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直斗と康平は生徒指導室で座っている。
康平が事情を話しても、担任は一切聞くことすらしてくれなかった。
「……お前…何でここまで小林に嫌われてんの?」
康平が溜息をついて担任を呼び捨てにした。
「……知るかよ……」
直斗が吐き捨てる。
親が来るまで帰さないと言われていた。
──俺……いつ帰れんだろ……
電話をしたところで来ない事は判りきっていた。
この時間じゃ電話すら出ないだろう。
直斗が溜息をつくと、生徒指導室のドアが開き担任と水野、それに紡木が姿を現した。
「……2人共帰っていい。…紡木先生がお前たちの会話を聞いていて、色々教えてくれた……」
担任の小林が不満そうに紡木に目をやると、直斗も紡木に視線を向けた。
喧嘩を止めたのも紡木だ。
「……先生方によくお礼を言えよ……」
直斗と康平は立ち上がり、頭を下げてドアへ向かおうとすると、小林がすれ違いざま
「…次は無いと思えよ」
ボソッと呟やいた。
「では、我々もこれで……」
水野がにこやかに部屋を出ようとすると
「……あまり…授業に関係の無い発言はしない方が良いですよ。『紡木先生』」
小林が紡木に表情の無い声で告げる。
「……出過ぎた真似をしてすみませんでした。今後気を付けます」
紡木が柔らかい口調で頭を下げ、水野に促され生徒指導室を出た。
英研へ戻ると「お疲れ様」と水野が缶コーヒーを紡木に渡した。
「…小林先生も熱心な先生なんですがね…。どうも藤井が気に入らんらしい」
そう言って顔を顰める。
「まだ先生自体若いし…担任となれば…手を焼く生徒ではありますけどね…。まぁ逆に藤井に目を掛けている私が言えた義理ではないですがね……」
そう言って苦笑いする水野から視線をはずし紡木は黙ったまま、コーヒーを口にした。
「死ね!」
生徒指導室を出ると直斗が毒づいた。
「お前……マジ嫌われてんな」
苦笑いする康平と共に下駄箱まで来ると、隅で莉央が待っているのに気付いた。
「直斗!………大丈夫だった?」
直斗の元に走りよる顔は不安が隠せないでいる。
「教生くんが全部聞いてて、証言してくれたから無罪放免」
康平が靴を履き替えながら説明すると、莉央は「ほっ」と胸をなでおろし
「……良かった…」
そう言うと思い切り直斗の頬を抓った。
「痛い!痛い!!」
「もう!二度としないでね!!」
「………分かりました……」
莉央が手を離すと「マジで痛ってー…」と直斗は赤くなった頬を押さえた。
それでも莉央には頭が上がらない。
もし莉央がいなかったら、学校なんて来ていなかった。
昔、祖父から教わったバスケだけが夢中になれる唯一のものだったから。
康平が事情を話しても、担任は一切聞くことすらしてくれなかった。
「……お前…何でここまで小林に嫌われてんの?」
康平が溜息をついて担任を呼び捨てにした。
「……知るかよ……」
直斗が吐き捨てる。
親が来るまで帰さないと言われていた。
──俺……いつ帰れんだろ……
電話をしたところで来ない事は判りきっていた。
この時間じゃ電話すら出ないだろう。
直斗が溜息をつくと、生徒指導室のドアが開き担任と水野、それに紡木が姿を現した。
「……2人共帰っていい。…紡木先生がお前たちの会話を聞いていて、色々教えてくれた……」
担任の小林が不満そうに紡木に目をやると、直斗も紡木に視線を向けた。
喧嘩を止めたのも紡木だ。
「……先生方によくお礼を言えよ……」
直斗と康平は立ち上がり、頭を下げてドアへ向かおうとすると、小林がすれ違いざま
「…次は無いと思えよ」
ボソッと呟やいた。
「では、我々もこれで……」
水野がにこやかに部屋を出ようとすると
「……あまり…授業に関係の無い発言はしない方が良いですよ。『紡木先生』」
小林が紡木に表情の無い声で告げる。
「……出過ぎた真似をしてすみませんでした。今後気を付けます」
紡木が柔らかい口調で頭を下げ、水野に促され生徒指導室を出た。
英研へ戻ると「お疲れ様」と水野が缶コーヒーを紡木に渡した。
「…小林先生も熱心な先生なんですがね…。どうも藤井が気に入らんらしい」
そう言って顔を顰める。
「まだ先生自体若いし…担任となれば…手を焼く生徒ではありますけどね…。まぁ逆に藤井に目を掛けている私が言えた義理ではないですがね……」
そう言って苦笑いする水野から視線をはずし紡木は黙ったまま、コーヒーを口にした。
「死ね!」
生徒指導室を出ると直斗が毒づいた。
「お前……マジ嫌われてんな」
苦笑いする康平と共に下駄箱まで来ると、隅で莉央が待っているのに気付いた。
「直斗!………大丈夫だった?」
直斗の元に走りよる顔は不安が隠せないでいる。
「教生くんが全部聞いてて、証言してくれたから無罪放免」
康平が靴を履き替えながら説明すると、莉央は「ほっ」と胸をなでおろし
「……良かった…」
そう言うと思い切り直斗の頬を抓った。
「痛い!痛い!!」
「もう!二度としないでね!!」
「………分かりました……」
莉央が手を離すと「マジで痛ってー…」と直斗は赤くなった頬を押さえた。
それでも莉央には頭が上がらない。
もし莉央がいなかったら、学校なんて来ていなかった。
昔、祖父から教わったバスケだけが夢中になれる唯一のものだったから。
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