9 / 50
変化
しおりを挟む
しばらく車を走らせると、直斗のスマホが電話の着信を知らせる。画面には知らない番号が表示されていて、少し考えてから
「──はい」
電話に出ると、運転をしながら紡木がチラッと一瞬視線を向けた様な気がした。
「もしもし?直斗くん?」
若い女の声だ。
「誰?」
「えー!覚えてないのぉ!?前に一緒にカラオケ行ったじゃん!その後、家にも来たでしょぉ?」
少し甘えた様な口調に聞き覚えがある…。口ぶりから学校関係じゃないのは判った。恐らくナンパした子だろうと…とまでは思いつく…。
──最近家にまで行った子……?
「判った!あゆみちゃん?」
「違ぁう!ハズレ!ユマだよ、覚えてる!?」
言われてからやっと、しかし何となく思い出した…。
──確か…駅の近くの、コンビニが一階に入ったアパートに住んでた……。
直斗はその『一階にコンビニが入ってる』事が羨ましくて覚えていた。正直顔は……イマイチ思い出せない……。
「覚えてるさぁ、一階がコンビニのアパートに住んでるでしょ?」
「そうそう!やっと思い出したの?」
電話の向こうで笑っている。
と言うか、それしか覚えていない…。
「良かったらこれから遊びに来ない?」
「これから……?」
窓の外を見ると、今車で走っているのがそのアパートからそう遠くないことに気付いた。
「え?いいの!?行く行く!」
家に帰ったところで一人だし、それなら女の子の家に行った方が少しはいいか…と考え、行く約束をすると、電話を切り紡木に車を停めてくれと告げた。
「……家に送らなくていいの?」
車を停め、紡木が心配そうな素振りを見せるが
「あ、もう家すぐそばなんで」
再びでまかせを言って車を降りた。
行きかけた直斗が振り返ると思い出した様に降りたばかりの窓を「コンコン」と叩いた。
紡木が運転席から助手席の窓を開けると
「ご馳走様でした」
軽く頭を下げ直斗は歩き出した。
「なに!?その格好……」
朧気な記憶を辿り部屋にたどり着くと『ユマ』と名乗った女が出迎えるなり目を丸くした。
「え?制服?だって俺、学校帰りだもん」
笑顔で言いながら部屋に入るなりユマを抱きしめる。
「あれ?…俺高校生だって言わなかったっけ?」
顔を見てやっと少し前に康平とナンパしたことを思い出した。確か…短大生とか言っていた。
「言ってたけどぉ…。冗談だと思うじゃん」
ユマも直斗の首に腕を回し
「一緒に飲みたかったのにぃ」
甘えたように直斗を見つめる。
「えー?『ヤリたかった』の間違えでしょ?」
「何それ」
直斗の言葉にユマがクスクス笑った。
「それも最初に言ったじゃん。俺はヤリたいだけだって。それでまた連絡してくるってことは……ヤリたかったってことでしょ?」
「……露骨…」
そう言いながらユマが直斗のキスを受け入れる。
「あ……ねえ、ユマちゃんちってさ乾燥機ある?」
突然キスをやめて直斗が思い出したように部屋を見回す。
「は?乾燥機ぃ?」
「そ!俺、着替えないから洗濯したいじゃん」
ユマが思わず笑いだした。
「ホント、直斗くん面白い」
そう言いながら直斗にキスをして舌を絡める。
「乾燥機ならあるから心配しないで……」
ユマがそう囁いて再び直斗にキスをした。
薄暗い部屋でユマの熱い息遣いが響いている中、直斗はベットに横になり、自分の上で腰を動かすユマを見ていた。
──おっぱいめちゃくちゃ揺れてんな……
妙に冷静な頭で考える。
洗面所の隅に置かれた洗濯機と一体型の乾燥機が回っている音が微かに聞こえ、それもまた冷静にさせる。
莉央とのセックスですら必ず頭の隅がどこか冷めている。
何故かふと、紡木の顔を思い出した。学校でのスマした…キレイな顔と……さっきまで一緒にいた……無邪気そうに笑う顔……。
───思ったより嫌なヤツじゃなさそうだけど……
直斗は腕を伸ばしユマの身体を引き寄せキスをした。
「今度は俺の番……」
耳元で囁きユマを腕の中に組み敷くと、ゆっくりとユマの中へ入っていく。
直斗が激しくユマを突くと、ユマの声が掠れて一段と大きくなる。
──けど、車での慌てぶりには…笑えた…
思い出して思わず口の端が上がる。
直斗がユマの体勢を変え奥まで入り込める様にすると、ユマの声がまた激しくなった。
「……ダメ……イッちゃう……」
ユマの掠れる声が耳に届き、直斗はユマの奥を激しく突いた。
ユマの中がピクピクと痙攣したように締まり、顔が歪むのを見届けると直斗にも微かな高揚が訪れる。
───けど…変なヤツだ…………
果てる瞬間…そんなことを考えていた。
紡木は自宅へ戻ると水野から貰った資料に目を通し、明日の準備を始める。
満腹の所為か眠くなりキッチンへ行きコーヒーを入れる為にお湯を沸かした。
待っている間、久々の人との食事を思い出して無意識に笑みが浮かぶ。
──藤井くん…頑張って食べてたな……
自分もあんなに食べたのは久しぶりだ。
渡り廊下で初めて会った時から、何故か直斗が気になるのは、自分の高校時代を思い出すからかもしれない……。別に…恋愛対象として見ている訳では無かった。
紡木は自分が同性にしか興味が持てないのは中学時代から解っていた。
過去一人だけ恋人と呼べる相手もいたが、その人と別れてからは、無理に相手を探そうともしないし、ずっと一人でいる。『その手の場所』に行けば出会いもあるだろうけど、行きたいとも思わない。
一人でいる方が気楽だったし…先のことを考えると……『恋人』を作りたいとも思わない。
───色んな意味で淡白なんだろうな……
そう考えてふと笑うと、コーヒーを持って机に戻り再び明日の準備を始めた。
「──はい」
電話に出ると、運転をしながら紡木がチラッと一瞬視線を向けた様な気がした。
「もしもし?直斗くん?」
若い女の声だ。
「誰?」
「えー!覚えてないのぉ!?前に一緒にカラオケ行ったじゃん!その後、家にも来たでしょぉ?」
少し甘えた様な口調に聞き覚えがある…。口ぶりから学校関係じゃないのは判った。恐らくナンパした子だろうと…とまでは思いつく…。
──最近家にまで行った子……?
「判った!あゆみちゃん?」
「違ぁう!ハズレ!ユマだよ、覚えてる!?」
言われてからやっと、しかし何となく思い出した…。
──確か…駅の近くの、コンビニが一階に入ったアパートに住んでた……。
直斗はその『一階にコンビニが入ってる』事が羨ましくて覚えていた。正直顔は……イマイチ思い出せない……。
「覚えてるさぁ、一階がコンビニのアパートに住んでるでしょ?」
「そうそう!やっと思い出したの?」
電話の向こうで笑っている。
と言うか、それしか覚えていない…。
「良かったらこれから遊びに来ない?」
「これから……?」
窓の外を見ると、今車で走っているのがそのアパートからそう遠くないことに気付いた。
「え?いいの!?行く行く!」
家に帰ったところで一人だし、それなら女の子の家に行った方が少しはいいか…と考え、行く約束をすると、電話を切り紡木に車を停めてくれと告げた。
「……家に送らなくていいの?」
車を停め、紡木が心配そうな素振りを見せるが
「あ、もう家すぐそばなんで」
再びでまかせを言って車を降りた。
行きかけた直斗が振り返ると思い出した様に降りたばかりの窓を「コンコン」と叩いた。
紡木が運転席から助手席の窓を開けると
「ご馳走様でした」
軽く頭を下げ直斗は歩き出した。
「なに!?その格好……」
朧気な記憶を辿り部屋にたどり着くと『ユマ』と名乗った女が出迎えるなり目を丸くした。
「え?制服?だって俺、学校帰りだもん」
笑顔で言いながら部屋に入るなりユマを抱きしめる。
「あれ?…俺高校生だって言わなかったっけ?」
顔を見てやっと少し前に康平とナンパしたことを思い出した。確か…短大生とか言っていた。
「言ってたけどぉ…。冗談だと思うじゃん」
ユマも直斗の首に腕を回し
「一緒に飲みたかったのにぃ」
甘えたように直斗を見つめる。
「えー?『ヤリたかった』の間違えでしょ?」
「何それ」
直斗の言葉にユマがクスクス笑った。
「それも最初に言ったじゃん。俺はヤリたいだけだって。それでまた連絡してくるってことは……ヤリたかったってことでしょ?」
「……露骨…」
そう言いながらユマが直斗のキスを受け入れる。
「あ……ねえ、ユマちゃんちってさ乾燥機ある?」
突然キスをやめて直斗が思い出したように部屋を見回す。
「は?乾燥機ぃ?」
「そ!俺、着替えないから洗濯したいじゃん」
ユマが思わず笑いだした。
「ホント、直斗くん面白い」
そう言いながら直斗にキスをして舌を絡める。
「乾燥機ならあるから心配しないで……」
ユマがそう囁いて再び直斗にキスをした。
薄暗い部屋でユマの熱い息遣いが響いている中、直斗はベットに横になり、自分の上で腰を動かすユマを見ていた。
──おっぱいめちゃくちゃ揺れてんな……
妙に冷静な頭で考える。
洗面所の隅に置かれた洗濯機と一体型の乾燥機が回っている音が微かに聞こえ、それもまた冷静にさせる。
莉央とのセックスですら必ず頭の隅がどこか冷めている。
何故かふと、紡木の顔を思い出した。学校でのスマした…キレイな顔と……さっきまで一緒にいた……無邪気そうに笑う顔……。
───思ったより嫌なヤツじゃなさそうだけど……
直斗は腕を伸ばしユマの身体を引き寄せキスをした。
「今度は俺の番……」
耳元で囁きユマを腕の中に組み敷くと、ゆっくりとユマの中へ入っていく。
直斗が激しくユマを突くと、ユマの声が掠れて一段と大きくなる。
──けど、車での慌てぶりには…笑えた…
思い出して思わず口の端が上がる。
直斗がユマの体勢を変え奥まで入り込める様にすると、ユマの声がまた激しくなった。
「……ダメ……イッちゃう……」
ユマの掠れる声が耳に届き、直斗はユマの奥を激しく突いた。
ユマの中がピクピクと痙攣したように締まり、顔が歪むのを見届けると直斗にも微かな高揚が訪れる。
───けど…変なヤツだ…………
果てる瞬間…そんなことを考えていた。
紡木は自宅へ戻ると水野から貰った資料に目を通し、明日の準備を始める。
満腹の所為か眠くなりキッチンへ行きコーヒーを入れる為にお湯を沸かした。
待っている間、久々の人との食事を思い出して無意識に笑みが浮かぶ。
──藤井くん…頑張って食べてたな……
自分もあんなに食べたのは久しぶりだ。
渡り廊下で初めて会った時から、何故か直斗が気になるのは、自分の高校時代を思い出すからかもしれない……。別に…恋愛対象として見ている訳では無かった。
紡木は自分が同性にしか興味が持てないのは中学時代から解っていた。
過去一人だけ恋人と呼べる相手もいたが、その人と別れてからは、無理に相手を探そうともしないし、ずっと一人でいる。『その手の場所』に行けば出会いもあるだろうけど、行きたいとも思わない。
一人でいる方が気楽だったし…先のことを考えると……『恋人』を作りたいとも思わない。
───色んな意味で淡白なんだろうな……
そう考えてふと笑うと、コーヒーを持って机に戻り再び明日の準備を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
必ず会いに行くから、どうか待っていて
十時(如月皐)
BL
たとえ、君が覚えていなくても。たとえ、僕がすべてを忘れてしまっても。それでもまた、君に会いに行こう。きっと、きっと……
帯刀を許された武士である弥生は宴の席で美しい面差しを持ちながら人形のようである〝ゆきや〟に出会い、彼を自分の屋敷へ引き取った。
生きる事、愛されること、あらゆる感情を教え込んだ時、雪也は弥生の屋敷から出て小さな庵に住まうことになる。
そこに集まったのは、雪也と同じ人の愛情に餓えた者たちだった。
そして彼らを見守る弥生たちにも、時代の変化は襲い掛かり……。
もう一度会いに行こう。時を超え、時代を超えて。
「男子大学生たちの愉快なルームシェア」に出てくる彼らの過去のお話です。詳しくはタグをご覧くださいませ!
【完】君に届かない声
未希かずは(Miki)
BL
内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。
ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。
すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。
執着囲い込み☓健気。ハピエンです。
交際0日婚の溺愛事情
江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。
だから緩やかに終わりを探して生きていた。
──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。
誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。
そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。
■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。
■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。
落としたのは化粧じゃなく、みんなの心でした
444
BL
『醜い顔…汚らしい』
幼い頃、実母が病気によって早くに亡くなった数年後に新しい義母からそう言われたシリルは、その言葉が耳に残って16歳となった今も引きずっていた。
だが、義母のその言葉は真っ赤な嘘でシリルはとても美しかった。ただ前妻の息子であるシリルに嫉妬した結果こぼした八つ当たりの言葉であったのをシリルは知らずに、義母のいう醜い顔を隠すために化粧をする。
その結果、彼は化粧によって本当に醜い顔になってしまった。そんな彼が虐げられながらも徐々に周囲を絆す話
暴力表現があるところには※をつけております
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる