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アイオール皇国〜ニエの村
第37話 偽りの神
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次の日の早朝、俺たちは早速山に登ることにした。
ちなみに、ジャックが俺を抱いて飛んでいく案も出たけど目立ち過ぎるので却下した。
人の見た目をしているとはいえ、魔族に抱かれて空中散歩している姿をみられるのはあまりよろしくないからな。
「よし、それじゃ行くぞ」
俺はみんなに声をかけた。
みんな、といってもここにいるのは俺とフィズとジャック、それにミルカだけだ。
他のみんなは小さくなった馬車の中。
ローズも念のため馬車の中のセフィーについてもらっている。
元気そうではあったけど、念のためだな。
俺はみんなが頷いたのを確認すると、森に足を踏み入れる。
人の手が入っていない道なき道は、木の根が所々でその存在を主張していて、歩きづらいことこの上ない。
「わっ!」
「おっと、危ないからちゃんと下をみて歩けよ」
意地悪をする木の根につまずいたフィズを掬い上げた。
ちょっと油断するとこうなるから気を付けないとな。
「ご主人さま……ありがと」
「それにしてもなかなか広い森だな」
早朝から昼すぎくらいまで歩いてようやく半分といったところか。
「この辺で昼飯にするか」
そういうと俺は少しひらけた場所に馬車を出した。
中に入ると昼飯のいい匂いがしている。
俺たちが歩いている間に馬車の中で作っていてくれたんだろう。
食堂に入るとすぐにローズが料理を運んできてくれた。
今日の昼食は裏ごしした豆のスープとデスラビットサンドにリンゴのようなフルーツ。
ちなみにこのデスラビットは朝方に遭遇してジャックが倒したやつだな。
「今日は私が作らせてもらいました」
ローズが皿を置きながらそんな事をいう。
まだ料理というほどではないかもしれないけど、ローズも少しづつ色々作れるようになっているらしい。
「おお、凄いじゃないか。じゃあ早速頂くよ……うん、うまいな」
「ありがとうございます」
ローズは俺の言葉に少し頬を染めながら厨房へ戻っていった。
やっぱり旅の間でもこうやって落ち着いた空間で食事ができるのは素晴らしいな。
欲をいえば風呂があるといいけど……いつか増築してもらいたいもんだ。
こうして英気を養った俺たちは午後もひたすら森を歩いた。
足を踏み入れた時は思ったより明るいなと思っていた森の中が次第に薄暗くなっていく。
山の麓までもう少しだったのでそこまで行ってから今日は休む事にする。
「この調子だったら割とすぐに着くかもしれないな」
それが俺の感想だ。
確かに足場は悪いし歩きづらいのはあるし、たまに魔獣が出てきたりもする。
でもはっきり言えばそれだけだからな。
それでも少し疲れたから今日はゆっくりと馬車で休むとしよう。
馬車に戻ると、リリアが作った夕食をとって部屋に戻る。
部屋の中は、棚にテーブル、ベッドなどゴンザさんが作った家具が置かれていて、普通の屋敷の一室と言われても違和感はないだろう。
他の部屋もここと大体同じ感じような感じになってきているからゴンザさんはいい仕事をしているといえるだろうな。
馬車の中も大分落ち着ける空間になってきたからリリアを送ったら次はゴンザさんも送り届けないとな。
そんな事を考えながら俺は眠りについた。
もちろん横にはフィズがいて、俺はその温もりに安心感を覚えながら甘く微睡んだ。
次の日は朝から山登りだ。
前の人生を含めてもはじめての経験となる。
高地順応とか必要なのかな、などちょっとワクワクしているのは内緒だ。
山に入ったと思われる緩やかな傾斜を登っていると段々と植物が少なくなってくる。
これは思いの外森林限界が下の方にありそうだな。
さらに歩くと周りは石が多くなってきて、それはそれで登りづらかった。
それでもこの世界に来てから身につけた身体能力をフルで発揮すると、日が落ちるまでに山頂と思われる場所まで辿りついた。
リリアは途中でへばったので馬車に戻ってもらったが、フィズとジャックは最後までついてきてくれた。さすが魔物と幻獣だ。
「寒いな……」
山頂に近づくにつれ段々と下がっていた気温だったが、日が落ちかけているのもあってか山頂に着くと急激に寒くなったように感じた。
体感温度でいえばマイナス十度よりも間違いなく下だ。
ただ火龍の外套を着ているからか、どうにか耐えられる。
もしこれがなければリリアのようにへばっていたかもしれないな。
「空を飛んでいても高くなればなるほど気温は下がりますよ。受肉して不便なのはそれくらいですかね」
続けて、味が分かるようになったのを思えばそんなのは些細なことですが……とジャックは笑った。
「それじゃ今日はこの辺で美味いご飯を食べて休むとするか」
そういって馬車を出した瞬間——空気が震えた。
「カエレ……」
「ん? フィズ、何かいったか?」
「フィズじゃないわよ?」
「タチサレ……」
「む!? 私にも聞こえました」
ジャックは突然聞こえた声を耳にすると警戒をあらわにする。
もしかしたらこれがミルカのいっていた「神」なのか!?
でもこんなハッキリと聞こえるもんか?
女神様の声はもっと魂に響くような感じだったはず。
今聞こえた声には肉体がありそうな響きだ。
神と会話をした俺だから分かる。これは……違う。
「誰だ!?」
そんな俺の叫びにその「偽神」は返答を返してきた。
「カエレ……ココハ我ノナワバリダ……」
「縄張り……?」
「ム……キサマハ……コノ前ノ……!?」
そんな声が聞こえるとすぐにザッという音がしてそいつは姿を現した。
俺の目の前にいたのは漆黒の体毛を持った狼——。
フェンリルだった。
漆黒の狼は牙を剥き出しにして低い唸り声をあげた。
その視線の先は……馬車にくくりつけられて、今も風に揺れている黒い尻尾だった。
ちなみに、ジャックが俺を抱いて飛んでいく案も出たけど目立ち過ぎるので却下した。
人の見た目をしているとはいえ、魔族に抱かれて空中散歩している姿をみられるのはあまりよろしくないからな。
「よし、それじゃ行くぞ」
俺はみんなに声をかけた。
みんな、といってもここにいるのは俺とフィズとジャック、それにミルカだけだ。
他のみんなは小さくなった馬車の中。
ローズも念のため馬車の中のセフィーについてもらっている。
元気そうではあったけど、念のためだな。
俺はみんなが頷いたのを確認すると、森に足を踏み入れる。
人の手が入っていない道なき道は、木の根が所々でその存在を主張していて、歩きづらいことこの上ない。
「わっ!」
「おっと、危ないからちゃんと下をみて歩けよ」
意地悪をする木の根につまずいたフィズを掬い上げた。
ちょっと油断するとこうなるから気を付けないとな。
「ご主人さま……ありがと」
「それにしてもなかなか広い森だな」
早朝から昼すぎくらいまで歩いてようやく半分といったところか。
「この辺で昼飯にするか」
そういうと俺は少しひらけた場所に馬車を出した。
中に入ると昼飯のいい匂いがしている。
俺たちが歩いている間に馬車の中で作っていてくれたんだろう。
食堂に入るとすぐにローズが料理を運んできてくれた。
今日の昼食は裏ごしした豆のスープとデスラビットサンドにリンゴのようなフルーツ。
ちなみにこのデスラビットは朝方に遭遇してジャックが倒したやつだな。
「今日は私が作らせてもらいました」
ローズが皿を置きながらそんな事をいう。
まだ料理というほどではないかもしれないけど、ローズも少しづつ色々作れるようになっているらしい。
「おお、凄いじゃないか。じゃあ早速頂くよ……うん、うまいな」
「ありがとうございます」
ローズは俺の言葉に少し頬を染めながら厨房へ戻っていった。
やっぱり旅の間でもこうやって落ち着いた空間で食事ができるのは素晴らしいな。
欲をいえば風呂があるといいけど……いつか増築してもらいたいもんだ。
こうして英気を養った俺たちは午後もひたすら森を歩いた。
足を踏み入れた時は思ったより明るいなと思っていた森の中が次第に薄暗くなっていく。
山の麓までもう少しだったのでそこまで行ってから今日は休む事にする。
「この調子だったら割とすぐに着くかもしれないな」
それが俺の感想だ。
確かに足場は悪いし歩きづらいのはあるし、たまに魔獣が出てきたりもする。
でもはっきり言えばそれだけだからな。
それでも少し疲れたから今日はゆっくりと馬車で休むとしよう。
馬車に戻ると、リリアが作った夕食をとって部屋に戻る。
部屋の中は、棚にテーブル、ベッドなどゴンザさんが作った家具が置かれていて、普通の屋敷の一室と言われても違和感はないだろう。
他の部屋もここと大体同じ感じような感じになってきているからゴンザさんはいい仕事をしているといえるだろうな。
馬車の中も大分落ち着ける空間になってきたからリリアを送ったら次はゴンザさんも送り届けないとな。
そんな事を考えながら俺は眠りについた。
もちろん横にはフィズがいて、俺はその温もりに安心感を覚えながら甘く微睡んだ。
次の日は朝から山登りだ。
前の人生を含めてもはじめての経験となる。
高地順応とか必要なのかな、などちょっとワクワクしているのは内緒だ。
山に入ったと思われる緩やかな傾斜を登っていると段々と植物が少なくなってくる。
これは思いの外森林限界が下の方にありそうだな。
さらに歩くと周りは石が多くなってきて、それはそれで登りづらかった。
それでもこの世界に来てから身につけた身体能力をフルで発揮すると、日が落ちるまでに山頂と思われる場所まで辿りついた。
リリアは途中でへばったので馬車に戻ってもらったが、フィズとジャックは最後までついてきてくれた。さすが魔物と幻獣だ。
「寒いな……」
山頂に近づくにつれ段々と下がっていた気温だったが、日が落ちかけているのもあってか山頂に着くと急激に寒くなったように感じた。
体感温度でいえばマイナス十度よりも間違いなく下だ。
ただ火龍の外套を着ているからか、どうにか耐えられる。
もしこれがなければリリアのようにへばっていたかもしれないな。
「空を飛んでいても高くなればなるほど気温は下がりますよ。受肉して不便なのはそれくらいですかね」
続けて、味が分かるようになったのを思えばそんなのは些細なことですが……とジャックは笑った。
「それじゃ今日はこの辺で美味いご飯を食べて休むとするか」
そういって馬車を出した瞬間——空気が震えた。
「カエレ……」
「ん? フィズ、何かいったか?」
「フィズじゃないわよ?」
「タチサレ……」
「む!? 私にも聞こえました」
ジャックは突然聞こえた声を耳にすると警戒をあらわにする。
もしかしたらこれがミルカのいっていた「神」なのか!?
でもこんなハッキリと聞こえるもんか?
女神様の声はもっと魂に響くような感じだったはず。
今聞こえた声には肉体がありそうな響きだ。
神と会話をした俺だから分かる。これは……違う。
「誰だ!?」
そんな俺の叫びにその「偽神」は返答を返してきた。
「カエレ……ココハ我ノナワバリダ……」
「縄張り……?」
「ム……キサマハ……コノ前ノ……!?」
そんな声が聞こえるとすぐにザッという音がしてそいつは姿を現した。
俺の目の前にいたのは漆黒の体毛を持った狼——。
フェンリルだった。
漆黒の狼は牙を剥き出しにして低い唸り声をあげた。
その視線の先は……馬車にくくりつけられて、今も風に揺れている黒い尻尾だった。
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