最後の君へ

海花

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2人でいるために

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「こんな時間から呼び出すなんてびっくりしちゃった」

莉央が嬉しそうに直斗に微笑んだ。
『話したいことがある』と莉央の家の近くの公園に呼び出していた。

「この公園て、こんなに狭かったっけ?」

直斗が徐ろに口を開いた。

「えー?昔から変わらないよ。久しぶりに来たからそう思うんじゃない?……直斗とここ来るの多分…付き合い始
めの頃以来だもん」

莉央が笑って直斗の顔を覗き込んだ。

「何か……あったの?」

一切莉央を見ようとしない直斗に急に不安になった。

「他に……好きなヤツができた」

直斗は莉央を見もせず、公園の話の続きでも話すかの様に言った。

「…………どういう事?…………私は……2番目になるってこと……?」

「いや……。別れてほしい」

「───え……?」

莉央は直斗の言葉の意味が理解できなかった。
今まで自分以外の女の子達と散々遊んでいたのも知っている。
それでも、莉央以外を好きだと言ったことも、そんな素振りすら見せた事も無かった。
それにその事で直斗を責めたこともない。

───何で……いきなり…………

「───どうして?……今まで通りで良いじゃない……。私は2番目だって直斗のそばにいられれば……」

「本気なんだ……。莉央には散々迷惑掛けて悪いと思ってる。でも……今はそいつ以外興味ない」

───なにそれ…………

泣いて別れたくないと騒いだところで、直斗が思い直すとは思えない。
2年以上そばにいて直斗の性格はよく解ってる。

「それで……私が『はい分かりました』って言うとでも思ってるわけ?」

直斗がやっと莉央を見る。

「いや…………。思わないね」

「そういう事。私は別れないから」

───こんな事言ったって……無駄なことくらい解ってる……。

「………そう言うと思った。それか思い切り殴られるか……」

「さすが!両方正解」

そう言うと莉央は思い切り直斗の頬をひっぱたいた。
公園中にその音が聞こえたのではないかと思う程だ。

「………ってぇ……」

「これで済むとか…思ってないよね?」

莉央が睨みつける。こんな莉央の顔を見るのは初めてだった。

「思ってねぇよ……」

それだけ……自分が傷付けたのだと思い知る。

「けど、無理だから……。あいつ以外……誰もいらないんだよ」

直斗の言葉に莉央は何も言えなくなる。
まさか直斗がこんな事言い出すとは思ってもいなかった。
離れた場所にあるアスレチックから子供たちの遊ぶ声が聞こえてくる。

「……じゃあ…」

莉央が表情が無いまま直斗を見つめる。

「最後にキスして。そうしたら……別れてあげる」

直斗も莉央を見つめた。
キスすることなど造作もないことだった。
直斗にとってキスは愛情表現のひとつでは無かったし、相手が女であれば躊躇ったことすらなかった。
ただそれも零と知り合う前までの話だった。

「ごめん。それも出来ない。あいつを裏切る様なことはしたくないんだ」

「信じられない……。私は傷付いてないと思ったの!?」

つい語尾が強くなる。

「……いや……。……本当にお前には悪かったと思ってる」

再び公園に直斗の頬を叩く音が響き渡る。

「…………最低…………」

莉央の頬を涙が流れては落ちていく。

「……ごめん…………」

莉央のこんな顔も……泣くのも……初めて見た。

「………ごめんな…………」

直斗の言葉に莉央はしがみついて泣いた。
しかし決して背中に回されない手が、もう自分にはどうにも出来ないことを告げていた。













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