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ロッカの街〜アイオール皇国
第25話 ライヌボール
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コンロを購入した俺は、フィズと共にセフィーを連れて街をぶらついた。
ゴンザさんはキッチンを作るため、リリアとミルカは安全を考えてそれぞれ馬車の中にいてもらっている。
馬車は俺のポケットの中にあるけど、その状態からでも馬車を降りることはできる。
俺の目の前に突然出現するからあんまりやって欲しくはないけど……まぁ閉じ込めているわけではないからそれへんは自由にしてもらえばいい。
残りの二人は念の為、街の外を警戒してもらっている。
魔獣の大群でも呼び寄せたら大変だからな。
報告がないところをみると、今のところは大丈夫なのだろう。
「さて、どういうのがいいのかな?」
「お気遣いなさらずっ! わたしはこのままでも大丈夫ですので」
ボロを着た女の子は遠慮をしているのかそんなことをいってるが、小さい女の子にボロを着せたままなんてむしろ俺の心が我慢できない。
「いいから、気にしないで二、三着選んだらいい」
「ご主人さま、セフィーにはこういうのが似合うんじゃない?」
フィズが指をさしたのは後ろにリボンがついたワンピースタイプの服だった。
「おお、それはなかなかいいじゃないか。ちょっと着てみたらどうだ?」
「え、でも。そんな……」
俺はセフィーに服を持たせると試着ができるスペースに押し込んだ。
こうでもしないと遠慮して着てくれないだろうからな。
「そういえばリリアも着の身着のままだったわよね?」
「ああ、確かにそうだったな。いつも料理を作ってくれるお礼にリリアのも見ていくか」
そんな事を話していたらどうやらセフィーの試着が終わったらしく、試着スペースにひかれたカーテンのような布から顔を覗かせていた。
「終わったなら是非見せてくれよ」
「は、はい。……どうでしょうか?」
盗賊に着せられていたのであろうボロを脱ぎ捨てた少女は見違えるほど可愛らしくなっていた。
「うん、いいじゃないか。じゃあそれは買うからそのまま着ていてくれ」
「あ、えっと……はい。ありがとうございます」
また遠慮しようとして、でも結局は好意に甘えることにしてくれたらしい。
これくらいの年齢の子だったらむしろもっと甘えて欲しいけどな。
「さて、それじゃあと二着くらいフィズと選んでおいてくれ」
「ご主人さまは?」
「俺はリリアの服を見てくる」
店内はそこそこの広さで、ロッカの街に比べれば大分安い。
まぁあの頃より懐は大分暖かいから、少々の値段なら問題はない。
「んー、リリアにはどんなのが似合うかな……今着てるのはフリフリしてるからあんまり旅向きじゃないんだよな。だとすると旅装っぽい方が喜ぶか? じゃあこれかな……」
しばらく真剣に悩んでいると、フィズたちの方が先に選び終わってしまったらしい。
フィズは悩んでいる俺のそばに来ると、「リリアにはこういうのがいいよ」といってさっさと決めてしまった。
まぁ女の子のフィズが選んだほうが間違いがないかもしれないな。
あとはいくつかの下着などを選んで購入することにした。
フィズは前みたいに足を上げる場面もあるだろうから、そんな時にノーパンだと倫理的に危ないからな。
こうして金貨三枚ほどの買い物をして服屋を出ると、どこからかいい匂いが漂ってきた。
フィズも最近食べ物の美味しさを知ったからか、だらしない顔をしているな。
匂いにつられるように歩いていくと、そこは屋台が並んだ一角だった。
「ちょっと小腹も減ったし、折角だから食っていくか」
俺がそういうとフィズは目をキラキラさせて「そうしましょっ!」と頷いた。
この街は国境沿いで交通の便がいいからか、食べ物には色々な種類があった。
ロッカでよく見かけたような汁物もあれば、辛そうな麺もあるし、肉を小さく切って串に刺し、甘辛く焼いたような物もある。
その中でも俺の目を引いたのは……米だ。
厳密には違うのかもしれないが、俺にはそうとしか見えなかった。
「すみませーん、おにぎりを八個ください」
「おにぎり?」
「ええっと……ライヌボール……でしたか。じゃあこのライヌボールを八個で」
どうやらこの世界では米のことをライヌと言うらしい。非常に紛らわしいな。
それから串焼きを適当に見繕うと、近くにある広場へ行った。
三人だけで食べるのも申し訳ないので、フィズに馬車組を呼んできてもらう。
小さくしたままで出入り出来ることを知ってからはかなり便利になったな。
その間に空へ向かって手を振ると、しばらくしてジャックとローズも降りてきた。
結構なスピードで降りてきたから見られていないと信じよう。
こうして全員が揃ったので、ささやかな昼食会となった。
「おう、このライヌボールってのはなかなかいけるじゃねぇか」
「ええ。私の国にはなかったので新しい味わいですね」
ゴンザさんとリリアがそんな事を話している。
作り方を覚えれば作ってくれるかもしれないから、あとで炊く前のライヌがどこかに売っていないか探してみよう。
どうやら喜んでくれたらしいみんなを見ながら俺も一口かじってみる。
うん、これは……確かに米だな。
前世のものほどモチモチしていないし甘みも足りないけどな。
それでも久しぶりに食べたおにぎりの味がひどく懐かしく感じて……。
「あれ? ご主人さま、どうして泣いているの?」
「え? ああ。塩味が足りないと思ったから……な」
まさか自分が泣いているとは思わず、そんな誤魔化し方をするのが精一杯だった。
そんな俺にフィズは微笑んで、それから何も言わず頭を撫でてくれた。
ゴンザさんはキッチンを作るため、リリアとミルカは安全を考えてそれぞれ馬車の中にいてもらっている。
馬車は俺のポケットの中にあるけど、その状態からでも馬車を降りることはできる。
俺の目の前に突然出現するからあんまりやって欲しくはないけど……まぁ閉じ込めているわけではないからそれへんは自由にしてもらえばいい。
残りの二人は念の為、街の外を警戒してもらっている。
魔獣の大群でも呼び寄せたら大変だからな。
報告がないところをみると、今のところは大丈夫なのだろう。
「さて、どういうのがいいのかな?」
「お気遣いなさらずっ! わたしはこのままでも大丈夫ですので」
ボロを着た女の子は遠慮をしているのかそんなことをいってるが、小さい女の子にボロを着せたままなんてむしろ俺の心が我慢できない。
「いいから、気にしないで二、三着選んだらいい」
「ご主人さま、セフィーにはこういうのが似合うんじゃない?」
フィズが指をさしたのは後ろにリボンがついたワンピースタイプの服だった。
「おお、それはなかなかいいじゃないか。ちょっと着てみたらどうだ?」
「え、でも。そんな……」
俺はセフィーに服を持たせると試着ができるスペースに押し込んだ。
こうでもしないと遠慮して着てくれないだろうからな。
「そういえばリリアも着の身着のままだったわよね?」
「ああ、確かにそうだったな。いつも料理を作ってくれるお礼にリリアのも見ていくか」
そんな事を話していたらどうやらセフィーの試着が終わったらしく、試着スペースにひかれたカーテンのような布から顔を覗かせていた。
「終わったなら是非見せてくれよ」
「は、はい。……どうでしょうか?」
盗賊に着せられていたのであろうボロを脱ぎ捨てた少女は見違えるほど可愛らしくなっていた。
「うん、いいじゃないか。じゃあそれは買うからそのまま着ていてくれ」
「あ、えっと……はい。ありがとうございます」
また遠慮しようとして、でも結局は好意に甘えることにしてくれたらしい。
これくらいの年齢の子だったらむしろもっと甘えて欲しいけどな。
「さて、それじゃあと二着くらいフィズと選んでおいてくれ」
「ご主人さまは?」
「俺はリリアの服を見てくる」
店内はそこそこの広さで、ロッカの街に比べれば大分安い。
まぁあの頃より懐は大分暖かいから、少々の値段なら問題はない。
「んー、リリアにはどんなのが似合うかな……今着てるのはフリフリしてるからあんまり旅向きじゃないんだよな。だとすると旅装っぽい方が喜ぶか? じゃあこれかな……」
しばらく真剣に悩んでいると、フィズたちの方が先に選び終わってしまったらしい。
フィズは悩んでいる俺のそばに来ると、「リリアにはこういうのがいいよ」といってさっさと決めてしまった。
まぁ女の子のフィズが選んだほうが間違いがないかもしれないな。
あとはいくつかの下着などを選んで購入することにした。
フィズは前みたいに足を上げる場面もあるだろうから、そんな時にノーパンだと倫理的に危ないからな。
こうして金貨三枚ほどの買い物をして服屋を出ると、どこからかいい匂いが漂ってきた。
フィズも最近食べ物の美味しさを知ったからか、だらしない顔をしているな。
匂いにつられるように歩いていくと、そこは屋台が並んだ一角だった。
「ちょっと小腹も減ったし、折角だから食っていくか」
俺がそういうとフィズは目をキラキラさせて「そうしましょっ!」と頷いた。
この街は国境沿いで交通の便がいいからか、食べ物には色々な種類があった。
ロッカでよく見かけたような汁物もあれば、辛そうな麺もあるし、肉を小さく切って串に刺し、甘辛く焼いたような物もある。
その中でも俺の目を引いたのは……米だ。
厳密には違うのかもしれないが、俺にはそうとしか見えなかった。
「すみませーん、おにぎりを八個ください」
「おにぎり?」
「ええっと……ライヌボール……でしたか。じゃあこのライヌボールを八個で」
どうやらこの世界では米のことをライヌと言うらしい。非常に紛らわしいな。
それから串焼きを適当に見繕うと、近くにある広場へ行った。
三人だけで食べるのも申し訳ないので、フィズに馬車組を呼んできてもらう。
小さくしたままで出入り出来ることを知ってからはかなり便利になったな。
その間に空へ向かって手を振ると、しばらくしてジャックとローズも降りてきた。
結構なスピードで降りてきたから見られていないと信じよう。
こうして全員が揃ったので、ささやかな昼食会となった。
「おう、このライヌボールってのはなかなかいけるじゃねぇか」
「ええ。私の国にはなかったので新しい味わいですね」
ゴンザさんとリリアがそんな事を話している。
作り方を覚えれば作ってくれるかもしれないから、あとで炊く前のライヌがどこかに売っていないか探してみよう。
どうやら喜んでくれたらしいみんなを見ながら俺も一口かじってみる。
うん、これは……確かに米だな。
前世のものほどモチモチしていないし甘みも足りないけどな。
それでも久しぶりに食べたおにぎりの味がひどく懐かしく感じて……。
「あれ? ご主人さま、どうして泣いているの?」
「え? ああ。塩味が足りないと思ったから……な」
まさか自分が泣いているとは思わず、そんな誤魔化し方をするのが精一杯だった。
そんな俺にフィズは微笑んで、それから何も言わず頭を撫でてくれた。
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