猫好きが転生したら世界最強のテイマーになりました!?

白鷺人和

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十三話 ⑤

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「か、勝ったぞー!俺たちが勝ったんだー!」

冒険者の一人が勝鬨を挙げた。
その声に呼応するように城門が開き、中から群衆が飛び出した。

群衆は冒険者とフェリアスさん、グライスさんを囲み、英雄のように持て囃した。いや、群衆にとって彼らは実際に英雄なのだろう。

「ありがとう、本当にありがとう!」

感謝の言葉が降りしきり、喝采が響く。しかし、その渦中にいる冒険者達は浮かない顔をしていた。

「いや、俺らの力じゃないさ。全部このお嬢ちゃんが……ってあれ?」

冒険者はキョロキョロと見回した。視界に目的の人物は写らない。

「離れろ貴様!離れるのだ!」

声がして冒険者が声のした方を向くと、そこには何やら暴れているスターリヴォアの姿があった。その首もとには、必死に捕まり体毛に体を埋めている私の姿があった。

「……あれが、今回のデスマーチを解決したお嬢ちゃんだ」

若干引きつつも、冒険者は私を指差した。
身震いをするスターリヴォアに引っ付いて荒い鼻息をたてている。

「おいお嬢ちゃん!降りてきてくれ、皆君に感謝を伝えたがってるんだ」

「今それどころじゃなーい!」

私はセイちゃんの体毛に体を埋めたまま答えた。群衆から「……えぇ?」という困惑の声が漏れる。

冷ややかな目線を気にすることもなく、私はセイちゃんをモフリまくっていた。

「どうしたのセイちゃんどぉしたのぉ~!!」

「我はどうもしていない!どうかしてるのは貴様だろう!」

私はセイちゃんの抵抗に耐え、がっしりとしがみついてそのフワモフな体毛を堪能していた。
首回りを堪能し終えた私はセイちゃんの体をカサカサと移動し、今度はお腹を堪能した。

首回りとはまた違う柔らかなお腹を堪能し、顔回り、背中、尻尾と順々に堪能していく。

「ええいやめろ貴様!我を誰だと……フニャッ!?」

突然セイちゃんがカワイイ声を挙げた。私がセイちゃんのお尻をポンと叩いた瞬間だった。
ここか!私はニヤリと笑った。セイちゃんは怯えたような表情でこちらを見つめている。

「や、やめろ。お尻を叩くのをヤメロオォォォォ……」

ポンポンポンとお尻を叩いていくと、セイちゃんの顔はみるみる蕩けていった。ふふふふふ、お尻が弱い猫ちゃんはたくさんいるけど、まさかセイちゃんもそうだとはねぇ……。

「おのれぇ、負けるかぁぁぁ!」

そう叫ぶとセイちゃんは体をブルブル震わせた。お尻を叩くために体を起こしていた私はあっけなく吹き飛ばされ、地面に激突した。

痛いなぁ、まぁ今日はここまでにしとこうかな。無理強いはしたくないし、できればね。

「相変わらずだね、ココロ君」

頭上から声がして顔を上げると、そこには私を覗き込むグランさんの姿があった。

「グランさん帰ってきてたんですね!」

「うん、ついさっきね。助けられなくてごめん、でもココロ君が解決してくれたみたいだね」

そう言ってグランさんは辺りを見回した。周囲には激しい戦闘で崩れた地形と魔物の死体、そして蹂躙された冒険者の肉片が散らばっていた。

グランさんの表情に影がさした。

「……本当にごめん」

それは私にではなく、死んだ冒険者に向けられているようだった。
この状況を救えなかったことに責任を感じているのだろう。

冒険者をやってる以上、他人が死ぬなんて日常茶飯事だろうになぁ。

戦場を眺めるグランさんを見ていて、私はあることに気がついた。

「あれ、カサンドラさんは一緒じゃないんですか?」

「カサンドラかい?いや一緒に来たけど……あ、あそこにいるね」

グランさんが指差す方を見ると、カサンドラさんがセイちゃんの前で立ち尽くしているのご見えた。

カサンドラさんは口を半開きにして呆然としていた。せっかく顔が整っているのに、いやたがらこそなのか物凄く間抜けに見える。

私はカサンドラさんに近づいて話しかけた。

「カサンドラさんも帰ってきてたんですね、何してるんですか?」

カサンドラさんはクルリと私の方を振り返った。よく見ると目も見開いている。
もともと大きなパッチリとした目だからか、もはや恐怖を感じる大きさだ。

「君、スターリヴォアを倒したのかい……?」

「こんなカワイイ子を倒すなんて滅相もない!テイムしたんですよ!」

カサンドラさんは口をあんぐりと開いて驚愕していた。間抜けさに拍車がかかっている。

「これは……予想外だね」

セイちゃんの方に向き直ると、カサンドラさんは消え入りそうな声でそう言った。そしてまた茫然と立ちすくみだした。

んー?なんか様子が変だなぁ。

「ねぇカサンドラさん、何か……うわっ!」

私がカサンドラさんに声をかけようとしてると、私の体は急に浮かび上がった。私を冒険者の一人が持ち上げたのだ。

「さぁ嬢ちゃん、これから祝祭が始まるぜ!主役は絶対参加だからな!」

「そうだそうだ!嬢ちゃんは国を救った英雄なんだからなぁ!」

冒険者たちは豪快に叫ぶと、私を担いで歩きだした。

「いや、ちょっ、まだカサンドラさんに聞きたいことが!!」

私の声をフル無視して、冒険者達はエッホエッホと私を城の中へと運んでいった。

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