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───ドアを開けた時俺は……恐らく……自分は想像すら出来ない程、バカっぽい顔をしていたと思う。
講義も全て終わりアパートへの帰り道、冬音夜は夕飯の材料を買うために近所のスーパーへと向かった。
その買い物中、何度か気付かない内に鼻歌を歌っていて、その度に主婦と思われる人達に見られ慌ててやめる…ということを繰り返しその度に顔を赤くした。
ここ数日『あの人』からの呼び出しも無い。
特別良い日という訳ではなかったが『一日が上手く進む日』だった。
朝、カバンにしまったパンは昼までに潰れること無く無事でいてくれたし、講義も遅れることも延びることも無く終わった。そして帰り際、渡辺とも長い時間では無いが、話が出来た。
アパートに着くと遠慮無しに鼻歌を歌いながら夕飯の準備をし始めた。
明日は休みだし、久しぶりにのんびり湯船に浸かりゆっくり過ごすつもりだった。
──ご飯……多めに作っとこ……。
ちょうど冷凍していたストックが終わっていた事もタイミング良く思い出し、これがまた冬音夜の機嫌を良くした。
家族と暮らしていた時から家事をしていたから、自炊も苦にならない。
簡単に野菜炒めと味噌汁を作り終えると、ドアチャイムが “ピンポーン” と音を立てた。
そう言えば…叔母が米を送ったと言っていたのを思い出し、急いでドアを開けた。
毎回「いらない」と言うのに送ってくるのだ。
「はい」
しかし開けたドアの先に待っていたのは
「よぉ」
宅配便業者ではなく、……涼太だった。
「電話すんの面倒だったから、そのまま来たわ」
呆然と立ち尽くす冬音夜の身体を退かすと、当然の様に入って行く。
「なに?飯作ってたのか?」
入ってすぐの二畳程しか無いキッチンに立ち寄り鍋の蓋を開けている。
それを何も言えないまま見つめる冬音夜に
「ドア閉めたらどうだ?…それとも “あの声” を近所中に聞かせるか?」
そう言って、また当然の様に狭い寝室兼居間へ笑いながら向かう涼太の言葉に、冬音夜は顔を真っ赤にして慌ててドアを閉めた。
─── どうして……家になんか連れてきたんだろう……
悔やんでも悔やみ切れない程……後悔していた。
「なに突っ立ってんだよ……」
廊下から結界を張られた様に入れないでいる冬音夜に、涼太はベッドに腰掛け呆れた様に声を掛ける。
「……何しに来たんですか…………」
もちろん、涼太が自分のところに来る理由は解っている。
しかし、どうしても言わずにはいられなかった。
「そんなもん決まってんだろ。セックスする以外、お前と会う理由があるか?」
「──それにしたって……なにも…うちに来なくても……」
大きなため息を吐き涼太の目の前に立った。
「ここは、ホテルじゃないんですから…」
「堅いこと言うなよ」
そう言いながら冬音夜の腕を引きベッドへ押し倒す。
冬音夜もされるがままになっている。どうせするならするで、さっさと済ませて早く帰ってもらいたい。
今更アパートでは嫌だと言ったところで涼太が聞き入れるとも思えない。
「……お前…本当可愛くないな」
ニヤつきながら自分を見下ろす涼太に
「アパートまで来るからですよ……」
憎まれ口をかえす。
「その前からな」
そう言って頬に触れる涼太の手に『トクンッ』と心臓が音を立てた。
───!?………………なに…………
意識してしまったせいか、どんどん鼓動が早くなって、涼太が触れた頬が熱い。
涼太の唇が近付くのが分かり、薄く開いた唇が待ち侘びていたと言わんばかりに涼太を受け入れ舌を絡ませた。
その理由も解らず、疼く身体のままに涼太の背中に腕を回した。
講義も全て終わりアパートへの帰り道、冬音夜は夕飯の材料を買うために近所のスーパーへと向かった。
その買い物中、何度か気付かない内に鼻歌を歌っていて、その度に主婦と思われる人達に見られ慌ててやめる…ということを繰り返しその度に顔を赤くした。
ここ数日『あの人』からの呼び出しも無い。
特別良い日という訳ではなかったが『一日が上手く進む日』だった。
朝、カバンにしまったパンは昼までに潰れること無く無事でいてくれたし、講義も遅れることも延びることも無く終わった。そして帰り際、渡辺とも長い時間では無いが、話が出来た。
アパートに着くと遠慮無しに鼻歌を歌いながら夕飯の準備をし始めた。
明日は休みだし、久しぶりにのんびり湯船に浸かりゆっくり過ごすつもりだった。
──ご飯……多めに作っとこ……。
ちょうど冷凍していたストックが終わっていた事もタイミング良く思い出し、これがまた冬音夜の機嫌を良くした。
家族と暮らしていた時から家事をしていたから、自炊も苦にならない。
簡単に野菜炒めと味噌汁を作り終えると、ドアチャイムが “ピンポーン” と音を立てた。
そう言えば…叔母が米を送ったと言っていたのを思い出し、急いでドアを開けた。
毎回「いらない」と言うのに送ってくるのだ。
「はい」
しかし開けたドアの先に待っていたのは
「よぉ」
宅配便業者ではなく、……涼太だった。
「電話すんの面倒だったから、そのまま来たわ」
呆然と立ち尽くす冬音夜の身体を退かすと、当然の様に入って行く。
「なに?飯作ってたのか?」
入ってすぐの二畳程しか無いキッチンに立ち寄り鍋の蓋を開けている。
それを何も言えないまま見つめる冬音夜に
「ドア閉めたらどうだ?…それとも “あの声” を近所中に聞かせるか?」
そう言って、また当然の様に狭い寝室兼居間へ笑いながら向かう涼太の言葉に、冬音夜は顔を真っ赤にして慌ててドアを閉めた。
─── どうして……家になんか連れてきたんだろう……
悔やんでも悔やみ切れない程……後悔していた。
「なに突っ立ってんだよ……」
廊下から結界を張られた様に入れないでいる冬音夜に、涼太はベッドに腰掛け呆れた様に声を掛ける。
「……何しに来たんですか…………」
もちろん、涼太が自分のところに来る理由は解っている。
しかし、どうしても言わずにはいられなかった。
「そんなもん決まってんだろ。セックスする以外、お前と会う理由があるか?」
「──それにしたって……なにも…うちに来なくても……」
大きなため息を吐き涼太の目の前に立った。
「ここは、ホテルじゃないんですから…」
「堅いこと言うなよ」
そう言いながら冬音夜の腕を引きベッドへ押し倒す。
冬音夜もされるがままになっている。どうせするならするで、さっさと済ませて早く帰ってもらいたい。
今更アパートでは嫌だと言ったところで涼太が聞き入れるとも思えない。
「……お前…本当可愛くないな」
ニヤつきながら自分を見下ろす涼太に
「アパートまで来るからですよ……」
憎まれ口をかえす。
「その前からな」
そう言って頬に触れる涼太の手に『トクンッ』と心臓が音を立てた。
───!?………………なに…………
意識してしまったせいか、どんどん鼓動が早くなって、涼太が触れた頬が熱い。
涼太の唇が近付くのが分かり、薄く開いた唇が待ち侘びていたと言わんばかりに涼太を受け入れ舌を絡ませた。
その理由も解らず、疼く身体のままに涼太の背中に腕を回した。
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