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好きってマジ?
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「う、嘘だろ・・・もう、16時!?」
翌日、目を覚ました俺はサイドテーブルの置時計を見て、青褪めた。
今日の授業、全部飛ばした!
つか、もうバイトの時間まで余裕ねーじゃん!堀越んちから店まで車で40分だぞ!?
寝すぎて怠いし頭もすっきりしなかったけど、俺はベッドルームを出てリビングへ走った。
ドアを開けると、堀越がソファでスマホ弄りながら、のんびりコーヒーかなんか飲んでた。
「あ、やっと起きた?」
「ほ、堀越ぃ!頼む!俺のバ先まで車で送ってって!」
焦るあまり、座っている堀越のジーンズの膝にしがみ付きながら言うと、堀越はぽかんとした。
「起きたばっかじゃん。飯食わねぇの?それに昨日風呂入らねぇで寝ただろ。それでバイト行けんの?」
「飯は賄い出るからそれで何とかする!風呂は我慢する!今日先輩休みだし、人数少ないから急に休んで迷惑掛けたくねーんだ、頼む!」
必死で頼むと、堀越は「別にいいよ」と言いながら立ち上がって、玄関へ向かった。
「ありがと!」
俺はリビングに置きっぱなしだった自分のディバッグを掴んで、とりあえず膀胱が限界だったので秒でトイレ行って、あと顔だけ洗って、堀越と駐車場へ降りて行った。
昨日の服だから焼肉臭が取れてねーけど、しょうがない。
「バイト17時からなんだけど、間に合う?」
助手席に座りながら聞くと、堀越は「ん、まだ混む時間じゃないし大丈夫だろ」とエンジンを掛けた。
「そういえばお前、今日大学どうした?」
気になって聞いたら、
「俺?休んだけど」
平然と言う堀越に、ひょっとして俺が夕方まで寝てたからか?と焦る。
「わりぃ。俺が起きなかったからだよな。叩き起こしてくれれば良かったのに」
「そんなことしねぇよ。昨日思いっきりヤッて疲れてるだろうし、俺が寝かせといてやりたくてほっといたんだ」
え?まだ昨日の優しい堀越のまま?ニヤついてふざけ半分で言ってんじゃねーかと思って横顔を盗み見たけど、堀越は真面目な顔で前を見ていた。
どうなってんだ、こいつ。
やっぱ二重人格で今は優しい方の堀越が前面に出てる、とかじゃねーだろな。
「お前、どうしたんだよ?なんか昨日から妙に優しくね?本当に堀越だよな?」
思わず言葉に出してしまったら、堀越は不満そうな声で言った。
「なんで、世良って呼ばねぇの?昨日は呼んでくれてたじゃん」
は、はいいいいい!??
マジで、どうした!?
「は・・・?え?な、ど?」
驚きすぎて、ちゃんとした言葉が出ない。
急に昨日の夜の諸々を思い出してしまった。
いくら酔ってたからって、俺、いろいろとんでもないこと言ってたよな・・・
冷静になると、めちゃくちゃ恥ずかしくね?
「昨日の、俺の名前呼んで喘いでるお前、マジで可愛かったよ」
その言葉にトドメを刺された。
「う、うわああああ!忘れろ!忘れて下さいぃいい!」
あまりの恥ずかしさに頭を抱えていると、堀越は一言「無理」と言って、笑った。
「璃央、俺、お前のこと好きだよ」
ふいにそう言われて、一瞬思考停止する。
「は?」
俺が口を開けたまま固まっていると、堀越はもう一度言った。
「俺、お前のことが好きなんだよ、璃央」
思わず堀越の横顔をガン見してしまった。いつものような、どこか人を小ばかにした顔じゃなく、何となく緊張したような真面目な顔をしている。
昨日の夜、俺のこと好き好き言ってたのも、まさか本気だったのか・・・?
ドキドキして内心めちゃくちゃ動揺したけど、ふと我に返った。
いや、待てよ。こいつはクソクズだぞ?ひょっとしたらこれも演技かもしんねー。
「んなこと言ってもお前・・・すっげぇ遊んでんだろ?そういうこと、全員に言ってんじゃねーの?いまいち信用できねーんだよな、お前のこと」
そうだよ。
いきなりこんなこと言われたって、信じらんねーし。
そもそもこいつ初めて会った日に、ダメだっつってんのに俺のこと強引にヤッたようなやつだしな。
ベッドの脇にあった引き出しにローションとかゴムとかいっぱい入ってんのも昨日見ちゃったし、どうせ何人も家に連れ込んでは、いつもあのベッドでヤッてんだろ。
「・・・どうしたら信じてくれる?」
堀越は焦って弁解したりはせず、ただ静かにそう言った。
何か、こう、気迫みたいなもんを感じて、俺の方まで緊張して来た。
「え、ええ~?そんなの・・・分かんねーよ・・・」
戸惑いながらぼそっと言うと、堀越は「そうか」と呟いて、
「でも、俺がお前のこと好きなのは本当だから。部屋に連れて来たのだって、お前が初めてだから」
そう言った。
俺はめちゃくちゃ混乱していた。
こいつ、マジか?本当に俺のこと好きなのか?部屋に連れて来たのも、俺が初めてってホントかよ。
けど、分かんねー。だって前科が前科だもんな。
いやそもそも、こいつが俺のこと好きだろうが何だろうが、俺には陸人先輩がいるんだから、「俺はお前のこと好きじゃねーよ」の一言で終わるんじゃねーの?
でも、何かそれは簡単に言えないような、言いたくないような気がした。
だから俺は、堀越の言葉になんて答えたらいいのか分からずに、ただ「ふーん・・・」と呟いただけで黙り込むしかなかった。
堀越もそれきり黙って、俺は早く着け、と祈るような気持ちで窓の外を眺めた。
「はー、間に合った・・・」
堀越の言った通り、まだそこまで混んでなかったおかげで、15分前に店に着いた。
店の前は車を停める所がないから少し離れたところに停めて貰って、俺はシートベルトを外しながら言った。
「マジでありがとな。めちゃくちゃ助かったよ」
「璃央」
出ようとしたところで腕を掴まれてドキッとする。
「何・・・」
言いかけたけど、唇を塞がれた。
ぎゅっと抱き締められて、堀越の匂いを強く感じて、全身がビリビリ痺れるようだった。
「ん・・・」
体が蕩けてるみたいな気持ちで堀越のキスを受け入れていたけど、はっと我に返った。
「や、やめろよ!こんなところで!」
慌てて押し返すと、俺は助手席のドアを開けて外に出た。
「じゃ、じゃあな!」
そして後ろも見ずに早足で店に向かった。
心臓がドキドキして止まらなかった。
なんだ今の。あいつの匂い嗅いだら、体が甘く痺れるみたいになって、抱き締められてんのもキスされてんのも気持ち良くて・・・
やべぇよ。
きっと、何度も気持ちいい体験しちゃったから、パブロフの犬状態になってるだけだよな。そうに決まってる。
気持ちを切り替えてロッカールームで制服に着替えていたら、ドアがガチャッと開いた。
反射的にそっちを見て、俺は固まった。
「璃央、おはよ」
「陸人、先輩・・・なんで?今日、休みだったじゃ・・・」
さっきとは別の意味で鼓動が速くなって、でも何とか動揺を抑えてそう言ったら、陸人先輩は苦笑いした。
「そうなんだよね。でも今日牧村さんが急に病欠らしくて、店長から出てくれない?
って言われてさ。ちょうど空いてたから出ることにしたんだ」
「そ、そっか。せっかく休みだったのにね」
そう言いながら、急いでシャツの上に制服を羽織ろうとしたら、陸人先輩がすっと俺の傍に寄って来た。
そして、
「ふーん。グリーンノート系の香りか。これ、さっきお前がキスしてたヤツの匂い?」
そう言った。
驚きで何も言えなかった。
まさか、さっきの見られてたのか!?
「あーあ。まさか璃央が浮気するようなタイプだったなんてね。あんなにピュアで可愛かったのに、いつの間にそんなに汚れちゃったのかなぁ?それとも元々ビッチだった?」
「せ、せんぱ・・・」
何か言おうと思うのに、何も言葉が出て来なかった。
陸人先輩は初めて見る、冷めた目で俺を見ていた。
「まあいいや。どっちみち、もういいかなって思ってたし。俺、初めての子が好きなんだよね。男も女もビッチに用はないんだ」
何、言ってるんだ?これが陸人先輩?
こんなこと、言うような人だったっけ?
俺、夢見てるんじゃねーよな・・・
「ほら、璃央。早く着替えないと時間過ぎてるよ。じゃーね。今までけっこう楽しかったよ。さよなら」
さっさと着替え終わった先輩は、俺が好きだったあの笑顔でニコッと笑うと、部屋を出て行った。
俺は世界がぐるぐると回っているみたいな気がして、踏みしめている床の感覚も分からなくなった。
翌日、目を覚ました俺はサイドテーブルの置時計を見て、青褪めた。
今日の授業、全部飛ばした!
つか、もうバイトの時間まで余裕ねーじゃん!堀越んちから店まで車で40分だぞ!?
寝すぎて怠いし頭もすっきりしなかったけど、俺はベッドルームを出てリビングへ走った。
ドアを開けると、堀越がソファでスマホ弄りながら、のんびりコーヒーかなんか飲んでた。
「あ、やっと起きた?」
「ほ、堀越ぃ!頼む!俺のバ先まで車で送ってって!」
焦るあまり、座っている堀越のジーンズの膝にしがみ付きながら言うと、堀越はぽかんとした。
「起きたばっかじゃん。飯食わねぇの?それに昨日風呂入らねぇで寝ただろ。それでバイト行けんの?」
「飯は賄い出るからそれで何とかする!風呂は我慢する!今日先輩休みだし、人数少ないから急に休んで迷惑掛けたくねーんだ、頼む!」
必死で頼むと、堀越は「別にいいよ」と言いながら立ち上がって、玄関へ向かった。
「ありがと!」
俺はリビングに置きっぱなしだった自分のディバッグを掴んで、とりあえず膀胱が限界だったので秒でトイレ行って、あと顔だけ洗って、堀越と駐車場へ降りて行った。
昨日の服だから焼肉臭が取れてねーけど、しょうがない。
「バイト17時からなんだけど、間に合う?」
助手席に座りながら聞くと、堀越は「ん、まだ混む時間じゃないし大丈夫だろ」とエンジンを掛けた。
「そういえばお前、今日大学どうした?」
気になって聞いたら、
「俺?休んだけど」
平然と言う堀越に、ひょっとして俺が夕方まで寝てたからか?と焦る。
「わりぃ。俺が起きなかったからだよな。叩き起こしてくれれば良かったのに」
「そんなことしねぇよ。昨日思いっきりヤッて疲れてるだろうし、俺が寝かせといてやりたくてほっといたんだ」
え?まだ昨日の優しい堀越のまま?ニヤついてふざけ半分で言ってんじゃねーかと思って横顔を盗み見たけど、堀越は真面目な顔で前を見ていた。
どうなってんだ、こいつ。
やっぱ二重人格で今は優しい方の堀越が前面に出てる、とかじゃねーだろな。
「お前、どうしたんだよ?なんか昨日から妙に優しくね?本当に堀越だよな?」
思わず言葉に出してしまったら、堀越は不満そうな声で言った。
「なんで、世良って呼ばねぇの?昨日は呼んでくれてたじゃん」
は、はいいいいい!??
マジで、どうした!?
「は・・・?え?な、ど?」
驚きすぎて、ちゃんとした言葉が出ない。
急に昨日の夜の諸々を思い出してしまった。
いくら酔ってたからって、俺、いろいろとんでもないこと言ってたよな・・・
冷静になると、めちゃくちゃ恥ずかしくね?
「昨日の、俺の名前呼んで喘いでるお前、マジで可愛かったよ」
その言葉にトドメを刺された。
「う、うわああああ!忘れろ!忘れて下さいぃいい!」
あまりの恥ずかしさに頭を抱えていると、堀越は一言「無理」と言って、笑った。
「璃央、俺、お前のこと好きだよ」
ふいにそう言われて、一瞬思考停止する。
「は?」
俺が口を開けたまま固まっていると、堀越はもう一度言った。
「俺、お前のことが好きなんだよ、璃央」
思わず堀越の横顔をガン見してしまった。いつものような、どこか人を小ばかにした顔じゃなく、何となく緊張したような真面目な顔をしている。
昨日の夜、俺のこと好き好き言ってたのも、まさか本気だったのか・・・?
ドキドキして内心めちゃくちゃ動揺したけど、ふと我に返った。
いや、待てよ。こいつはクソクズだぞ?ひょっとしたらこれも演技かもしんねー。
「んなこと言ってもお前・・・すっげぇ遊んでんだろ?そういうこと、全員に言ってんじゃねーの?いまいち信用できねーんだよな、お前のこと」
そうだよ。
いきなりこんなこと言われたって、信じらんねーし。
そもそもこいつ初めて会った日に、ダメだっつってんのに俺のこと強引にヤッたようなやつだしな。
ベッドの脇にあった引き出しにローションとかゴムとかいっぱい入ってんのも昨日見ちゃったし、どうせ何人も家に連れ込んでは、いつもあのベッドでヤッてんだろ。
「・・・どうしたら信じてくれる?」
堀越は焦って弁解したりはせず、ただ静かにそう言った。
何か、こう、気迫みたいなもんを感じて、俺の方まで緊張して来た。
「え、ええ~?そんなの・・・分かんねーよ・・・」
戸惑いながらぼそっと言うと、堀越は「そうか」と呟いて、
「でも、俺がお前のこと好きなのは本当だから。部屋に連れて来たのだって、お前が初めてだから」
そう言った。
俺はめちゃくちゃ混乱していた。
こいつ、マジか?本当に俺のこと好きなのか?部屋に連れて来たのも、俺が初めてってホントかよ。
けど、分かんねー。だって前科が前科だもんな。
いやそもそも、こいつが俺のこと好きだろうが何だろうが、俺には陸人先輩がいるんだから、「俺はお前のこと好きじゃねーよ」の一言で終わるんじゃねーの?
でも、何かそれは簡単に言えないような、言いたくないような気がした。
だから俺は、堀越の言葉になんて答えたらいいのか分からずに、ただ「ふーん・・・」と呟いただけで黙り込むしかなかった。
堀越もそれきり黙って、俺は早く着け、と祈るような気持ちで窓の外を眺めた。
「はー、間に合った・・・」
堀越の言った通り、まだそこまで混んでなかったおかげで、15分前に店に着いた。
店の前は車を停める所がないから少し離れたところに停めて貰って、俺はシートベルトを外しながら言った。
「マジでありがとな。めちゃくちゃ助かったよ」
「璃央」
出ようとしたところで腕を掴まれてドキッとする。
「何・・・」
言いかけたけど、唇を塞がれた。
ぎゅっと抱き締められて、堀越の匂いを強く感じて、全身がビリビリ痺れるようだった。
「ん・・・」
体が蕩けてるみたいな気持ちで堀越のキスを受け入れていたけど、はっと我に返った。
「や、やめろよ!こんなところで!」
慌てて押し返すと、俺は助手席のドアを開けて外に出た。
「じゃ、じゃあな!」
そして後ろも見ずに早足で店に向かった。
心臓がドキドキして止まらなかった。
なんだ今の。あいつの匂い嗅いだら、体が甘く痺れるみたいになって、抱き締められてんのもキスされてんのも気持ち良くて・・・
やべぇよ。
きっと、何度も気持ちいい体験しちゃったから、パブロフの犬状態になってるだけだよな。そうに決まってる。
気持ちを切り替えてロッカールームで制服に着替えていたら、ドアがガチャッと開いた。
反射的にそっちを見て、俺は固まった。
「璃央、おはよ」
「陸人、先輩・・・なんで?今日、休みだったじゃ・・・」
さっきとは別の意味で鼓動が速くなって、でも何とか動揺を抑えてそう言ったら、陸人先輩は苦笑いした。
「そうなんだよね。でも今日牧村さんが急に病欠らしくて、店長から出てくれない?
って言われてさ。ちょうど空いてたから出ることにしたんだ」
「そ、そっか。せっかく休みだったのにね」
そう言いながら、急いでシャツの上に制服を羽織ろうとしたら、陸人先輩がすっと俺の傍に寄って来た。
そして、
「ふーん。グリーンノート系の香りか。これ、さっきお前がキスしてたヤツの匂い?」
そう言った。
驚きで何も言えなかった。
まさか、さっきの見られてたのか!?
「あーあ。まさか璃央が浮気するようなタイプだったなんてね。あんなにピュアで可愛かったのに、いつの間にそんなに汚れちゃったのかなぁ?それとも元々ビッチだった?」
「せ、せんぱ・・・」
何か言おうと思うのに、何も言葉が出て来なかった。
陸人先輩は初めて見る、冷めた目で俺を見ていた。
「まあいいや。どっちみち、もういいかなって思ってたし。俺、初めての子が好きなんだよね。男も女もビッチに用はないんだ」
何、言ってるんだ?これが陸人先輩?
こんなこと、言うような人だったっけ?
俺、夢見てるんじゃねーよな・・・
「ほら、璃央。早く着替えないと時間過ぎてるよ。じゃーね。今までけっこう楽しかったよ。さよなら」
さっさと着替え終わった先輩は、俺が好きだったあの笑顔でニコッと笑うと、部屋を出て行った。
俺は世界がぐるぐると回っているみたいな気がして、踏みしめている床の感覚も分からなくなった。
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