常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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第肆章 決戦

再びの雪道

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 ――――

 吹きすさぶ吹雪に逆らいながらも、ルーフェはハイテルペスト山頂の遺跡へと向かう。
 行先を示す石畳の道標は、幸いすぐに見つかった。
 雪が積もる切り立った山道を進みながら、剣の柄をグッと握る。
 
 ――もう覚悟は出来た、元々そのつもりで旅をして来た。例え相手が誰だろうと……。その筈だった、なのに――

 ルーフェは、そう自分に言い聞かせた。

 ――そう言い聞かせているはずなのに、ずっと心の奥底に感じる、このモヤモヤした感情は何だ? 一体俺は、どうなったんだ――

 気が僅かに逸れていた、そんな時。足元の地面が突然崩れた。
 落下する寸前、とっさに彼は地面の割れ目を掴んだ。
 下を見ると深い闇が広がっており、ルーフェは自分が、クレバスの一つに落ちかけたと知った。
 ルーフェは何とか、クレバスから這い上がる。

「ハァ……ハァ……」

 疲労感が溜まっていたのか、ようやく這い上がると座り込み、激しく息を切らす。
 以前も登った筈なのに、今はやたら体が重く、疲労も強い。ルーフェはそれに困惑し、悩む。
 しかしルーフェはすぐに、そんな悩みを、無理に振り払った。
 そして再び、山頂を目指して先へと向かう。

 ――俺は、何としてでもエディアを生き返らせる。例え何を犠牲にしてでも……そう誓った。この誓いは、今度こそ裏切らないと決めたはずだ…………俺は、そう決めたんだ!――

 だがルーフェの思いとは裏腹に、脳裏に浮かぶのは、悲しげに俯くラキサの姿だった。
 


 ――――

 かつて登った道を進み、やがて山頂の雪原へと到達した。
 この先の遺跡に、冥界へと続く神門がある。
 するといきなり、荒れ狂う風とともに、辺りが急に暗くなる。
 頭上には、巨大な両翼を広げた物体が、空を覆っていた。
 物体は翼で大気を裂き、暴風を巻き起こしながら、先へと飛び去った。
 行く先は、あの遺跡に向かってだ。
 そう、物体の正体はあの竜…………常世の守り主であるラキサだ!
 ルーフェは、急いでその後を追う。


 雪原はすぐに抜け、あの遺跡へと辿りついた。
 その様子は、かつて訪れた時とほとんど変わらない。
 ゆっくりと歩みを進め、ルーフェは進む。
 そして、巨大な円形の門――神門の前に、人影が一つ見えた。
 それは神門に比べれば、小さな、とても小さな背中だ。
 だがルーフェは、その姿に見覚えがあった。
 人影は、ゆっくりと彼に振り向く。

「ここまで来たのか、人間よ」

 ――その正体はラキサだった。だが、その様子は今までの彼女とは異なっている。
 無感情な冷淡な口調と、その表情。まるでルーフェの事など、完全に忘れ去っているかのようだ。
 服装も薄く、普通なら寒いはずだ。……なのに、彼女は表情一つ変えず、その感覚すら失ったらしい。
 ラキサの水色だった髪と瞳は紫色に変わり、額の中央にはあの竜と同じく、輝かんばかりの紫水晶が光る。


「……ラキサ?」

 思わず、ルーフェはそう彼女に聞く。
 ――だが、それは今となっては、無駄だった。
 まるでラキサの姿を借りた、『何か』は、さながら機械的な……相変わらずの冷淡さだ

「私は冥王の契約により生を受けた、冥界の守護者。警告する、これより先は命あるものが立ち入ることを禁じられた、冥界の地ぞ。早々に去れ。さもなければ…………その愚かさ、命をもって償うことになるぞ」
 ルーフェの目の前にいるのは、もはや心優しい少女ではない。いるのは太古の契約の下、冷酷に冥界の侵入者を排除する守護者――常世の守り主だけだ。
 ならば迷いはない。あれは、ラキサではないのだから――。
 そう決意したルーフェは剣を抜き、彼女に対して構えた。
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