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真田が三文銭
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真田昌幸、信之、信繁の三人は、宇都宮の手前、犬伏で話をしていた
豊臣秀吉が亡くなり、時が加速していた、徳川家康が大阪城で、権勢を奮い出した、当然これに、反目が出て来る、佐和山の城に蟄居させられていた、石田三成を担ぎ上げ、毛利も腰を上げた
先ずは、関東の背後に居る上杉を、成敗の名目で兵を集め、集合場所である、宇都宮に行く途中であり、家康も此方に来ていた
「信之、話はもう良かろう、この事は前々から決まっておつた
ただ、それが今日、はっきりと、しただけよ、謹慎中の三成殿から、書状がやっと届いたわ、お主も読むか、信之」
「いえ、父上どうせ、領地安堵と、沼田の加増、いずれは、甲斐の地域も、、、違いますかな」
「はっはっはっはっ、見透かされておるわ、信繁、三人でゆるりと、酒を飲むのも、今日で終いよ」
昌幸は、これからの事を、楽しみな感じで、語らい、上機嫌であった
もう一つ、場所を変えての集が有った、真田の衆が、一同に介していた
才蔵の仕切りで、話を始めた
「既に話をした通り、真田に、お仕えする事に、変わりはないわ、儂らは、呼ばれた方の、仕事をこなすだけである、ただし、信之様方には、徳川だけの忍がおるで、十造以外は、佐助も含めて、上田方の仕事となろう、皆が知っての通り、真田は、どちらかが残る、その為にも、仕事に励むのだ、そして、生き延びよ」
「ねえ、才蔵、おいらと、父ちゃんは、帰る家が一緒だよ、どうする」
「くっくっくっ、馬鹿め、大戦でいちいち、家に帰れると思うたか
お前は、野良仕事でも、するつもりか
十造何だこやつは、手におえぬわ、親の顔が見てみたいわ」
「儂の子は、波瑠と申す、其奴は、我が家の居候よ、好きにせよ、ワハハハハ」
「チェッ、何だよ、本当に」
「十造殿に、信之様より、お呼びに御座います」
十造は、信之と二人きりで話を始めた
「十造、先程知らせがあった、石田三成殿が兵を集めた、家康様は江戸に向けて既に発たれた、父上、信繁の二人も上田へと引き返す、明日、儂も沼田城に戻る、実は、秀忠様が大軍を率いて、上田を通る手筈となろう」
「そうなれば、当然先導役あるいは、先鋒でしょうな、ただし、信用されておればの、、、」
「そう、信用されねばならぬ、儂にとって今一番必要なのは、ここでの勝敗よりも、徳川方の信頼、信用であろう」
「正しく、おっしゃられる通りかと、儂は、このまま、上田に引き返し、信之様の上田到着迄に、策を終わらせたく存じます、宜しゅう御座いますか」
「おお、何かあると申すか、頼む、頼むぞ十造」
十造は、急ぎ上田に帰る途中の、真田昌幸の部隊に追い付いた
才蔵が、軽口を叩きながら、問うて来た
「おう、十造早速の寝返り、神妙である
今からでは、佐助の、手子位しか、空きがないが、良いかの」
「ワハハハハ、案ずるな、大殿に会わせねば、爆薬を喰らわすぞ」
「りゃ、それは、困る、待っておれ
ほれ、向こうの、結び雁金、の旗印よ」
「信繁様、御待ち下され、十造に御座る」
「おう、やはり此方が良いか、大殿はこの先よ
部隊を止める、待っておれ、休息せよ」
誰かが、呼びにいったのであろう、昌幸の方から来てくれた
「おう、十造、いかがした、銭ならば、信之の方が豊富な筈よ」
「信繁様と三人あるいは、才蔵も、、、」
「良かろう、才蔵を此へ、信繁、話が終わるまで休息せよ」
昌幸、信繁、才蔵、十造の四人は、田の畦に座り、十造の話を聞いた
「、、、と言うわけで、此度の戦に信之様自信は、徳川の信用を得たい、それが、第一と、では、勝ちは、上田で宜しいのですかと、、、信之様は、たとえ上田が、成果を挙げようとも、上方が、負ければ、意味が無い、父上は、其も知りつつ、上田に引き揚げたと」
「ふむ、して十造は、何故ここにおる、策を申せ」
「簡単に申しますと、佐助が鉄砲で、儂を打つのでございます」
「なにやら、聞いただけでも、鳥肌の立つ策ではあるな、信繁少し早いが兵たちは、昼餉にせよ」
十造の、ただならぬ策に昌幸は、時間をかけた
「、、、と、以上が、大まかな策、詳細は未だ、詰めねばなりませぬ、信之様には、儂の部分は、お知らせせぬ方が、宜しかろうと思いまする、迫真の演技と言うよりも、真実の方が、徳川方が信じましょう」
才蔵が言う
「もし、しくじりでもしたのなら、此処におる全員は、死するまで楓に、命を狙われるのであろうな」
「おう、全員楓の半月刀の餌食よ、安心せい、喉を一掻き、痛くはないわ、そうならぬ為にも、上手くやれば、良い話よ」
昌幸が決定を下した
「良し、決めた、其で行こうではないか、何しろ、儂ら上田の真田は、此から三万の兵を、相手にせねばならぬ、沼田の真田には、それくらいの気遣いで、丁度良いわ」
十造が問うた
「大殿、上田での、合戦準備はどのように、、、」
「聞いたか、信繁、才蔵、敵が儂を尋問しよる、まあ、同じ真田の誼で教えてしんぜよう
この前と同じよ、ただ少しずつ、変化は有るが、人も変わっておるしの
火薬なら、佐助がおる」
「徳川方は、先の上田合戦での、指揮を取った者は居りませぬ、ましてや、人数は、此方の十倍となりましょう、どう考えても、降参するのが当たり前、条件は、全て上田方の不利、負ける条件は、全て揃って居り徳川の圧勝、対するこちらは、全員が経験者、敵を油断させるには、どのようにすれば良いのか、領地の皆が、知って居ります、が、、、」
すかさず、信繁が問うた
「が、、、どうした、十造らしゅうもない」
昌幸が、笑いながら、その場の者に話出した
「はっはっは、そりゃあ、言えんわい信繁、西方が勝てば、全てが万々歳、じゃが、東の徳川が勝てば、信之は助かろう、武功も挙げよう、しかして、儂らは、、、どうなるかのう」
才蔵、心配する気配を見せる
「成る程のう、そうなる事は、頭の中では、とうに、わかっておる筈なのに、いざ間近に、迫って来ると、身につまされるのう」
十造が此を、たしなめる
「才蔵、西方が負ける体で物を申すな、縁起でもないわ」
「しかして、お主は徳川
方であろう、大殿、沼田の間者を、見つけまして御座います」
「でかした、上田へ連れて帰れ、この先何時会えるやも知れぬでな、わっはっはっは、、、」
十造達の話し合いと、昼餉が終わると、真田の部隊は、急ぎ街道を進んでいた
伝令がやって来て、告げた
「後二里程で沼田のお城で御座います」
「むう、信繁、最後になろう、孫達と小松(信之の正室)に会うてから、帰ろうではないか、伝令、城に伝えよ、此から昌幸が参るとな」
程無く伝令が帰って来た、城までは、既に一里無かった
「申し上げます、城からの返事は、門の外にて、殿不在の為、開けるわけには参らぬと、、、」
「ほう、ではこの昌幸が、直に掛け合うてみよう」
真田隊が、沼田の城を、かこんで、門の前に来て、昌幸が、城内に呼び掛けた
「真田昌幸である、孫と小松の顔を、一目見に参った、開門されよ」
間もなく、緋縅の鎧に身を包み、薙刀を手にした女が現れた、信之の妻小松である
「上田の真田は、最早敵に御座いましょう、いかに御舅様と言えど、殿が御不在の中、鎧を身に付けた者を、城内には入れはしませぬ、引き揚げるが宜しかろう」
此には、昌幸も感心しきり、頷きながら、馬を返した、皆の前に戻って来るなり
「流石に、本多忠勝の娘よ、これで真田も安泰よ、のう、そうは思わぬか、信繁」
そう言いながら、昌幸は上田へと向かう
沼田の城から、早馬が駆けて来た
「御待ちくださいませ、只今、城から、御方様とお子達が参ります、この先の寺で、御待ち願えませぬか」
「おう、昌幸が待つと伝えよ」
寺で待つこと、四半時、信之の妻、小松と孫達が到着した
小松は、孫を抱く昌幸に手をついて謝った
「申し訳ございませんでした、御義父上様に、対して無礼なる振る舞い、この小松、伏してお詫び致します」
「何を言うのだ、儂が、うっかりしておったわ、謝るのは、儂よ、さあ、顔を上げよ小松
にしても、鎧姿が似合うていたわ、何時もあの格好なのか」
「ほっほっほっほっ、御義父上様の、軽口を久方ぶりに、聞きもうした、折角、信繁殿にも、お会い出来たと言うのに、何の持て成しも、出来ませぬな」
小松は、少し涙を浮かべていた
「それよりも、怪我の功名ではないが、これで、真田は、本当に二つになったと、誰もが信ずるであろう
早、出立の時よ、小松よ後を頼むぞ、達者でな」
「御義父上様、信繁殿の武運長久を、御祈り申し上げます、どうか、末永く、お健やかに」
正しく、後顧之憂も無くなった、昌幸と真田の部隊は、上田を目指し先を急ぐ
「信繁様、この先約一里先に、野伏せり、野盗の類いが三百程、屯うて居りまする、まあ、蹴散らす事は出来ましょう」
此を聞き入れた十造は、空かさず、信繁に
「信繁様、其奴らを、十人ばかり、生け捕りに、していただけますかな」
「訳もない、少数ながら精鋭揃い、ましてや、真田衆が揃うておる、十造が指さした者、悉く捕らえてくれよう」
十造は、さらに重ねて
「鎧を身に着けておる者共で願いまする」
真田隊は、無事に上田に帰って来た、捕えられた十人の、野伏せり、野盗はそのまま、牢やに押し込まれた、が、存外に扱いが、丁重であったばかりではなく、酒やら何やら、大層な持て成しである
才蔵が此を見て、小声で、独り言を呟いた
「さあ、お前達にとっては、末期の宴よ、存分に楽しむが良い」
野盗達は、初めこそおずおずと、辺りの様子を見ながら、ちびちびと、酒を舐めていたが、たちどころに本性を現し、終いには、牢屋の外にまで、聞こえる程に騒ぎだした
十造の家も、久方ぶりに皆が揃って、賑やかにしていた、ただどうしても、此度の戦について、話さなくては、ならならかった
「むぎの店は、もう戸締まりも、終わったのか
波瑠も、かー様と家の中は、片付いたのか」
「店は全部板を打ち付けて、塞いだよ、心配ないさ」
「とー様、この家も、外の荷物は、全部中に入れました、むぎ様も居るし、でも戸締まりも必要なの」
「うむ、明日、佐助と戸締まりを見て回ろう」
「助かります、女手だけでは、無理な所も有ります故に」
十造は、少し改まって話を始めた
「此度の戦は、訳あって儂は徳川方、佐助は上田方となるのだが、儂は暫く、沼田の城、佐助も明日から、上田の城に、詰める事になる
それだけならば、何時もの仕事と同じなのだが、女ばかりで、心配なのだ」
「大丈夫だよ、女三人何とかするさ、それよりも、何か、有るんだろ改まっちゃってさ」
「ああ、此度の戦を最後に、儂は、忍びを辞める、薬屋だけで、やって行こうと思う」
囲炉裏の灰に、波瑠が字を書いていた、普段は、身振り手振りで、会話するのだが、大事な事なので、楓には、正確に伝えた
「ほ~」楓が短い言葉を発し、十造に向かい、自分の胸を、撫で下ろした
むぎが、しみじみと言う
「そう、良かったね、命あっての物種だよ、誰も反対なんかしないよ、皆嬉しいよ、楓が、一番嬉しいよね、でも、佐助は、未だ駄目だろうね、素人のあたしが見ても、今が一番、働き盛りだものね」
十造は、語る
「む、佐助は、真田の宝よ、儂らと知り合わなくとも、この様な時の為、真田衆に、大事にされて来た、真田が有る限り、尽くすのが役目よ」
「そうか、佐助は、真田の家来衆なんだね、解ったよ、十造、最後の最後まで、気を付けててよ
あ、そうだ、あんた達、男衆が当分、居ないんだから、美肌の水の元を、じゃばじゃば、貯めるんだよ、わかったね」
「締め切りの、家の中でなんて、絶対に嫌、とー様とむぎ様の変態、嫌い」
翌朝、皆で朝飯を食べていると、むぎが不機嫌に怒り出した
「全く、戦は未だだと、聞いたのに、昨日の夜は、女のうめき声やら物音、家の揺れが凄かったね、こら波瑠、誰が変態だと、ここは、芸妓の宿かい、あたしは、遣り手婆かい、何とか言え」
波瑠は真っ赤になって、下を向いている、男二人は、ばつが悪そうに、黙って飯を食う
「おや、楓あんたが一番たちが悪いね、こんな時だけ、完全に聞こえぬ振りとは」
楓が、沢庵をポリポリと食べる音だけが、部屋に聞こえていた
皆、堪え切れずにクスクス笑い出した
「十造も佐助も、ちゃんとかえって来てよ、三人で頑張ってるからさ」
家の戸締まりを済ませ、十造と佐助は、其々の城へと向かった
信之の隊は、小諸方面から進軍してきた、徳川秀忠隊と合流し、上田に布陣した
勿論、徳川の諸将から疑惑の目が向けられているのは、ひしひしと、感じる、信之であった
秀忠には、上田城内から、城明け渡しの打診があったと言う
徳川方としてみれば、其が当然であり、何の疑いも無かった
第一天下を、左右する一戦に、こんな小国に、構っておられるか、早う進軍有るのみ、、、実は、上田城を無視すれば、簡単に岐阜方面へは、進軍出来たのである
真田昌幸にとって、此度の戦における勝敗は、秀忠の足止めにあった
上田に布陣する、信之の幕において
「十造、父は上田城、戸石の城は信繁がおる、明日、儂は上田の、城明け渡しを、本多忠政と確めに行くのだ」
「ほう、答えが見えて来ますな、と、言うよりも、結果が見えて来ますな」
信之は、吐息 混じりに、十造に告げる
「徳川方は、まるでわかっては、居らぬな、前の戦は、儂らのまぐれとでも、思うておるのかのう」
「いえ、信之様、彼等は、思ってさえも居りませぬ、小国における負け戦など、記憶に留めても、蚊に刺された程の物でありましょう」
「おお、其では、此度も上田の、思うつぼではないか、秀忠様に、お伝えせねば、、、」
「おそれながら、信之様、絶好の機会が、参りましたぞ、儂らは上田の策に、乗りさえすれば、安泰となりましょう」
「ふん、正しくは、上田に住まう、薬屋の、策ではないのか」
「わは、だとしても、真田の将来が、確実になるのならば、信之様にも、お付き合い願います」
「で、この儂にどうしろと、言うのか」
「此度は、信之様は、おそれながら、主役から外されましょう、おそらくは、使者のお役目が此度の見せ場かと、、、」
「なんと、では、十造は、どうするのだ」
「ここに、書き上げて参りました、お読み頂いた後は、篝火の中へ、放り込み、燃やしてくださいませ」
「む、本当に此だけで良いのか、十造」
「は、御意、ところで信之様、沼田の城には、医者などは、おりますかな」
「おう、儂の加減を見て貰うて、此度の戦のついでに、城内に留め置いたわ、どうかしたか」
「いえ、この十造其を聞いて安心致しました」
真田信之は、本多忠政と共に上田城内において、昌幸と、城明け渡しを確約して、徳川秀忠の陣へ戻って来た
「信之、其では、明日必ず、開城となるのだな、上出来ではないか、ようやったの、其では、明日まで待つとしよう」
翌日、城明け渡しを受ける為に、信之一行と、その、とも侍として、十造が加わって、上田城内へと入った
信之は、昌幸と会談に臨み、十造は、控えの間で待機していた
「御免、厠へまいりまする」
十造は、廊下を隔てた、向かいの部屋へ、忍び込む、そこには、才蔵が待ち受けていた
「おう、十造手筈通りで良いか、佐助は、既に準備を終えておる、野盗どもも、同じくな」
「ああ、頼むぞ、ここまでは、全て上手く、運んでおるわ」
十造が、部屋へ戻ると直ぐに、会談終了の、知らせが下知され、信之一行
引き揚の命があった
十造を認めた、信之が近づき、小声で耳打ちをした
「やはり、一転籠城するとの事よ、戦になるわ、其にしても、父上は、敵に廻すと、厄介よのう」
そんなことを、話して信之一行は、門外に出た、信之は、この後の徳川秀忠に対する、報告を考えると、正直、気が重かった
砂利道を、馬の方へ向かっていると、突然背後で、怒鳴り声が聞こえた
「裏切り者、徳川の犬に成り下がりおって、此でも喰らえ」
「危ない」
ズダーン、途端に鉄砲の音が響き渡った
「ウックッ」
十造が振り向き、信之を押し退けた、信之は少しばかり、前につんのめり、その分十造の影になった
「じ、十造、しっかりするのだ、十造、おのれ、貴様ら何をしたか、覚悟の上で有ろうな」
冷静沈着な信之が、激怒していた
其でも何とか、十造を抱えながら、門外に待機する、三百ばかりの、徳川隊迄戻って来た
「誰か、この者を、大至急沼田の城へ、運んでくれぬか」
それまでは、信之の事を疑ってかかっていた者も、この有り様を見て、考えが変わった
十造は後方へと送られて行った
上田城内から、声が掛かる
「先程はご無礼仕った、早速、先走った下手人一味を捕え申した
此より、直ちに誅を下しまする、どうかご覧あれ」
上田城の大手門が、開けられ、中から後ろ手に縛られた、十人程の鎧武者が、此もまた二十人程の鎧武者に、引き立てられて出て来た
「此より、敵とは言え、使者を襲う暴挙に出た者を、この錆びた刀にて、処刑致す、ご覧あれ」
徳川方の将兵は、此を遠巻きに見ていた
「さあ、いざ始めよ」
荒縄で縛られた者達は、砂利道に、間を空けて、座らされ、端から順番に、錆びた刀で、首を鋸の様に引かれ、無惨に絶命して行った
其奴らは、昌幸達が、上田に帰る途中に、捕えた野盗どもである
今日の今日まで、牢屋とは言え、酒まで供されて、今朝も皆で、酒を飲み楽しく、遣っていたのだが、突然こうなってしまったのだ、文句を言おうとしたのだが、どう言う訳か、声が出せない
水銀で、喉を潰されていたのだ、全てが後の祭、全員無惨に死んで行った
「信之様もこうならぬ様にお気をつけ為さるが宜しかろう」
そう最後に、大声で罵りながら、処刑にあたった武士達は、城内へと帰って行った
この事は、開戦の報と共に瞬く間に徳川全隊に広まった
徳川秀忠は、開城の使者信之から、上田方籠城を聞き、耳を疑った、そして、本多忠政から信之が狙撃され、その部下が負傷した事に、興味を持った
秀忠は、近習に命じる
「此より、軍議を行う皆を集めい、信之、そなたも、加わる様に」
徳川方の信用が、少し得られた気がする、信之であった
「良し、先鋒は真田信之が、戸石城へ一息に攻め込み、此を落とす、さすれば、本隊は上田城を落としに掛かる、前触れとして、上田城前の、青田刈りを始めよ、本陣をこしらえよ、戦を始める」
上田城の眼下に見える田圃が、みるみるうちに、刈り取られて行く
昌幸は、命を下し始めた
「佐内、兵五十程で、あの挑発に乗り、打ち掛けよ、そして、付かず離れず、城近くまで逃げ、後は、鉄砲隊の伏兵に、任せるのだ」
「はっ、承知」
佐内が出ていった後、才蔵が呼ばれた
「真田衆何人かで、敵が青田刈りをしている事を総代達に知らせ、兜首や鎧武者を仕留めたならば、銭と交換すると伝えよ」
「は、承知致しました、して、大殿は鎧をつけて、どちらへ行かれるので」
「なあに、徳川方の本陣を見物に行くのよ、佐助も連れて、行こうと思うての」
「有り難う存じます、佐助は、少し心が萎えておりまする、いくら仕事とは言え、義理の父親を、狙撃したのですから」
上田城付近の、青田刈りは、徳川方の思惑通り、挑発に乗って、城内から真田の兵が出て来た
「ありゃりゃ、組頭殿、いくら何でも、真田の兵が少な過ぎますな、此では、いくら策の通りとは申せ、攻めがいがありませぬな」
「ええい、ごちゃごちゃと、本陣に知らされる前に掛からんか」
負ける筈がないと、確信している、徳川方の攻めには、余裕が伺えた、叶わぬと見た、真田の隊は、槍を交える事も無く、背中を向けて逃げて行く、追う徳川方の兵が迫って来たその時、前方から、鉄砲の一斉射撃が始まった、徳川方の兵だけが、バタバタと倒れて行く、聞きつけて応援が来た時には、既に真田の兵は居なかった、結局徳川方の死者が、百人になっただけであった
徳川方本陣の設営は、既に部隊の、配置まで終えて、出陣の時を、待つばかりとなっていた
総代将、徳川秀忠も、出陣の布令を、何時にするか考えていた
「申し上げます、只今本陣の西方約十町にて、物見をしております」
「何ィ、徳川三万五千の軍勢を、こけにしおってからに、、、」
秀忠は、烈火の如く怒り出した
「申し上げます、真田信之様の部隊は、一時前に、上田の支城、戸石城を攻めたるところ、守将真田信繁は、全隊率いて上田城へ、逃げ込みました」
これには、秀忠の機嫌も良くなる
「む、でかした、其のまま守備につけと、伝えよ
真田昌幸め、遊んでいると、取り返しがつかなくなることを、思い知るが良い
鳥居出陣じゃ、上田の城を落としに掛かれ」
徳川の主力部隊が、いよいよ出陣を開始した
秀忠は、焦り、苛立ち、怒り等、知らずのうちに、真田昌幸の術中に、どっぷりと、はまって行った
冷静に考えれば、既に諦めて、岐阜に向かって、いなければ、ならないのだ
徳川本陣を見学した、昌幸他十人は、敵が五十騎程追って来たのを見て、引き揚げを命じた
「佐助、静海後は任せた」
「はいよ、大殿様、皆城で待っているよ
静海、行くよ、うん、策は有るから」
佐助は、静海を主導出来る程に、成長していた
敵が迫っていた、その追っ手の正面に、黒、黄、赤の煙が立ち込める、静海が投げた、目潰し、毒、催涙の三種類の、煙が敵を取り巻いた、敵の追跡が止まった、すかさず、爆発が起きた、既に、部隊としての動きは無く、逃げるとしても、目が塞がり、馬はいたずらに、跳ね回るばかりであった
佐助と静海は、余裕を持って、引き揚げる事が出来た
城に戻ると、いよいよ本戦の準備中であった、佐助は、十造を心配する暇も無く、急ぎ二の丸近辺の仕掛けに取り掛かった
様子を見に来た、信繁に佐助が話しかけた
「信繁様、戦はどうなの」
「おう、この戦自体は、既に目的を達したわ、何しろ、この戦は、目の前の敵に、損害を与えるのが目的ではないのだ、時を稼いで、敵にもっと大きな、損害を与えるのよ」
そうこうするうちに、物見が、敵の来襲を告げに来た
「佐助、もう一働き頼むぞ、後少しよ」
徳川の主力部隊が、押し寄せて来た、一つの部隊は、神川を渡ると城に真っ直ぐ向かって来た、もう一隊は、城下町から侵入し、城を目指した、真田隊は、城下の建物の影を利用し、飛び道具で、狙撃する戦法に出た
城に真っ直ぐに向かった部隊は、さしたる抵抗にも会わず、二ノ丸へ到達した、大勢が押し掛け、今にも、城門をこじ開けようかと、思った矢先に、爆発が始まり、銃弾が降り注ぎ、一気に地獄絵図と化した、徳川方が怯んだ矢先、満を持して、横手の森から、伏兵が現れた、徳川の部隊は、数を頼りに、のして行こうと、力攻めしたが、城の守りは堅く、遂に徳川隊は、引き始めた、大部隊が神川に着く頃合いに、轟音と共に、氾濫した水が溢れてきた、一気呵成の洪水に、夥しい犠牲が出た
徳川方の、総退却が始まった
徳川本陣に詰める、諸将は、頭を抱えた
徳川秀忠は、意地になっていた、なにが何でも、上田の城を攻め落とす、そう決めた
諸将は困惑した、秀忠を止められる者は、家康しか居らず、どうしたものかと
結局夜になり、部隊は一夜を明かす事になった
そこへ、思わぬ助け舟が現れた、家康から岐阜への到着期日が届いたのだ、しかも、後三日後に岐阜とは、、、
「鳥居、明日早朝に、岐阜へ向かう、葛尾城に人を残し、残りは全てぞ」
翌朝、徳川軍の引き揚げが、上田の城へ報告された
佐助は、昌幸から石田三成へ渡す、書状を託された
「良いか佐助、最早、石田殿の命が無ければ、この書状は、燃やしてしまえ、良いな、ついでに京、大阪の状況も見て参れ」
「承知致しました」
佐助は才蔵に、家の戸締まりや、むぎの店等を頼み、関西方面へ出掛けて行った
十造は、戸板に載せられてから荷車で沼田城へと運ばれて行く、右肩の鉄砲傷は、痛みも出血もあったが、途中井戸水を沸かし、傷口の応急的な処理を自分でする事にした、井戸水を冷ましたら、傷にかけてもらい、十分に洗ってから、イタドリの粉と、僅なアヘンを混ぜたものを、傷口に振りかける、鉄砲の玉は、貫通せずに、中で止まっていた、おそらく鉛の中毒で、暫くは熱が、収まらないであろう、鉛の毒を、身体中に回らせないために、止血は余り出来ない、そこまで手当てをしたら、少量のハシリドコロの丸薬と、極微量のアヘンを飲み込み、わざと自分で、意識朦朧とさせた
甲斐の国の医者、若狭静庵(わかさじょうあん)は、年は若いが優秀であった、真田信之が、病気になる度に、わざわざ甲斐から、呼ばれていた
此度も、信之の診察が終わって、引き揚げようとしていた、矢先に、戦があるので、もう暫く、滞在を、頼まれたのだ
静庵は、弟子三人と助手兼世話人一人とで、沼田城近くの寺に、宿泊していた
夕方近くに、早馬で知らせが入った、殿様じきじきの、お言葉で、どうかお頼み申す、との事である
かなりな、重要人物なのであろう、気を詰めて待っていた
既に夕飯も過ぎた頃、弟子の一人が呼びに来た、戸板に載せられ荷車で、運ばれて来た
肩を鉄砲で撃たれたらしい、付き添いの武士が、静庵に紙を渡した、この者が、未だ正常な時に、書き留める様に、指図を受けたと言う
(右肩の鉄砲の傷、鉛玉は残り、煮沸の水で洗う、傷口にイタドリと少しのアヘン、極微量のアヘンとハシリドコロの欠片で意識を失くす)
『なる程、少し心得が有るわけですな、どれどれ』
静庵は、弟子達に指示を出した、肩に鉛玉が、残っているなら、手術で、取り出すしか無いのだ、凄い患者である、身体に入った鉛玉を出す準備の為に、自分の意識を、朦朧とさせて、医者の手間を省いている
「さあ、今から肩の玉を、取り出す、先ず患部を切る、血を拭いてくれ、、、」
半時後、玉は取り出した本人は、痛みはわからない、何しろ麻酔薬が効いている
ただし、覚めた時が大変であろう、熱も出る、暫く寝たきりの、生活となろう
明日からは、傷口が腐らぬ限り、大人しくしていて貰おう
「着替えを取り寄せました、包帯の取り替えでしたら、私でも出来ましょう、それに、城主様の大切なお方と聞きました
様子見と御世話だけなら私の方が、、、」
「此から戦の、怪我人が増えましょう、ありがたい是非に、早速ですが
寺の本堂に、器具を持ち込みます、何かあればお呼び下さい、御世話してくださる方がいらして、助かります」
静庵が本堂から戻ってから、世話人は、其の半時後に寝所へ戻って来た
「随分とかかりましたね、何かありましたか」
「いいえ、何も、もう遅うございます、お休みなさいまし」
翌朝、静庵が目覚めると、朝飯はとうに、出来ていた、世話人の姿は既になく、鳥の声が聞こえるばかりであった
豊臣秀吉が亡くなり、時が加速していた、徳川家康が大阪城で、権勢を奮い出した、当然これに、反目が出て来る、佐和山の城に蟄居させられていた、石田三成を担ぎ上げ、毛利も腰を上げた
先ずは、関東の背後に居る上杉を、成敗の名目で兵を集め、集合場所である、宇都宮に行く途中であり、家康も此方に来ていた
「信之、話はもう良かろう、この事は前々から決まっておつた
ただ、それが今日、はっきりと、しただけよ、謹慎中の三成殿から、書状がやっと届いたわ、お主も読むか、信之」
「いえ、父上どうせ、領地安堵と、沼田の加増、いずれは、甲斐の地域も、、、違いますかな」
「はっはっはっはっ、見透かされておるわ、信繁、三人でゆるりと、酒を飲むのも、今日で終いよ」
昌幸は、これからの事を、楽しみな感じで、語らい、上機嫌であった
もう一つ、場所を変えての集が有った、真田の衆が、一同に介していた
才蔵の仕切りで、話を始めた
「既に話をした通り、真田に、お仕えする事に、変わりはないわ、儂らは、呼ばれた方の、仕事をこなすだけである、ただし、信之様方には、徳川だけの忍がおるで、十造以外は、佐助も含めて、上田方の仕事となろう、皆が知っての通り、真田は、どちらかが残る、その為にも、仕事に励むのだ、そして、生き延びよ」
「ねえ、才蔵、おいらと、父ちゃんは、帰る家が一緒だよ、どうする」
「くっくっくっ、馬鹿め、大戦でいちいち、家に帰れると思うたか
お前は、野良仕事でも、するつもりか
十造何だこやつは、手におえぬわ、親の顔が見てみたいわ」
「儂の子は、波瑠と申す、其奴は、我が家の居候よ、好きにせよ、ワハハハハ」
「チェッ、何だよ、本当に」
「十造殿に、信之様より、お呼びに御座います」
十造は、信之と二人きりで話を始めた
「十造、先程知らせがあった、石田三成殿が兵を集めた、家康様は江戸に向けて既に発たれた、父上、信繁の二人も上田へと引き返す、明日、儂も沼田城に戻る、実は、秀忠様が大軍を率いて、上田を通る手筈となろう」
「そうなれば、当然先導役あるいは、先鋒でしょうな、ただし、信用されておればの、、、」
「そう、信用されねばならぬ、儂にとって今一番必要なのは、ここでの勝敗よりも、徳川方の信頼、信用であろう」
「正しく、おっしゃられる通りかと、儂は、このまま、上田に引き返し、信之様の上田到着迄に、策を終わらせたく存じます、宜しゅう御座いますか」
「おお、何かあると申すか、頼む、頼むぞ十造」
十造は、急ぎ上田に帰る途中の、真田昌幸の部隊に追い付いた
才蔵が、軽口を叩きながら、問うて来た
「おう、十造早速の寝返り、神妙である
今からでは、佐助の、手子位しか、空きがないが、良いかの」
「ワハハハハ、案ずるな、大殿に会わせねば、爆薬を喰らわすぞ」
「りゃ、それは、困る、待っておれ
ほれ、向こうの、結び雁金、の旗印よ」
「信繁様、御待ち下され、十造に御座る」
「おう、やはり此方が良いか、大殿はこの先よ
部隊を止める、待っておれ、休息せよ」
誰かが、呼びにいったのであろう、昌幸の方から来てくれた
「おう、十造、いかがした、銭ならば、信之の方が豊富な筈よ」
「信繁様と三人あるいは、才蔵も、、、」
「良かろう、才蔵を此へ、信繁、話が終わるまで休息せよ」
昌幸、信繁、才蔵、十造の四人は、田の畦に座り、十造の話を聞いた
「、、、と言うわけで、此度の戦に信之様自信は、徳川の信用を得たい、それが、第一と、では、勝ちは、上田で宜しいのですかと、、、信之様は、たとえ上田が、成果を挙げようとも、上方が、負ければ、意味が無い、父上は、其も知りつつ、上田に引き揚げたと」
「ふむ、して十造は、何故ここにおる、策を申せ」
「簡単に申しますと、佐助が鉄砲で、儂を打つのでございます」
「なにやら、聞いただけでも、鳥肌の立つ策ではあるな、信繁少し早いが兵たちは、昼餉にせよ」
十造の、ただならぬ策に昌幸は、時間をかけた
「、、、と、以上が、大まかな策、詳細は未だ、詰めねばなりませぬ、信之様には、儂の部分は、お知らせせぬ方が、宜しかろうと思いまする、迫真の演技と言うよりも、真実の方が、徳川方が信じましょう」
才蔵が言う
「もし、しくじりでもしたのなら、此処におる全員は、死するまで楓に、命を狙われるのであろうな」
「おう、全員楓の半月刀の餌食よ、安心せい、喉を一掻き、痛くはないわ、そうならぬ為にも、上手くやれば、良い話よ」
昌幸が決定を下した
「良し、決めた、其で行こうではないか、何しろ、儂ら上田の真田は、此から三万の兵を、相手にせねばならぬ、沼田の真田には、それくらいの気遣いで、丁度良いわ」
十造が問うた
「大殿、上田での、合戦準備はどのように、、、」
「聞いたか、信繁、才蔵、敵が儂を尋問しよる、まあ、同じ真田の誼で教えてしんぜよう
この前と同じよ、ただ少しずつ、変化は有るが、人も変わっておるしの
火薬なら、佐助がおる」
「徳川方は、先の上田合戦での、指揮を取った者は居りませぬ、ましてや、人数は、此方の十倍となりましょう、どう考えても、降参するのが当たり前、条件は、全て上田方の不利、負ける条件は、全て揃って居り徳川の圧勝、対するこちらは、全員が経験者、敵を油断させるには、どのようにすれば良いのか、領地の皆が、知って居ります、が、、、」
すかさず、信繁が問うた
「が、、、どうした、十造らしゅうもない」
昌幸が、笑いながら、その場の者に話出した
「はっはっは、そりゃあ、言えんわい信繁、西方が勝てば、全てが万々歳、じゃが、東の徳川が勝てば、信之は助かろう、武功も挙げよう、しかして、儂らは、、、どうなるかのう」
才蔵、心配する気配を見せる
「成る程のう、そうなる事は、頭の中では、とうに、わかっておる筈なのに、いざ間近に、迫って来ると、身につまされるのう」
十造が此を、たしなめる
「才蔵、西方が負ける体で物を申すな、縁起でもないわ」
「しかして、お主は徳川
方であろう、大殿、沼田の間者を、見つけまして御座います」
「でかした、上田へ連れて帰れ、この先何時会えるやも知れぬでな、わっはっはっは、、、」
十造達の話し合いと、昼餉が終わると、真田の部隊は、急ぎ街道を進んでいた
伝令がやって来て、告げた
「後二里程で沼田のお城で御座います」
「むう、信繁、最後になろう、孫達と小松(信之の正室)に会うてから、帰ろうではないか、伝令、城に伝えよ、此から昌幸が参るとな」
程無く伝令が帰って来た、城までは、既に一里無かった
「申し上げます、城からの返事は、門の外にて、殿不在の為、開けるわけには参らぬと、、、」
「ほう、ではこの昌幸が、直に掛け合うてみよう」
真田隊が、沼田の城を、かこんで、門の前に来て、昌幸が、城内に呼び掛けた
「真田昌幸である、孫と小松の顔を、一目見に参った、開門されよ」
間もなく、緋縅の鎧に身を包み、薙刀を手にした女が現れた、信之の妻小松である
「上田の真田は、最早敵に御座いましょう、いかに御舅様と言えど、殿が御不在の中、鎧を身に付けた者を、城内には入れはしませぬ、引き揚げるが宜しかろう」
此には、昌幸も感心しきり、頷きながら、馬を返した、皆の前に戻って来るなり
「流石に、本多忠勝の娘よ、これで真田も安泰よ、のう、そうは思わぬか、信繁」
そう言いながら、昌幸は上田へと向かう
沼田の城から、早馬が駆けて来た
「御待ちくださいませ、只今、城から、御方様とお子達が参ります、この先の寺で、御待ち願えませぬか」
「おう、昌幸が待つと伝えよ」
寺で待つこと、四半時、信之の妻、小松と孫達が到着した
小松は、孫を抱く昌幸に手をついて謝った
「申し訳ございませんでした、御義父上様に、対して無礼なる振る舞い、この小松、伏してお詫び致します」
「何を言うのだ、儂が、うっかりしておったわ、謝るのは、儂よ、さあ、顔を上げよ小松
にしても、鎧姿が似合うていたわ、何時もあの格好なのか」
「ほっほっほっほっ、御義父上様の、軽口を久方ぶりに、聞きもうした、折角、信繁殿にも、お会い出来たと言うのに、何の持て成しも、出来ませぬな」
小松は、少し涙を浮かべていた
「それよりも、怪我の功名ではないが、これで、真田は、本当に二つになったと、誰もが信ずるであろう
早、出立の時よ、小松よ後を頼むぞ、達者でな」
「御義父上様、信繁殿の武運長久を、御祈り申し上げます、どうか、末永く、お健やかに」
正しく、後顧之憂も無くなった、昌幸と真田の部隊は、上田を目指し先を急ぐ
「信繁様、この先約一里先に、野伏せり、野盗の類いが三百程、屯うて居りまする、まあ、蹴散らす事は出来ましょう」
此を聞き入れた十造は、空かさず、信繁に
「信繁様、其奴らを、十人ばかり、生け捕りに、していただけますかな」
「訳もない、少数ながら精鋭揃い、ましてや、真田衆が揃うておる、十造が指さした者、悉く捕らえてくれよう」
十造は、さらに重ねて
「鎧を身に着けておる者共で願いまする」
真田隊は、無事に上田に帰って来た、捕えられた十人の、野伏せり、野盗はそのまま、牢やに押し込まれた、が、存外に扱いが、丁重であったばかりではなく、酒やら何やら、大層な持て成しである
才蔵が此を見て、小声で、独り言を呟いた
「さあ、お前達にとっては、末期の宴よ、存分に楽しむが良い」
野盗達は、初めこそおずおずと、辺りの様子を見ながら、ちびちびと、酒を舐めていたが、たちどころに本性を現し、終いには、牢屋の外にまで、聞こえる程に騒ぎだした
十造の家も、久方ぶりに皆が揃って、賑やかにしていた、ただどうしても、此度の戦について、話さなくては、ならならかった
「むぎの店は、もう戸締まりも、終わったのか
波瑠も、かー様と家の中は、片付いたのか」
「店は全部板を打ち付けて、塞いだよ、心配ないさ」
「とー様、この家も、外の荷物は、全部中に入れました、むぎ様も居るし、でも戸締まりも必要なの」
「うむ、明日、佐助と戸締まりを見て回ろう」
「助かります、女手だけでは、無理な所も有ります故に」
十造は、少し改まって話を始めた
「此度の戦は、訳あって儂は徳川方、佐助は上田方となるのだが、儂は暫く、沼田の城、佐助も明日から、上田の城に、詰める事になる
それだけならば、何時もの仕事と同じなのだが、女ばかりで、心配なのだ」
「大丈夫だよ、女三人何とかするさ、それよりも、何か、有るんだろ改まっちゃってさ」
「ああ、此度の戦を最後に、儂は、忍びを辞める、薬屋だけで、やって行こうと思う」
囲炉裏の灰に、波瑠が字を書いていた、普段は、身振り手振りで、会話するのだが、大事な事なので、楓には、正確に伝えた
「ほ~」楓が短い言葉を発し、十造に向かい、自分の胸を、撫で下ろした
むぎが、しみじみと言う
「そう、良かったね、命あっての物種だよ、誰も反対なんかしないよ、皆嬉しいよ、楓が、一番嬉しいよね、でも、佐助は、未だ駄目だろうね、素人のあたしが見ても、今が一番、働き盛りだものね」
十造は、語る
「む、佐助は、真田の宝よ、儂らと知り合わなくとも、この様な時の為、真田衆に、大事にされて来た、真田が有る限り、尽くすのが役目よ」
「そうか、佐助は、真田の家来衆なんだね、解ったよ、十造、最後の最後まで、気を付けててよ
あ、そうだ、あんた達、男衆が当分、居ないんだから、美肌の水の元を、じゃばじゃば、貯めるんだよ、わかったね」
「締め切りの、家の中でなんて、絶対に嫌、とー様とむぎ様の変態、嫌い」
翌朝、皆で朝飯を食べていると、むぎが不機嫌に怒り出した
「全く、戦は未だだと、聞いたのに、昨日の夜は、女のうめき声やら物音、家の揺れが凄かったね、こら波瑠、誰が変態だと、ここは、芸妓の宿かい、あたしは、遣り手婆かい、何とか言え」
波瑠は真っ赤になって、下を向いている、男二人は、ばつが悪そうに、黙って飯を食う
「おや、楓あんたが一番たちが悪いね、こんな時だけ、完全に聞こえぬ振りとは」
楓が、沢庵をポリポリと食べる音だけが、部屋に聞こえていた
皆、堪え切れずにクスクス笑い出した
「十造も佐助も、ちゃんとかえって来てよ、三人で頑張ってるからさ」
家の戸締まりを済ませ、十造と佐助は、其々の城へと向かった
信之の隊は、小諸方面から進軍してきた、徳川秀忠隊と合流し、上田に布陣した
勿論、徳川の諸将から疑惑の目が向けられているのは、ひしひしと、感じる、信之であった
秀忠には、上田城内から、城明け渡しの打診があったと言う
徳川方としてみれば、其が当然であり、何の疑いも無かった
第一天下を、左右する一戦に、こんな小国に、構っておられるか、早う進軍有るのみ、、、実は、上田城を無視すれば、簡単に岐阜方面へは、進軍出来たのである
真田昌幸にとって、此度の戦における勝敗は、秀忠の足止めにあった
上田に布陣する、信之の幕において
「十造、父は上田城、戸石の城は信繁がおる、明日、儂は上田の、城明け渡しを、本多忠政と確めに行くのだ」
「ほう、答えが見えて来ますな、と、言うよりも、結果が見えて来ますな」
信之は、吐息 混じりに、十造に告げる
「徳川方は、まるでわかっては、居らぬな、前の戦は、儂らのまぐれとでも、思うておるのかのう」
「いえ、信之様、彼等は、思ってさえも居りませぬ、小国における負け戦など、記憶に留めても、蚊に刺された程の物でありましょう」
「おお、其では、此度も上田の、思うつぼではないか、秀忠様に、お伝えせねば、、、」
「おそれながら、信之様、絶好の機会が、参りましたぞ、儂らは上田の策に、乗りさえすれば、安泰となりましょう」
「ふん、正しくは、上田に住まう、薬屋の、策ではないのか」
「わは、だとしても、真田の将来が、確実になるのならば、信之様にも、お付き合い願います」
「で、この儂にどうしろと、言うのか」
「此度は、信之様は、おそれながら、主役から外されましょう、おそらくは、使者のお役目が此度の見せ場かと、、、」
「なんと、では、十造は、どうするのだ」
「ここに、書き上げて参りました、お読み頂いた後は、篝火の中へ、放り込み、燃やしてくださいませ」
「む、本当に此だけで良いのか、十造」
「は、御意、ところで信之様、沼田の城には、医者などは、おりますかな」
「おう、儂の加減を見て貰うて、此度の戦のついでに、城内に留め置いたわ、どうかしたか」
「いえ、この十造其を聞いて安心致しました」
真田信之は、本多忠政と共に上田城内において、昌幸と、城明け渡しを確約して、徳川秀忠の陣へ戻って来た
「信之、其では、明日必ず、開城となるのだな、上出来ではないか、ようやったの、其では、明日まで待つとしよう」
翌日、城明け渡しを受ける為に、信之一行と、その、とも侍として、十造が加わって、上田城内へと入った
信之は、昌幸と会談に臨み、十造は、控えの間で待機していた
「御免、厠へまいりまする」
十造は、廊下を隔てた、向かいの部屋へ、忍び込む、そこには、才蔵が待ち受けていた
「おう、十造手筈通りで良いか、佐助は、既に準備を終えておる、野盗どもも、同じくな」
「ああ、頼むぞ、ここまでは、全て上手く、運んでおるわ」
十造が、部屋へ戻ると直ぐに、会談終了の、知らせが下知され、信之一行
引き揚の命があった
十造を認めた、信之が近づき、小声で耳打ちをした
「やはり、一転籠城するとの事よ、戦になるわ、其にしても、父上は、敵に廻すと、厄介よのう」
そんなことを、話して信之一行は、門外に出た、信之は、この後の徳川秀忠に対する、報告を考えると、正直、気が重かった
砂利道を、馬の方へ向かっていると、突然背後で、怒鳴り声が聞こえた
「裏切り者、徳川の犬に成り下がりおって、此でも喰らえ」
「危ない」
ズダーン、途端に鉄砲の音が響き渡った
「ウックッ」
十造が振り向き、信之を押し退けた、信之は少しばかり、前につんのめり、その分十造の影になった
「じ、十造、しっかりするのだ、十造、おのれ、貴様ら何をしたか、覚悟の上で有ろうな」
冷静沈着な信之が、激怒していた
其でも何とか、十造を抱えながら、門外に待機する、三百ばかりの、徳川隊迄戻って来た
「誰か、この者を、大至急沼田の城へ、運んでくれぬか」
それまでは、信之の事を疑ってかかっていた者も、この有り様を見て、考えが変わった
十造は後方へと送られて行った
上田城内から、声が掛かる
「先程はご無礼仕った、早速、先走った下手人一味を捕え申した
此より、直ちに誅を下しまする、どうかご覧あれ」
上田城の大手門が、開けられ、中から後ろ手に縛られた、十人程の鎧武者が、此もまた二十人程の鎧武者に、引き立てられて出て来た
「此より、敵とは言え、使者を襲う暴挙に出た者を、この錆びた刀にて、処刑致す、ご覧あれ」
徳川方の将兵は、此を遠巻きに見ていた
「さあ、いざ始めよ」
荒縄で縛られた者達は、砂利道に、間を空けて、座らされ、端から順番に、錆びた刀で、首を鋸の様に引かれ、無惨に絶命して行った
其奴らは、昌幸達が、上田に帰る途中に、捕えた野盗どもである
今日の今日まで、牢屋とは言え、酒まで供されて、今朝も皆で、酒を飲み楽しく、遣っていたのだが、突然こうなってしまったのだ、文句を言おうとしたのだが、どう言う訳か、声が出せない
水銀で、喉を潰されていたのだ、全てが後の祭、全員無惨に死んで行った
「信之様もこうならぬ様にお気をつけ為さるが宜しかろう」
そう最後に、大声で罵りながら、処刑にあたった武士達は、城内へと帰って行った
この事は、開戦の報と共に瞬く間に徳川全隊に広まった
徳川秀忠は、開城の使者信之から、上田方籠城を聞き、耳を疑った、そして、本多忠政から信之が狙撃され、その部下が負傷した事に、興味を持った
秀忠は、近習に命じる
「此より、軍議を行う皆を集めい、信之、そなたも、加わる様に」
徳川方の信用が、少し得られた気がする、信之であった
「良し、先鋒は真田信之が、戸石城へ一息に攻め込み、此を落とす、さすれば、本隊は上田城を落としに掛かる、前触れとして、上田城前の、青田刈りを始めよ、本陣をこしらえよ、戦を始める」
上田城の眼下に見える田圃が、みるみるうちに、刈り取られて行く
昌幸は、命を下し始めた
「佐内、兵五十程で、あの挑発に乗り、打ち掛けよ、そして、付かず離れず、城近くまで逃げ、後は、鉄砲隊の伏兵に、任せるのだ」
「はっ、承知」
佐内が出ていった後、才蔵が呼ばれた
「真田衆何人かで、敵が青田刈りをしている事を総代達に知らせ、兜首や鎧武者を仕留めたならば、銭と交換すると伝えよ」
「は、承知致しました、して、大殿は鎧をつけて、どちらへ行かれるので」
「なあに、徳川方の本陣を見物に行くのよ、佐助も連れて、行こうと思うての」
「有り難う存じます、佐助は、少し心が萎えておりまする、いくら仕事とは言え、義理の父親を、狙撃したのですから」
上田城付近の、青田刈りは、徳川方の思惑通り、挑発に乗って、城内から真田の兵が出て来た
「ありゃりゃ、組頭殿、いくら何でも、真田の兵が少な過ぎますな、此では、いくら策の通りとは申せ、攻めがいがありませぬな」
「ええい、ごちゃごちゃと、本陣に知らされる前に掛からんか」
負ける筈がないと、確信している、徳川方の攻めには、余裕が伺えた、叶わぬと見た、真田の隊は、槍を交える事も無く、背中を向けて逃げて行く、追う徳川方の兵が迫って来たその時、前方から、鉄砲の一斉射撃が始まった、徳川方の兵だけが、バタバタと倒れて行く、聞きつけて応援が来た時には、既に真田の兵は居なかった、結局徳川方の死者が、百人になっただけであった
徳川方本陣の設営は、既に部隊の、配置まで終えて、出陣の時を、待つばかりとなっていた
総代将、徳川秀忠も、出陣の布令を、何時にするか考えていた
「申し上げます、只今本陣の西方約十町にて、物見をしております」
「何ィ、徳川三万五千の軍勢を、こけにしおってからに、、、」
秀忠は、烈火の如く怒り出した
「申し上げます、真田信之様の部隊は、一時前に、上田の支城、戸石城を攻めたるところ、守将真田信繁は、全隊率いて上田城へ、逃げ込みました」
これには、秀忠の機嫌も良くなる
「む、でかした、其のまま守備につけと、伝えよ
真田昌幸め、遊んでいると、取り返しがつかなくなることを、思い知るが良い
鳥居出陣じゃ、上田の城を落としに掛かれ」
徳川の主力部隊が、いよいよ出陣を開始した
秀忠は、焦り、苛立ち、怒り等、知らずのうちに、真田昌幸の術中に、どっぷりと、はまって行った
冷静に考えれば、既に諦めて、岐阜に向かって、いなければ、ならないのだ
徳川本陣を見学した、昌幸他十人は、敵が五十騎程追って来たのを見て、引き揚げを命じた
「佐助、静海後は任せた」
「はいよ、大殿様、皆城で待っているよ
静海、行くよ、うん、策は有るから」
佐助は、静海を主導出来る程に、成長していた
敵が迫っていた、その追っ手の正面に、黒、黄、赤の煙が立ち込める、静海が投げた、目潰し、毒、催涙の三種類の、煙が敵を取り巻いた、敵の追跡が止まった、すかさず、爆発が起きた、既に、部隊としての動きは無く、逃げるとしても、目が塞がり、馬はいたずらに、跳ね回るばかりであった
佐助と静海は、余裕を持って、引き揚げる事が出来た
城に戻ると、いよいよ本戦の準備中であった、佐助は、十造を心配する暇も無く、急ぎ二の丸近辺の仕掛けに取り掛かった
様子を見に来た、信繁に佐助が話しかけた
「信繁様、戦はどうなの」
「おう、この戦自体は、既に目的を達したわ、何しろ、この戦は、目の前の敵に、損害を与えるのが目的ではないのだ、時を稼いで、敵にもっと大きな、損害を与えるのよ」
そうこうするうちに、物見が、敵の来襲を告げに来た
「佐助、もう一働き頼むぞ、後少しよ」
徳川の主力部隊が、押し寄せて来た、一つの部隊は、神川を渡ると城に真っ直ぐ向かって来た、もう一隊は、城下町から侵入し、城を目指した、真田隊は、城下の建物の影を利用し、飛び道具で、狙撃する戦法に出た
城に真っ直ぐに向かった部隊は、さしたる抵抗にも会わず、二ノ丸へ到達した、大勢が押し掛け、今にも、城門をこじ開けようかと、思った矢先に、爆発が始まり、銃弾が降り注ぎ、一気に地獄絵図と化した、徳川方が怯んだ矢先、満を持して、横手の森から、伏兵が現れた、徳川の部隊は、数を頼りに、のして行こうと、力攻めしたが、城の守りは堅く、遂に徳川隊は、引き始めた、大部隊が神川に着く頃合いに、轟音と共に、氾濫した水が溢れてきた、一気呵成の洪水に、夥しい犠牲が出た
徳川方の、総退却が始まった
徳川本陣に詰める、諸将は、頭を抱えた
徳川秀忠は、意地になっていた、なにが何でも、上田の城を攻め落とす、そう決めた
諸将は困惑した、秀忠を止められる者は、家康しか居らず、どうしたものかと
結局夜になり、部隊は一夜を明かす事になった
そこへ、思わぬ助け舟が現れた、家康から岐阜への到着期日が届いたのだ、しかも、後三日後に岐阜とは、、、
「鳥居、明日早朝に、岐阜へ向かう、葛尾城に人を残し、残りは全てぞ」
翌朝、徳川軍の引き揚げが、上田の城へ報告された
佐助は、昌幸から石田三成へ渡す、書状を託された
「良いか佐助、最早、石田殿の命が無ければ、この書状は、燃やしてしまえ、良いな、ついでに京、大阪の状況も見て参れ」
「承知致しました」
佐助は才蔵に、家の戸締まりや、むぎの店等を頼み、関西方面へ出掛けて行った
十造は、戸板に載せられてから荷車で沼田城へと運ばれて行く、右肩の鉄砲傷は、痛みも出血もあったが、途中井戸水を沸かし、傷口の応急的な処理を自分でする事にした、井戸水を冷ましたら、傷にかけてもらい、十分に洗ってから、イタドリの粉と、僅なアヘンを混ぜたものを、傷口に振りかける、鉄砲の玉は、貫通せずに、中で止まっていた、おそらく鉛の中毒で、暫くは熱が、収まらないであろう、鉛の毒を、身体中に回らせないために、止血は余り出来ない、そこまで手当てをしたら、少量のハシリドコロの丸薬と、極微量のアヘンを飲み込み、わざと自分で、意識朦朧とさせた
甲斐の国の医者、若狭静庵(わかさじょうあん)は、年は若いが優秀であった、真田信之が、病気になる度に、わざわざ甲斐から、呼ばれていた
此度も、信之の診察が終わって、引き揚げようとしていた、矢先に、戦があるので、もう暫く、滞在を、頼まれたのだ
静庵は、弟子三人と助手兼世話人一人とで、沼田城近くの寺に、宿泊していた
夕方近くに、早馬で知らせが入った、殿様じきじきの、お言葉で、どうかお頼み申す、との事である
かなりな、重要人物なのであろう、気を詰めて待っていた
既に夕飯も過ぎた頃、弟子の一人が呼びに来た、戸板に載せられ荷車で、運ばれて来た
肩を鉄砲で撃たれたらしい、付き添いの武士が、静庵に紙を渡した、この者が、未だ正常な時に、書き留める様に、指図を受けたと言う
(右肩の鉄砲の傷、鉛玉は残り、煮沸の水で洗う、傷口にイタドリと少しのアヘン、極微量のアヘンとハシリドコロの欠片で意識を失くす)
『なる程、少し心得が有るわけですな、どれどれ』
静庵は、弟子達に指示を出した、肩に鉛玉が、残っているなら、手術で、取り出すしか無いのだ、凄い患者である、身体に入った鉛玉を出す準備の為に、自分の意識を、朦朧とさせて、医者の手間を省いている
「さあ、今から肩の玉を、取り出す、先ず患部を切る、血を拭いてくれ、、、」
半時後、玉は取り出した本人は、痛みはわからない、何しろ麻酔薬が効いている
ただし、覚めた時が大変であろう、熱も出る、暫く寝たきりの、生活となろう
明日からは、傷口が腐らぬ限り、大人しくしていて貰おう
「着替えを取り寄せました、包帯の取り替えでしたら、私でも出来ましょう、それに、城主様の大切なお方と聞きました
様子見と御世話だけなら私の方が、、、」
「此から戦の、怪我人が増えましょう、ありがたい是非に、早速ですが
寺の本堂に、器具を持ち込みます、何かあればお呼び下さい、御世話してくださる方がいらして、助かります」
静庵が本堂から戻ってから、世話人は、其の半時後に寝所へ戻って来た
「随分とかかりましたね、何かありましたか」
「いいえ、何も、もう遅うございます、お休みなさいまし」
翌朝、静庵が目覚めると、朝飯はとうに、出来ていた、世話人の姿は既になく、鳥の声が聞こえるばかりであった
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