1 / 50
最悪な出会い
しおりを挟む──────2014──────
6月も終わりに近付き夏の暑さが顔を覗かせる。
しかし、まだ梅雨独特のジメジメした空気も混在して直斗の肌に纏わり付く。
「……あっつぅー……」
制服のワイシャツのボタンを全開にして、団扇変わりの下敷きで扇いだ。
親友の康平と渡り廊下の階段で涼んでいる。
それでも教室よりは幾分涼しいその場所で、次の授業が体育なのか、校庭へ向かう下級生達を何となく目で追っている。
「藤井センパーイ!」
体操着の女子生徒数人が直斗に気付き手を振った。
直斗が笑顔で手を振り返すと「キャーッ」と歓声が上がる。
「…相変わらずモテてんなぁ…」
康平が下敷きで扇ぎながら恨めしそうに睨みつける。
「やっかむなよ」
そう言って直斗はコーラを口に含んだ。
「…次の授業…何だっけ?」
康平が面倒くさそうに尋ねるが
「えー……知らね」
一言だけ返し、下敷きで扇ぎ続けた。
端から出るつもりなどない……。
「英語だよ」
その言葉と共に直斗の頭に教科書が振り下ろされた。
「痛ってー……」
直斗が頭を押さえて振り返ると
「俺の授業をサボろうなんて10年早いわ」
体格の良い、人の良さそうな教師の水野が直斗の頭を叩いたであろう教科書を手に立っている。
「サボるなんて言ってねーじゃん…」
直斗は仕方なく立ち上がった。
「なら早く教室行け!もう予鈴なるだろ」
そう言って自分より遥かに背の高い直斗の頭をガシガシと撫で、笑いながら通り過ぎていく。
水野の後ろから見たことの無いスーツの若い男が着いていき、すれ違いがてら直斗を見て『クスっ』と笑った。
「……なんだアイツ……」
直斗が面白くなさそうに呟くと
「昨日から来てる教育実習生だろ。イケメンだって女子が騒いでたじゃん」
直斗が背中を睨みつける。
するとその『イケメン』が振り返り、再び直斗を笑ったように見えた。
「……気に入らねぇな……」
直斗の言葉に
「おいおい……お前いい加減にしとかないと3年のここに来て退学とか笑えないぞ」
康平が肩を竦めて直斗を教室へ連れていった。
「今の子は?」
「ん…?藤井のことかな?これから行く3年4組の子でね。まあ…ちょっとあって…今反抗期真っ最中ですわ」
水野が人の良さそうな笑顔を見せる。
「ちょっと喧嘩っぱやいとこはあるが…良い子ですよ」
「そうなんですね。覚えておきます」
教育実習生の紡木零が優しく微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
必ず会いに行くから、どうか待っていて
十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと……
帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。
生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。
そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。
そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。
もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。
「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
交際0日婚の溺愛事情
江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。
だから緩やかに終わりを探して生きていた。
──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。
誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。
そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。
■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。
■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる