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十四話③
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私達は山道に沿ってカツケェロ山を進んだ。
カツケェロ山の山道は元々交易のための荷馬車を通らせるためのもので、体の大きなセイちゃんでも通れるほど広かった。
私達が律儀に山道を通って山賊を探しているのは、ゴランさんがある違和感に気づいたからだ。
「道の脇に篝火が……?」
確かにゴランさんの言う通り、山道の脇には等間隔に鉄製の篝火が置いてあった。
夜間に通る馬車のためだと私は思っていたが、ゴランさんによると夜間は突然の魔物への対処が難しいため、移動を行なうことは無いのだという。
山賊が夜間の警備などの為に設置したのだろう。
「しかしこれでは本拠地まで案内しているようなものだ、罠なのか、それともよほどのアホなのか……」
あれだけの冒険者を服従させていたヤツがアホだとは考えにくい。私達は罠に注意しながら進んでいった。
しかし、予想に反して落とし穴のような罠が仕掛けられていることもなく、木々の間から山賊が飛び出してくることもない。
その静けさも、私達の疑念を大きくした。
しばらくすると、木々が開け、丸太で出来た大きな壁が現れた。
丸太の壁は見るからに強固であり、その高さは六メートル程はありそうだ。
丸太の先端は尖らされており、乗り越えるのは危険そうだ。
いや、セイちゃんならこれくらい余裕なのだが、中に何があるのか分からない以上危険に晒したくない。
「これは、交易の中間地点のような所ですかね?休憩場所的な」
「いや、これは……山賊どもが作った物でしょう、カツケェロ山にこのような建造物は無かった筈だ」
これを山賊達が?こんなの、よほど建築に造詣の深い人でないと作るのは難しいだろう。
冒険者のことといい、道中の不用心さといい、この強固な壁といい……この山賊は異様すぎる。
「お前ら、新しい冒険者かい?」
上から声がして見上げると、見張り台から一人の男が顔を出していた。その口調や表情は侵入者に向けるものではなく、困った人に手を差しのべているような柔和なものだった。
「あぁ、お前らを倒しに来たのだ」
ちょっ、ゴランさん言い方ストレート過ぎ!
私は焦ってフォローを入れようとしたが、それよりも先に見張りの男が高らかに笑った。
「お国の連中も懲りないねぇ、今から開けるからちょっと待ってな、ボスも呼んでくらぁ」
そう言って男は姿を消した。
しばらくすると、近くの壁がゴゴゴと動きだし、観音開きにパカッと開いた。
セイちゃんに屈んでもらい中にはいると、そこには大量の山賊達がウヨウヨとひしめき合っていた。
ニタニタ笑いながら私達を取り囲んでいる。気持ち悪っ、ひげ面のおっさんどもが笑ってんの。
「ボスが来たぞー!」
その言葉を合図に大歓声が沸き起こり、地面を力強く揺らした。
すると山賊達の囲いが左右に別れ、真ん中に道が出来た。
その道を、屈強な装備に包まれた男達を携えて歩いてくるものがいた。
ソイツは異様な格好をしていた。
赤いハイヒールを履き、重厚感のある黒いドレスに身を包み、黒曜石のような艶のある黒髪を靡かせている。
およそ戦いを生業にしているものとは思えないその風体に、私はすっとんきょうな声をあげた。
「……女?」
カツケェロ山の山道は元々交易のための荷馬車を通らせるためのもので、体の大きなセイちゃんでも通れるほど広かった。
私達が律儀に山道を通って山賊を探しているのは、ゴランさんがある違和感に気づいたからだ。
「道の脇に篝火が……?」
確かにゴランさんの言う通り、山道の脇には等間隔に鉄製の篝火が置いてあった。
夜間に通る馬車のためだと私は思っていたが、ゴランさんによると夜間は突然の魔物への対処が難しいため、移動を行なうことは無いのだという。
山賊が夜間の警備などの為に設置したのだろう。
「しかしこれでは本拠地まで案内しているようなものだ、罠なのか、それともよほどのアホなのか……」
あれだけの冒険者を服従させていたヤツがアホだとは考えにくい。私達は罠に注意しながら進んでいった。
しかし、予想に反して落とし穴のような罠が仕掛けられていることもなく、木々の間から山賊が飛び出してくることもない。
その静けさも、私達の疑念を大きくした。
しばらくすると、木々が開け、丸太で出来た大きな壁が現れた。
丸太の壁は見るからに強固であり、その高さは六メートル程はありそうだ。
丸太の先端は尖らされており、乗り越えるのは危険そうだ。
いや、セイちゃんならこれくらい余裕なのだが、中に何があるのか分からない以上危険に晒したくない。
「これは、交易の中間地点のような所ですかね?休憩場所的な」
「いや、これは……山賊どもが作った物でしょう、カツケェロ山にこのような建造物は無かった筈だ」
これを山賊達が?こんなの、よほど建築に造詣の深い人でないと作るのは難しいだろう。
冒険者のことといい、道中の不用心さといい、この強固な壁といい……この山賊は異様すぎる。
「お前ら、新しい冒険者かい?」
上から声がして見上げると、見張り台から一人の男が顔を出していた。その口調や表情は侵入者に向けるものではなく、困った人に手を差しのべているような柔和なものだった。
「あぁ、お前らを倒しに来たのだ」
ちょっ、ゴランさん言い方ストレート過ぎ!
私は焦ってフォローを入れようとしたが、それよりも先に見張りの男が高らかに笑った。
「お国の連中も懲りないねぇ、今から開けるからちょっと待ってな、ボスも呼んでくらぁ」
そう言って男は姿を消した。
しばらくすると、近くの壁がゴゴゴと動きだし、観音開きにパカッと開いた。
セイちゃんに屈んでもらい中にはいると、そこには大量の山賊達がウヨウヨとひしめき合っていた。
ニタニタ笑いながら私達を取り囲んでいる。気持ち悪っ、ひげ面のおっさんどもが笑ってんの。
「ボスが来たぞー!」
その言葉を合図に大歓声が沸き起こり、地面を力強く揺らした。
すると山賊達の囲いが左右に別れ、真ん中に道が出来た。
その道を、屈強な装備に包まれた男達を携えて歩いてくるものがいた。
ソイツは異様な格好をしていた。
赤いハイヒールを履き、重厚感のある黒いドレスに身を包み、黒曜石のような艶のある黒髪を靡かせている。
およそ戦いを生業にしているものとは思えないその風体に、私はすっとんきょうな声をあげた。
「……女?」
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