから癒してよ~」
「嫌だえ~!」
「ギャハハハハ!本当にマザースパイダーを倒してやがる!!」
私と金ちゃんの蜜月を切り裂くように、下品な声が突如として洞窟に響いた。
誰だよ……今良いところだったのに!!!
声の主を確かめようと振り向くと、洞窟の入り口にボロを着た大男が立っていた。
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