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二章 スキル進化の悪趣味な条件と異世界転移者ロシュヴァルド=フォン=アーデルハイド

ロシュのお願い

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「あのな、スキルコピーは単にスキルをコピーするだけじゃない。スキルの後ろに数字が付いてたろ。その回数する事でスキルが進化するんだよ」

ヒューゴが俺のあとを継いで説明してくれている。

「そうすりゃ、ダメージ量が増える。昨日ユキトと二人で魔王に挑んでみたが、今までかすり傷くらいだったのが、最高で1/3は削れるようになったんだ。まあすぐ回復されちまったけどな、今までで一番手応えを感じたぜ。だから、お前のスキルもコピーすりゃ・・・」

とそこまで言って、ヒューゴは、ぐっと黙り込んでしまった。

「うう・・・もの凄く、言いたくねえ」

両手で顔を覆ってしまったヒューゴに不思議そうな顔をしながらも、ロシュは唸った。

「なるほど・・・確かにそれなら魔王に勝てる可能性が出て来るね。まあ、とんでもないスキルだけど。要するに僕とユキトがセックスすれば君がもっと強くなって、魔王を倒せるかもしれないって事なんだよね」
「・・・そうだな」

目を伏せながら頷く俺に、ロシュはふいに優しい声で言った。

「ユキトは僕とするのは嫌?僕の事は好きになれない?」
「・・・嫌とは言えないし、好きになれない、なんて断言も出来ない・・・けど、ロシュの事は良く知らないし、俺は良く知らない奴とでもすぐに喜んでやれるような淫乱じゃないんだ。そ、それに・・・俺はヒューゴと恋人同士だし・・・」

言いにくいけど、全部正直にそう言うと、隣のヒューゴが感動したように俺を振り向く。

「ユキト・・・ちゃんと俺のこと、恋人って言ってくれるんだな」
「そ、そりゃそうだろ。実際そうなんだし、言わない方が変だ」

俺が盛大に照れてそっぽを向くと、ヒューゴが「可愛いっ」と横からぎゅうぎゅう抱き締めて来た。

「はぁ、やっぱりそういう事なのか。まあ、それでも僕はいいけどね。でも、僕とセックスしないと、ユキトのスキルは進化しなくて、魔王を倒せないんだよね?」

ロシュに言われて、ぐっと詰まる。確かにその通りだ。

「あのな、俺は、お前と一緒ならずっとこの世界で暮らしてもいいんだからな?そりゃ、ユキトが自分の世界に帰りたいって言うなら仕方ないけど、お前も自分の世界には未練はないって言ってたよな。無理に、ロシュとする事なんてない」
「ヒューゴ・・・」

俺は胸が熱くなった。でも、本当にそれでいいんだろうか。

ヒューゴは俺を抱き締めたまま、ロシュを振り向いた。

「ロシュ、お前は自分の世界に早く帰りたいのかよ?未練があるのか?」
「未練か・・・」

ロシュはそう呟くと、目を閉じてふう、と息を吐いた。

「そこまでの未練は、もうないよ。帰っても、僕が本当に会いたい人はもう居ないしね。だけど、後に残された人の事は少し気になる。国がどうなったのかも。出来るならちゃんとこの目で見て確かめたいとは思うよ。君は、そういう気持ちはないの?ヒューゴ」

そう聞かれてヒューゴは一瞬黙った。

「そりゃ、俺だって、残して来た奴らの事は気になる事はある。国の事もな。だけど、俺のそんな気持ちは、ユキトに比べたら大したことねえ。俺にとってはユキトが一番大事なんだ」

そんな風にまで言って貰えて、俺は胸がいっぱいになった。
こんなに大事にして貰えて、こんな幸せな事ってあるだろうか。でも、それなら俺はますますヒューゴのその気持ちに甘えているだけじゃダメだ。
少しでも元の世界の事が気になるなら、やっぱり魔王は倒してここから自由にならなきゃいけない。

「ヒューゴ。俺は、そんな風に言って貰えるだけで充分だよ。それに俺は、ヒューゴのその気持ちに甘えて、寄りかかってるだけなんて、俺自身が嫌なんだ。だから」

俺はロシュを見た。

「ロシュ、俺はお前とセックスしてスキルをコピーさせて貰うよ。そして魔王を倒して、ヒューゴもロシュも元の世界に戻れるようにする」

「ユ、ユキト・・・」

ヒューゴが胸が詰まったような声で呟き、俺を震える瞳で見つめる。

ロシュはふっと笑って、俺の前に跪くと、俺の手を取って両手で包んだ。

「正直に言うけど僕は君に惹かれてる。だから君とセックス出来るのは幸運でしかないよ。だけどユキトの気持ちも大事にしてあげたいし、僕の事を本当に好きになって貰いたいから、お願いがある」
「何・・・?」

ああは言ったものの、何を言われるのか少し不安に思った。けど、ロシュが言ったのは、

「数日、僕と一緒に過ごしてくれないか?その間に僕の事を好きにさせてみせるから」

だった。

「もちろん、夜はヒューゴと過ごしてくれていい。僕は君を無理やり抱いたりしない。ねえ、どうかな?ヒューゴもそれでいい?」

そう言われて、俺は少し考える。
だけど確かにそれは俺にとって、いきなり今日ロシュとするよりも、ずっと呑み込みやすい提案だった。

「分かった。それでいいよ」

俺はそう言って頷いた。ヒューゴは俺の言葉に、「ユキトがいいならいい」と言ってくれた。

「良かった。じゃあ今日は君たちもここに着いたばかりだし、明日からね。神官長に君たちの部屋を用意してもらうから少し待っていて」

そう言って、ロシュは俺の手にまたキスして立ち上がり、部屋を出て行った。

「ユキト。俺、複雑だけど、お前の気持ちは嬉しいよ。でもホントに無理はすんなよな?」

そう言って、ヒューゴが俺の髪や頬にキスして、心配そうな目で見つめて来たから、俺は笑って言った。

「大丈夫だよ。ロシュがああいう風に提案してくれて、俺もちょっとホッとしたし・・・ロシュの事をよく知れば、抵抗感も減るかもしれないしな」
「・・・そう、だな・・・」


ん?どうしたんだろう。
ヒューゴは、何か言いたそうにしていたけど、結局それ以上何も言わず、俺を強く抱き締め続けていた。




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前半からかなり改訂されてます。この後も三章まで最初のバージョンとは筋がかなり変わったバージョンをお届けします。糖度高めになります。
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