常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸

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番外編 その2  竜の娘の、その旅路。

深まる絆

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 ――――

 それから一、二時間ほど歩いた末に、ようやく
クレトーリェにたどり着いた、ラキサとテオ。


 港町クレトーリェ、それは岬の高く大きな岩場に建てられた街である。
 元々の岩場を削り、穴を開け、真っ白い岩で作られた建物からなる、純白の街並み。
 街並みの下には、今度は木製の大型の建物が立ち並ぶ。
 それらは全て、街を訪れる船舶のための港や、積み荷を降ろすための倉庫など、それに関する施設、設備が所せましとあった。


                       ――――

 結局街についたのは日暮れに近い時間……。
 それに、ここまで一日中、歩き通しだった。
 小規模であるが熱砂の砂漠を超え、その後に谷を下り、上り……とりわけ疲れた一日だった。
 二人とも街についてすぐ、その疲れを癒すために……宿屋へと止まった。


 そして宿屋の、一室に入るラキサ達。

「うーん! 疲れちゃった、かな。だってずいぶん歩いたから、クタクタかしら」

 部屋に入って、ラキサはぐうっと、背伸びをする。ようやくゆっくり休める場所を見つけて、リラックスしたみたいだ。

「ふふっ、僕もヘトヘトだね。早めにベッドで横になって、グッスリしたいよね」

 と、そう言いながら、テオは椅子に腰かけ、バッグからパンと飲み物の入った瓶を置く。

「でもその前に、軽く何か食べたいよね。
 ラキサさんはどう? 君の分も、一緒に買って来たんだ。」
 
 彼はにこっと、ラキサに笑みを投げかけた。

「私も少し、おなか空いていたの。
 ……ありがとう、ならちょびっと、貰おうかあしら」



 ……そう。最初こそどぎまぎしていたものの、今ではこうして二人でいるのも。当たり前のようになっていた。
 何日もともに過ごし、ラキサとテオ、二人の間には一種の絆が育まれていた。


 二人は、街のパン屋で買って来たパンを、夜食として口にしていた。

「へぇ……! このサンドウィッチ、焼いたお魚の切り身が入っているのね。
 ……美味しい!」

「言ったでしょ? ここの海鮮料理は美味しいって。こっちのエビと貝のパイも、きっと良いはずだよ」

 ラキサとともに旅を初めてから、テオはいつも幸せそうな、そんな感じだった。
 
「うーん! やっぱりまたここに来て、良かったよ! 
 こうして自分の旅路をまた巡って、さ。やっぱりラキサさんと、旅が出来て……とても良かった」                                            でも、本当に不思議な少年である、テオ。

 ――そう言えば、テオくんがどんな人か、私は知らないな――

 いまさらながら、サンドウィッチをほおばりながら、ラキサは不思議に思う。

 ――でも、私の事もテオくんには話していないから、お互いさまだよね。
 ……私がかつて、冥界の番をしていた、竜の生き残りだって――                            


 彼女の正体、それは天高く聳える山に存在する、冥界へと通じる門を通じる……常世の守り主、白銀の竜であった。
 だが、それはもう、昔の話だ。
 今のラキサは、常世の守り主ではない、ただの……竜の少女だ。

 ――多分、私一人だけ。……そう考えると、ちょっと寂しい、かも――

 しかし、竜の生き残りは、たぶん……ラキサだけ。
 そう考えると、少し寂しく思う、彼女であった。
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