先生、おねがい。

あん

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番外編 おともだち③

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 「戸塚君?階段だから気を付けてね?」

 その後は特に話をすることもなく歩き続け、気がつけば、すでに目的地に着いていた。階段を上り始めていた望月は、数段上で振り返り、心配そうに俺を見てる。

 「……悪い、俺」

 ザリっと砂を鳴らして後退る。すると、望月はコクコクと頷いた。たぶん、俺がなにをしたいか分かっているからだろう。
 普段はクソほど鈍感なのに、こんなときだけ察するなんて、本当にムカつくやつ。

 「戸塚君は用事が出来たって、先生に言っておくね」
 「……さんきゅ」
 「ううん、俺の方こそ送ってくれてありがとう」
 「……」
 「……」

 無言が続く。望月も動こうとしない。
 分かってる。俺が早く行けばいいだけだ。そうしたら望月も、そのまま階段を上って、家に帰るだろう。
 そう分かってるのに、俺は情けなくも、そこから一歩も動けなかった。

 「戸塚君……」

 望月はカンカンと階段を鳴らして、近づいてくる。

 「大丈夫だよ、戸塚君」

 言葉とともに、両手をキュッと握られた。

 「素直な気持ちを言えば、大丈夫」
 「……っ」

 眉を下げて微笑む望月に、胸が苦しくなる。繋がっている手が、酷く熱い。

 (あぁ、くそ……)

 また実感する。
 同じ時間を過ごすたび、いつもいつも。いやというほど、思い知らされる。

 (……やっぱ好きだ)

 どうしようもない。
 どうしようもなく、好きだ。

 一年前と比べて、確実に増えた笑顔。いつも寂しげな顔をしてた頃のコイツは、もういない。
 望月の笑顔は、強くなった証拠だ。
 コイツは成長してる。あの人に──センセイに出会ってからずっと、苦しいことも必死で乗り越えて、変わり続けてる。

 (……ケジメ、つけなきゃな)

 好きなやつのこんな姿を前にして、怖気付いてなんかいられねえ。


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