314 / 329
番外編 みなりつ1
しおりを挟む
戸塚と律が両思いになるまでの話です。
***
「俺ももう立派な社会人な訳じゃん?快楽ばっかり求めてないで、そろそろ落ち着かないとなぁって」
適当に街をぶらついて、食べたいとごねられたクソ甘ったるいパンケーキ屋に入って、俺はコーヒーでも飲んで暇を潰す。そんな日常の中、いつもの軽いノリで律は言い放った。
「だから、とっつーと会うのは今日で最後にしよっかなって」
気づいたときには、手を伸ばし、目の前の細い手首を掴んでいた。その拍子に、律の持つフォークからパンケーキが落ちる。
「あー!最後の一口だったのに~!」
律は紙ナプキンでテーブルを拭きながらプンスカと怒っていたが、俺はそれどころじゃなかった。
(快楽?落ち着く?)
頭の中を整理するように、律の言葉を反芻する。
つまりはフラフラ遊ぶのをやめるということだろうか。しかし、それがなぜ、俺と会わないことに繋がるのかさっぱり分からない。
「ちょっと、とっつー?何ぼーっとしてんの?俺怒ってんだけど?」
「うるせぇな。奢ってやるから黙れ」
「え、マジ?ラッキー!じゃあ代わりに、とっつーのコーヒー代は俺が払うねっ」
「……」
すぐに機嫌を直し、るんるんとカフェラテを飲む律を見てると、真剣に考えるのが馬鹿らしくなってくる。どうせいつもみたいに、俺のことを揶揄って楽しんでいるだけなのだろう。
(なのに、なに熱くなってんだか……)
冗談を間に受けて、とっさに引き止めようとした自分が恥ずかしくなった俺は、誤魔化すようにため息をつきながら頬杖をついた。
「たっく……笑えねえ冗談言ってんじゃねえよ」
「ん?冗談?何が?」
「さっきの。お前がセフレ切るのは自由だけど、俺たちはそんな関係じゃねえだろ」
「あっは。冗談なんかじゃないよ。今は違うけど前はそうだっだんだから、綺麗さっぱり清い関係ですなんて言えなくない?」
「……おい、いい加減に──」
まだこの茶番を続けるのかと思うと、苛立ちが募る。いい加減しつこいとキレそうになったところで、律はそれより先に言葉を被せてきた。
「そんでさっ、これを機に、そろそろ心くんに告白したら?」
「は?」
「だいじょうぶだって!せんせーよりとっつーの方が、お似合いだと思うし!」
「はぁ?何言ってんだお前」
不可解な言葉の意味を尋ねてみても、律はヘラヘラと笑い返すだけ。
コイツとの付き合いはかれこれ4年ほどになる。このムカつく表情は、これ以上話す気はないという意思表示であると、俺は経験上知っていた。
「じゃーね、とっつー。心くんと上手くいくと良いね」
そんな最悪な置き土産を残して、律からの連絡は一切途絶えた。
***
「俺ももう立派な社会人な訳じゃん?快楽ばっかり求めてないで、そろそろ落ち着かないとなぁって」
適当に街をぶらついて、食べたいとごねられたクソ甘ったるいパンケーキ屋に入って、俺はコーヒーでも飲んで暇を潰す。そんな日常の中、いつもの軽いノリで律は言い放った。
「だから、とっつーと会うのは今日で最後にしよっかなって」
気づいたときには、手を伸ばし、目の前の細い手首を掴んでいた。その拍子に、律の持つフォークからパンケーキが落ちる。
「あー!最後の一口だったのに~!」
律は紙ナプキンでテーブルを拭きながらプンスカと怒っていたが、俺はそれどころじゃなかった。
(快楽?落ち着く?)
頭の中を整理するように、律の言葉を反芻する。
つまりはフラフラ遊ぶのをやめるということだろうか。しかし、それがなぜ、俺と会わないことに繋がるのかさっぱり分からない。
「ちょっと、とっつー?何ぼーっとしてんの?俺怒ってんだけど?」
「うるせぇな。奢ってやるから黙れ」
「え、マジ?ラッキー!じゃあ代わりに、とっつーのコーヒー代は俺が払うねっ」
「……」
すぐに機嫌を直し、るんるんとカフェラテを飲む律を見てると、真剣に考えるのが馬鹿らしくなってくる。どうせいつもみたいに、俺のことを揶揄って楽しんでいるだけなのだろう。
(なのに、なに熱くなってんだか……)
冗談を間に受けて、とっさに引き止めようとした自分が恥ずかしくなった俺は、誤魔化すようにため息をつきながら頬杖をついた。
「たっく……笑えねえ冗談言ってんじゃねえよ」
「ん?冗談?何が?」
「さっきの。お前がセフレ切るのは自由だけど、俺たちはそんな関係じゃねえだろ」
「あっは。冗談なんかじゃないよ。今は違うけど前はそうだっだんだから、綺麗さっぱり清い関係ですなんて言えなくない?」
「……おい、いい加減に──」
まだこの茶番を続けるのかと思うと、苛立ちが募る。いい加減しつこいとキレそうになったところで、律はそれより先に言葉を被せてきた。
「そんでさっ、これを機に、そろそろ心くんに告白したら?」
「は?」
「だいじょうぶだって!せんせーよりとっつーの方が、お似合いだと思うし!」
「はぁ?何言ってんだお前」
不可解な言葉の意味を尋ねてみても、律はヘラヘラと笑い返すだけ。
コイツとの付き合いはかれこれ4年ほどになる。このムカつく表情は、これ以上話す気はないという意思表示であると、俺は経験上知っていた。
「じゃーね、とっつー。心くんと上手くいくと良いね」
そんな最悪な置き土産を残して、律からの連絡は一切途絶えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
187
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる