最後の君へ

海花

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変化

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しばらく車を走らせると、直斗のスマホが電話の着信を知らせる。画面には知らない番号が表示されていて、少し考えてから

「──はい」

電話に出ると、運転をしながら紡木がチラッと一瞬視線を向けた様な気がした。

「もしもし?直斗くん?」

若い女の声だ。

「誰?」

「えー!覚えてないのぉ!?前に一緒にカラオケ行ったじゃん!その後、家にも来たでしょぉ?」

少し甘えた様な口調に聞き覚えがある…。口ぶりから学校関係じゃないのは判った。恐らくナンパした子だろうと…とまでは思いつく…。

──最近家にまで行った子……?

「判った!あゆみちゃん?」

「違ぁう!ハズレ!ユマだよ、覚えてる!?」

言われてからやっと、しかし何となく思い出した…。

──確か…駅の近くの、コンビニが一階に入ったアパートに住んでた……。

直斗はその『一階にコンビニが入ってる』事が羨ましくて覚えていた。正直顔は……イマイチ思い出せない……。

「覚えてるさぁ、一階がコンビニのアパートに住んでるでしょ?」

「そうそう!やっと思い出したの?」

電話の向こうで笑っている。

と言うか、それしか覚えていない…。

「良かったらこれから遊びに来ない?」

「これから……?」

窓の外を見ると、今車で走っているのがそのアパートからそう遠くないことに気付いた。

「え?いいの!?行く行く!」

家に帰ったところで一人だし、それなら女の子の家に行った方が少しはいいか…と考え、行く約束をすると、電話を切り紡木に車を停めてくれと告げた。

「……家に送らなくていいの?」

車を停め、紡木が心配そうな素振りを見せるが

「あ、もう家すぐそばなんで」

再びでまかせを言って車を降りた。
行きかけた直斗が振り返ると思い出した様に降りたばかりの窓を「コンコン」と叩いた。
紡木が運転席から助手席の窓を開けると

「ご馳走様でした」

軽く頭を下げ直斗は歩き出した。



「なに!?その格好……」

朧気な記憶を辿り部屋にたどり着くと『ユマ』と名乗った女が出迎えるなり目を丸くした。

「え?制服?だって俺、学校帰りだもん」

笑顔で言いながら部屋に入るなりユマを抱きしめる。

「あれ?…俺高校生だって言わなかったっけ?」

 顔を見てやっと少し前に康平とナンパしたことを思い出した。確か…短大生とか言っていた。

「言ってたけどぉ…。冗談だと思うじゃん」

ユマも直斗の首に腕を回し

「一緒に飲みたかったのにぃ」

甘えたように直斗を見つめる。

「えー?『ヤリたかった』の間違えでしょ?」

「何それ」

直斗の言葉にユマがクスクス笑った。

「それも最初に言ったじゃん。俺はヤリたいだけだって。それでまた連絡してくるってことは……ヤリたかったってことでしょ?」

「……露骨…」

そう言いながらユマが直斗のキスを受け入れる。

「あ……ねえ、ユマちゃんちってさ乾燥機ある?」

突然キスをやめて直斗が思い出したように部屋を見回す。

「は?乾燥機ぃ?」

「そ!俺、着替えないから洗濯したいじゃん」

ユマが思わず笑いだした。

「ホント、直斗くん面白い」

そう言いながら直斗にキスをして舌を絡める。

「乾燥機ならあるから心配しないで……」

ユマがそう囁いて再び直斗にキスをした。




薄暗い部屋でユマの熱い息遣いが響いている中、直斗はベットに横になり、自分の上で腰を動かすユマを見ていた。

──おっぱいめちゃくちゃ揺れてんな……

妙に冷静な頭で考える。
洗面所の隅に置かれた洗濯機と一体型の乾燥機が回っている音が微かに聞こえ、それもまた冷静にさせる。
莉央とのセックスですら必ず頭の隅がどこか冷めている。
何故かふと、紡木の顔を思い出した。学校でのスマした…キレイな顔と……さっきまで一緒にいた……無邪気そうに笑う顔……。

───思ったより嫌なヤツじゃなさそうだけど……

直斗は腕を伸ばしユマの身体を引き寄せキスをした。

「今度は俺の番……」

耳元で囁きユマを腕の中に組み敷くと、ゆっくりとユマの中へ入っていく。
直斗が激しくユマを突くと、ユマの声が掠れて一段と大きくなる。

──けど、車での慌てぶりには…笑えた…

思い出して思わず口の端が上がる。
直斗がユマの体勢を変え奥まで入り込める様にすると、ユマの声がまた激しくなった。

「……ダメ……イッちゃう……」

ユマの掠れる声が耳に届き、直斗はユマの奥を激しく突いた。
ユマの中がピクピクと痙攣したように締まり、顔が歪むのを見届けると直斗にも微かな高揚が訪れる。

───けど…変なヤツだ…………

果てる瞬間…そんなことを考えていた。



紡木は自宅へ戻ると水野から貰った資料に目を通し、明日の準備を始める。
満腹の所為か眠くなりキッチンへ行きコーヒーを入れる為にお湯を沸かした。
待っている間、久々の人との食事を思い出して無意識に笑みが浮かぶ。

──藤井くん…頑張って食べてたな……

自分もあんなに食べたのは久しぶりだ。
渡り廊下で初めて会った時から、何故か直斗が気になるのは、自分の高校時代を思い出すからかもしれない……。別に…恋愛対象として見ている訳では無かった。
紡木は自分が同性にしか興味が持てないのは中学時代から解っていた。
過去一人だけ恋人と呼べる相手もいたが、その人と別れてからは、無理に相手を探そうともしないし、ずっと一人でいる。『その手の場所』に行けば出会いもあるだろうけど、行きたいとも思わない。
一人でいる方が気楽だったし…先のことを考えると……『恋人』を作りたいとも思わない。

───色んな意味で淡白なんだろうな……

そう考えてふと笑うと、コーヒーを持って机に戻り再び明日の準備を始めた。
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