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執拗に自分を見つめる眼差しから逃げる様に俯くと、幸成はゴクリと生唾を飲み込んだ。
なぜこんなに見られているか理解らない。
そして身体の奥から感じる得体の知れない恐怖に似た感情にも説明がつかずに戸惑っていた。
しかしそれでも視線を逸らすことなく『白姫』と呼ばれた者は幸成を見つめ続けている。
そして何度目かの「ほぅ……」と、熱が含まれた様な溜息を漏らした。
「……妖達が“可愛い、可愛い”って噂するものだから……見に来ちゃった……」
そう言うとまた「ほぅ……」と溜息を漏らした。
「……本当に……美味しそう……」
届くか届かないかの声でポツリと呟いた白姫に、幸成は俯いたまま目を見開き、隣に座る琥珀の着物の袖をギュッと掴んだ。
「おいっ!!てめぇのは洒落になんねぇから黙ってろッ!!」
すると紫黒の耳にも届いたらしく、白姫に向かって怒鳴りつけた。
幸成達が入って来る前から既に虫の居所が悪くなっている琥珀を、これ以上煽られては堪らない。
「……いいじゃん……別に言うくらい………本当に取って食おうって訳じゃ無いんだからさ」
さすがに面白くなかったのか白姫は口を尖らせると、不貞腐れた子供の様に返した。
「うるせぇ!……ったく……こんなとこまでのこのこ顔出しやがって……だいたいてめぇは、主の言いつけで天上にいんじゃねぇのかよ」
「えー……だって暇だったんだしぃ……そしたら妖達が琥珀が“新しい人間”を囲ってるって言うもんだからさぁ……」
そう言い訳がましく続けると、にっこりと美しい笑顔を浮かべ、身を乗り出し正面に座っている幸成にグッと近付いた。
すると、紫黒と黒曜がそれと同時に膝を立て身構えた。
座敷の空気がピンッと細い糸を張ったように緊張したのが幸成にも解り、思わず顔を上げると、先程までの美しい人形の様にも見えた白姫の顔がニヤリと歪んでいる。
今までとは別人の様なそれに幸成の身体がビクッと震えた。
その顔はまるで、逃げ場を無くした獲物を嬲ろうとしている蛇の様に見える。
「…………やだなぁ……そんなに警戒しないでよ。こんなところで琥珀の“大切な人間”に手を出す訳ないじゃない」
そう口にして今度は悪戯っぽく笑った。
何を考えているのか、何がしたいのか……『理解出来ない』不安が幸成の中に積もっていく。
「……ただ幸成を見に来たってだけじゃねぇんだろ……?」
ずっと黙っていた琥珀が口を開いた。
その声からは感情が読み取れない。
「……『神殺し』のこと?……まぁ……それも少しは興味あるけどさ……」
幸成に向けられていた青黒い大きな瞳だけが動き、琥珀を見つめた。
それは紫黒の様な、言い合いながらも信頼や情が見て取れる眼差しでは無く、僅かな憎しみすら含まれている様に見え、幸成は掴んでいた琥珀の着物の裾をキツく握りしめた。
「琥珀が今度はどんな風に人間等を殺すのかなって………同じ痛みを味わいながら……以前の様に喰い殺すのか………」
自分でも気付かないうちに、色が変わるほど強く握りしめた手に琥珀の手が重り、幸成は隣にいる琥珀の横顔を見上げた。
しかし白姫を見据える表情からは、やはり怒りも何も感じ取れない。
「───けど、本当にその子を見に来たのが目的だよ」
場の空気が、ただの呼吸でさえ震えるのではないかと思わせる程張り詰めた中
「……気になるじゃない?自分の欲望の為だけにあんなに山程の人間を殺したお前がさ……今度はどんな風に……“人間を愛でるフリ”をするのかなぁ……ってさ」
そう言うと子供の様に愛らしく、白姫は無邪気に笑った。
なぜこんなに見られているか理解らない。
そして身体の奥から感じる得体の知れない恐怖に似た感情にも説明がつかずに戸惑っていた。
しかしそれでも視線を逸らすことなく『白姫』と呼ばれた者は幸成を見つめ続けている。
そして何度目かの「ほぅ……」と、熱が含まれた様な溜息を漏らした。
「……妖達が“可愛い、可愛い”って噂するものだから……見に来ちゃった……」
そう言うとまた「ほぅ……」と溜息を漏らした。
「……本当に……美味しそう……」
届くか届かないかの声でポツリと呟いた白姫に、幸成は俯いたまま目を見開き、隣に座る琥珀の着物の袖をギュッと掴んだ。
「おいっ!!てめぇのは洒落になんねぇから黙ってろッ!!」
すると紫黒の耳にも届いたらしく、白姫に向かって怒鳴りつけた。
幸成達が入って来る前から既に虫の居所が悪くなっている琥珀を、これ以上煽られては堪らない。
「……いいじゃん……別に言うくらい………本当に取って食おうって訳じゃ無いんだからさ」
さすがに面白くなかったのか白姫は口を尖らせると、不貞腐れた子供の様に返した。
「うるせぇ!……ったく……こんなとこまでのこのこ顔出しやがって……だいたいてめぇは、主の言いつけで天上にいんじゃねぇのかよ」
「えー……だって暇だったんだしぃ……そしたら妖達が琥珀が“新しい人間”を囲ってるって言うもんだからさぁ……」
そう言い訳がましく続けると、にっこりと美しい笑顔を浮かべ、身を乗り出し正面に座っている幸成にグッと近付いた。
すると、紫黒と黒曜がそれと同時に膝を立て身構えた。
座敷の空気がピンッと細い糸を張ったように緊張したのが幸成にも解り、思わず顔を上げると、先程までの美しい人形の様にも見えた白姫の顔がニヤリと歪んでいる。
今までとは別人の様なそれに幸成の身体がビクッと震えた。
その顔はまるで、逃げ場を無くした獲物を嬲ろうとしている蛇の様に見える。
「…………やだなぁ……そんなに警戒しないでよ。こんなところで琥珀の“大切な人間”に手を出す訳ないじゃない」
そう口にして今度は悪戯っぽく笑った。
何を考えているのか、何がしたいのか……『理解出来ない』不安が幸成の中に積もっていく。
「……ただ幸成を見に来たってだけじゃねぇんだろ……?」
ずっと黙っていた琥珀が口を開いた。
その声からは感情が読み取れない。
「……『神殺し』のこと?……まぁ……それも少しは興味あるけどさ……」
幸成に向けられていた青黒い大きな瞳だけが動き、琥珀を見つめた。
それは紫黒の様な、言い合いながらも信頼や情が見て取れる眼差しでは無く、僅かな憎しみすら含まれている様に見え、幸成は掴んでいた琥珀の着物の裾をキツく握りしめた。
「琥珀が今度はどんな風に人間等を殺すのかなって………同じ痛みを味わいながら……以前の様に喰い殺すのか………」
自分でも気付かないうちに、色が変わるほど強く握りしめた手に琥珀の手が重り、幸成は隣にいる琥珀の横顔を見上げた。
しかし白姫を見据える表情からは、やはり怒りも何も感じ取れない。
「───けど、本当にその子を見に来たのが目的だよ」
場の空気が、ただの呼吸でさえ震えるのではないかと思わせる程張り詰めた中
「……気になるじゃない?自分の欲望の為だけにあんなに山程の人間を殺したお前がさ……今度はどんな風に……“人間を愛でるフリ”をするのかなぁ……ってさ」
そう言うと子供の様に愛らしく、白姫は無邪気に笑った。
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