27 / 52
十話
しおりを挟む
「何故かって?大事な新人を守る為だよ、君のような悪漢からね」
「おいおい散々な言われようだなぁ、ちょっと遊んでただけだぜぇ?」
柔らかな語り口調とは裏腹に、二人の間に不穏な空気が立ち込めていた。グランさんは大槍を持った手に力を込め、レオルダスも鋭い視線をグランさんに浴びせている。
そんな二人のやり取りの端で、私は状況が飲み込めずにいた。
グランさんが、何でここに……?
「なんなら、次はアンタと遊んでも良いんだぜぇ……ッッッッ!!!?」
グランさんに顔を近付け凄んだレオルダスの首もとに、目映い白銀の剣が差し込まれた。
「それ、僕も混ぜてくれないかな?レオルダス」
「カサンドラ、お前まで……」
突如として現れたのは、まるでお伽の国の騎士のような男だった。
整っているが柔和な色白の顔と目映い金髪。
レオルダス程ではないが190センチはあろうかと言う巨駆。
そして、煌びやかな装飾のされた白銀の盾と鎧。
誰?この人……。
困惑する私を他所に、三人の男たちのにらみ合いは続いた。
最初に音をあげたのは、レオルダスだった。
「やめだやめだ!!アンタらとヤり合うにはコンディションが悪すぎらぁ……」
そう言った直後、レオルダスは無造作に私の髪から手を離した。
自由落下する私をまた別の誰かが受け止めた。セイラさんだった。
「ココロ様!!大丈夫ですか!!!?」
上から覗き込むセイラさんの顔は、涙でクジャグシャになっていた。
「ごめんなさい、私がココロ様の行き先を教えたばっかりに……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい!」
セイラさんは、泣きじゃくりながらひたすらに謝っている。
あぁ、セイラさんがグランさんを呼んでくれたのか……。
視界の端に、元気に帰っていくレオルダスの姿が見えた。
「処分は、追って連絡するよ」
身震いするほど冷たくグランさんが言った。
「おーう、楽しみにしてるぜ」
そう言うとレオルダスは振り返ること無く去っていった。
よかった、アイツがいなくなって……。
マグちゃんと金ちゃんは……?
かろうじて動く目線だけをマグちゃんと金ちゃんに向けると、何やら魔術師のような人たちが魔法を掛けていた。
「あれは……?」
掠れた声で尋ねると、セイラさんの表情が更に曇った。
「あれはバトルギルドでも生え抜きの回復術師達です。大丈夫手すから、あとは任せてください」
私はコクりと頷いた。もう喋る気力すらも残っていない。
徐々に視界が暗くなっていく。セイラさんがまた何か言ってるけど、もうそれも聞こえない。
あぁ、意識が無くなっていく……。
まだ……ご褒美……貰ってないのになぁ……。
「おいおい散々な言われようだなぁ、ちょっと遊んでただけだぜぇ?」
柔らかな語り口調とは裏腹に、二人の間に不穏な空気が立ち込めていた。グランさんは大槍を持った手に力を込め、レオルダスも鋭い視線をグランさんに浴びせている。
そんな二人のやり取りの端で、私は状況が飲み込めずにいた。
グランさんが、何でここに……?
「なんなら、次はアンタと遊んでも良いんだぜぇ……ッッッッ!!!?」
グランさんに顔を近付け凄んだレオルダスの首もとに、目映い白銀の剣が差し込まれた。
「それ、僕も混ぜてくれないかな?レオルダス」
「カサンドラ、お前まで……」
突如として現れたのは、まるでお伽の国の騎士のような男だった。
整っているが柔和な色白の顔と目映い金髪。
レオルダス程ではないが190センチはあろうかと言う巨駆。
そして、煌びやかな装飾のされた白銀の盾と鎧。
誰?この人……。
困惑する私を他所に、三人の男たちのにらみ合いは続いた。
最初に音をあげたのは、レオルダスだった。
「やめだやめだ!!アンタらとヤり合うにはコンディションが悪すぎらぁ……」
そう言った直後、レオルダスは無造作に私の髪から手を離した。
自由落下する私をまた別の誰かが受け止めた。セイラさんだった。
「ココロ様!!大丈夫ですか!!!?」
上から覗き込むセイラさんの顔は、涙でクジャグシャになっていた。
「ごめんなさい、私がココロ様の行き先を教えたばっかりに……ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい!」
セイラさんは、泣きじゃくりながらひたすらに謝っている。
あぁ、セイラさんがグランさんを呼んでくれたのか……。
視界の端に、元気に帰っていくレオルダスの姿が見えた。
「処分は、追って連絡するよ」
身震いするほど冷たくグランさんが言った。
「おーう、楽しみにしてるぜ」
そう言うとレオルダスは振り返ること無く去っていった。
よかった、アイツがいなくなって……。
マグちゃんと金ちゃんは……?
かろうじて動く目線だけをマグちゃんと金ちゃんに向けると、何やら魔術師のような人たちが魔法を掛けていた。
「あれは……?」
掠れた声で尋ねると、セイラさんの表情が更に曇った。
「あれはバトルギルドでも生え抜きの回復術師達です。大丈夫手すから、あとは任せてください」
私はコクりと頷いた。もう喋る気力すらも残っていない。
徐々に視界が暗くなっていく。セイラさんがまた何か言ってるけど、もうそれも聞こえない。
あぁ、意識が無くなっていく……。
まだ……ご褒美……貰ってないのになぁ……。
32
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる