辻雪隠

dragon49

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辻雪隠

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 江戸時代に辻雪隠なるものがあった。大橋のたもとに設けられた簡易の公衆トイレである。発祥の地は、上方の京都らしい。

 今でも公衆トイレは橋のたもとに見られるが、多く利用されるのは、むしろ現代のよろず屋コンビニの中である。

 都内のサラリーマンS氏には、帰宅ルーチンがある。メトロの駅を降りると、駅付近の○ーソンに入ってトリの唐揚げを買って帰るのである。

 その日、S氏は帰宅ルーチンの一つである、メトロの駅で小便をするのを忘れた。メトロのトイレの空調が故障していて臭いが充満し、入るのが憚られたのである。

 S氏は、コンビニに入ると店員がエスニック系であるのでことわるのももどかしく、問答無用でトイレに入ろうとした。

 あ、開かない。誰か中に入っている。一拍置いて、ジャーという派手な水洗の音とともに可愛いらしいエスニック系美人の店員が出てきた。

「ゴメンナサーイ!」

S氏は、ふっと微笑を浮かべて彼女に儀礼的な挨拶をして、徐にトイレに入った。

 く、臭い!明らかに先程のエスニック系美人がした○便の臭気がトイレ一杯に充満し、S氏の鼻腔をこれでもかこれでもかという風に攻撃する。

 普通の日本人の便が五臭のレベルだとしたら、十臭ぐらいはありそうな強烈な臭さである。

 S氏は、用を足しながらくだんのエスニック系美人の便がなぜこうも臭いのかを考察し始めた。

 ‘’東南アジアの人らしい風貌の美人だが、きっと日本の野菜は天文学的に高く写っているのではないか、それで食物繊維が足りてないのだ”

‘’慣れない地で、知らない習慣が沢山あり、日本語で話すことにストレスを感じているのだ。それで腸の働きが悪くなり‥”

S氏は用を足し終わり、考察と分析もそこそこに徐にトイレを出る。

ルーチン通りに○ラアゲ君を注文する。

「アッリガトーございまーす」、ぎこちないイントネーションでエスニック系美人が微笑する。

S氏は、○ラアゲ君の匂いをそっと嗅ぐ。
おお、なんと芳醇な香り!

エスニック系美人の微笑みと○ラアゲ君のいい香り、この二つで自らを慰めて先刻の悪夢を脳裏から打ち消そうと努め、家路につくS氏であった。

 
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